大阪・西成に50年にわたって子どもたちの放課後を見守ってきた児童施設があります。
思い切り自由に伸びやかに心と体をぶつけ合いながら成長してきました。
通ってくる子どもたちはさまざまな悩みや困難を抱えています。
施設長の麻美さんは一人一人の心に寄り添い全力で支えてきました。
何でやねん!?できるってあんたは!できる子や!久しぶりにわ〜っ泣いて。
できる子やって。
3年前麻美さんは新たな施設を立ち上げました。
集うのは元ホームレスや精神疾患のある人たち。
社会で行き場を失った大人たちの再出発の場所です。
自立への挑戦は困難の連続。
メンバー同士の軋轢と葛藤。
運営を支えていた補助金の大幅カット。
センターは存続の危機に直面しました。
それでも決して諦めず力を合わせセンターを守り抜こうとしています。
よっしゃ〜!ありがとうございます。
子どもから大人まで自分たちの居場所を築くために。
制度のはざまで奔走する麻美さんと仲間たちの日々です。
12345678910。
7億。
午後3時。
学校が終わった子どもたちがやって来ました。
お帰り〜!ただいま。
子どもたちにとってセンターはもう一つの家です。
小学生から高校生まで利用料は原則無料。
運営費の大半は大阪市の補助金によって賄われてきました。
この地域で暮らす子どもならどんな子どもでも分け隔てはありません。
その日何をするのか決めるのは子どもたち自身です。
何事もみんなで話し合う事を大切にしています。
この日は座布団を使った陣取りゲーム。
年の離れた子どもたちが一緒になって遊びます。
板の間に足が着いたら負けです。
離れたらあかん!足くっつけ!コアラなれコアラなれ!コアラコアラコアラ!
(笑い声)ひときわ大きな声で笑い声援を送る施設長の麻美さん。
現在59歳。
子どもたちと遊ぶ時はいつも全力投球です。
大学卒業後アメリカに留学して福祉を学んだ麻美さんがこどもセンターの施設長になったのは今から30年前の事です。
若い頃から夢みた福祉の現場。
そこで直面したのは厳しい現実でした。
貧困いじめ不登校。
通ってくる子どもたちの多くがさまざまな問題を抱えていたのです。
この春中学校を卒業した…学校になじめず3年生になってから不登校になり一日の大半をセンターで過ごしてきました。
レオンくんは小さい時に両親と離れ祖母に育てられました。
大勢の人たちの中でどう振る舞っていいのか悩んできたレオンくん。
センターに通い始めてから人とのつきあい方を学んでいったといいます。
レオンくんは苦手だった学校にも自ら向き合うようになりました。
週1回こどもセンターが主催する勉強会に欠かさず出席。
努力が実り今年地元の定時制高校に合格しました。
今高校には毎日通い成績もクラストップです。
内に秘めたやる気を引き出せば自ら壁を乗り越えていける。
子どもたちの成長する力を麻美さんは信じています。
こどもセンターがある…高速道路やビルに囲まれた一角に昔ながらの町並みが広がっています。
西成区は生活保護の受給率が日本一。
子どもたちのすぐそばに厳しい現実があります。
麻美さんは貧困の実態を子どもたちに直視してもらおうと独自のカリキュラムを工夫してきました。
路上で寝泊まりしている人たちに声をかけて回るこども夜回り。
子どもたちが自ら握った出来たてのお握りを渡します。
困難に直面している人に優しい心で接してほしい。
そうした願いが込められています。
(麻美)今握ってきたし。
じゃあね!ありがとう!夜回りで出会う大人たち。
誰もが心の支えや居場所を必要としていました。
3年前麻美さんはこどもセンターの裏にある建物で新たな取り組みを始めました。
就労支援施設おとなセンターを立ち上げたのです。
メンバーの大半は路上生活の経験者。
精神疾患やさまざまな依存症を抱える人たちです。
安心できる場所で自立を目指してもらおうというのです。
次に続く人のためにもね。
おとなセンターでの主な活動はリサイクルショップの運営です。
商品のほとんどは地元の人からの寄付。
利益はメンバーに還元され自立のための資金になります。
しかし慣れない客商売。
現実は甘くありません。
道行く人に声をかけるのも一苦労。
一日の売り上げが1,000円に満たない事もあります。
メンバーたちの心と体の健康維持もセンターの課題です。
この日高熱を出していたのは知的障害のある…アルコール依存症を抱え肝臓に持病のあるコウさん。
麻美さんのアドバイスを聞こうとしません。
日雇いの仕事をしていたコウさんは不況のため職を失い路上で暮らしながら酒を飲み続ける毎日を送っていました。
身も心も疲れきったコウさんを見かねた麻美さん。
おとなセンターで立ち直ってもらいたいと考えました。
他人に頼る事なく一人で生きてきたコウさん。
麻美さんは全てを受け止め心を開いてくれる時を待ちました。
ちょっと笑顔が見えてきた。
さっき死んどったけど。
さっき死んどったやろ?死んどった。
今はちょっとましになった?ちょっと生き返った?それ散髪したから?じゃあね。
へこんでる場合ちゃうよ!えっ?へこんでる場合ちゃうよ!分かってるよ。
せっかく散髪して男前になってんねんからな!じゃあね!朝10時。
いつものリサイクルショップの開店時間です。
この日手際よく準備を取りしきっていたのは統合失調症のフジヤさん。
小さい時から激しいいじめに苦しめられ不登校になりました。
センターに来る前には刑事事件を起こしてしまった事もありました。
行く場所も少なくて。
自分での勝手な判断で…時々こどもセンターを訪れていたフジヤさん。
