(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(月亭八方)いっぱいのお客さんでございまして。
私も考えてみりゃ随分と古くなってまいりまして今年66でございまして。
この間16や思ておりましたのに早いもんでございますけど。
こういう商売やってますと気楽な商売というふうに思われがちでございますけど気楽な商売でございましてね。
(笑い)何がすごいてねこのごろのお客さんは優しゅうございましてね。
昔はねもう面白ないとお客さんが「面白ないわい」てな事言う。
やじられて「銭返せ」なんて言われた。
ええ。
そりゃ考えたら今のお客さんはそういう品のない方はおられませんな。
もう「銭返せ」とか「出した葉書返せ」とかそんなん一切ございません。
(笑い)面白なかってもいろいろ考えて頂けますからね。
「この人は面白ないけど面白い事言うてはんねや。
きっと面白い事言うてはるに違いない。
笑たげよ。
ハハハ」とか言う。
それでも面白ない時は「寝といたげよ」とか言う。
優しいございます。
本当にそういう優しいお客様に我々は支えられてる訳でございますがね。
こういう世界へ入りましたのもやはりこう何となく「気楽で生きていけるかな」なんて事思たんでございますけれども。
昔はよく言われました先輩たちから。
「飲む打つ買う」。
つまりお酒を飲んで女を買って博打を打って「これができるのはこの商売だけや」とか言われて。
「ほんまかな?」なんて思いながら何かこう楽屋でおりましたけれども確かにそういうような事がいっぱいありましたですがね。
ええ。
今は駄目でございますよ。
コンプライアンスというのがございまして。
(笑い)今はお酒を飲んでも酔っては駄目でございますから飲んだら駄目。
ええ。
飲まんとそして女も買わんと博打も打たんと。
飲まんと買わんと打たんと
(ウタント)事務総長とか言いましてね。
(笑い)これ言うときますけど分かる人…。
(笑い)言うてる意味合い分かる人ははっきり言うてもう今日明日ですよ。
(笑い)まぁお酒の上では本当に別に芸人だけじゃございません。
いろんな方が失敗もするんでございますがえなかなかやめれんそうでございますがね。
ここにございました酒飲み極道というのがこれが酒を飲んで博打を打って女を知ってとうとう親の身上潰してしもたという。
今では九尺二間の長屋暮らしでございますがそれでもやめんそうでございましてもう毎晩毎晩あっちへ寄ったりこっちへ寄ったり一人で八人歩きというやつで。
「酔った。
今日も酔った。
ヒクッ。
機嫌ええなこない酔っていくとな。
何でこないお酒ってうまいんやろね?ヒクッ。
酔った。
親父また怒りよんで親父。
酒飲まんであの親父堅い親父『夜とともに行け』。
な〜にが意見聞けるかい『夜とともに行け』。
こっちは寝るっちゅうのやほんまにもう。
何であない意見したがるのかね?『酒飲むな酒飲むな』か」。
・「酒飲むな〜酒飲むなのご意見なれど〜ヨイヨイ」か。
・「酒飲み酒飲まずにいられるものですかダガネ」・「あなたも酒飲みの身になってみやしゃんせ〜ヨイヨイ」・「ちっとやそっとのご意見なんぞで」・「酒やめられましょかダガネ」・「あなたも酒飲みの身になってみやしゃんせ〜ヨイヨイ」・「ちっとやそっとのご意見なんぞで」・「酒やめられましょかダガネ」
(笑い)・「あなたも酒飲みの身に」「この唄終われへんなおい」。
(笑い)「父親寝ててや父親お父っつぁん寝ててや。
母親起きててやお母はん起きててや。
うん。
