土曜ドラマ 55歳からのハローライフ(4)「トラベルヘルパー」 2014.07.05

(下総)あいたよ。
ほら。
あそこにいるのが5歳の俺だ。
親が離婚して俺はおばあちゃんのところに預けられたんだ。
何もしゃべらないおとなしい子だったよ。
懐かしいな…。
俺は預けられていた2年半ほとんどこの海女小屋で過ごしたんだ。
おや戻ってきたな。

(海女たちの話し声)ほらうるさいだろう。
みんな海で体が冷えきってるから自分の体を燃やすようにしてしゃべるんだよ。

(千代)源一ほれ食べな。
ほれ。
うんうまいか?ハハハハハ…。
俺のおばあちゃんだ。
名前は千代だったが海女の仲間からはチヨバナって呼ばれていた。
バナがどういう意味なのか今でもよく分からないよ。
ほれ源一も飲むか?チヨバナ!あのね僕と母ちゃんと父ちゃんと海に行った時ね母ちゃんが海に潜ってこんなに大きな貝殻を持ってきてくれたよ。
それでね僕も海に潜ってカニを捕まえた。
しゃべる事は何でもよかったんだ。
ただ俺もみんなと同じようにしゃべりたかっただけさ。
その日を境に俺は無口な子からおしゃべりな子に変わったんだ。
おばあちゃんは87歳まで生きて生涯現役だった。
俺がこの旅に出た理由?ちょっと死にたくなってね。
おや?舌で転がすと渋みのあとでかすかな甘みが感じられる。
さてはお主狭山の新茶だな?うまいね〜。
スーパーの特売だとは思えないねお前さん。
(電子レンジの音)値引きよ今夜もありがとう。
・「焼酎お見舞い申し上げます」
ふんこれで笑った女が3人はいたな。
酒と女に金をかけてたなんて今思うとバカらしいよ。
1年ごとに女を替えるようなバカな事をしてなけりゃな今頃はうちが建ってて奥さんがいて貯金があって孫もいるのか…。
ここで死んだら誰が見つけてくれんだろう?大家か?遺書でも書いとくか。
「骨は海に捨てて下さい。
旅費はそっち持ちで」
ハハハハハハハ…。
昔は週刊誌読んでも眠くなったけど今は本読むと面白くて眠れなくなる。
これが教養ってやつか。
俺にもとうとうそれが身についたって訳だ。
しかも100円の古本で
うんでも寂しい。
誰かとしゃべりたい!
結局行く所は一つか
よう暖かくなったね。
(島田)春なんだから当たり前だろ。
愛想がないねいつ来ても。
あんたには愛想も100円均一だよ。
これしか買わねえんだから。
それだって大事なお得意様じゃないの。
俺しか買わねえんじゃないのかこんな汚え本は。
買ってもらなわなくても結構だね。
図書館でも行きなよ。
あ〜あ年は取りたくないね。
貧乏人いじめる事ぐらいしか趣味がないんだから。
今読んでるの今日中には終わっちゃいそうだからさまた新しいの買おうかと思って。
松本清張ない?100円で。
ないよ。
貧乏人に読ませる松本清張はないね。
あんたそれ松本清張先生が聞いたら本気で怒るよ。
(彩子)こんにちは。
お元気そうで。
(島田)ああこれはこれは。
すっかり暖かくなりましたね。
あ〜本当ですね。
もうすっかり春なんですね。
日ざしはもう夏みたいですよね。
本当ですよね。
毎年季節が複雑になりますよ。
あ堀切さん例の文庫入ってますよ。
あら。
はいどうぞ「砂の器」。
あらうれしい。
おいくらでしょう?上下巻で320円です。
はい。
毎度どうも。
その本お包みしましょう。
お願いします。
最後に女とつきあったのはもう6年も前だ。
つきあったのは全て水商売の女だ。
この人が飲み屋にいたら間違いなくおやじたちの圧倒的な支持を受けそうだ。
結婚指輪はしてない
「源さんって珍しくおばさん化してないおじさんよね」。
そんな事を言ったホステスがいたな。
そいつに言わせると男は守りに入るとおばさん化するらしい。
そりゃ俺には守るべきものが何もないよ。
案外この人もそういう男が好みなのかもしれない
あっあったあった!やっと見つけたぞ!これ探してたんだよご主人!あすいません大きな声出して。
お好きですか?松本清張。
あらわたくしその方の本はまだ初心者ですの。
そうですか。
面白いのがありますよいろいろ。
自分を「わたくし」と呼ぶ女を初めて見た
はいはいお待たせしました。
はいどうぞ。
お返しの200円です。
あらそれじゃ…。
いいんですよいつもごひいき頂いてますから。
俺これにするよご主人。
これ100円じゃねえよ。
分かってるよ。
俺もまけろよ。
冗談じゃねえよ。
おい差別するのか?あんたと一緒にしたらそちらに失礼だろ。
その言葉は俺にも失礼だろ!フフッフフフフフ…。
え?仲がおよろしいんですね。
よして下さいよ。
こっちはいつも無駄なおしゃべりにつきあわされて迷惑してるだけなんですから。
こっちはね「古本やるからタダでトラック運転しろ」なんて無理を押しつけられて困ってるんですよ。
