今日ご紹介する作品はちょうど50年前日本のあちこちに貼られていたポスターです。
いやひょっとすると世界の街角にも。
作者の元には見知らぬ女性からこんな手紙が…。
「ポスターが欲しくて銀行の飾り窓にあるのをガラスを壊して盗みたい衝動にかられています。
早くください」。
となんとも過激。
しかも日本だけではないのです。
ベルギーの小学生からは宛先に作者の名前だけを記したエアメールが。
世界中から問い合わせが殺到し人々を熱狂させた1枚のポスター。
僕は…。
世界中を魅了し今なお新鮮な魅力を放ち続けるこの不思議なポスターとはいったい。
ここに昭和39年の東京オリンピック用に作られた4枚のポスターが保管されています。
最初に発表されたのが昭和36年の第1号ポスター。
金一色で描かれた五輪マークとどこか誇らしげな「TOKYO1964」の文字。
大きな赤い丸は太陽のイメージだといいます。
続いて昭和37年の第2号ポスター。
こちらのお話は後ほどたっぷりと。
翌38年の第3号は水泳。
バタフライで泳ぐ選手が勢いよく突進してきます。
そしてオリンピックイヤーの昭和39年に発表された第4号は聖火ランナー。
では改めまして今日の一枚です。
闇の中一斉にスタートを切る瞬間を収めた1枚。
6人全員現役の陸上選手です。
見事なスタートダッシュで抜け出したアメリカ人選手。
他がほとんど横一線のなか手前の選手だけが出遅れてしまったのでしょうか。
よく見ると選手全員の顔が認識できます。
まさに奇跡の瞬間。
夜の闇と光り輝く肉体とのコントラスト。
盗んででも欲しくなるというどこか危なげな魅力を秘めたポスターなのです。
亀倉雄策は日本のグラフィックデザイン史を築いたパイオニアにしてカリスマ。
82年の生涯で手がけたデザインは数万点に上ります。
洗練された造形と一度見たら忘れられない力強さが持ち味です。
ポスターの撮影が行われたのは代々木の国立競技場。
亀倉は撮影のために特別チームを編成しました。
フォトディレクターの村越襄。
カメラマンには早崎治。
ただし早崎はスポーツカメラマンではありません。
当時日本の広告写真界の第一人者と呼ばれた男です。
スポーツとは無縁な早崎を亀倉はあえて起用したのです。
そこにはカリスマならではのある狙いが。
日本人とアメリカ人が3名ずつ計6名の選手が集められました。
技術スタッフは7名。
昼過ぎからずっと入念なセッティングに追われていました。
当時まだ珍しいストロボを20台も使う前代未聞の撮影だったからです。
皆さんカメラマンの早崎といいます。
今日は大変な撮影になると思いますがよろしく頼みます。
(ドナルド)大変な撮影?俺たちはただ走ればいいんだろ?
(早崎)それはそうだけど。
じゃあ本番。
ライトを消して。
いや無理だろ。
こんな真っ暗ななか走るのか?おい。
用意…。
あ〜!
(号砲)
(ドナルド)目がチカチカする。
おいみんな大丈夫か?どうだ?こんな感じでいいか?ダメだ今のじゃ亀倉さんのイメージに合わない。
亀倉って誰?グラフィックデザイナーさ。
俺たちの狙いは亀倉さんに指示されたワンショットを撮ることなんだ。
そうなんだ。
でそのミスター亀倉ってどこにいんの?いや今日は来てないよ。
来てない?いやボスが現場にいない?オーマイゴッド!歴代のオリンピックポスターです。
東京オリンピック以前はすべてがイラストでした。
今日の一枚はオリンピックのポスターで初めて写真を用いた作品。
しかし前例のない試みであったにもかかわらず亀倉は撮影現場には来ませんでした。
そこにあったカリスマデザイナーの思惑。
50年前日本中が沸きかえったオリンピック。
初めて写真を使ったポスターで亀倉が仕掛けたものとはいったい?亀倉雄策がデザインした4点の東京オリンピックポスター。
この第1号はもともと選手のユニフォームをはじめあらゆる場所で用いるシンボルマークとして考え出されました。
昭和35年そのシンボルマークを選定するコンペが行われ6人のデザイナーの作品の中から満場一致で亀倉のデザインが選ばれたのです。
そのときのコンペに参加した永井一正さんは当時をこう振り返ります。
完成度の高いこのデザインはそのまま東京オリンピックの第1号ポスターに採用されたのです。
翌年第2号ポスターの発注がきます。
そこで亀倉が更なるインパクトを求めてたどり着いたのが誰も挑戦したことのなかった写真を用いたオリンピックポスターでした。
そこには亀倉が長年グラフィックデザインの世界で培ってきたある技法が。
亀倉は大正4年地主の家に6人兄弟の末っ子として生まれました。
しかし9歳の時に父親が破産。
故郷を捨て逃げるように東京に出てきた亀倉に衝撃の出会いが訪れます。
フランスのグラフィックデザイナーグラフィックデザインの道に進むため会社を率いる名取洋之助はアメリカの雑誌『LIFE』の表紙を日本人で初めて手がけた写真家でした。
亀倉が任されたのは日本文化を紹介する海外向けの雑誌。
名取から最先端の写真技術やレイアウトを徹底的にたたき込まれます。
終戦後に独立しグラフィックデザイン界の第一線で活躍し続けてきた亀倉に昭和35年東京オリンピックの仕事が舞い込みます。
戦後の復興を世界にアピールするオリンピック。
亀倉にとっては日本のグラフィックデザインの力を世界にアピールする絶好のチャンスでもありました。
用意!