親父寝のお母はん起きやで」。
(戸を叩く音のまね)「開けて〜今帰った」。
(戸を叩く音のまね)「お母上様母者人」。
(戸を叩く音のまね)「昔の娘は〜ん」。
(戸を叩く音のまね)「今婆んつ」
(笑い)
(戸を叩く音のまね)「梅干し」て無茶苦茶言うてからに。
中でお母はん伜が帰って参りますと寝てる布団から抜け出してからに玄関を開けてやろうと思う訳でございますがなそこへこの爺さんのほうが…。
「これ婆さんああ〜開けぃでよろし開けぃでよろしもう入れぃでよろし」。
「まぁそうじゃろうが伜が帰ってきました」。
「帰ってきたあるかい。
毎晩毎晩酒ばっかり飲みくさってからにええ?入れぃでよろし。
昨日もそうやないかいな。
もう酔うて帰ってきてからにな私の寝てる頭をポ〜ンと蹴りくさってからに『何をするのじゃい』と思たらそこへヘナヘナヘナと座り込んで畳に頭こすりつけてから『もったいないもったいない』とこうするさかいに『あ〜さすがに酒飲みも親の頭蹴ってもったいないと言うてるわい』と思てそのまま見て見ぬふりをしてやったがな。
朝起きて聞いてみたら『あ〜あれ親父の頭でしたんかいな。
私ゃまた1升徳利ひっくり返して…』」。
(笑い)「『で酒がこぼれてもったいないと言うてました』てこんな事言うねやないかいな。
ええ?親の頭よりも酒のほうが大事っちゃなそんな伜家へ入れぃでよろしい」。
「まぁまぁそうじゃろうがまあ〜朝方は冷えてますでなそう言わずにまぁまぁまぁ言うて聞かしますでまぁまぁまぁまぁまぁ」と「まぁまぁ」の百っぺら遍も言いまして中へ入れます。
中へ入りますとそのまま大の字になって寝てしまいますが。
さぁこのあと同じ長屋で住んでおります腕力極道が帰ってきたようでございますがこれがまた酒は飲まん博打はせん女は嫌いやという品行方正のようでございますが今言いましたように腕力極道て今どき流行らんもんでございまして喧嘩と火事が大好きやてけったいなもんでございますな。
おかしな癖でございますが「これが無かったら気がムシャクシャする面白ない一日が終わらん」っちゅなこんな男がおったんでございますが。
「面白ないほんまにしけてけつかんなこの〜。
あ〜世の中のものしけたらほんま火事も無いねやがな喧嘩も無いねやがな。
喧嘩ふっかけたところで逃げくさるしほんま面白ないなほんまに。
大阪中まる焼けっちゅな火事無いのんかいな。
な〜うどん屋でも出てきたら相手してやろう思たがうどん屋も逃げくさったがな。
昨日のうどん屋ほんまに頼りないなうどん屋のくせしやがってほんまに。
『おう。
一杯くれ〜』『へえうどんでやすか?』『誰がうどんや言ったんや湯一杯くれ』『ええ?湯何しなはんね?』『何しなはんねあるけえ!足に泥が付いてるから洗うんやないけえ』『そんな足洗うような湯沸かししまへん』『何を抜かしてけつかんね文句あるのかい。
よしこの荷ひっくり返したるわ』と荷持ったところで『待っとくんなはれ堪忍してくんなはれ』て逃げていきくさってほんまにもううどん屋のくせして腰のないがきやで」。
(笑い)「情けないもう帰ってしょうがないお母はんでも相手しようかい」。
帰って参りますとお母はん昼間の疲れが出ておりましてズ〜ッと寝込んでおりますとそれを見ますとその伜上へタタタタ〜ッと上がっていくなり寝てるお母はんの枕をバ〜ンと蹴り上げて。
「なな…。
兄ぃ戻りやったんかいな。
何をしなはる?」。
「何をしなはるあるかい!何を寝とんのじゃ起きて待っとらんかい!」。
「ウワ〜もう昼の疲れが出て寝てしもたわいな。
そんな事よりも兄ぃ何ですぐそんな腕力をふるうんじゃい?」。
