ガザ戦闘:イスラエル批判が反ユダヤ主義に 西欧に兆候
毎日新聞 2014年08月04日 21時28分(最終更新 08月05日 00時16分)
パレスチナ自治区ガザ地区を巡るイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘激化に伴い、西欧諸国で反ユダヤ主義台頭の兆候が表れている。ガザの民間人に多大な犠牲が出ていることを受け、イスラエルの軍事作戦に対する抗議行動が、一部でユダヤ人への憎悪につながっているためだ。ナチス・ドイツにホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を許した第二次世界大戦の終結から70年近くを経て、新たな反ユダヤ主義の高まりに欧州指導者たちは頭を悩ませている。【ベルリン篠田航一、パリ宮川裕章、ロンドン小倉孝保】
反ユダヤ主義に最も神経をとがらせてきたドイツでも7月以降、「ひきょうなユダヤの豚」「ユダヤ人をガス室に送れ」などと叫ぶ抗議デモがベルリンなどで頻発。西部ブッパータールでは7月29日、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生。捜査当局はシリア系の青年ら2人を逮捕した。また、イスラム団体の指導者がユダヤ人殺害を呼び掛けたとして、刑事告発される騒ぎもあった。
ドイツでは第二次大戦でナチスがホロコーストを引き起こした反省から、特定の民族の中傷やナチスの賛美は民衆扇動罪の対象となる。昨年10月には東部クラウシュビッツの元首長がインターネット上で「ホロコーストを否定するのも人権のうちだ」と表明し、裁判所から罰金3000ユーロ(約41万円)を言い渡されるケースもあった。
フランスでもユダヤ批判は法律の規制対象。7月13日にパリで行われた数千人規模の反イスラエル・デモでは、一部グループがシナゴーグに押し入ろうとしてイスラエル支持者と衝突した。20日にはパリ郊外のユダヤ系住民の多い地区で、若者が「くたばれイスラエル」と叫びながら店舗を襲い、ゴミ箱に放火。23日にもパリのユダヤ人街で、反ユダヤ的な言葉を叫んでレストランに侵入した16人が警察に逮捕された。