先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)・選 既得権を打ち破れ「織田信長」 2014.07.21

ある町にちょっと風変わりな居酒屋がございます。
その名も「知恵泉」。
皆さんこんな事ありませんか?新規事業の立ち上げや新商品の開発。
新しく何かをしようとする時避けて通れないのが「既得権」です。
既に社会に浸透している古い仕組みやルールをどうすれば変えられるのでしょうか?今月は既得権の壁に挑み時代を動かした先人たちに既得権打破のヒントを学びます。
第1回は戦国の覇者織田信長です。
戦国時代信長の前に立ちはだかったのは広大な領地から収入を得ていた守護大名や寺社。
強大な経済力と軍事力を誇る大既得権者でした。
そこで信長が目をつけたのは…彼らを味方につける事でばく大な富を集めた信長は天下統一の道を歩み始めます。
それは武力一辺倒ではない信長の知恵でした。
今回信長の知恵を一緒に読み解いて頂くのは大手旅行会社の創業者澤田秀雄さんです。
国内でいち早く格安航空券を導入。
運賃を引き下げた航空会社を興し新規参入を果たすなど新たなチャレンジを繰り返してきました。
更に長年赤字に陥っていた長崎のテーマパークを僅か半年で黒字化。
企業再生の手腕も高く評価されています。
今夜の「知恵泉」は戦国の革命児と旅行業界の革命家が競演します。
澤田さんそしてはなさんようこそいらっしゃいました。
(はな)御無沙汰しております。
御無沙汰しております。
来て頂いてうれしいですけども今月またいいテーマをご用意しましたよ。
こちら「既得権を打ち破れ」なんですよね。
澤田さんは旅行業界で既得権と闘ってきたというイメージが勝手にあるんですがその既得権益者強大な力を持って立ち向かった信長についてはどんなイメージがありますか?やっぱりすごいというか当時命を懸けてチャレンジするというかその権益にぶつかっていくわけですからその実行力というんですかねすごいなと思いますね。
はなさんは戦国時代に既得権益…どういうイメージでしょう?いきなり難しい質問が来ましたが既得権なんて口にしたのも初めてなんですけれども。
戦国時代に誰がこの既得権を持ってたかっていうのは全然分かりませんね。
今日はいろいろと勉強させて頂きたいと思います。
私もね「既得権」なんて言うのはなかなか言いづらいぐらいの感じなんですけれど。
ちょっと不安もあるので助っ人を今回お呼びしてるんですよね。
もうそろそろ流れ上は来るはずになってるんです。
来ましたよ。
(安部)どうもこんばんは。
いらっしゃいませこんばんは。
すみません遅くなって。
道路が混んでたもので。
いいですね安部先生。
直木賞作家の安部龍太郎さんです。
信長を題材にした歴史小説を多数執筆する安部龍太郎さん。
戦国時代に精通する信長のエキスパートです。
先ほどねはなさんも戦国時代の既得権分からないという話があったんですよ。
これどういうものだったんですかね?
(安部)これは室町時代にですねいわば守護大名と寺社とそれから朝廷というこの3つの勢力が三位一体でですね収益を独占してたりしたというような事がありまして。
寺社というのは経済的にも強大な力があったんですかね?
(安部)そうですねものすごい力がありましたよ。
大手の寺社は京都市中に土倉と酒蔵を経営してまして土倉は質屋さんですが今の銀行の前身ですね。
何か高利貸しのような事もやってたという…。
室町時代に日銭屋っていうのがありましてね毎日の「日」に「銭」っていう。
これはまさに今のサラリーローンみたいな感じで一日を過ごすお金を小口に貸してる。
利子とかがつくんですか?もちろん。
高い利子がつきます。
なんという!そこの人を追い出して。
取っちゃうんですか?