「文句あるのかい?立てぃかかってこい」。
「そな阿呆な事言うねやないがな」。
(笑い)「飯食べやるか?」。
「食べいでかい」。
「そこに用意してあるで」。
「オ〜オ〜オ〜オ〜偉そうに飯食べやるかて?何じゃお前タクアンと梅干し漬け物ばっかりやないかい。
こんな若い者が働いて帰ってきてんねや。
力つけないかんてな…魚ぐらいつけたれよ」。
「兄ぃ。
私とて魚はつけてやりたいがな。
兄ぃが金くれんでな」。
「ほらまた始まった。
顔見たら『金金金』て。
あのな言うとくぞ金てなもんはな親から子に渡すもんじゃい子から親なんてそんな事ぬかすな阿呆。
どこの世界にそんな事があるんじゃい。
金が欲しかったらな働きに行け」。
(笑い)「兄ぃ。
無茶言いやるなこの年じゃでええ?仕事なんかある訳がなかろう」。
「そんな事あれへん。
朝早う起きて浜へ行け。
仲仕があるわい」。
「無茶言うねやないがな。
さぁさぁ食べやれ」。
「食べやれかいな」。
飯を食うたら大の字なって「肩揉め腰撫で足さすれ」無理難題を言いまして寝てしまいますが。
さぁ次の日の朝向かいの酒飲み極道は朝起きて仕事行くんでございますがこの腕力極道これが朝起きようとしません。
お母はんもちょっと起こしにいきますとベ〜ンと手が飛んでくるもんでございますからお母はんのほうは知恵を出してからに家の表出てからに「何でございます?ええ?坐摩の前で心中が?あ〜男が二十歳で女子が19?若い身空でかわいそうにな。
代われるもんなら代わってやりたい。
坐摩の前で心中が?南無阿弥陀仏」。
その坐摩の前の心中というのが耳に入ったもんですからこの腕力極道布団ベ〜ッとはねのけてタタタタタタタ〜ッと行きよった。
お母はんのほうは「あ〜起きたな」ってなもんで布団を上げまして御飯の用意をして待っておりますと一方坐摩の前では…。
(笑い)「何じゃ?これ四周がシ〜ンとしてるな。
どこに心中があったんじゃ?人もいつもより少ないやないけ。
またあのお母はんほんまに私を起こすために。
どないするか覚えてけつかれ」。
「おう兄ぃ戻りやったか?今日は朝早からどこへ行ってやった?」。
「何がどこ行ってやったやねん。
坐摩の前へ心中見に行ったんやないかい」。
「坐摩の前で心中があったんか?」。
(笑い)「あったんか〜?あったんかやないがや。
お母はんが言うたんと違うんか?『男が二十歳で女が19。
若い身空でかわいそうな。
代われるものなら代わってやりたい』な?『坐摩の前の心中で南無阿弥陀仏』と」。
「お前さん起きてたんかい?それ」。
(笑い)「何をぬかす心中いうのが聞こえたんじゃい」。
「兄ぃ。
あれはな今日の事やありゃせんでなあれは私が15の時の話やがな」。
(笑い)「50年も前の話さらすな阿呆」。
「兄ぃ。
寝ぇやるか?」。
「寝えへんわい起きてんのに。
仕事行くわい」。
「あ〜そうしやでそうしやで」。
「そうしやでそうしやで」。
起きますと仕事に行くんでございますが。
そのまた夜向かいの酒飲み極道酔うて帰って参りますが同じでございます。
一人で八人歩き。
・「一でな〜し」か。
・「二でなし三でな〜し四五でな〜し」・「六でな〜し七でな〜し八でな〜し」・「九でなし十でな〜しね〜」・「十一十二十三十四十五十六十七」「この唄も終われへんな」。
(笑い)
(戸を叩く音のまね)「開けて〜」。
またお母はんの「まぁまぁまぁ」という声で中へ入って寝てしまいますが。
さぁこの腕力極道のほうは相変わらずでございまして。
「チェッしけてけつかるなほんまに。
