僕は、お風呂が嫌いだ。
熱いし、面倒くさいから。
特に面倒くさいのは、身体を洗うという作業だ。
そもそも、人間の身体は石鹸やスポンジに洗われるために作られているわけではないので、そんなことをする意味が分からない。意味が分からないから、余計に面倒くさい。そんな面倒くさいことをしないといけないことになっているから、お風呂が嫌いだ。
だからこの3年くらい僕は、お風呂で身体を洗った覚えがない。
というよりこの3年くらい僕は、お風呂に入った覚えがない。
フランス人の彼女と同棲を始めてからは、たいていシャワーで済ませてしまうようになったからだ。
それまで僕は、浴槽に浸かって10まで数えるというような入浴業務を律儀にこなしていた。風呂なしトイレ共同の家に住んでいたときは、近所の銭湯に行ったりもしていた。今から考えると本当にバカらしいのだけれど、これは日本で生まれ育ったせいで身に付いた習慣のせいだ。
彼女の生まれ育ったフランスでは、バスタブこそあるものの、そこに湯をためて浸かるということはあまりしないらしい。だから彼女は基本的にシャワーで全てを済ませる。僕もそれにならって、シャワーだけで済ませるようになったのだ。シャワーなら、熱いお湯に浸かって10まで数えなくても良いというのは大発見だった。
とはいえ、「身体を洗う」という作業はなくならない。シャワーだけの彼女も、身体を洗うという日常業務には真剣なようだった。僕は面倒くさがりなので、身体を洗わずに浴室を出ようとする。でも、そうすると、いつも彼女に怒られた。
「洗わないと汚いよ」
「面倒くさいし、そんなに汚くないから、洗わなくてもいいんだ」
いくら言い張っても、聞いてくれない。いつからか、彼女が僕の身体を洗ってくれるようになった。シャンプーも同じだ。
そういうわけで僕はいま、シャンプーもしないし身体を洗うこともしない。ただ彼女の肩や腰につかまっていれば、良い感じに洗ってくれるからだ。
彼女にしてもらうシャンプーは、とても気持ちが良い。僕は、好きな事を考えながら、ぼーっとしている。そうしていると、いつのまにかシャンプーが終わっている。だから、シャンプーをしてもらったかどうかの記憶すらしていないことも多い。
「ねえ、今日はシャンプーしてもらったっけ?」
「3分前にしたよ!もう忘れたの?」
そういうこともあるし、逆もある。
「ねえ、今日はシャンプーしてもらったっけ?」
「まだだよ。頭が悪すぎるんじゃない?」
「じゃあ、早く良い頭にしてよ」
「もう。…してほしいの?」
「うん、お願い」
「仕方ないなー」
「やったー」
忘れるくらい気持ち良いというのは、よくあることだと思うのだけれど、どうなんだろう?
ともかく、僕は記憶力と生活力がとてもとても低い人間なので、すごくありがたい。
ただ、シャンプーをしてもらうのは気持ち良いんだけれど、身体を洗ってもらうのは、けっこう面倒くさい。
特に、僕は極度のくすぐったがりなので、足の裏なんかを洗われると必ずキャッキャ言ってしまう。彼女は極度の面白がりなので、いつも足の裏なんかをそろーりそろーりと洗いながら、僕の反応を楽しんでいる。
「やめてー、もうやめてー、お願い!」
そう笑い叫ぶ僕の声は、いつも聞き入れてもらえない。
「ダメだよ、洗わないといけないからね!」
彼女は叱りつけるように言いながら、色んな場所を攻撃してくる。
これには本当に困っている。
そういうわけで僕は、お風呂に入りたくありません。
余談
この記事は、イチャラブエピソードの書き方が分からないという奇特な方のために書きました。
→ 我が家のイチャラブエピソード~排卵日篇~ - 斗比主閲子の姑日記
「愛」や「SEX」といった単語を使えばイチャラブエピソードになると思われているのでしたら、大いに反省してもらいたいものです!
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