(安部)取っちゃうんです。
お寺や神社が経営している土倉それから下請けの日銭屋。
そういう人たちがやるわけですね。
だいぶイメージ違いますね。
ではそういった既得権益を持つ強大な力に対して信長がどういうふうに立ち向かっていったのか。
その信長の知恵見ていきたいと思います。
じっくりと味わって頂きましょう。
戦国時代大名と並ぶほどの大きな力を持っていた寺社。
その経済力の源の一つが「座」でした。
座とは商品ごとに作られた同業者組合の事です。
当時商売をするには多額の登録料を払い座に所属する必要がありました。
登録料は座を取りしきる寺社のものとなり大きな収入源となっていました。
京都・大山崎にある離宮八幡宮。
ここは油を独占的に販売する「油座」で栄えた神社です。
この座に属する商人たちの勢力範囲は尾張から肥後まで西日本全域に及びました。
座に属さず油の売買をした商人たちには営業停止を求める文書が度々出されました。
座の強い権限がうかがえます。
その2つしかないですよね。
市場に入れない新興商人たち。
その不満に目をつけたのが信長でした。
信長は領国内の岐阜に新たな市場を開きます。
座に属さなくても自由に商売できる「楽市楽座」です。
当時の岐阜の様子を宣教師ルイス・フロイスは「塩を積んだ馬や反物を携えた商人が諸国から集まりその混雑は古代都市バビロンのようだった」と記録しています。
なぜそれほどまでに繁盛したのか?その秘密は値段にありました。
営業を独占する座では競争が起こらないため…一方多くの商人が参加できる楽市では自由競争が生まれ物の…楽市は信長以前にも行われていました。
しかし商人の不満を解消しようとする信長の姿勢はより徹底していました。
当時寺社や公家は自分の荘園を通る道に関所を設け通行料を徴収していました。
例えば大坂の淀川河口から京都まで多い時には380もの関所が設けられていたといいます。
こうした関所での多額の通行料は物の値段に上乗せされ商人たちが商売をしにくくなる大きな要因となっていました。
関所は戦国大名にとっても収入源の一つ。
しかし商人を味方につけたい信長は関所を全て廃止しました。
不満を解消する事で商人を味方につけた信長。
その後強大な経済力を身につけていくのです。
誰が不満を持っているのか。
そしてその不満をどう解消するのかというところに目をつけた信長ですけど安部さん信長は武士ですよね。
何でここまで商人の気持ちに寄り添えたのか?実は信長はですね商業地に育ってる商業型の武士だったんですね。
商業型武士?実はここにこういうものを用意してるんですがこの津島っていう所なんですね信長が生まれたのは。
ここが勝幡城っていうお城があるんですがここを拠点にしてた。
安部さんが注目しているのは当時の流通ルート。
信長の支配下にあった港津島は関東から都へ物資を運ぶための大事な中継点でした。
だからもともとが信長は船乗りとか商人の中で育ったと言ってもいいぐらいだと思います。
それをずっと見ててこれ必要なのかなとかいろんな方の不満とかを小さい頃から聞いていたんですかね?信長が育った周りにはいっぱい商人たちがいましたから商人たちも「なんとかしてくれないかねこの状況は」という要望が信長の元に集まってたんだと思いますね。
澤田さんは日本の旅行者が抱いていた「高い」という不満を解消する事でビジネスに。
ありがとうございます。
お世話になってます。
…というビジネスのきっかけというんですか発想の源ってどこにあったんですか?僕はヨーロッパに4年半留学してましたから全世界を休みに旅行したんですね。
最後日本に帰ってきてまず感じたのは非常に高いと。
僕が例えばヨーロッパからこっちに来るもしくは東南アジアからこっちに来る時はほぼ半額ぐらいの料金。
だけどこっちから行く時は当時まだ三十数年前ですけど倍の値段がすると。
大体大手旅行会社さんがほとんど横並び。
ただ発想はしてもなかなかそういった大手の既得権を打ち破るというのは難しいですよね。
徐々に徐々にこう大きくなってくる。
もしくはお客さんに認められてどんどん増えていくとそこら辺りから非常にプレッシャーというか意地悪とまでいきませんけど例えば仕入れを止められるとか結構つらい思いはしましたね。
ただやってる事は悪くないし正しいですからいつかは…。
お客さんに認めて頂いてるわけですからいけるんじゃないかとは思ってましたね。
正しいというのは今あるお客さんの不満を私たちは解消してるんだと。
そうですそうです。
やっぱり高いと若い方行きづらい行かれない。
何で向こうから安く来て何でこっちが高いお金払わなくちゃいけないというのがありますから。
僕はこれはルールが正しいんじゃなしにルールを僕は変えるべきだと。
いずれ変わるだろうと。
やっぱりそのうち変わってきましたねルールが。
今あるルールは絶対的なものじゃないんだと。
変えていくべきものなんだと。
信長は楽市楽座という政策を推し進めた。
信長側にとってはどういうメリットがあったという事なんですかね?だからまたこれを見て頂きたいんですけどねつまり信長はここの津島の港ともう一つ主要港である熱田の港を押さえてるわけですよ。
港で徴収する関税それから港を利用させる港湾利用税なんかで収入を得られるわけです。
だから商品の流通量が増えれば増えるほど別に細かい関所とか市の権利でもうからなくてもそれとは桁違いの収入がある。
えっじゃあ信長はお金のためにやってたんですか?それはそうです。
つまりねお金のためというか…商人たちもそういう市と関所と座をなくしてくれと。
そうしないと実は戦国時代は高度経済成長期でして流通量が飛躍的に上がった。
それに対処するためには古い管理システムではダメだというのが社会の声だったんです。
