イッピン「薄くてしなやか 極上の紙〜高知 土佐紙〜」 2014.07.06

半年後鳥たちは次の命をつなぐために再びこの海に戻ってきます。
さあ皆さんお待ちかね!登場するのは日本生まれのイッピン。
すぐれた技が生み出す珠玉の宝。
きょうはどんな技が飛び出すのか。
最新のトレンドを発信する街東京南青山。
今回のイッピンリサーチャー押切もえさんが向かったのは大通りを一本入るとそこには隠れ家のような一軒の店。
あぁー!新しいアイテムがある。
おしゃれなお店ですね。
世界中から集められた雑貨や小物洋服などが並ぶセレクトショップ。
ここに高知県発のイッピンがあるというのですが…。
あれ何でしょう?ん?押切さんが見つけたのは…和紙?色とりどりさまざまな柄があるようです。
わぁきれい!何でしょうねこれ。
すごい繊細な…。
いらっしゃいませ。
こちらが土佐和紙になるんですね。
土佐の伝統工芸品です。
高知県で作られている…その美しさが目にとまり1年前からここで売られています。
1枚2,000〜5,000円ほど。
部屋に飾ったりラッピングしたり。
アートやファッシヨンに関心の高い人を中心に人気を呼んでいます。
一番有名なところでこちら…0.03ミリ!0.03ミリ。
「土佐典具帖紙」と呼ばれる和紙。
まるでシルクのような手触りです。
どんな作り方をされているんだろう。
気になります。
薄くてしなやか。
極上の紙にはどんな秘密が隠されているんでしょうか。
高知市内から路面電車に揺られること40分。
仁淀川流域に広がる紙の里。
その中心が「いの町」です。
どうもありがとうございます。
(車掌)ありがとうございました。
着いた!ここが「いの」ですね。
紙の町・いの。
この地域にはおよそ20軒の手すき和紙の工房と30軒以上の製紙工場があります。
おじゃまします。
こんにちは。
はじめまして。
訪ねたのは東京で売られている典具帖紙を漉く職人の工房です。
押切です。
はい。
職人の浜田洋直さん。
人間国宝の祖父から技を受け継ぎました。
土佐典具帖紙は極限まで薄さを追求した和紙。
短時間で漉かないと厚みが出てしまいます。
浜田さんがかける時間は40秒ほど。
今の動き結構激しかったですよね。
ええ。
水がはね上がる激しい動き。
ここに秘密がありそうです。
水と原料が生き物みたいに動くことに驚いたんですけどあの動きって普通なんですかね?同じ紙でも…その中には何も混ぜ物が入っていない状態です。
繊維だけ。
それをどうやって絡めるかっていったらこの上で繊維と繊維…ここにある手に付いてる繊維がありますが。
和紙の…。
ホントに。
それを絡めていくのが…。
今の技術で。
そうです。
だから丈夫な紙として成立します。
拡大してみると繊維がさまざまな方向に絡み合っているのが分かります。
どのようにして複雑に繊維を絡めながら薄い紙を漉くのでしょうか?40秒の動きの中に2つポイントがあるといいます。
1つ目は「横へ揺らす動き」です。
一番典具で重要なのはやっぱりこのこういう動きですねここの繊維の。
渦を巻かせていたんですか?そうですね。
こういう感じに渦が巻いていると思うんですよ。
見てもらったら分かるんですけど。
はい。
手の動きに合わせ水がある方向に動いています。
ゆっくり再生してみると…。
渦を巻くように水が動いているのが分かるでしょうか?できるだけこの決められた時間の中で…それをするためにどうにか考え出したのがこうではなくて…。
これだと時間がかかるのでこれをやって繊維が結合するまで時間かかるのでこうすることで…続いて2つ目のポイントは「縦に揺らす動き」。
勢いよく水をはね上げ紙の繊維をさらに絡ませていく工程です。
まずこういうふうになったやつの模様の上にストライプのを重ねると上から見ると完全に詰まりますよね目が。
そういうことで縦の動き。
一個一個一連の動作に反動をつけて高く上げるのは要は限られた時間にやるためになるべく絶やさずに水の動きを…縦と横2つの揺らし方を素早く連続して行うことで薄くて丈夫な紙が生まれます。
土佐典具帖紙にはもう一つの特徴があります。
それはシルクのような光沢。
ここにも土佐に伝わる職人の技がありました。
浜田さんが案内してくれたのは工房の裏の山。
豊かな水が湧き出ています。
工房では代々この水を紙すきに使ってきました。
紙の仕上がりは水によって違ってくるといいます。
和紙の原料となる「コウゾ」。
皮の内側の繊維を使います。
紙を漉く直前浜田さんは取り出した繊維にあるひと手間を加えます。
「こぶり」というコウゾの繊維を磨き上げる作業。
米を研ぐようにザルに入れたコウゾを何度もかき混ぜ洗います。
これですか!ええ。
綿みたいなフワフワの…。
そうですね。
え!こんな柔らか。
