クローズアップ現代「アジア労働者争奪戦」 2014.07.09

1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降るおそれがあります。
海外での仕事を求めるミャンマーの若者たち。
今、アジアで日本を巻き込んだ外国人労働者の激しい争奪戦が起きています。
労働力不足を補うため外国人の活用拡大を目指す日本。
しかし、そこには先行したアジアのライバルたちが待ち受けていました。
日本は韓国や台湾に比べ滞在できる期間が短く収入面のメリットも少ないとして敬遠され始めているのです。
さらにライバルたちは外国人労働者の母国語で相談に応じるなどきめ細かな支援を行い競争を優位に進めようとしています。
アジアで厳しさを増す労働者の争奪戦。
日本はどう向き合うべきなのか考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
高度な能力を持つ外国からの人材は受け入れるが海外からの単純作業を行う労働者は受け入れないというのが国の方針です。
この建て前を維持しながら人手不足を補い持続可能な経済成長を実現するための方策として打ち出されたのが外国人技能実習制度の見直しです。
実習期間を現在の3年から5年程度に延長することや受け入れ枠を拡大することなどが見直しの柱です。
発展途上国への技術移転を進め国際貢献の一貫として21年前に始まったこの外国人技能実習制度ですがその実態は単純労働の担い手の確保という声が多く聞かれます。
また8日、アメリカの政府高官はこの制度が強制労働に悪用されるケースが後を絶たないと批判し日本政府に改善を求めています。
単純作業を行う外国人労働者は受け入れないという建て前と実態とが、かい離しているなど多くの問題が指摘される技能実習制度。
この制度を使って海外で人材の確保を目指している日本ですが日本と同じように少子高齢化に直面し東南アジアの人材に活路を見いだそうとしているのが韓国や台湾です。
人材獲得競争が激化しています。
ご覧のように、韓国や台湾では外国人を労働者として正面から受け入れ滞在期間つまり収入を得る期間を日本の3倍から4倍にしたり積極的に労働環境の改善を進めています。
実習生の獲得で苦戦する日本の実態をベトナムとミャンマーで取材しました。
ベトナムの首都ハノイ。
この日、日本の建設会社など9社の人事担当者が技能実習生の試験を行うため現地の仲介業者を訪れました。
この仲介業者では日本に送る実習生を育成しています。
ベトナムの給与水準は中国のおよそ半分。
勤勉な国民性もあって日本に労働力を供給する新たな国として期待されています。
40度近い気温の中建設現場の足場の組み立てなど日本企業が求める実技の試験が行われました。
しかし、日本には強力なライバルが立ちはだかっています。
日本と同様、労働力不足に悩む台湾が先行しているのです。
台湾は最長で12年働ける制度を武器に去年、ベトナムから前の年と比べ1万6000人多い労働者を獲得しました。
日本企業に実習生を仲介する団体の代表金丸久雄さんです。
毎月のようにベトナムを訪れ実習生の受け入れを拡大しようとしています。
この日、金丸さんは台湾を中心に労働者を派遣している会社を訪れ協力を求めました。
しかし、相手側からは日本は滞在できる期間が3年と短く労働者にとって収入面のメリットが少ないと苦言を呈されました。
このベトナムの会社では去年台湾に2500人の労働者を送り出しましたが日本は、その10分の1にとどまっています。
ベトナムの労働者は日本に行かなくても台湾などで働くことができます。
日本の受け入れ制度が今のままだと日本企業にとっても得にならないと思います。
制度面での見劣りを指摘された金丸さん。
賃金を改善するなど企業が努力していくしかないと感じています。
われわれ日本側の企業にしてもそうですけどももう少し就業する環境条件というものはもう少し、よくしていく必要性というのはあるだろうなと。
アジアで厳しさを増す労働者の獲得競争。
日本企業が次なる獲得の場と捉えているのがアジア最後のフロンティアミャンマーです。
「デ・キ・マ・ス」。
おととし日本への実習生を育成する学校をヤンゴン市内に設立した渋谷修二さんです。
大学は終わったんですか?