こうやって信長は次々と政策を進めていって人々の不満を解消していったわけなんですがそれでもやっぱりリスクはあるんですよね。
ただ信長のすごかったとこ。
これキーワードなんですけど「ぶれない」。
リスクがあってもぶれない姿勢ご覧頂きたいと思います。
信長が整備したと伝えられる街道が愛知県江南市にあります。
街道には商人や旅人が木陰で休めるよう柳が植えられたといいます。
地元の研究者たちは道はおよそ30kmにわたっていたと見ています。
琵琶湖に架かる「瀬田の唐橋」。
京都と近江をつなぐこの橋も現在の位置に信長が架けました。
しかし戦国時代道や橋を造る事は大きなリスクを伴いました。
敵に攻め込まれやすくなるからです。
通常戦国大名は敵の侵入を防ぐため道は狭く曲がりくねったまま川には橋も架けませんでした。
しかし信長は防御よりも商業を優先し道をまっすぐに整備しました。
当時の記録には「信長が川に橋を架け険しい道を平らに整備し石を退けて大きな道にした」と記されています。
戦国時代の常識を覆すインフラ整備は人々を喜ばせました。
「誰もが安心して行き交うようになりありがたいご時世だと感謝した」といいます。
攻められるかもしれないという大きなリスクを抱えながらもそれでも徹底したサービスにこだわるこのぶれない信長の姿勢はどういうふうに見ましたか?僕はねそれは時代に合ってるというかインフラというのはインフラ整備というのは非常に経済にとって大切だと思うんですね。
そこを実行していくというのは非常に先見性があるというか行動力があるというかすばらしいと思いますね。
澤田さんテーマパークの再建を引き受けられたじゃないですか。
あれは相当リスクのある話だなというふうには思うんですが…。
そうですね。
最初はお断りしましたけど。
18年連続の赤字だったものを…。
一回も黒字はないですね。
具体的にどういう事をされたんですか?上げた?上げたんです。
中身をよくするために値段を。
だから入場料も上げましたしホテルも上げましたし。
そのかわりに中身をどんどんよくしていこうという事でまだまだなんですけど値段上げた。
上げてお客さん増えましたですね。
何でなんですか?やっぱり中身ですか。
来て楽しいとか来て感動するとか非日常を味わえるとか。
そういうものほんとにいいものがないとやっぱり来て頂けないという事はそこで分かりましたですね。
社内からの反対というのはなかったですか?「値上げしたらお客さんが今でも来ないのにもっと来なくなってもっと悪くなるのでもう値上げはやめてくれ」という声はいっぱいありました。
その中にいわば既得権益のような旧来のシステムが?ただやってればいいと。
お客さんが感動するやつをやろうという気持ちがなかったりそういう古いルールがずっと動いてました。
そういった声に対してはどういうふうに?それはもう信念を持って。
無視はしませんけど意見は聞いて強引にやるだけですね。
信長の町づくりと似ているような発想のしかたですよね。
信長さんの方がすごいんですけど。
でも安部さん信長の発想の源というんですか逆転の発想が出てくる源泉というのはどこにあるんですか?信長の時代になると大航海時代ですからポルトガル人とかがいっぱいやって来て日本からもいっぱい銀を輸出したりしてですねものすごい流通量が飛躍的に増えるわけです。
そうするとですね今までの管理システムでは適用できなくなってるというのが一つ。
じゃ大きく時代が変わろうとしたわけですかね?そうです。
それを見抜いた先見の明と言いましょうか…。
澤田さんご自身が大切にしている既得権益と立ち向かう時の心構えというんでしょうかどうやって打破していくのかというその知恵というのはどんなとこにあるんですか?そしてあえて自分の事を言えばそれがきちっとしたビジネスとしてやっていけるか。
そして世界のためになる事はたとえ抵抗があっても僕はやっていくべきかなと思いますね。
これは僕じゃなくても誰がやってもそうじゃないですかね。
信長も澤田さんも何かおかしいなって思うその気持ちから始まるわけですよね。
私なんか誰かやってくれないかと待つくらいしかできない。
でもはなさんも僕らも誰かがやってくれるのを待つんじゃなくて何かやりましょうよ。
じゃ一緒にやりますか。
いやぁほんとに面白い話ですね。
まだまだお話尽きないようなんでね皆さんでまた飲みながらお話をしていきたいと思うんですけどね。
どうもありがとうございます。
2014/07/21(月) 01:10〜01:35
NHKEテレ1大阪
先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)・選 既得権を打ち破れ「織田信長」[解][字]

戦国の覇者・織田信長に学ぶ既得権の破り方。天下統一を目指す信長の前に立ちはだかったのは巨大な経済力を誇る寺社や守護大名。既得権者を打ち破った武力以外の知恵とは?

詳細情報
番組内容
7月のテーマは「既得権を打ち破れ」。第1回は、戦国の覇者・織田信長に「既得権打破」のヒントを学ぶ。戦国時代、天下統一を目指す信長の前に立ちはだかったのは強大な経済力と軍事力を誇る寺社や守護大名であった。既得権を倒すため、信長が目をつけたのは商人の力。商人たちが抱えていたさまざまな不満を解消することで、商人を味方につけ、既得権者をしのぐ巨大な経済力を身に付ける。武力一辺倒でない信長の知恵をひも解く。
出演者
【ゲスト】作家…安部龍太郎,ハウステンボス社長HIS会長…澤田秀雄,はな,【司会】井上二郎

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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