今日も火事も喧嘩もないね面白ないほんまにもう。
情けないの〜何かこうワ〜ッとこういうふうに人が集まる事ないのんかいもう。
しょうがないな帰ってまたお母はん相手するかい」。
帰って参りますとお母はん昨日の今日でございますから起きて待っておりまして。
「おう兄ぃ戻りやったかご苦労さんご苦労さん。
飯食べやるか?今日はお前さんの好きな生節と高野豆腐炊いてあるで。
さぁさ食べやれ食べやれ。
肩揉もうか?腰撫でよか?足さすろか?」。
「な?そうして皆用意してたら私も何も言えへんねやがな。
飯食うわい」。
飯を食いましてまた大の字になって寝てしまいますが。
明くる朝酒飲み極道は朝起きて仕事行くんでございますがこの腕力極道お母はん「今日はどうして起こそうかいな」。
やはりまた知恵をつけてからに家の前出まして隣の佐助はんの所行ってからに「佐助さん。
おはようさんでございます」。
「オ〜オ〜何やお母はんどないしたんや?ええ?」。
「ちょっと家の伜起こすのん手伝うてもらえませんかいな?」。
「お母はん。
堪忍してや。
この間の事忘れたんかいな?『起こしてくれ』言うさかい起こしに行ったがな。
『ひょっとしたら?』思たけどもうあっさり起きたさかいに『偉いもんやな年寄りの言う事聞くんやな』思てからに。
で行った。
その晩やがな我がの家入らんと家へズカズカッと上がってきたが。
『佐助はん。
ありがた迷惑というのも思わんねや』言うた途端にボ〜ンときたで。
あとボンボンボンボンと5つまでは覚えてる。
3日仕事休んだがな」。
(笑い)「家の嬶に『阿呆な事しな』言われて。
もう堪忍してえな」。
「そうじゃろうがまぁ佐助はん私を助けると思て」。
「そりゃ助けてやりたいわいなお母はんの事気の毒やさかいな」。
「そこを…。
今日は顔見せてもらわいでよろし。
声だけちょっと出してもろて」。
「声だけ?」。
「ええ声だけちょっと。
ここに金盥持ってきてますで私がこれを叩いてな『火事や火事や』と大きな声で言いますで佐助はん悪いけどあんたこの拍子木を叩きながら『火事や火事や』と言うてもろたらよろしい」。
「お母はんそんな簡単に言うけどな源やんな私の声も知ってんねや。
なんぼ隠れたって分かるがな」。
「ちょっと声変えてもろて」。
「声変えて?ええ?いや。
分かってるがなその…。
お母はんかわいそうさかいな話は聞いたって…。
ええ?『声変えたらいける』?ほんまかいな?じゃあちょっとやってみるけど。
私や分かれへんか?」。
(拍子木の音)「火事や火事や」。
(笑い)
(拍子木の音)「火事や火事や」。
「プッフフフ分かれしま…」。
「笑うてんねやないがな。
そんならこれもすぐ姿くらますで。
分かってるな?」。
「ええ〜。
それで結構。
さぁ起こしますでなへえほないきますで」。
ボンボラボ〜ンボンボラボ〜ン。
「火事やといな〜火事やといな〜」。
(拍子木の音)「火事や火事や」。
さぁこの「火事や」という声が耳に入ったもんですから布団をパ〜ッとはねのけ「お婆ん火事はどこじゃ〜?」て。
「ウ〜ッかかか火事は…。
ウ〜ン火事は…」。
「火事はどこじゃ〜?」。
「ウ〜ン火事は火事じゃい」。
「何を言うとんじゃい火事はどこじゃ〜い?」。
さぁこのお母はん「どこそこ」というのを遠い所へ言うてしまいますと仕事に影響が出ますからどうしても近場をというところで「ウウ〜ッ」と思い浮かんだんが…。
「隣裏じゃい」。
「隣裏やったら梅公の所やないかい」。
「そうじゃ〜」。
裸足でタッタッタッタッタ〜ッ。
お母はんのほうは…。