日本語を基礎から教え日本の企業に送り出しています。
しかし、ここでも争奪戦が過熱しています。
渋谷さんの学校に入学した生徒の4割が途中で辞めその多くが出稼ぎ先を日本以外に切り替えているのです。
急速に存在感を強める韓国。
政府が前面に出てミャンマー人労働者の大量獲得に乗り出しています。
この日、韓国への出稼ぎの資格を得るための試験が大学を貸し切って行われました。
試験を実施したのは韓国政府。
過去最高の1万4000人が受験しました。
韓国政府は、こうした試験をミャンマーなどアジア15か国で実施しています。
合格者の情報は15万人分。
本国のデータベースで一括管理され外国人を雇いたい企業に直接紹介される仕組みになっています。
日本などでは外国人を雇う場合民間の仲介業者が間に入ります。
韓国の場合、政府が一括して人材を確保するため外国人にとっては仲介業者への高額な支払いは不要になり最低限の手数料で済みます。
その分、収入が増えることになるのです。
韓国は渡航費用が安く済み高い収入を得られるので今、人気になっています。
私たちは韓国の制度を高く評価しています。
日本向けのミャンマー人実習生を育成している渋谷さんです。
この日、1人でも多くの実習生を獲得しようと就職説明会に出向きましたが関心を示す人は多くありませんでした。
国を挙げて大量の人材獲得に当たる韓国などに対して民間の業者だけで対抗することに限界を感じ始めているといいます。
一昔前であったらやっぱり日本ファン日本への憧れそういったものっていうのは相当多く声、聞いてましたけどそういった人材のところまでもやっぱり日本だけではないよという時代になることは若干、寂しさ感じますね。
今夜は外国人労働者の問題にお詳しい首都大学東京教授の丹野清人さんにお越しいただきました。
争奪戦が非常に激しくなっている中で、苦戦を強いられている日本。
この苦戦の本質のところ、一番弱いところってどこにあるとお思いですか?
根本的には、とにかく今見たように韓国にしろ、台湾にしろ、どちらも労働者として受け入れている。
それに比べると、日本は、技能実習生、労働者になる前の人として受け入れてしまっている。
そこのところでの違いがいろんな面での日本の弱さっていうものを作り出しちゃってると思います。
労働者として受け入れるからこそ、韓国なんかだと二国間協定を結んで、ああやって国が前面に出て、人集めをやる。
そして国がやるからこそ、制度も当然、透明性は上がります。
それに比べると、日本は今見たようにエージェントさん、仲介業者さんが頑張ってはいるんですけど、やっぱり仲介業者さんが集めて、仲介業者さんがその人たちに教育をし、仲介業者さんが、それから日本側の仲介業者さんに渡すっていうような形で人を送る、そうするとやっぱり透明性はどうしても上がらないし、なおかつ業者さんからしても、やっぱり最初のイニシャルコストがかかってしまってますから、その分を集めた人たちに払ってもらわなきゃいけない。
その費用がどうしてもかかってしまって、その結果、イニシャルコストがかかって3年しかいられないということになってしまうから、日本の魅力っていうものは、下がらざるをえないと思います。
その初期にかかる費用というのは、日本に行く場合と、例えば韓国に行く場合と、どれぐらい違うものなんですか?
