ダーウィンが来た!「ニホンカモシカ 雪崩とともに生きる!」 2014.07.06

山の急斜面を流れ落ちる大量の雪。
雪崩です。
そのすぐ近くに動物がいます。
国の特別天然記念物…深く積もった雪を全身でかき分けるようにして山の斜面を歩いています。
冬カモシカたちはあえてこの雪崩の多い危険地帯に集まって来るといいます。
一体どうしてなんでしょうか?雪崩とともに生きるニホンカモシカ。
その秘密に迫ります。

(テーマ音楽)石川富山岐阜福井の4県にまたがる白山国立公園。
冬雪に覆われ山々は真っ白です。
今日の舞台はその一角にあります。
尾根に生えるブナの木々が名前の由来と言われています。
うわ〜すごい急斜面!傾斜は40度近くあって人は立っていられないほどです。
木々の根元が大きく曲がっています。
急斜面にしがみつきながら太陽に向かって伸びる姿です。
私たちが撮影の拠点にしたのはブナオ山を望む観察小屋。
ここなら雪崩に巻き込まれる心配はありません。
地元の子どもたちも大勢訪れます。
木々の葉が落ちた冬は特にいろいろな動物たちが観察できるんだそうです。
ねえねえ何か見える?どこどこ?あここ!いました!ニホンザルです。
木の皮をかじっています。
今度はキツネ。
離れた場所だからこそ自然な行動を観察することができるんです。
子どもたちがカモシカを見つけたようです。
いましたいました!今日の主人公ニホンカモシカです。
画面の中央カモシカが急な斜面を登っていきます。
深い雪をかき分けるようにして進みます。
ニホンカモシカは体長1メートルほど。
全身ふさふさの毛で覆われています。
カモ「シカ」とは言いますが実はウシの仲間。
確かに短い角はウシっぽいですよね。
急斜面を歩くための秘密は足にあります。
太くて短いので安定感が抜群なんです。
スラリと長い足を「カモシカのような足」と言いますが実際はそうじゃないんですね。
足の秘密は安定感だけじゃありません。
足元にご注目。
じゃんけんのチョキみたいでしょ?前側にある大きな2つのひづめ。
斜面を下りる時はこの2つを開き山肌を広く捉えて滑らないようにしているんです。
更に後ろ側には小さなひづめが2つあって滑り止めの役目を果たしています。
また登る時にはこのひづめを突き刺すようにして使うこともできるんです。
この足があるからこそカモシカは急な斜面で暮らしていけるんですね。
こちらのカモシカ木がまばらに生えた場所にやって来ました。
枝の先にあるまだかたい木の芽をかじっています。
冬の大事な食べ物です。
今度は雪に鼻をくっつけてしきりににおいを嗅いでいます。
こうして雪に埋もれた食べ物を探しているんです。
あ足で雪を掘り始めて…草を掘り当てました。
雪の下の草をにおいで探すなんて随分鼻が利くんですね。
この時期の草はカモシカにとって大変なごちそう。
熱心に探します。
こうして食べ物を求めて1日の大半を過ごすニホンカモシカ。
普通同じ場所で2頭以上を見ることはありません。
ところが冬のブナオ山ではここにも。
こちらにも。
狭い範囲で5頭ものニホンカモシカを観察することができます。
一般にニホンカモシカの生息密度は1キロ四方に2〜3頭。
この時期のブナオ山の密度はその倍近くにもなるといいます。
一体どうしてなんでしょう?その秘密は地形にあります。
カモシカを観察していたのはこの南斜面。
周囲を流れる川が山と山の間に大きな隙間を作っているため南側が開けていますよね。
だから日当たりは抜群です。
そのため周りの山が雪に覆われている時期でもブナオ山の南斜面は茶色い地面が目立ちます。
つまり雪が解けやすく食べ物を見つけやすいんです。
南斜面に暮らす5頭のカモシカはそれぞれになわばりを持ち恵みを独占しています。
なわばりを守るため欠かせない日課があります。
木に顔をこすりつけていますよね。
自分のにおいをつけているんです。
ニホンカモシカの目の下には「眼下腺」と呼ばれる器官があります。
ここから出る分泌液を木や枝につけて自分のにおいでなわばりを主張しているというわけです。
あ右側に別の1頭がやって来ました。
食べ物を見つけやすい南斜面に割り込んできたよそ者でしょうか。
どんどん近づいていきます。
なわばりの主は「えい!」とばかり追い払おうとします。
でも相手はなかなか引きません。
両者にらみ合いが続きます。
おや?なわばりの主がUターン。
においづけを始めたようです。
「ここは俺のなわばりだぞ!」という無言の圧力でしょうか。
でも相手は更に近寄ってきました。
ついにケンカ?おっと相手が逃げ出した!どうやら力の差は歴然だったようです。