ツヤがすでに…。
そうですね。
磨いているのであくをのけることで…典具帖紙のツヤツヤとした光沢。
なぜこぶりをすることでこのような光沢が生まれるんでしょうか?そこで訪ねたのは…こぶりをしたコウゾとしていないコウゾで漉いた2種類の紙。
それぞれから繊維を取り顕微鏡で拡大してみました。
こぶりをしていない紙は繊維に「非繊維細胞」が付着しています。
一方こぶりをした紙にはありません。
コウゾの中にもともと含まれている細胞類なんかが観察されます。
こぶりを行うことによってこういった細胞類が洗い流され非常に繊維はたくさん見えてます。
磨いた繊維は光を反射し輝きを増すと考えられています。
シルクのような光沢を持った世界一薄い手すき和紙は手間のかかる繊細な技によって生み出されていたのです。
ドイツ東部の町…19世紀初頭には多くの文学者や芸術家が集まる文化都市として栄えました。
歴史ある地域はユネスコの世界遺産に登録されています。
1691年に作られたこのアンナ・アマリア図書館もその一つです。
ここには文学書をはじめ聖書や楽譜など貴重な蔵書が収められています。
ところが2004年この図書館で火災が起き5万冊以上の蔵書が焼けてしまいました。
実はこの焼け残った本の修復に土佐紙が使われているというのです。
これが修復に使われている土佐紙。
紙の向こうが透けて見えるほどの薄さです。
一体どのように修復に使うんでしょうか?本にはページの表裏両面に文字が書かれています。
そのため紙に貼って補強するわけにはいきません。
そこで用いるのが台紙にのった土佐紙。
修復するページに台紙ごと土佐紙をのせ上から糊を塗ります。
ページの表と裏と両面に同じ作業をします。
そして台紙をはがし土佐紙だけを残すのです。
紙で挟まれたページは補強保護されます。
この修復によって100年以上保存できるといわれています。
下の文字が鮮明に見えるほど薄い紙。
文化財などの修復専用紙として4年前に開発されたものです。
その紙を作る会社を訪ねました。
中に入ると響き渡るのは機械の音。
どうやら手すきではないようですが…。
あれ?これもしかして?そうです。
これが修復の紙を作ってる機械です。
この機械で作ってるんですか!はい。
実はこの機械手すきの技術を応用して作られたもの。
どういうことでしょうか?ここが手すきのこういうのを機械でやっている場所です。
この機械が今漉いている状態なんですか?はい。
微妙に揺れているのが分かりますか?機械全体が。
本当だ!原料が入った水を向かって左から右へ流しながら機械が揺れています。
水を複雑に揺らすことで原料の繊維を絡ませ紙を漉いていくというわけです。
機械の流れに沿わないように。
ちゃんと繊維が絡まり合うように。
そうですそうです。
繊維だけを残し水を抜いていく。
これも手すきと同じ原理です。
ここでちゃんと水が切れて…。
そうです。
紙になっていって…。
はい。
この一台で漉きから乾燥まで。
原料や揺れの強さを調整することでさまざまな厚さの紙が大量に生産できます。
繊細!軽くて飛んじゃいそうで!こういう感じです。
(専務)そういう感じです。
紙の里として栄えてきた高知県いの町を中心とする地域。
紙作りの歴史は古く千年以上前に遡るといわれています。
江戸時代には土佐藩の「御用紙」として保護されました。
幕府への献上品にもなった紙が漉かれその名が広く知られていきます。
そして明治の中頃生産量は全国一を誇るようになります。
千人以上の職人が技を競い紙すきの音が響き渡りました。
当時盛んに作られたのがタイプライター用の紙として使われた典具帖紙。
薄くて強いため重宝され特に海外に大量に輸出されました。
土佐紙を支えてきたのは原料コウゾの栽培。
この地方のコウゾは繊維が長く丈夫で良質とされています。
暖かく日当たりの良い山の斜面がコウゾの栽培に適しているのです。
毎年12月末から1月にかけてが刈り取りの時期。
また春になったらここから芽が出る。
切ったこの残りの部分の周辺から出てくる。
刈り取ったコウゾの枝は専用の甑でおよそ2時間蒸します。
蒸したコウゾは冷めないうちに皮をはぐ作業に取りかかります。
紙の原料となるのは皮の内側の白い部分だけ。
今も人の手で行う根気のいる作業です。
紙すきに使う簀と桁。
道具を作る職人も紙産業を支えてきました。
職人の山本忠義さんが作っているのは簀。
水に溶けた原料を掬って薄く広げる部分です。
紙の種類や厚さによって竹ひごや絹糸の太さを変えます。
一本一本力を入れ引っ張りながら編んでいきます。
(山本)こう引っ張ってる。
ここがきれいになってるよ…。
紙を漉くときの水の重さに耐えられる丈夫な簀を作るためです。
優れた道具を作る技術と高品質の原料。
それが紙作りを支えてきました。