日本のイニシャルコストも結構差があるんですけれども、やっぱり100万円程度から場合によっては300万というような金額を聞くことだってあります。
それに比べると韓国はやっぱり3分の1から、場合によっては5分の1程度というように私は聞いております。
そうするとイニシャルコストは格段に違ってしまっていて、なんて言うんですか…。
3年でそれを払わないといけない。
それで、3年でそれを払わなきゃいけないから、来たあとも、それは残業もしなきゃいけないし、一生懸命働かなきゃいけない。
それは土日も削れるような形で働かないと、日本に来た場合だと、とてもじゃないけれども、もともと技能実習生って賃金が安い所に回っちゃってるっていう現状がありますから、長時間労働ということから抜けられないという構造になってしまう。
それから比べれば、イニシャルコストが低いからこそ、働く時間に対してもある程度余裕を持つこともできるだろうし、そして長く働けるということを通して、稼がなきゃいけないというものについても、ある程度余裕を持って稼ぐことができるというのでは、やっぱり魅力度っていう点では、もう全然違ってしまってるかなと思います。
国を挙げて人材を獲得しようとしている韓国の場合は、国に帰ると、15か国の人材の情報がデータベース化されて、そして企業とマッチングが行われていると。
この制度も徹底してますね。
そうですね。
あれは求人、人が欲しい会社からすると、私のところに外国人労働者欲しいんですと、政府のあの機関に申し出ますと、そうするとあの機関のほうから1人を紹介してくれるのではなくて、それこそ5人から10人程度の募集者を出してくれて、その中から選ぶっていうような仕組みになっています。
そうすると、企業から見ても、仲介業者さんから与えられた人を採用しているのではなくて、あくまでも自分が選んだ労働者を採用したということになりますから、当然ですね、企業も自分の責任というものを感じて、労働者を雇用するという形になっていきます。
やっぱりその点でも、労働者としてきちんと受け入れてるってことが、大きな違いになってるんだと思います。
強制労働の温床になっているんではないかと、日本の制度への批判は海外から強いですね。
このところは本当に難しいところがあって、韓国みたいに労働者として受け入れてるということになれば、韓国の場合ですと、それこそ未払い賃金があった経験があってはいけないし、雇用保険、失業保険、労災保険等々の保険等もきちんと払ってるところでしか雇用できないという仕組みが出来るのに対して、日本の場合だと、エージェントさんを通して渡されるということになってますから、そうすると必ずしも、そういった保険が完備しているかどうかっていうところまで徹底できない。
場合によってはそういうことを完備できないような、むしろ安い労働者としか使えないような所にしか、そういうところも排除できないで人が回っていくっていう部分があると、諸外国から見た場合には、低賃金労働、奴隷労働に近いものじゃないかっていうような疑念が生まれてきているのは、しかたがないことだと思います。
労働者の争奪戦が過熱している中で、受け入れ国側で重視されるようになっているのが、今、話にありました外国人労働者の権利をどう守るかです。
長時間労働を強いられたり、不当に安い賃金で働かされていないのか、この問題は日本のみならず、各国でも起きていることなんです。
台湾、韓国ではこうした課題にどう向き合おうとしているのか、ご覧いただきましょう。
ことし、単純労働を担う外国人が50万人を突破した台湾。
かつて外国人労働者を酷使する問題が相次いだことから企業への監視に力を入れています。
労働当局の査察チームです。
この日の査察先はベトナム人など130人の外国人を雇っている家電の製造工場です。
長時間労働を強いられていないか作業上の注意事項が母国語で説明されているか査察官は一つ一つチェックしていきます。
査察は住環境にも及びます。
1部屋当たりの人数や広さが基準を満たしているか。
トイレなども、くまなく見て回り劣悪な環境に置かれないよう指導しています。
給与明細についても理解できるよう労働者の母国語での説明を義務づけています。
われわれの仕事は外国人労働者の人権状況の改善に役立っています。
行政、企業ともに外国人労働者を積極的に受け入れようとしています。
それでも企業の監視だけでは問題は防ぎきれません。
過酷な労働を強いられた外国人を保護するための施設です。
取材に訪れたこの日も介護施設で働いていた3人のベトナム人女性が駆け込んでいました。
1年以上の間1日の休みも与えられず残業代も支払われなかったといいます。
外国人労働者のさらなる受け入れを目指す台湾。
当局が先頭に立って労働環境の改善を進めたいとしています。