別の場所でも2頭のカモシカが接近しています。
今度こそケンカになってしまうんでしょうか?下にいる1頭はメス。
左側の角が折れているのが特徴です。
相手が迫っているというのに悠然と食事を続けています。
ついに2頭は大接近。
あれ?ケンカになるどころか寄り添って食事を始めました。
この2頭オスとメスだったんです。
ニホンカモシカがなわばり争いをするのは同じ性別の時だけ。
オスとメスがなわばり争いをすることはありません。
そこへまた別の1頭がやって来ました。
3頭は仲良く食事を始めました。
後から来たのはメスが産んだ子どもです。
体や角の大きさから2歳ほどのメスだと考えられます。
子どもがメスの場合生後3年ほどはお母さんのなわばりの中で暮らします。
ニホンカモシカにとって楽園のようなブナオ山の南斜面。
ところが気温が高くなったある日突如異変が起こりました。
(雪崩の音)急斜面を勢いよく流れ落ちる大量の雪。
雪崩です。
(雪崩の音)カモシカたちが慌てたように走りだしました。
安全な林の中に避難します。
木々の間のカモシカ。
そのすぐ近くを雪が流れていきます。
日当たりが良く傾斜が急なブナオ山の南斜面は雪崩の多発地帯でもあるのです。
ある日の南斜面。
気温が上がった午後1時40分。
最初の雪崩が起こりました。
そのおよそ20分後2度目の雪崩が発生。
また20分ほどたつと3度目の雪崩。
わずか1時間半の間に合計5回もの雪崩が起こりました。
ブナオ山の南斜面では1年に3頭ものカモシカが雪崩によって命を落とすこともあるといいます。
雪崩が起きた直後の斜面を1頭のカモシカが黙々と登っていきます。
あ〜ちょっとちょっと!危ない危ない!随分慌ててますねヒゲじい。
そりゃそうでしょう。
ここはいつ雪崩が起きるか分からない場所でしょ?カモシカはどうしてこんな危険な斜面を登ってるんですかね?いえいえヒゲじい。
カモシカは雪崩が起きた場所だからこそわざわざ登っているんです。
どういうこと?ブナオ山の南斜面を見ると茶色い地面がむき出しになった所がたくさんありますよね。
あ〜はいはいはいはい。
これ雪崩で雪が落ちた場所です。
こういう所はほら雪に埋もれていた草が顔を出しているでしょ?あ本当だ。
もうヒゲじいお分かりですよね。
雪崩の跡はカモシカにとって最高の食事場所になるんです。
うん!な〜るほどね。
いくら危険でも背に腹はかえられないというわけか。
命懸けの食事ですなぁ。
命懸けであることは間違いないんですがカモシカたちの体には危険を少なくする秘策も備わっているんですよ。
え秘策?どどんな秘策ですか?こちらのカモシカ木々の間に座りました。
安全なこの場所でお食事を始めたんです。
え?ただ口をもごもごさせているだけですぞ?そうなんですが実は今胃にため込んだ草を食べ直しているところなんです。
あそうなの?ヒゲじいは「反すう」ってご存じですか?あ〜はいはい。
ウシがやるやつでしょ?食べた物をかみ直して消化することでしたよね。
ヒゲじいそのとおり!カモシカはウシの仲間です。
だから雪崩跡で草を素早く胃袋に収め安全な場所で反すうしていたというわけなんです。
なるほどね。
ニホンカモシカはたくましいですなぁ。
こんなに雪崩の多い場所で暮らすことになったら私なんかもうう〜なだれちゃうところです。
なんちゃってね!第2章は我が子に寄り添い厳しい冬を乗り越えるお母さん。
ところが春突然子どもを追い回し始めました。
一体どうしたんでしょうか?一時は絶滅が心配され国の特別天然記念物に指定されたニホンカモシカ。
でも昔は身近な存在だったんです。
江戸時代に書かれたおとぎ話には人々がカモシカと戯れる様子が描かれています。
実際そんな習性はありませんが当時の人々にとってはおなじみの動物だったことがうかがえます。
ところが…。
(銃声)明治時代に入ると肉や毛皮を目当てに乱獲されます。
昭和20年代にはわずか3,000頭にまで数を減らし「幻の動物」と呼ばれるまでになりました。
そして昭和30年特別天然記念物に指定され本格的な保護が行われるようになったんです。
以来ニホンカモシカの分布域は広がり現在では全国に10万頭以上が生息していると考えられています。
しかし数が増えたことにより新たな問題も起きています。
なんと人の住む町の中にまで姿を現すようになったんです。
興奮して人にケガをさせたり農作物を食い荒らすなどの被害も増えているといいます。
カモシカと日本人。
古くからの隣人同士うまくつきあっていけるといいですね。
2月下旬のブナオ山です。
晴れる日は少なく時に視界を奪うほどの大雪に見舞われます。
南斜面に1頭のカモシカを見つけました。