「ウ〜ッハッハッハッハ〜ッ」と呼吸を整えながら布団を上げて御飯の用意をして待っております。
(笑い)気の毒なんはこの梅やんという同じ大工仲間でございますが。
大体大工さんは朝が早かったら温物を炊いて食べるんですが今日はどういう訳かお粥さんを鍋に入れて炊いておりましてからに。
「辛いなもう辛い。
おまさ。
何やねんこの塩加減はもう塩の塊になったん辛うて食ってられんやないかいな。
おまさ。
そんな事よりもなちょっとお前な洗濯あとでしたらええやろ?弁当先詰めてくれ今日は朝早いねやさかいな。
洗濯なんか私が出ていってからしたらええねやないかい。
見てみ上がり口見たら道具箱置いてあるやろがな。
あれ見たら早いの分かったあるが先弁当詰めてくれっちゅうの洗濯あとでしたらええさかい。
お爺やんお爺やん。
あんたも一緒に食べてんでええであんたどうしても一緒に食べて出ていかんならん事ないねん。
ゆっくりしててええさかいな。
第一こんな辛い物あんた体に悪いのによう食うなどうでもええけど。
お爺やん鼻汁が出てる鼻汁が出てる。
鼻汁を鼻汁をかまなあかん。
すすりぃなそんなもん。
な?温い物食べたらなんぼでも出てくんねんさかいな。
ちょっとあんた子供見たって。
喧嘩してんねや子供が。
ちょっと見たってそんな物食べてんとからに。
お前らもな早う食うて学校行かんかい。
何を喧嘩してんねん?何が?『兄やんがタクアン取った』?あのなお前もタクアンぐらい取ったんな。
なんぼでもあるやろがな」。
「私取ってぇへんのに取ったてほんまに取ったるわい」。
「あ〜ほんまに取りよった」。
「やかましいなもう。
お爺やん鼻汁が鼻汁が。
あ〜漬け物の上に落ちたやないかいな。
おまさ。
弁当先っちゅうの分からんか〜い」。
言うてますところへこの男タッタッタタッタ〜ッ。
「おい火事や。
よっしゃこの道具箱は俺に任しとけ〜。
ソラ〜ッ」。
タッタッタッタッタ〜ッ。
(笑い)「おまさ。
お前が早うせんさかい見てみいな訳の分からん奴飛び込んできてからに道具箱持っていきよったやないかいなもう仕事行かれへんがな何をするやなもう。
お爺やんお爺やん。
あんたなそんな事してんとちょっと子供小さいの見たってっちゅうの。
奥から布団から抜け出たがな。
這うてきた這うてきた歩かれへんねまだあの子は。
立とうとしよるやろ?あのおひつの所手掛けて。
立たれへん立たれへん危ない危ない。
手滑らせたらおひつで顎打つねやがな。
お爺やん。
あんたちょっと茶碗置いたらどうやねどうでもええけど。
茶碗置いてちょっと見たって。
あかんあかんあかんおかしな顔してるあれ。
ア〜ッ小便ちびりよったがな」。
(笑い)「あかんがな足でピチャピチャしてからに汚いなもう。
ちょっとおむつ取って拭いたって。
お爺やんおむつ取って拭いたって。
そうそうそう。
熱い湯かけて畳の目の…。
逆に拭いたら小便が畳に染みるやないかいな」。
(笑い)「おまさ。
弁当先詰めろっちゅうのが分からんのか〜」。
言うてますとまたこの男タッタッタッタッタッタ〜ッ。
「よっしゃこのお爺やん俺に任しとけ〜。
サア〜ッ」。
(笑い)「お爺やん。
おい。
お爺やんはええけどこらっ。
見てみいおまさお前が早うせんさかいお爺やん逆さにされたやないか。
頭打っとるやないか。
ええ?もう何をすんねやな。
早いこと弁当詰め。
洗濯はあとでええやろがな」。
言うてますとまたこの男タッタッタ〜ッ。
「熱熱熱熱熱い。
よっしゃ〜この箪笥は俺に任しとけ〜」。
「待てこらこりゃ。
何さらすねお前。
家に暴れ込んできやがってからに」。
