隣国の領土の一部を武力で併合し、その後も軍事介入をやめない。ロシアの振…
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隣国の領土の一部を武力で併合し、その後も軍事介入をやめない。ロシアの振る舞いに国際社会は手を焼いている。
そんな折に、フランスが最新鋭の軍艦をロシアに輸出しようとしている。欧米はじめ多くの国々が懸念するのは当然だ。
ロシアの軍事力を増強させるだけではない。フランスが主要な地位を占める欧州連合(EU)の立場も台無しになる。
国際ルールを守らないロシアを批判しながら、一方で新鋭の武器を渡す。そんな矛盾する姿勢では、正義と和平を説いてきたEUの主張も説得力を失う。
フランスは立ち止まり、この輸出を見直すのが賢明だ。
マレーシア航空機の撃墜事件後、欧米はロシアへの制裁を強めている。制裁は結束して進めてこそ効果がある。
この軍艦の問題も含め、今後ロシアとどうつきあうべきか。足並みをそろえるようEU内で十分話し合うべきだろう。
問題の軍艦は強襲揚陸艦で、ヘリコプター16機や上陸用船艇を搭載し、数百人の兵員を運べる。病院機能も備え、上陸作戦で司令塔の役割を担う。
3年前、約12億ユーロ(約1700億円)で2隻分契約された。フランス政府は、苦境にある自国の軍需産業の再建とともに、欧米とロシアの政治関係を深めようとしたともいわれる。
ところが懸念されたとおり、関係は進展せず、むしろ対決姿勢が強まった。ウクライナ紛争で決定的になり、英国やバルト3国はフランスを名指しで非難し、輸出撤回を求めている。
それでもフランスは1隻目を10月に引き渡す予定を変えていない。造船業界の雇用を守り、契約を貫いて兵器市場の信頼を得たいからだとみられる。
英国も、ロシアとの金融取引など自国の利益を守る関係は続けており、フランスが反発するのは必ずしも理不尽ではない。
だとしても、いまの国際情勢の混迷のなかで、EUが内輪もめに陥るようでは困る。
強硬姿勢を変えないロシアに対し、フランスが決然と契約を破棄すれば、強い政治メッセージとなろう。自国の経済より国際秩序を重んじる姿勢は、国際的にも評価されるはずだ。
EUの結束のためには、破棄によってフランスが被る損害を、場合によっては各国で支える道も考えねばなるまい。
この軍艦は、日本海に面したウラジオストクにも配備される可能性が高い。隣国ロシアとどんな関係を築いていくのか。欧州同様、日本にとっても重要で切迫した外交課題である。
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