あの左の角が折れたお母さんです。
降り続く雪の中必死に食べ物を探しています。
そばに子どもが近づいてきました。
お母さんにぴったりと体をくっつけます。
身を寄せ合って寒さを紛らわしているんでしょうか。
お母さんが見つけたわずかな食べ物を分けてもらう子ども。
子どもはもうそろそろ独り立ちしてもよいころですがまだ少し甘えているみたいですね。
数日後。
ようやく雪がやみブナオ山の南斜面に太陽の光がさし込みます。
朝早くからお母さんが熱心に食べ物を探しています。
そのすぐそばにオス。
お母さんは次の命を授かっているのかもしれません。
一方こちらは子ども。
1頭だけで食べ物を探すことが多くなってきました。
今度は雪の積もった急斜面で草を探しています。
随分たくましくなりましたね。
ブナオ山に春が訪れました。
雪が解けたばかりの南斜面に暖かな日ざしが降り注ぎ植物が次々と芽を出します。
カモシカたちは待ってましたと言わんばかりに芽吹いたばかりの柔らかな草をほおばります。
この時期南斜面にはカモシカ以外の動物たちも姿を現します。
こちらは冬眠から目覚めたばかりのツキノワグマ。
新鮮な草を夢中で食べています。
日当たりの良いブナオ山は真っ先に春が訪れる場所。
長い冬を耐え抜いた動物たちが一斉に集まって来るんです。
一方で厳しい冬を乗り越えられなかったものもいます。
急斜面に横たわる1頭のニホンカモシカ。
雪崩に巻き込まれ命を落としたのです。
しかしその命は決して無駄にはなりません。
キツネやテンなど森の動物たちにとっては掛けがえのない糧となるのです。
一つの死が別の命を支える。
南斜面で繰り返されてきた自然のおきてです。
ブナオ山の麓では桜が満開の時期を迎えました。
気温は日に日に高くなります。
一面緑に覆われた南斜面。
あの角の折れたお母さんとオスが一緒に歩いています。
新鮮な草を満喫するお母さん。
もう食べ物に困る心配はありません。
子どもはどこにいるんでしょうか。
麓の川の近くで子どもの姿を見つけました。
もりもり食べて元気いっぱい。
食べ物が豊富なこの季節。
子どもはほとんどの時間を1頭だけで過ごします。
おなかいっぱいになったのか子どもが歩き始めました。
やって来たのはお母さんのなわばりの中心部。
斜面の上ではお母さんが休憩中です。
おや?子どももしゃがみ込みました。
どうやらここで食後の休憩のようです。
うららかな春の午後。
うとうとしちゃって気持ち良さそうですね。
その時です!突然お母さんが子どもに猛突進。
びっくりして逃げる子ども。
お母さんは執ように子どもを追い回します。
実は春はカモシカの子別れの季節。
お母さんは大きくなった子どもを自分のなわばりから追い出そうとしているんです。
母と子の追いかけ合いはこの日延々と続きました。
さんざん追い立てられ疲れ果てた子ども。
お母さんのなわばりから少し離れた場所でへたり込んでしまいました。
息が上がってもう動けないようです。
しばらくすると子どもが斜面を下っていきました。
もうお母さんのなわばりにいることは許されないと悟ったのでしょうか。
ブナオ山を後にして対岸へ渡って行きます。
旅立って行く子どもの姿をじっと見つめるお母さん。
子どもはこれから自分の力でなわばりを築き厳しい冬も自分の力だけで乗り越えていくのです。
雪深い冬の白山国立公園。
あえて危険な雪崩とともに暮らすことでニホンカモシカは長く厳しい冬を生き抜いてきたのです。
毛利攻めが始まった。
2014/07/06(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「ニホンカモシカ 雪崩とともに生きる!」[字]

国の特別天然記念物、ニホンカモシカ。冬、石川県・白山連峰にあるブナオ山に集まってくる。でも、ここは雪崩の頻発地帯!危険を顧みぬ行動には生きる知恵が隠されていた。

詳細情報
番組内容
日本有数の豪雪地帯として知られる、石川県・白山連峰。その一角に位置するブナオ山の南斜面には、冬になると、国の特別天然記念物・ニホンカモシカが集まってくる。生息密度は他の地域の倍近くになるという。ところが、日当たりが良い上に斜面が急なこの場所は雪崩の頻発地帯。毎年、数頭のカモシカが命を落とす。なぜ危険を顧みず、この場所に集まってくるのか?そこには雪深い山で生きるための知恵が隠されていた。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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