麻美さんとは顔見知りでした。
事件後の裁判で麻美さんは証言台に立ちフジヤさんを支え続けてくれました。
手紙の文章に関しては…一気に麻美さんからの手紙だったり…刑務所を出てからもフジヤさんは自分の居場所を見つけられずにいました。
仕事に就かずギャンブルに依存する毎日。
そんなフジヤさんを麻美さんはおとなセンターに誘いました。
今度こそ立ち直りたい。
しかし心のバランスを保てずリストカットや自殺未遂を繰り返しました。
そんな時も麻美さんはフジヤさんに寄り添い続けました。
いらっしゃいませ!いかがですか?率先してお客さんに声をかけるフジヤさん。
リサイクルショップで頼れる存在となっています。
すいません。
袋ちょっと大きめですけど。
ごめんなさい。
すいません。
またお願いします。
ありがとうございました。
おとなセンターのメンバーは皆さまざまな事情を抱えています。
それぞれのペースに合わせ自立への道を模索していますが時にはすれ違いが起きてしまう事もあります。
この日メンバーの一人が新入りのセキさんの体の臭いが気になると指摘しました。
ほかのメンバーはセキさんは自分なりに努力していると反論しました。
それは小さい声で私に言うてよ私が聞いとくわ。
そない怒らいでも。
気になってた。
いいよだから。
(麻美)分かってるよな?それは。
その日の夕方。
フジヤさんがセキさんを連れて麻美さんを訪ねてきました。
いつもセキくん下で冗談ばっか言うてるやんか。
あれがほんまのセキくんやと…。
でも出るのはたまにだけどね。
まあな。
だけどそれがセキくんやと思うで。
なあ?なあ。
セキさんに笑顔が戻りました。
みんな目線をそらして…。
麻美さんいつもよう言うやん。
そんな時もある。
おとなセンターでの取り組みが始まって3年。
時にぶつかり時に支え合いながら自立に向けて一歩ずつ進んでいます。
地域と地域以外の人らが…今年の3月。
麻美さんたちの取り組みに大きな転機が訪れました。
こどもセンターの運営を資金面で支えてきた大阪市の子どもの家事業が廃止される事になったのです。
事業廃止によって減る補助金の額は年間330万円。
このままではこれまでどおり原則無料で運営する事は困難です。
しかし麻美さんはあくまでも無料にこだわりたいと考えていました。
なぜ大阪市は事業廃止に踏み切ったのか。
背景にあったのは巨額の財政赤字でした。
市の決定はセンターを心のよりどころとしていた子どもたちに大きな衝撃を与えました。
子どもたちの居場所を守るために。
麻美さんとセンターの仲間たちは立ち上がりました。
この新聞や段ボールは子どもたちの保護者や近所の人たちがコツコツと集めてくれたものです。
よっしゃ〜!ありがとうございます。
到着したのは大阪市内の廃品回収業者。
新聞や段ボールを売る事でセンターの活動資金を補っていこうというのです。
はいありがとう。
ありがとう。
(麻美)2,310円でした。
(取材者)よかったですね。
ありがとうございます。
子どもたちも自ら立ち上がりました。
地元の商店街でバザーを開き売り上げをこどもセンターの運営費に充てようと考えたのです。
おとなセンターのメンバーたちも応援に駆けつけました。
1万3,800円でした今日の売り上げ。
(取材者)どうですか?まあまあです。
1万円を超えるとまあまあかなとは思います。
おかげさまでありがとうございます。
5月。
子どもの家事業が廃止されてからもセンターにはこれまでどおりの光景がありました。
努力を重ね利用料はなんとか無料のまま通せています。
どんなにつらい事があっても安心して帰る事ができる居場所。
それを守り抜いたのはセンターに集う子どもそして大人たちの力でした。
・「おはようとおひさまにこえかける」誰かの支えがあれば人は笑顔を取り戻し人生をやり直す事もできる。
制度のはざまで奮闘する麻美さんと仲間たちです。
・「それすすめさんおうのこどもたち」・「おいかけろつかまえろデッカイゆめを」
(麻美)もう一回。
・「デッカイゆめを」
(麻美)もう一回〜!・「デッカイゆめを」2014/07/22(火) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「大阪・西成 制度のはざまで〜こどもセンター・おとなセンター」[字]
4月特集「子どもクライシス」で反響を呼んだ大阪・西成の「山王子どもセンター」。その隣に「山王おとなセンター」がある。共に歩み支援を続ける現場の奮闘を追う。
詳細情報
番組内容
大阪・西成で50年間、貧困・いじめ・不登校に悩む子どもたちの成長を支えてきた「山王こどもセンター」。4月シリーズ「子どもクライシス」の放送後、反響を呼んだこのセンターの隣に、実はもう一つの施設がある。「山王おとなセンター」だ。様々な障害や、アルコール・ギャンブル依存などを抱え制度のはざまに落ち込んだ大人たちが自立を目指している。彼らの日常を追い、子どももおとなも支え合う支援のあるべき姿を考える。
出演者
【出演】山王こどもセンター施設長…前島麻美,【語り】河野多紀
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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サンプリングレート : 48kHz
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