オイコノミア「“子どもを持つ”ってどういうこと?(前編)家族の経済学」 2014.07.08

(テーマ音楽)ここは古い日本の建物を移築・保存している公園。
又吉さん好きな人ができたら連れてきたいと思っているそうです。
(又吉)これ木があるのもいいですよね!きれいなこれ。
いいですね!1人暮らしを始めたときによく来てここで生活するとしたらどんなふうになるかなとかモデルルームみたいな感じで見てましたね。
多分家族から離れて1人暮らしになって今後どうなっていくんやろみたいな…なったときにいずれ家族作ってみたいなことを想像してこうポジティブな気持ちになれる場所なんです。
漠然と思い描く将来の「家族」。
いいですよね畳ね。
畳落ち着きますよね。
この辺でねこう…こう座るわけですよ。
何年か前から徐々に結婚したいなぁとか思うようにはなってきましたね。
特に大阪に祖父母が住んでて沖縄にも祖母が住んでるんですけどやっぱりね「早く結婚しろ早く結婚しろ家族作れ」って絶対言うんですよね。
僕今33でいまだに僕の生活というのは安定はしてないんでプラン立てにくいというかね。
う〜ん。
子どもも欲しいなって思うけど何で欲しいのかってなると具体的に言葉では説明しにくいかもしれないですね。
少子化が進み生涯未婚率も上昇している日本。
「家族を持つ」「子どもを持つ」ってどういうことなのでしょう?そんな疑問に意外にも「経済学」が答えてくれます。
今回解説をしてくれるのは…。
(森口)又吉さん。
はい。
こんにちは。
ああこんにちは。
又吉です。
お願いします。
森口です。
よろしくお願いします。
先生よろしくお願いします。
先生っていうのは苦手なので「さん付け」でお願いします。
一橋大学教授森口千晶。
比較経済史家族の経済学を専門に研究しています。
森口さんよろしくお願いします。
又吉さんよろしくお願いします。
漠然とではあるんですけど「家族が欲しいな」「結婚したいな」とか思う気持ちが強くなってきたんですけどなぜ子どもを産まなければいけないのかとかを考え出すとなかなか言葉にしにくいなと思ってまして。
何か経済学でひもとけるのかなと思いまして。
伝統的な経済学では家族っていうのは出てこないんですね。
でも家族っていうのも企業みたいに大事な経済活動をしてるんだっていうことで「分析の焦点に据えましょう」って言いだしたのがゲーリー・ベッカーっていう経済学者なんですけど。
「家族の経済学」を提唱したノーベル賞受賞者ゲーリー・ベッカー。
2014年5月に他界した経済学界の風雲児ベッカーが「家族」をどのように考えたか見てみましょう。
家族でないと出来ない事というか作れない事とかってどういうのがあると思いますか?家族じゃないと作れないもの?じゃあ1,000年前ぐらい1人で生きていくのと家族で生きていくのでどうですか?恐らく…結構大変やったんやないかなと。
1人は大変なんですよね。
食べていくために一緒に例えば海に出て漁をするにしても農作物を収穫するにしても助け合いが必要やった。
生きていくために一緒に何人かで暮さないといけないっていう。
そうですね。
家族っていうのはお互い時間と自分の労働力がありますね。
それを持ち寄って生産活動を行うっていうふうに考えました。
みんながそれぞれ24時間持ってる中でその時間をどう使うかなんですが時間配分をするんだと考えました。
「家族の経済学」では時間を3つに分類します。
「所得を得るため外で労働する時間」。
「家事という家庭内の生産活動に使う時間」。
「消費や余暇を楽しむ時間」。
何かここに人形がありますけど。
これ又吉さんファミリー?そう僕の家も5人家族だったんで。
そうですか。
父母姉姉僕。
家族構成は一緒ですね。
どなたが外で働いてらっしゃいましたか?父親も母親も外で働いてました。
じゃあこの2人が外でそれぞれ働いてその大事な時間でお給料をもらって帰ってきたって事ですね。
またお買い物にも行って八百屋さんから野菜を買ってきた。
そしたらお母さんとお父さん調理をするっていう。
これは家庭内の労働時間。
お給料は出ないんですけどとても大事な活働でそれがホントに家庭の中で行われている。
それによって「出来ましたよ」っていうのをここから家族で消費活動ですね。
みんなで食べましょう。
はい。
やっぱり一緒に食べることで余計おいしいみたいな。
そうですね。
楽しいというのもあるかもしれないですね。
家族で一緒に過ごすことによって。