やってくれてねえじゃねえか。
あらトラックを運転なさってるんですね。
え?そうなんですよ。
長年乗ってましたけどね今は時々で。
ああそうだご主人。
今度引き受けてやってもいいぞ古本倉庫から運ぶの。
こっちはいつも10tトラックだけど今度4t車工面できそうだからさ。
いつよ?それはまた分かったら連絡するよ。
それじゃわたくしはこれで。
じゃあ僕もこれで。
何が「僕」だ。
あの失礼ですけどその辺でお茶でもいかがですか?あらいいですね。
行きましょう!あのお名前は何てお呼びしたら?堀切です。
堀切彩子です。
アハッさっき堀切さんって呼ばれてましたね。
あのお名前は何て?下総です。
下総源一です。
下総さんですね。
いえ源で…。
いやいいです。
あの…。
それで「砂の器」はお好きなんですか?まだ読んでませんので。
あそうですよね。
そりゃそうだ。
さっき買ったんですもんね。
下総さんはお読みになったんですか?あいやそれはまだ。
映画は見ましたね。
映画も有名ですものね。
映画はどうだったんですか?いい映画でしたよ。
と言っても見たのはかなり昔なので何て言うのかとっても寒い印象が強く残ってますね。
寒い?ええ。
あれは何て言うのか日本の寒さを描いてるんじゃないでしょうかね。
いろんな意味で…差別する心とか。
深いんですね。
ええ深いんです。
下総さんって。
え俺?いえいえ…。
俺は深くないです。
おばあちゃんいや祖母が海女をしていたんでね深い海に潜ってましたけど僕はほら陸の道しか走れないトラック野郎ですから。
女とのつきあいでも深みにはまった事はないんですよ。
あすいません。
下品な事言っちゃいました。
お待たせしました。
ビールのお客様。
こっち。
パラダイス・アイランド・アイスティーのお客様。
わたくし。
見りゃ分かるだろ。
昼間からビールを飲んで野蛮な人だと思われたらどうしよう。
けど心臓がバクバクいって飲まずには落ち着けない
長距離トラックの運転手って大変なんでしょうね。
はあ確かに大変ですが今はフルには乗ってないんでよ。
実は定年したんです。
高齢ドライバーの健康管理という事で会社の方で今はそれほど働かせてくれないんですよ。
そうなんですか。
今は長距離というより中距離の方でそれでも誇り持ってやってますけど。
あら誇りですのね?そういうお仕事って。
いえいえそんな大層なもんじゃありませんけど。
ぶ…物流というのは生産と消費をつなぐ訳でいわば体を巡る血液みたいに大事なものだと思うんですよ。
確か東京の食料自給率はたったの1%ぐらいでですから物流が止まるとみんなあっという間に飢える事になるんです。
しかし物流の労働環境が年々厳しくなって悲しい事ですけど誇りを持ったトラックドライバーってのは少なくなりましたね。
あら。
我々ほとんど中小下請けの運送会社で働いてるんで現状運賃はできるだけたたかれて息も絶え絶えに走ってるんです。
(鼻歌)ですから荷物を積み過ぎたりどうしても長時間の労働が必要になってトラックドライバーというのは常に警察の摘発と命の危険にさらされている訳なんです。
それでどうして誇りが持てますか?あすいません。
つまらない話ベラベラと…。
あらとても面白いですわ。
そうですか?ええとても。
本を読むよりその世界の人から話を聞く方が勉強になりますもの。
堀切さんって何だか松本清張の小説に出てくる女の人みたいですね。
あらどういう意味でしょう?いえいえ話し方が…。
何だか昔の女優さんみたいに上品な話し方をするなと思って。
あら。
「あら」ってよく言うんですね。
あらそうかしら?ほら。
あら…本当。
それじゃあこれからは堀切彩子さんじゃなくて堀切アラコさんって呼ぼうかな。
あすいません。
それじゃ堀切さんにアラがあるみたいですよね。
フフフフフフ…。
ハハハハハハ…。
ひょっとしたらこれが人生の転機になるかもしれない
(田上)源さんお疲れさまです。
ようまた頼むよ専務。
仕事入ったらさすぐにでも回してよ。
宅配便以外なら何でもやるからさ。
また急に働き者になっちゃってどうしたんですか?年金も当てにならない時代だし俺の貯金なんかたかが知れてるだろ。
いろいろと入り用でさ。
分かった。
これでしょ?違うよ。
そっちはすっかり足を洗ったと思ってたんですけどね。
足洗ったよ。
老いらくの恋なんか俺の柄じゃねえよ。
(志津子)どうぞ試食してみて下さい。
いかがですか?いかがですか?どうぞ試食してみて下さい。
うんうまい!うまいね〜。
でも買わないよ。
懐が寂しいの。
ありがとね。
どうもありがとうございました。
またどうぞ。
メールで連絡ってのはいいとしてだ何でパソコンかな?
