あんなものはゴジラじゃない!

花田紀凱 | 『WiLL』編集長、元『週刊文春』編集長

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こんなものはゴジラじゃない。

似て非なるものだ。いや、そもそも似てないのだ。ただ、ただデカイだけ。

1954年の『ゴジラ』以来の熱烈ゴジラファンとしてはこんな『GODZILLA』は許せない。

前作、1998年のアメリカ版『GODZILLA』、あの巨大トカゲみたいなゴジラもひどかった。

今回のはいいと評判だったから早速、見に行った。

どこがいいんだ!

しかもチケット売場に行ったら、3D吹き替え版。よほどやめようと思ったが、時間がもったいないので見ることにした。

吹き替え版と知った時点で、もう2割くらい減点気分。

こんな『GODZILLA』を、朝日新聞であるイラストレーターが〈怪獣映画らしい怪獣映画で非常に楽しめた〉と評していたが、怪獣映画を見たことあるのか。

『GODZILLA』のどこがいけないのか。5つある。

1、ゴジラの姿形。これはただデカイばかりで。ゴジラの肉質感や、皮膚感が全く出ていない。つまり細部に気配りが足りない。

日本のゴジラをそっくり真似すりゃいいのだ。前作もそうだが、なぜそうしないかがわからない。

2、 敵役ムートーという怪獣に全く魅力がない。妙に手ばかり長く、下半身はまるで人間みたい。

かつての日本版ゴジラシリーズには魅力的な敵が次々に登場した。モスラ、ラドン、キングギドラ……。なかでもぼくがいちばん好きなのは第2作『ゴジラの逆襲』に登場したアンギラスだ。キャッチフレーズは「暴龍」。

1億5千年前に生息していたアンキロサウルスという恐竜が水爆実験で蘇ったもので、脳が体中に分散しているという設定で、動きが敏捷。

ゴジラと大阪城の天守閣でがっしと組み合うシーンは怪獣映画名場面の一、二を争う。

その後、不遇だったが、2004年の『ゴジラファイナルウォーズ』には久しぶりに登場していて嬉しかった。

3、群衆シーンがお粗末。怪獣映画の見所のひとつは、建物の破壊と群衆が逃げまどうシーンだ。破壊はま、合格点として(いろいろ注文もあるが)、群衆シーン、何も印象に残らない。

4、俳優が二流。というと渡辺謙さんには悪いが、渡辺さんとジュリエット・ビノシュ以外の俳優、女優がおソマツ。しかも主人公の母役のジュリエット・ビノシュ、原子炉の事故で、あっという間に死んでしまう。

5、脚本のつまらなさ。『ゴジラ』第1作にならってか原発問題や核兵器を取り上げているのだが、冒頭、原発が崩壊するシーンはまるで、アメリカのニュース映画で見る、ビル破壊シーンを見るよう。

放射能汚染の立入禁止区域にいとも簡単に侵入できるのも不自然。

何より、この監督、原発とか核について余り知識がないのではないか。

最後、激突シーンで雄と雌のムートーが核弾頭を口移しにするシーンなんか笑ってしまった。

本当は吹き替え版でないのをもう一度、見るつもりだったのだが、見る気がなくなった。

それに3Dと言って料金を500円も上げながら、3Dらしい3Dシーンは一度もないじゃないか。

とにかくこの『GODZILLA』には失望した。

花田紀凱

『WiLL』編集長、元『週刊文春』編集長

1942年東京生まれ。66年東京外国語大学英米科卒、文藝春秋入社。88年『週刊文春』編集長に就任。6年間の在任中、数々のスクープをものし、部数を51万部から76万部に伸ばして総合週刊誌のトップに。94年『マルコポーロ』編集長に就任。低迷していた同誌部数を5倍に伸ばしたが、95年「ナチガス室はなかった」の記事が問題となり辞任、1年後に退社。以後『uno!』『メンズウォーカー』『編集会議』などの編集長を歴任。2004年11月より『WiLL』編集長。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。産経新聞コラム「週刊誌ウォッチング」、夕刊フジコラム「天下の暴論」はファンも多い。好きなものは猫とコスモス。

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