又吉さんのおうちではどんなふうでしたか?ほとんど母親が御飯とかを作って母親が夜勤の時は父親が。
うん。
2人とも居ない時は姉が。
それが本当に家族の中で誰かが忙しい時は他の人が。
そうですね。
労働を担当するっていうふうに。
それからどういうふうに?今は芸人3人で住んでるんですけど。
それは洗濯係みたいな。
洗濯係って言ったら失礼なんですけど。
後輩で1人洗濯を専門にやってくれる。
洗濯専門ですか?一応家賃の…僕が一番払ってて二番目に払ってて三番目に払ってる。
やっぱり一番家賃払ってないその後輩が。
家庭内労働で。
じゃ住んでる所は一緒で家事は少々分担するけどあとは独立してるっていう感じですか?そうですね。
はい。
やっぱり家族の経済学の考え方ではその時々に応じて又吉さんっていう個人が自分の一番満足とかを最大になるようにしてたと考えるんですけど。
必要な形で生活してるというのはすごく当てはまってると思いますね。
そうですね。
まとめてみたんですけども第一に家事の労働というのは結構大変な事なんですね。
それを単独でやってるんじゃなくてその時間を持ち寄って得意な人が得意な分野を分担する事による分業のメリットがあると考えられます。
それから規模の経済性なんですが大体家ですよね。
家を1軒買うなんていうのは1人では普通買わなくて5人6人っていう家族が住むときに1軒買うと。
それをみんなでそこに住むという。
より少ない1人当たりの支出で大きな満足を得られるというのが規模の経済性です。
更に家族を持つメリットには…何をするにも一緒に過ごすこと自体が楽しいという面。
いざというときに助け合うという面があります。
家族で本当に作るものというので子どもっていうのがありますね。
特に養育していくことというのは家族ならではのとても重要な生産活動というか再生産活動というので。
大体この5つのメリットがあるというふうに考えられます。
今3人で暮らしてらっしゃって家族じゃないと思うんですけど共同生活ですかね。
そうですね。
どうですか?規模の経済性も家賃。
全員が1人暮らしをしてた時よりも家賃を払う額は少なくなってるんですよ。
だいぶ。
はいはい。
相互保険。
それぞれ仕事はしてるんですけど1人アカンくなっても誰かがイケてたら最悪の事態は免れるんじゃないか。
助け合って生きていけるんじゃないかっていう。
運命共同体みたいですね。
そうですね。
自分の大阪の家族の将来も考えますけど。
一緒に住んでる2人の将来も。
こいつはこうなるんじゃないかな。
こいつはこうなるんじゃないかなみたいな。
3人分考えるというか。
家族にわりと近いんじゃないかなと思うんですけど。
そうですね。
家族を持つメリットって昔から家族ってある…存在する制度なんですけど。
すごい古い制度なんですけど。
多分現代になるにしたがって減ってきてはいると思うんですよね。
家庭内で生産した多くの事がだんだん生産しなくても買えるようになってきましたよね。
はいはい。
1人暮らししやすい環境になってますよね。
ええ。
食事の用意掃除洗濯育児などはかつては家庭内でしか出来ないものでした。
19世紀のアメリカでは家事は重労働で家族の構成員は時間の大半を家事に費やしました。
しかし1910年ごろ洗濯機が誕生。
次第に主婦は過酷な洗濯から解放され家事にかける時間が劇的に短縮。
その後数々の家電製品が発明され人々の家庭内時間配分は大きく変化しました。
昔から比べたら家庭内でしか生産できない財とかサービスってものすごく減ってると思います。
はいはい。
じゃあホントに「家庭内でしか出来ない事って何?」って考えたくなるんですが。
やっぱり子どもというのは大きいんですが。
家庭で本当にそういう子どもを作る。
そういう意味でそこは本当に大事な役割があって多分何にも代えがたいっていうところがありますね。
あともうひとつ思ったんですけど個人個人の健康管理ですかね。
生活のリズムとか睡眠とか食事とかそういうことを基本的に家族が健康っていうものを作ってて。
社会がその人たちの労働を得ているので。
家族の貢献っていうのはすごく今でも大きいとは思うんですね。
なるほど。
ええ。
家族って一つだと又吉さん思われますか?家族一つ?一つ。
どういうことですか?経済学では「家族は一つだ」と仮定してったんですね初めは。
でもこのごろ「いや家族は集団だろう」ってそういうふうに思った方がデータと合うというふうな結果が増えてきたのでそういう見方になってきたんですけど。