「何言うとんね火事やないかい」。
「何?」。
「火事やないかい」。
「火事?あのなお前どこに火事なんかあんのじゃい?またお前のお母はんに無理に阿呆な事言うて起こされたんやろかい。
どこに火事あんのじゃい?」。
「そうかお母はんの仕業か」。
(笑い)「その前に聞くけど私が来たからというてお前火事隠したん違うやろな?」。
(笑い)「誰がそんな事するかい。
お前のお母はんの仕業やないかいな」。
「そうか。
ああそれで分かった。
ほな帰るわ」。
「ちょっと待てお前。
帰るわあるかい。
道具箱どうしたんじゃい?」。
「道具箱。
心配すなもしも火事があったって道具箱さえあったら仕事に行けるやないかい。
もう大丈夫やこれでな玉造の叔母はん所へ私が預けてきた」。
「玉造の叔母はん?でお爺やんは?」。
「お爺やん向かいの車屋に言うて川口のおっさん所へ」。
「お前そんな西と東に分けるなよお前」。
(笑い)「道具箱俺取りに行くさかいお前お爺やん迎えに行ってくれ」。
「いや。
知らん。
仕事行く。
さいなら」。
「お〜い」。
無茶苦茶でございますが。
さぁ次の日の朝今度はお母はん「今日はどうしようかいな」。
朝早う起きて井戸端へ出まして米を僅かな米を鍋へ入れて米をといでおりますとこれ同じ長屋に住んでおります与次兵衛さんという猿回し。
太夫を肩に乗せまして…。
「おはようさんお母はんおはようさん」。
「あ〜与次兵衛さんおはようさんでございます。
えらいこんな早うからもう精が出てええ?もう仕事に行きなさる?」。
「いやいやお母はんそう言われると辛いけどな私もなそんなこんな早から行きたいと思へんでところがな家の太夫これがもうお天道さんが上がったらなキャッキャッキャッキャッ言うてからになもう風呂敷持ってきたりして『仕事行こ仕事行こ』と太夫が言いますねやがな。
ええ。
まぁ『牛に引かれて善光寺』やないけど太夫に引かれて銭儲けというとこですわいな」。
「左様でございますか。
な〜こんな畜生でも朝お天道さんが出たらまあ〜仕事行くなんて事分かってるのにそれに引きかえ家の伜ときたら」。
「あっお母はん聞いてる。
源やんやろ?な〜起きんねてな〜。
ちょっと起こすとえらい目に遭うらしいやんか。
佐助はんもこの間言うとった。
うんそうか。
じゃあでもなお母はんよっしゃお母はんのためや今日はこの私が起こしたろか?」。
「いいえいいえ。
そんな用事…。
あんたもうあんたみたいな方に家の伜手かけたらえらい事で」。
「いやいやそらぁなそら心配いらん。
な?私にはこの太夫がおるんや。
せやろ?な?もしも起こしに行って私に手かけたらお母はん言うとくでこの太夫がな?お前所の大事な伜顔キュッキュ〜ッとかきむしるな?もう2つ3つ傷があってもそれでもええかい?」。
「いえそらぁ起こしてもらえるならもう顔が2つ3つ無くなっても」。
(笑い)「無くなるかいな。
そうか?よっしゃ分かった。
ほな起こしたろ。
太夫。
ちょっと下り。
うん。
太夫。
今からなここの腕力極道伜起こしに行くわな〜?父と二人で起こしに行くさかいな。
ああ。
で言うとくでもしもなここの伜が父に手かけたら構へんな?ペ〜ッと飛びついてピピャ〜ッとかきむしったれ。
な?ウフフ見てみお母はん。
言葉は喋れんけどな?言うてる事分かったあるがな。
合点合点してるやないかいな。
よっしゃほな任しとけ。
おい太夫。
行こう。
うん」。
「入り。
中入ってキキ〜ッと舞うたり。
源さん。
おはようさん。
源さん起きや起きや源さん。
源さん起きんかい起きんかい源さん。