今では伝統的な和紙だけではなく生活に必要な製品から特殊な紙まで用途に応じたさまざまな紙が作られています。
次に押切さんが訪ねたのは新しい紙作りに挑んでいるという職人の工房。
こんにちは!こちらですか?私が作ってます。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
手すき和紙職人の田村寛さん。
開発した土佐紙とはどんなものなのでしょうか。
これが…?これが今回作った紙なんですけど。
2年の歳月をかけ完成させたというこちらの紙。
一見普通の和紙に見えますが…。
実は特殊な写真をプリントする専用の印画紙なんです。
現像にプラチナを使う「プラチナプリント」と呼ばれる方法。
一般的な写真より黒の微妙なグラデーションがしっかりと映し出されます。
印画紙として開発した紙は保存性が高くこのままの状態で500年色あせることがないといいます。
現像液につけても破れにくい丈夫な紙です。
田村さんは和紙独特の風合いを損なわない新しい印画紙を目指しました。
こっち側はちょっと引っ張っても簡単には切れない。
強いんですね。
しかし和紙で写真現像用の紙を作るには材料から見直さなければなりませんでした。
コウゾの繊維っていうのはちょっとこう触ってもらうとちょっと粗いというかザラザラしてる感じになります。
これがガンピっていう和紙の原料で…。
ガンピ。
違う原料を50%混ぜて作った紙なんですけど。
ちょっと雰囲気が変わってちょっと硬い感じで表面もツルっとして…。
ツルっとしてます。
光沢が。
コウゾにちょっとだけガンピを混ぜる。
パーセンテージを10%20%30%というふうに割合を変えたものを試作しました。
なるほどなるほど。
コウゾの風合いとガンピの光沢の両方を生かすためプロの写真家とやり取りしながら配合の比率や漉き方を試行錯誤しました。
とにかくなにか埃が入ったり変なものが入ってしまうとやっぱり繊細な写真を表現するための紙なので埃が入らないように…作業としては難しくないんだけどすごく大変な部分です。
500年美しさを保つために「ちり」と呼ばれるゴミを取っていきます。
田村さんは1ミリもない小さなちりも見逃しません。
500年もつというプラチナプリントに使う紙を作られていることについてどう思いますか?実際本当にこの紙が500年もつかっていうのは500年たってみないと分からないというところで怖い部分もあります。
だから500年先に誰かが見てまだきれいな紙のままでその写真を見てくれれば自分らとしてはうれしい。
結婚式のプランニングを請け負う店。
田村さんが作った和紙で去年プラチナプリントのサービスを始めました。
この店で結婚の記念写真を撮った間城さん一家です。
4年前の写真を改めて土佐紙にプリントしました。
和紙独特の風合いが温かく柔らかい仕上がりです。
この写真は4年前ですかね。
結婚したときに家族で撮って。
このあと父が亡くなったんですがそのあとにこの子が生まれて。
いろいろそういう思いが込められているといいますか。
大事なお写真ですよね。
そうですね。
家族写真というものをあまり持っていなくて本当に晩年の父の最後の写真といっていいくらいの写真で。
すごくロマンを感じますよね。
2513年?2514年とかにこの写真が残ってるかもしれない。
この土佐和紙で。
ロマンですね。
ロマンありますよね。
長い歴史の中で進化し続ける土佐の紙。
豊かな自然の恵みとそれを大切にしてきた職人の技。
伝統を守りつつ未来の紙を作ろうとしています。
2014/07/06(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「薄くてしなやか 極上の紙〜高知 土佐紙〜」[字]

高知県いの町を中心とする仁淀川流域は、世界一薄い和紙や海外で文化財修復に使われているものなど、さまざまな製品を作る紙の里。一枚一枚に秘められた技に押切もえが迫る

詳細情報
番組内容
高知県いの町を中心とする仁淀川流域は、千年以上の歴史をもつ紙の里。シルクのように美しい和紙から普段使いのもの、驚きの特殊紙など、さまざまな紙を生産している。厚さが0.03ミリしかないという世界一薄い手すき和紙「土佐典具帖紙」を作る職人技や、ドイツで驚きの方法によって使われている文化財修復用紙など、一枚一枚に秘められたワザに、押切もえが迫る。次々と新しい紙を作ってきた土佐紙の魅力をたっぷりと紹介。
出演者
【リポーター】押切もえ,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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