例えばね普通子どもにお見合い結婚させる相手と子どもが恋愛して「この人と結婚する」と連れてきた相手って違いますよね。
違いますね。
でも家族が一致団結してみんなの幸せを最大化してたら同じになるはずなんですよね。
あ〜!はいはい。
意思が一つになるって事ですかね。
一つだとしたら。
はい。
不一致なことが起こらないんじゃないかと。
発展途上国でなんとかして子どもの健康状態とか子どもに学校に行ってほしいからいろんな…。
政府が援助しようとしてるんです。
そのお金を誰に渡したらいいかという問題があるんですけど。
誰に渡したら一番子どものためになると思われますか?家族の中の。
う〜ん。
イメージだと母親ですかね。
そうなんですよね。
お母さんに渡す方がいいんじゃないかっていういろんな研究が出てきてるんですね。
その中でも一番有名な研究があります。
1991年南アフリカ共和国で年金制度が改革され黒人へも給付が始まったときの研究データです。
女性が年金を受け取った場合と男性が受け取った場合同居している孫の発育に大きな差がありました。
これ大事なのは赤と青の線を比較してるっていうところです。
年金をもらう前っていうのは女性と同居してる孫の発育の度合いの方が低かったんですね。
でも年金をもらい始めてその後に生まれてきた子どもというのがだんだんだんだんおばあさんが年金をもらってる家庭の孫の発育がこの青い線と逆転しちゃってずっとよくなったっていう。
こういう結果があるんですね。
どうも女性にお金を渡すと子どもに食べ物とか健康とかそういうところに確実に使われてる。
これはでもすごい思い当たる節があるというか。
僕も小学生の頃お年玉もらうじゃないですか。
はい。
それを父に預けるか母に預けるか。
母に預けたやつはちゃんと貯金してくれてんやろうな。
「もう去年と今年でお年玉貯金したのがいくらになってるよ」って報告も母はしてくれますし。
まあ父親に預けたあとは大体父親が新しい靴を履いてたりとかなんか酒量が増したりとかそういうので結構。
消費に回ってる。
消費に回ってる。
本人の。
はい。
明らかに。
明らかに。
だから結局家族が一つじゃないというのはどういう事かというと家族っていうのは複数の構成員で成り立ってますよね。
これおばあさんですけど。
おばあさんにお金を渡した場合や子ども手当をイギリスでは母親に渡すみたいなんですが渡す時とかはその女性の交渉の権利が強まって女性はもっと子どもの方に使うっていうその意見が通るっていう。
だからやっぱり家族が一つなんじゃなくてそれぞれは自分はこれを本当はしたいってことがあってでもその…こういうふうに交渉した結果がどうも最終的に消費の活動とか教育とかいろんな選択に出てきてるんだなっていうのが分かってきたっていうところですいつかは子どもを持ちたいとか思う時もあるんですけど。
子どもを持つという事に関しても経済学は助けになるんですかね?ベッカーが子どもを持つかどうかっていうのも通常思うような生物学的な行為の結果っていうよりは個人が合理的に選択してるって考えるんですね。
そもそも子どもと大人の違いって何だと思われますか?自分では生きていけないのが子ども。
ああそうですよね。
子どもっていう概念とか子ども時代というのは結構新しいもんなんですよね。
う〜ん。
そうなんですか。
ええ。
子どもっていうよりは何か不完全な大人。
一人前にまだならない大人未満のものと見てたんですけど。
子どもとして大切に保護して育てようっていうのはそんなに無かったって言われてますね。
そうなんですか。
そうなんです。
へぇ〜!フランスの歴史家フィリップ・アリエスは著書の中でこう述べています。
中世の都市では大人とコミュニケーションができる7〜8歳頃になると徒弟として修業に出されました。
そして飲酒も恋愛も本人の自由に任されました。
その一方働けるようになるまではまるで動物と同じような扱いでした。
当時は生まれてくる子どもの3/3が1歳未満で死亡。
20歳まで生き延びるのは半分以下というほど乳幼児の死亡率が高かったのです。
「子どもは『教育』して大切に育てるべきである」と考えられるようになったのは19世紀からのことです。
乳幼児の死亡率が下がり近代的な学校制度が生まれ子どもとして保護される期間も延長されていったのです。
子どもは以前は経済的に価値があったわけですね。
労働価値が。
だけど子ども時代が長くなって投資をしてる期間が長くなってくると子どもの経済価値って負なんですよね。