おはようさんこれ。
あっ起きた?起きたかいな?ええ?ええ?何?『まぶしい』?『目が痛い』?目が痛いのはな夜更かしをするからやで。
夜は早寝て朝早う起きて青葉を見たら目の薬。
起きたり起きたり」。
・「起きゃるが目痛や〜目痛や〜な〜」・「源さん源さん」
(下座囃子)・「日天さんがお照らしじゃ時間何時や知らんか」・「八時三十分回ってる近所の車屋も関東煮」・「こんにゃく屋も飴売り豊年屋も」・「皆々銭を儲けに行ってるのに」・「ふんぞり返って寝てるとは冥加が悪いで」・「おとなしゅう早う起きやおっ源さんハイヤ〜」・「向こう意気姿が腕力ないや腕力な」・「いやさりとはさりとはノホホンノヨ〜ホンホンあろうか〜いな」・「けンンンんかなんぞやろうか〜いな」・「品行の良い事好んで母者人を安心さっしゃれな〜」「これこれこれこれ〜いつまで寝ていなさる?早う起きて仕事行かんせ〜。
母者人が顔を赤うして気をもんでいさっしゃるわい」。
・「これこれこれこれこれ」・「行てやろう行てやろうノホホンノヨ〜ホンホン仕事場へ」・「手斧また持とうかいな」・「金銭儲けるのが手柄じゃ稼がんせ」・「職人の朝寝はコロリとやめいやコロリとやめ」「アハハハ起きたか〜」。
・「起きたら仕事へ行きゃさんせ」・「いや飯食って仕事へ行かしゃんせ」・「あ〜良い殿御者に改心なされ」・「ハア〜良い殿御じゃ良い殿御じゃ」・「すこぶる美男の良い殿御じゃ」・「ノホホンノヨ〜ホンホンあろうかいなヤッンンンンなまたあろうかいな」「キ〜キ〜ッ」。
「ハハハハハ面白いわ面白いわ。
面白い与次兵衛さん面白いよ。
また明日もな〜?太夫と一緒に起こしに来てや〜。
仕事行ってくるわ〜」。
さぁそれから仕事行きますと次の日も朝早うからまた…。
「キ〜キ〜ッ」。
「ワア〜ッ面白いわまた明日も頼むで〜」。
そうなってきますともう朝を待ち焦がれて夜は早寝てからに朝早う起きるというえらい改心でございますがそれを見ておりました向かいの酒飲み極道のお母はんでございます。
「爺さん爺さん。
アハハ見たかいな向かいの伜。
まあ〜毎朝猿になってエテ公になってキ〜キ〜言いながら仕事へ行きよります。
おかしな話」。
「これっ。
そんな他人様を笑う事ないわい。
猿なら結構や。
家の伜見てみい毎晩トラになりよるがな」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/07/20(日) 14:00〜14:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「堀川」[解][字]
6月5日にNHK大阪ホールで行われた第342回NHK上方落語の会から、月亭八方さんの出演で「堀川」をお送りします。
詳細情報
番組内容
6月5日にNHK大阪ホールで行われた第342回NHK上方落語の会から、月亭八方さんの出演で「堀川」をお送りします。(あらすじ)ある長屋にある二軒の家、お互いに息子がいるがこの息子がややこしい、一方の息子は酒道楽。もう一方は酒は飲まないが喧嘩と火事が大好きという変わり者。酒道楽は朝起きて仕事にちゃんと出かけるが、喧嘩道楽はなかなか起きてこないので母親が近所の人に「火事じゃ」とうそをついてもらったら…
出演者
【出演】月亭八方,入谷和女,桂米輔,桂米平,桂吉の丞
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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