携帯持ってないのか?今どき?ねえ少し黙ってらんない?
携帯とパソコンの違いは何だ?携帯だと無視をすると露骨になるからか?
さっきから同じ事言ってますけど。
やっぱり俺にすぐ飽きると思ったのかな…。
あなたのおしゃべりにはもううんざり!はっ!何だもう読んだのか?え?松本清張。
読んだよ「ゼロの焦点」は。
それからまた新しいの買ったじゃねえか。
どうだっていいだろそんな事は。
それじゃ何しに来たんだよ?何もないよ。
待ち合わせしてんだよ。
え?人と待ち合わせしてるのここで。
誰とよ?誰とだっていいでしょう。
来りゃ分かりますよって。
あほら来た。
こんにちは。
こんにちは。
お元気そうで。
はい。
じゃあ行きましょうか。
ええ。
それじゃごめんあそばせ。
ごめんあそばせ。
堀切さん小学校の先生だったんですか。
ええ。
事情がありまして数年前に辞めましたけど。
どおりで。
え?堀切さん心が広いから。
普通俺の話なんか退屈で聞いてられないでしょ。
みんなそうです。
堀切さん子どもを相手にしているから辛抱強いのかなと思って。
そんな事ありませんわ。
下総さんのお話はとても内容がありますもの。
読書がお好きな方はお話も面白いんですわね。
そうですか?自分自身じゃあまり意識した事ないですけどね。
ほかにご趣味はありますの?え?昔から読書だけですの?昔は…。
・「抱きしめて」・「抱きしめて」・「帰したくない」そうですね趣味とは言えませんけどお茶が好きですね。
茶道ですか。
いえいえそういうんじゃなくて番茶です。
番茶が好きなんですよ。
たまに懐に余裕がある時は新茶や玉露を飲んだりもしますけどね。
日本茶がお好きなんですね。
ええ。
子どもの頃から好きでした。
こちらにも日本茶があるといいですわね。
え?日本茶あるかしら?お食事ができるんですものね置いてあるんじゃないかしら。
あ…それなら今度お食事なんかいかがですか?え?あいや迷惑ですよね夜になんて。
そんな事はありませんけど。
それはつまり「私も独身です。
あなたとつきあいます」って告白してるようなもんだろ。
(田上)お疲れさまです!よう!源さんちょっと。
うん?何だ何だ?こいつ佐藤っていうんだけど30過ぎてガールズバーだかの女の子に入れ揚げちゃってさ源さんの必勝法でも教えてやって下さいよ。
必勝法?ほら女を口説き落とす必殺技。
佐藤。
お前独身か?