(号砲)どうだ?今のでいいだろ。
ダメだ。
亀倉さんのイメージになってない。
いやちょっとちょっと待ってくれよ。
いったい何がいけないか教えてくれないか?亀倉さんの指示は6人が折り重なること。
そして全員の顔が写ることなんだ。
それがなかなかうまくいかない。
そんな都合のいいタイミングなかなかないぞ。
あと何回いけそうだ?そうだな…。
陸上のスタートトレーニングの限度はせいぜい20回。
っていうことはあとせいぜい5回くらいか。
とにかく頑張るよ。
当時早崎が撮影した写真が残されています。
6人が折り重なり全員の顔を写す。
しかもストロボの一瞬の光だけで。
亀倉はなぜこんな難しい指示を与えたのでしょうか。
改めて見てみると選手たちがある形に見えてきませんか?そう三角形です。
亀倉はデザインの中にさまざまな幾何学模様を使っています。
その発想の源が亀倉のコレクションにありました。
花鳥風月や森羅万象を白と黒で簡潔に表した日本の紋章。
シンプルでありながらもインパクトがあり一瞬にして人を引きつけるそのデザイン性の高さに亀倉は着目したのです。
紋章にインスパイアーされ幾何学模様をデザインに多用してきた亀倉。
ではオリンピックのポスターはなぜ三角形を用いたのか。
亀倉の狙いをこう分析します。
どうしたってそうするとこの作品は。
どうです確かに三角形が前に進む動きを感じませんか?こうした動きの効果を更に高めているのが実は背景の黒だといいます。
亀倉は自らの作品の多くで黒と幾何学模様とを組み合わせより動きを出していました。
それが顕著に表れているのがこちらの作品。
上に向かう平面的な動きだけではなく背景を黒くすることで画面に空間性をもたせ三次元的な動きを生み出しているのです。
この『東京オリンピック第2号ポスター』では三角形で画面右へと向かう平面上の動きを出し背景の黒によって奥から手前にせり出す三次元的イリュージョンを仕掛けていたのです。
しかし亀倉のイメージどおりの写真はそう簡単には撮影できなかったようで。
もう20回か。
さすがに限界だよな。
いやこうなったら倒れるまでやるよ。
けど…どうしたらミスター亀倉のイメージどおりになるのかな。
(ドナルド)いっそのことそのイメージどおりのポーズで撮影したりして。
そりゃダメか。
そっか。
そうだよな。
何もバカ正直にやらなくても。
おいどうした。
何かいいアイデアでも思いついたのか?カメラマンの早崎がとったある撮影方法。
スポーツカメラマンではない早崎だからこそできた掟破りのやり方だったのですがそれはいったい?亀倉雄策が手がけた「東京オリンピックポスター」。
そのうちの3枚を亀倉は3部作と呼びその貼り方にまでこだわりました。
発表した順番ではなく1号を中心に持ってくること。
確かにこのほうがインパクトは出ます。
ところで気づきませんか?3枚すべてに幾何学模様が。
これはもうやっぱり計算されてますよね。
実は3つの幾何学模様を連ねることで鑑賞者の視線を左から右にそして円を描くように誘導しているのです。
では三角形になる瞬間を撮影するために早崎がとった最後の手段とは?そもそも亀倉はなぜスポーツカメラマンではない早崎にスタートダッシュの撮影を依頼したのでしょうか?そんな早崎がとった仰天の手段とは?すまないドナルド1m前へ。
え?俺が?ちょっと待ってくれよ。
こんなの完全にフライングじゃないか。
そうです。
でこちらの皆さん方はできるだけ低い姿勢のまま走り出してくれますか?お願いします。
これできっとうまくいくはずなんだ。
よ〜い。
(号砲)よしこれならいけそうだ。
もう1回。
よ〜い。
(号砲)よしOK!通常20回が限度といわれるスタートダッシュ。
結局彼らは30回以上も挑みました。
そのなかから亀倉が唯一選んだのがこのショットです。
選手と撮影スタッフとの執念の結晶。
一斉にスタートを切った6人が深い闇で作り上げる揺るぎない三角形。
躍動する肉体がまるで稲妻のように迫ってきます。
強烈な光となって。
ところでなぜ亀倉は現場に来なかったのでしょうか?昭和39年東京オリンピックが開幕。
日本は16個の金メダルを獲得する快進撃で戦後の復興を世界に印象づけました。
そして亀倉の第2号ポスターが世界に向けて強く発したメッセージとは?だからこそ性別の違いも国境もこえて世界中の人々がこの前代未聞のポスターに熱狂したのです。
亀倉雄策作『東京オリンピック第2号ポスター』。
50年前黒と光で世界に掲げた日本の美。
日本最大級の男性ファッションイベント2014/07/05(土) 22:00〜22:30
テレビ大阪1
美の巨人たち 亀倉雄策『東京オリンピック第2号ポスター』[字]
毎回一つの作品にスポットを当て、そこに秘められたドラマや謎を探る美術エンターテインメント番組。今日の一枚は、亀倉雄策作『東京オリンピック第2号ポスター』。
詳細情報
番組内容
今日の一枚は、亀倉雄策作『東京オリンピック第2号ポスター』。グラフィックデザインのパイオニアによる、世界の注目を集めた作品です。陸上選手が国立競技場でスタートする瞬間を捉えていますが、実は写真を使った五輪ポスターはこれが初めて。夜の闇と光輝く肉体のコントラストは、どこか危なげな魅力を秘めています。その中には、亀倉ならではの幾つもの計算と狙いが。作品に秘められた彼ならではの思惑と発想の源に迫ります。
ナレーター
小林薫
音楽
<オープニング・テーマ曲>
「The Beauty of The Earth」
作曲:陳光榮(チャン・クォン・ウィン)
唄:ジョエル・タン
<エンディング・テーマ曲>
「終わらない旅」
西村由紀江
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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