(テーマ音楽)ジャーン!今年の夏はこれで決まり。
どうです?草刈さんお出かけですか?娘と食事の約束をしましてね。
年の差を感じさせないように爽やかなイメージにしてみました。
どうです?夏といえば麻。
軽くて通気性が良くて一度着たらやめられない。
夏が待ち遠しいですよね。
それにね世のため人のため自分のため。
麻はねぇとてもエコなんだそうですよ。
(セミの声)もうすぐ暑い夏。
夏にひときわ魅力を発揮するおしゃれアイテム。
それが麻です。
日本では古くから暑い季節の着物といえば麻でした。
風通しが良く熱を逃がす麻織物。
高温多湿の日本の夏を心地良く過ごすために欠かせないものでした。
こちらは大正時代のモダンボーイがまとう麻のスーツ。
西洋でも麻は古くから夏のおしゃれに大活躍してきました。
ところで麻布は何でできているかご存じですか?原料は苧麻や大麻などの植物の茎です。
茎から取り出した細長い繊維を糸に紡いでいきます。
手間がかかりますが丁寧に作った麻は丈夫で何十年も長持ちするため世界中で衣服に使われてきました。
しかし麻は決して扱いやすい素材ではありません。
しわが入りやすくしかも色を染めにくい。
先人たちは長い歳月工夫を凝らし技を磨き麻を使いこなしてきました。
そして天然素材ならではの風合いや色の魅力を引き出し夏を彩る美に高めてきたのです。
暑さに向かう季節。
丈夫で長持ち。
着て涼しく眺めても涼しい。
魔法の素材麻の魅力に注目します。
まずは麻の着物から。
琵琶湖に面した滋賀県湖東地方。
古くから上質な麻織物の産地として知られています。
湿気の多いこの地域では今も夏のおしゃれ着として麻が使われています。
野々村芙美子さん。
18歳でここに嫁いで以来麻の着物は野々村さんにとって夏の定番です。
本当にすぐに洗えば新品になる。
着て伸びたなと思っても霧パッと吹けば新品になります。
快適な着心地の秘密が着物全体に細かく入ったしわです。
着たとき生地が肌に密着するのを防ぎます。
このしわは「皺」と呼ばれ熟練の職人が手間をかけて作り出したもの。
洗っても消えることがなく麻の着物に豊かな表情を作り出しています。
今日最初の「壺」は…昭和の始めの頃まで麻畑は日本の至る所で見ることができました。
女性たちが育て糸を紡ぎ家族の衣類に仕立てたり売って家計の足しにしたのです。
京都に近い湖東地方は朝廷に献上するための上質な麻織物が作られていました。
向こうの景色が透けて見える織り上がり。
そしてしわ。
麻織物の特徴です。
麻織物の職人大西實さん。
透け感のある上質な麻織物に使うのは通常の半分の細さの糸。
切れやすい糸を丁寧に織っていきます。
細くても織り上がるととても丈夫。
独特の透け感を生み出します。
その辺は「織り」にものすごく気を使うんですね。
もうひとつの麻の特徴である「しわ」。
それを生み出す秘密も糸にあります。
大西さんの麻織物を拡大した画像です。
横の糸には強い「撚り」がかかっています。
実は…あらかじめ張られた縦糸に強い撚りのかかった横糸をしっかりと織り込んでいきます。
織り上がった麻にしわをつけていくのが…大切な役割を果たすのが水です。
麻織物を水にくぐらせ手のひらでもみ込むと皺が生まれます。
強い撚りのかかった横糸。
麻の糸は吸水性が強く水を含むと繊維が膨張し元の形に戻ろうとします。
撚りが元に戻ろうとする方向に手で力を加えると皺が入るのです。
表面に美しい皺を生み出す手技で知られる伊谷徳一さん。
皺をむらなくつけていくため反物全体に強すぎず弱すぎず均等に力をかけ続けます。
60年以上をかけて体が覚えた力加減です。
伊谷さんが皺を入れた反物。
撚れた糸が元に戻る力を巧みに利用ししっかりつけたしわは布に刻み込まれ消えることはありません。
まるで湖面に現れるさざ波のような繊細なリズムを生み出しています。
400年以上の歴史があるのですがこれ先人の知恵というのか涼感というんですかね着てさらっとしてなおかつ体温を吸収しますよね。
日本の女性の柔肌というのかタッチが柔らかく表現してほしいというか。
野々村さんが20代の頃仕立て夏になると毎年のように着てきた麻の着物。