(佐藤)はい。
その女と結婚するのか?できるならそうしたいですけどね。
よし。
それなら教えてやる。
これは俺たちトラックドライバーにしかできない事だ。
俺も先輩から教わったんだ。
成功率は実に100%だ。
といっても源さんは結婚した訳じゃないぞ。
女は取っ替え引っ替えだったんだから。
余計な事言うなよ。
ど…どうするんですか?いいか。
まず身なりをビシッと決めるんだ。
それで夜に大型トラックで女を訪ねる。
ケーキと花束を持った粋でたくましいお前が大型トラックから降りてくるんだ。
これで抱きつかない女は一人もいなかったよ。
(田上)あ〜ちょっとちょっと…。
「砂の器」もうすぐ読み終わりますの。
へえ〜そうなんですか。
面白いのでお貸ししましょうか。
まだ読まれてないですよね?いいんですか?うれしいな。
これで買わずに済んだ。
あらあの古書店のご主人に申し訳ないですわね。
いいんですよ。
あのおやじは奥に古いエロ本を隠し持っててそれでもうけてるんですから。
あらそうなんですか?そうなんですよ。
あエロ本なんて彩子さんの前で品のない事を口に出しちゃいました。
あ…彩子さんなんてお呼びして申し訳ありません。
いえ構いませんのよ。
あそうだ。
それなら僕も彩子さんにほかのを貸しましょう。
「ゼロの焦点」なんかどうですか?面白いですか?面白いです。
結婚したばかりの夫が失踪して新婚の奥さんが行方を捜して能登半島に行くんです。
結局旦那は断崖から落ちて死んでいたんですが奥さんは何者かに殺されたんじゃないかって推理するんです。
あら…。
なんと真犯人は彩子さんのような上品なお金持ちの奥さんで戦後の東京でアメリカ兵相手に娼婦をしていた過去を隠すために殺していたんです。
あすいません。
犯人まで全部しゃべっちゃいました。
そうなんですか。
そんなつらい過去が。
人は何を隠して生きているのか分かりませんね。
彼女とはもう10回近くファミレスでデートしたが思えば俺はあの人の事を何も知らないんだな。
向こうはどういうつもりで俺と会ってるのかな?話題も尽きてきたし何かここいらで大切な話しなければ…
俺が5歳の時両親が離婚したんです。
あら。
で父とは別れて母の実家に預けられたんです。
寂しくありませんでしたか?お父様と別れて。
いえ父親の事はあんまりよく覚えてないんですよ。
それよりよく覚えているのが祖母の事です。
海女さんをしてらした?そうです。
両親が別れたあと2年半ほど祖母と一緒に暮らしてました。
海女たちの待機場所である海女小屋で海から戻ってくる祖母の事を待ってました。
そこに海女たちが海から戻ってくるとものすごい勢いでしゃべりだすんです。
実に熱気がありました。
弁当を食べる時なんか全員がおかずを分け合って弁当箱をグルグルグルグル回すんで一体誰の弁当を食べてるのか分かんなくなるんですよ。
祖母は早くに夫を亡くしましたが死ぬまでに数え切れないほどの仲間がいました。
僕はあんなに仲のいい人たちをあれ以来見た事がない。
あんなに温かい雰囲気をあれ以来味わった事がない。
彩子さん。
はい。
このまま…いやこの先彩子さんと…。
いや…何て言うか関係とかはとりあえず関係なくてもし…もし何か困った事があればその時は遠慮なく言って下さいね。
彩子さんの力になりたいと思ってますから。
どうもありがとうございます。
いやすいません。
何か急に変な事を言いだして。
困った時には熱いお茶を入れてさしあげたいななんて。
俺は彩子さんと一体何がしたいんだ…。
どうした?待ちぼうけか?あんまり深入りしねえ方がいいぞ。
あの人どうも怪しいんだよな。
怪しい?清楚でお金持ちの奥さんみたいに見えるけど住んでる所はそうでもなさそうだし何か訳ありに決まってるよ。
いずれあんた身ぐるみ剥がれんじゃないのか?何だよ?俺がだまされてるとでも言いてえのか?そういうとこ一度もにおわなかったか?ごめんなさいね。
遅れましたわね。
いえ。
こんにちは。
あどうも。
じゃ行きましょうか。
ちょっとよろしいですか?え?実は事情がありましてもうお会いするのはやめようと思いました。
え…。
メールでお伝えすればよかったのですがそれではあまりに失礼かと思いましてこうやってじかにお伝えする事にしました。
あの…。
今日はそれだけをお伝えしに参りました。
ちょっと待って下さい。
どういう事でしょう?訳を聞かせてくれませんか。
できればお察しして頂ければと思うのですが。
それは…誰かに止められたっていう事ですか?いいえ止める人などおりません。
だったらその事情を聞かせて下さい。
話して下さい。
生ビール1つとパラダイス・アイランド・アイスティー1つでよろしかったでしょうか?約束して頂きたいんです。
約束?これからわたくしが話す事は本当は人様に言えるような事じゃないんです。
ですので話を聞くだけにして頂きたいんです。
分かりました。
わたくし数年前に別れた夫の借金の保証人になっております。
先物取引っていうんですか…。
気が付いたら泥沼のような状態になっておりました。
教師を辞めたのもそれがうわさになって学校にいられなくなったからです。
今は人様に言えないような所でホステスをやっております。
とても下総さんと…。
お待たせ致しました。
ごゆっくりどうぞ。
とても下総さんとお会いできるような人間じゃありません。
そんな…。
何もおっしゃらないで。
ただ…現実を忘れさせて頂くために今日まで甘えさせて頂きました。
俺は今何を聞いてるんだ?だまされていたという事か?
