ウクライナで続く戦闘の巻き添えで、多くの民間人の命が失われたとすれば極めてゆゆしき事態である。同国の東部でマレーシア航空の旅客機が墜落し、約300人の乗客・乗員全員が犠牲になったもようだ。事件の徹底した真相究明を求めたい。
米政府は事故ではなく、地対空ミサイルによって撃墜されたとの見方を強めている。ウクライナのポロシェンコ大統領は「テロ行為だ」とし、東部の親ロシア派武装勢力による犯行と断じた。同国の保安当局はその証拠として、親ロ派がロシア情報機関に撃墜を報告する盗聴記録を公表した。
一方で、親ロ派は「高高度を飛ぶ航空機を撃ち落とす兵器を持っていない」と関与を否定。ロシア政府はウクライナ軍の防空部隊が撃墜した可能性を示唆し、激しい非難合戦を繰り広げている。
なにより急がれるのは、墜落の原因究明だ。国際社会は国際調査団を直ちに派遣し、中立的な立場から事件の真相を徹底的に洗い出す必要がある。
墜落現場のウクライナ東部は親ロ派が実効支配しており、フライトレコーダーなどを持ち去ったとの情報もある。証拠の隠蔽は決して許されない。ウクライナ政府も親ロ派も、第三国の多数の民間人が犠牲になった痛ましい事件を深刻に受け止め、調査に真摯に協力するのが当然だろう。
そもそも事件はウクライナ政府軍と、同国からの独立を求める親ロ派武装勢力の戦闘が続くさなかに起きた。事件の徹底した調査にはもちろん、即時の戦闘停止が欠かせない。さらに、こうした悲劇を2度と繰り返さないためにも、双方は恒久的な停戦と和平協議を早急に進めるべきではないか。
6月に就任したウクライナのポロシェンコ大統領は当初、一時停戦を打ち出したものの、親ロ派が武装放棄に応じず頓挫した経緯がある。政権側も親ロ派も、話し合いによる事態打開の道を再び模索すべきだろう。
ロシアの責任も重い。プーチン大統領は「戦闘が再開されなければ悲劇は起こらなかった」とウクライナ政府を非難したが、自らは親ロ派の説得と緊張緩和に果たしてどこまで真剣に動いたのか。
米欧が対ロ追加制裁を決定したのは、ロシアへの失望の現れだ。ロシアは事件の真相究明はもちろん、こんどこそウクライナの混乱収拾に積極的に行動すべきだ。
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