半世紀前の職人の手が生み出した美しい皺が今も野々村さんの体を優しく包み込みます。
皺の技はこんなところでも活躍しています。
麻で作ったウェディングドレス。
風をはらんだスカートに入った無数の皺が夏の結婚式に華やぎをもたらしてくれます。
この夏あなたもしわのある服にチャレンジしてみませんか。
う〜ん…やっぱりこっちかなぁ。
何を迷っているんですか?「パパ自然な感じでね」って言われてるんでそういわれるとこっちかなぁって迷ってるんですね。
生成りなら間違いありませんよ。
当たり障りがないってこと?いいえ。
生成りのナチュラルさが草刈さんにピッタリだと思いますよ。
あっ。
早く決めないと時間だ。
ハァ…。
どっちだ?続いて西洋で発展した麻「リネン」の魅力に迫ります。
中央アジアからヨーロッパにかけて栽培されてきたフラックスという植物。
その茎を使ったのがリネンです。
日本では麻の一種に分類されています。
こちらはリネンの布。
少しベージュがかった色ですが染色しているわけではなく自然の色。
よく見ると一枚一枚色合いが異なります。
リネンは成育した環境により色に微妙な違いが生じます。
自然のままの色は「生成り」と呼ばれる色です。
生成りに魅せられた…天然素材ならではの個性的な色の組み合わせを時に色染めしたリネンを取り入れながらデザインしていきます。
スズキさんがデザインしたリネンの上下。
生成りの色の違いを生かした優しいスタイルです。
シャツは白に近い色合い。
パンツは淡い茶色とベージュのストライプになっています。
そしてこちらはリネンに染めを施したもの。
よくご覧ください。
青の間にもとの生成りがのぞいているのが分かりますか?生成りは染めたときにもリネンならではの味わいをもたらしてくれます。
今日二つ目の壺は…リネンの染めを得意とする染色工場。
生成りの色みを生かす染め方「中白染め」で知られています。
リネンには世界中の染色工場を悩ませてきたやっかいな性質があります。
こちらは…石ころのように見えるのが繊維です。
繊維と繊維の間には染料などの水分が浸透しますが繊維自体は極めて硬く中まで水分が入りにくいのです。
染めにくいリネン。
ならば生成りを残すように染めたらどうか。
こうした考えで日本で発展したのが…染料を吹きつける圧力や時間を調節し表面だけを美しく染めていきます。
染め上がった糸。
青の隙間からちらりとのぞいた生成りの色。
これが絶妙な表情をもたらします。
やはり…光沢は少し落ちるんですがナチュラルな感じがとても良いというお客さんはたくさんおられます。
生成りの色と染めの色が響き合い生み出されたリネンならではの味わい。
それはさまざまな色を組み合わせることによってさらに広がっていきます。
こちらリネンのワンピース。
渋いグレーに見えますがえも言われぬ独特の色合いですよね。
接写レンズで見てみましょう。
青紫黄銀4色の糸で織られています。
それぞれが生成りを残した中白染めの糸。
生成りの色が多色をまとめ調和を生み出しています。
このワンピースの生地を手がけた柄師の岩田信男さん。
発注したデザイナーの色のイメージを実現するためさまざまな色の組み合わせを検討し設計します。
表現自体は…女性が現れると…このワンピースは実際に何度か着用されたもの。
生地は擦れて染め色が落ち糸の内部の生成りの部分が広がっていきます。
またその生成りも時間がたつほどに色が変わっていきそれが多彩な色と混じり合い複雑な色合いを生み出していきます。
縦10メートルの巨大な布。
中白染めで染められたさまざまな色。
その数3,000種以上に上ります。
これを3種類4種類と組み合わせていくことでさらに多くの色が生み出されていきます。
無限に広がる色。
それをまとう人々の夢もまた無限大です。
「生成り」というと地味なイメージがあったけど「時と共に味わいを増す」なんて僕のよう。
ハハハ…。
アハハハ…。
見て〜。
おしゃれでしょう?そうですねぇ飾らない草刈さんの人柄が出ていますよ。
楽しんできてくださいね。
デート。
じゃあ行ってきま〜す。
最後に時を経た麻の魅力をお伝えします。
カーテンクッションテーブルクロス。
すべてをリネンで統一した部屋。