何も生産しないけど受け取る一方になってきて。
アメリカで面白い例があるんですけど。
事故とかで鉄道とかの事故とかで子どもが死んじゃったときに1850年ぐらいっていうのは8歳の男の子とか10歳の男の子はそれなりに家計に貢献してたので「2000ドル賠償金を払いなさい」みたいな判決が出るんですね。
はい。
それが1900年ぐらいになってくるとアメリカでも児童の労働は禁止っていう法律ができてきて裁判所がちゃんと計算するんですね。
経済的価値で賠償金を。
「6セントです」みたいな判決が出て社会的にそれはないでしょうと言って結構大騒ぎになったという。
へぇ〜!その後に1950年とかに時代が下って労働価値で賠償金を請求しようと思うと無いですから親がその子どもにそれまで投資してきた教育とかの投資のコストをむしろ賠償金として払うべきだっていう判決で何千ドルっていうのが出てきたりしてますね。
もっと最近の1980年代とかの判例だと子どもを失った親の心理的な苦痛の分も計算に入れて何万ドルっていう賠償金を出すべきだっていうそういう判例も出てきたり。
なるほど。
今は子どもには投資以上の価値があると見られてるって事ですかね。
そうですね。
経済学で「子どもは投資財か消費財か?」っていう考え方があるんですね。
子どもには経済学的に見た場合「投資財」と「消費財」という側面があります。
投資財とは「家事の手伝い」。
「老後の金銭的な援助や介護」「家業の跡継ぎ」など実利的な貢献を期待するということ。
消費財とは将来の見返りではなく「子どもの存在自体が親にとって喜びである」ということ。
子どもがいることで生活が楽しく明るくなり親自身の満足が増大することです。
それともうひとつもっとホントに基本的に私が考える子どもの幸せそのものが私の幸せみたいな。
そういうふうに考えるのは経済学では利他心っていうふうに。
子どもの幸せそのものが自分の幸せにもう直結してる。
そういうふうに考えるというモデルもあります。
なるほど。
消費財だなって子どもを思うとでも他にもいい消費財いっぱいあるしってやっぱり思いますよね。
何か子どもが居なかったら世界旅行できるとか。
何かもっと大きな家に住めるとか。
子どもを持たないのもありかなっていう。
そういうふうになるかなっていう。
だからこれも家族の多様化ですね。
自分で選べる時代になってきたということですよね。
でもなぜか子どもを家族作らななっと思うということは何かあるんでしょうね僕の中に。
ううん。
はい。
自分が子どもやった経験あるんですがだから自分が親になった想像も多分目線置き換えたらできるんですけど。
子ども持った事ないのに絶望的に何かで失敗したあととか「もう無理やな」と思ったときに「あとは頼むぞ!」って生まれてへん子どものことを想像したりする瞬間あるんですよ。
それって多分先祖から脈々と受け継がれてきた何かそういうものなんちゃうかなと思うんですけどね。
いろんな捉え方が家族も子どももできるっていうことですよね。
そうですね。
次回もよろしくお願いします。
ありがとうございました。
「一瞬の沈黙のあと全員で笑う家族」。
2014/07/08(火) 00:00〜00:25
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「“子どもを持つ”ってどういうこと?(前編)家族の経済学」[字][再]

結婚願望が強まる又吉さん。実は家族や子供も経済学の分析対象だ。家族がそれぞれ何に時間を割いているのか変遷を探ると、ここ1世紀、劇的な変化が生じているのが分かる。

詳細情報
番組内容
今年5月になくなったノーベル経済学賞受賞のゲーリー・ベッカーは「家族の経済学」を提唱、家族を一つの企業体にみなし、誰が何に時間を使い、何を生産したのかを分析した。食事や洗濯などの家事が、家電の進化によって時間短縮し家庭の生産活動が激変したこと、子供は労働力という捉え方が、教育を受けさせ将来の介護などを期待する「投資財」に変化したなど、意外な視点から、家族の変遷が浮かび上がってくる。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】一橋大学教授…森口千晶,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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