行政が介入して外国人労働者の問題を解決に導くことが重要です。
企業への指導を徹底することが結果的に外国人労働者の獲得にもつながっていきます。
一方、かつて日本と同様の制度で外国人を受け入れていた韓国。
10年前に抜本的な制度改革を行い国の責任で外国人を正面から労働者として受け入れることにしました。
改革の一つの柱が転職制度です。
バングラデシュから韓国に来たサイムさんです。
1年前、家電の部品工場で働き始めました。
しかし、住居としてあてがわれたのは工場の敷地内にあったコンテナハウス。
残業代が支払われなかったり雇用主から、たびたび暴力を振るわれたりしたといいます。
このように力いっぱい蹴られました。
とても痛かったです。
いつも、どなり声で呼ばれました。
まるで犬扱いでした。
そんなサイムさんの支援に当たったのが政府が設置した相談窓口でした。
この窓口では、15か国の言語で相談に応じています。
サイムさんも母国語のベンガル語で窮状を訴えました。
その結果、政府の支援を受けて別の会社を紹介してもらい転職することができました。
住環境や給与も改善され今では毎月、日本円でおよそ10万円の仕送りが可能になりました。
私の将来の夢はバングラデシュに帰って自分の会社を立ち上げることです。
韓国では支援の仕組みがきちんとしているので問題を解決することができました。
外国人労働者の保護に取り組まなければ経済を支える労働力の確保は難しいと韓国政府は考えています。
外国人労働者を使い捨てにするべきではありません。
技術を身につけている労働者は社会の一員として受け入れるべきだと思います。
受け入れているところでも相当、徹底した取り組みを行わないと人権侵害は起きてしまうもんなんですね。
そうですね。
権利の弱い人たちですから、絶えず査察なりなんなりきちんと入って見ていかないといけません。
台湾の場合だったら、とにかく投資をして、投資をしたうえで地域の人の労働市場とバッティングしないっていうことを確認し、その上で外国人労働者を入れる。
要するに…。
つまり地域とどのようにすればあつれきを生まないかという仕組みを作っているんですか?
そうです、そうです。
韓国だって同じです。
求人を出して、地域で求人を出して、求人が集まらなかったときに外国人を入れることができる。
そしてどちらの場合もとにかく、払える、きちんとしたコストをきちんと払えるところに人が集まるっていう仕組みを作って、外国人を入れるっていうことを徹底することによって、とにかくそれまでいた人たちとの労働市場でのバッティングが起きないようにしています。
ただ、それであったとしても、外国人ですから、出てきたように、自分たちが分かる言語で、いろんな情報をきちんと伝えていくということがないと、それでも権利侵害ってものが避けることができないというのだと思います。
だからこそ、あれだけ査察に対しても積極的な活動をそれぞれ、台湾にしろ、韓国にしろ、徹底した査察と監督ということを国を挙げてやるっていう形になっているんだと思います。
日本ですと、どちらかというと、安い労働者というイメージがありますけれども、そういう位置づけでは必ずしもないわけですね。
そうですね。
やっぱり安い労働者を入れるというのではなくって、根本的には仕事はあるんだけれども、そして労働者に対して、賃金は払えるんだけれども、人が集まらないところに人を入れるって。
あくまでもそのための外国人労働者だっていう形で集めるということが重要なんだと思います。
日本の抱えています技能実習制度というのは、今、どういう局面にあると思われますか?
そうですね。
そろそろ真剣に皆さん、考えていかないといけないと思うんですけれども、やっぱりそれは、一番最初の原点に立ち戻って、やっぱり彼らは労働者であって、あくまで2014/07/09(水) 19:32〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「アジア労働者争奪戦」[字]

いま、アジアで外国人労働者の激しい争奪戦が繰り広げられている。外国人技能実習制度の緩和に踏み切る日本も、人材確保に乗り出しているが苦戦を強いられている。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】首都大学東京教授…丹野清人,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】首都大学東京教授…丹野清人,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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