麻使いの達人として知られる一人の女性の部屋です。
リネンについての本も手がけた…使うほどに手触りが滑らかになっていくのがリネンの魅力といいます。
このキッチンクロスは…ヨーロッパには古いリネンを大切に使う習慣があるのです。
長く伝わってきた物ですので今自分が破いたらいけないとは思うんですね。
でも…1枚のリネンが何世代にも渡って長く使われるのは絹や木綿とは異なる性質に基づきます。
まず強さ。
麻は丈夫で破れにくく綿の約2倍の強度を持つといいます。
そしてこんなときにも。
麻にはペクチンというのりのような成分が含まれ汚れが繊維の奥に入りにくいといわれています。
乾く前に洗えば元どおりに。
丈夫で汚れにくいからこそリネンは女性の心をつかんできたのです。
刺しゅうされたイニシャル。
リネンは長く使う物だったため新しくあつらえた時に名前を入れる習慣がありました。
その後どこの国のどんな人の手を経てここにたどり着いたのか。
そんなことを想像してみることができるのもアンティークリネンの楽しみです。
今日三つ目の「壺」は…リネンの持つ可能性をとことん引き出したい。
そう考える雑貨アーティストの…新旧さまざまなリネンの布を集め刺しゅうをするなどいろんなリメイク法を考案しています。
せっかく100年前から残ってきたアンティークリネンなので…上島さんがリネンにほれ込むきっかけとなったのはドイツの蚤の市で手にした…しゃれた柄と温かみのある手触りに魅せられました。
ヨーロッパでリネンは女性が一生かけて使う日用品。
自分好みにいろいろな飾りを施しました。
結婚が決まった娘に母親がリネンを贈る習慣もありました。
決して安いものではなかったリネン。
長年に渡って集めたものをプレゼントし新しい生活を祝福したのです。
女の子が生まれるとリネンに華やかな刺しゅうを施す習慣もありました。
昔家族の人たちが畑で作ってそれを収穫して織って布にしてそれからいろいろな物を作っていったように…そんなロマンみたいなものも含んでるかなと思います。
100年前のリネンの布をリメイクし新たな命を吹き込む。
新しいリネンの布も自分好みに作り変える。
上島さんは暮らしの中で役立て続けることがリネンを本当に大切にすることだと考えています。
丈夫で肌触りが良いリネンはいろいろな物に使うことができます。
100年後誰かがまた形を変えて使ってくれているかもしれない。
そんなことを考える楽しさも息の長い素材麻ならではです。
(草刈さんの鼻歌)草刈さんうん?ご機嫌ですね。
娘とデートって楽しいねぇ。
ついでにショッピング。
見てください買っちゃいましたよテーブルリネン。
すてきでしょう?模様がね気に入っちゃって。
ちょっとお高そうですね。
うん少々高くても一生使えるなら安い。
いつか娘が嫁に行くとき持たせたいと思いましてね。
いやまだ嫁には行かせませんよ。
あら気が早い。
そう確かに早い。
ならばその日が来るまでうちで使って味わいを出そうじゃありませんか。
ねえ。
人はなぜ老化するのか。
老化を防ぐにはどうすればよいのか。
2014/07/20(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「麻(あさ)」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「麻(あさ)」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
着物に、スーツに、夏のおしゃれの定番アイテム、「麻」。電力不足が問題となっている昨今、目に涼やかで、着ても涼しい素材として改めて注目されている。リネン(西洋)、ラミー(東洋)など、東西でさまざまに発展した。使うほどに肌になじみ、風合いが増してゆく奥深い素材である。しわが入りやすい、染色しにくいなど扱いにくさを逆手にとり、夏のくらしを彩る便利で美しい日用品に変えてきた知恵と技に迫る。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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