これがわたくしの実像です。
今日まで打ち明ける事ができずにいて申し訳ありませんでした。
ですので会うのは今日限りにして頂きたいと思います。
そうだこのまま別れろ。
面倒な事になるぞ
本当に失礼しました。
あの…。
失礼だけど一つだけ聞いてもいいかな?何でしょう?できれば早くにおいとまさせて頂きたいのですが。
彩子さん。
いや堀切さん。
遠慮はいらないよ。
俺は引退間近だから大金は無理だけど20万…30万円だったらすぐにでも用立てできる。
「困った時にはすぐにでも言ってくれ」って言ったじゃないですか。
水くさいな〜。
俺たちはもっと何でも言い合える仲だと思ったんだけどな〜。
ありがとうございます。
何でだ…。
これでよかったんだ。
あれは本当は怖い女だ。
本性を現して俺はだまされるとこだったんだ。
縁が切れて俺は助かったんだ
うそだ!どう考えてもおかしいじゃないか。
それじゃ筋が通らない。
金を出すと言ったのにどうして怒ったんだ?
会いたい…。
声が聞きたい…。
顔が見たい…。
あの女のせいで俺の人生がめちゃくちゃになってもいい…。
とにかく会いたい!何だい?どうしたんだよ?連絡が取れない。
彼女と連絡が取れなくなった!お金を貸したのか?貸してない。
貸す前だった。
ならよかったじゃねえか。
金貸すと言った途端に連絡取れなくなる詐欺師がどこにいるんだよ!?あの人は純粋だったんだ。
純粋に告白したんだ。
俺がそれを踏みにじったんだ。
あんた本気で惚れちまったのか?ご主人あんた妙な事言ってたな。
妙な事?「あの人はお金持ちの奥さんのように見えるけど住んでる所はそうでもない」って。
あんた住所知ってるのか?あんた知らないの?メールの連絡先しか知らない。
頼む教えてくれよ。
駄目だよ。
頼むよ。
駄目駄目。
源さん…。
専務すまないな。
トラックは2時間ほどで戻すから。
ちょ…ちょっと待ってよ源さん。
って事はこれのところに行くんですか?止めてくれるな専務。
あの言いにくいんですがそのネクタイちょっと…。
え?今どきそんな幅の広いネクタイをしてる人はいないですよ。
あ…。
これをしてって下さい。
専務…。
フフッ。
回想
(島田)以前彼女がうちに蔵書を売りに来た事があった。
これがその時の領収書だ。
ここに住所が書いてある。
あんた犯罪者にならないよな?この年でストーカーみたいなまねはしねえよ。
私から聞いたって言わないと約束してくれるな?俺を信用してくれよ少しは。

(急ブレーキの音)あ〜。
うちと変わらねえな…。
留守か。
日曜日でも出勤してるのか…。
(クラクション)回想なんと真犯人は彩子さんのような上品なお金持ちの奥さんで戦後の東京でアメリカ兵相手に娼婦をしていた過去を隠すために殺していたんです。
人は何を隠して生きているか分かりませんね。
バカ野郎だ…。
こんばんは。
お待たせしました。
よろしくお願い致します。
はいお預かりします。
お願いします。
また来週ね。

(ノック)すいません。
下総です。
何ですか?どうしたんですか?すいません。
謝りたくてそれで…。
たまたま住所が分かったんで夜分に失礼かと思ったんですけど本当に一度だけ謝りたいと思って。
警察呼びますよ。
(ドアの開く音)どうぞ。
お口に合いますか分かりませんけど。
いや…。
すいませんでした突然に。
びっくりしました。
そうでしょう。
いつぞやは彩子さんの気持ちも考えずにお金の話なんかして本当に申し訳なかったと思ってます。
反省してます。
待ってらしたんですか?え?ここで。
それなら夫の姿をご覧になったでしょうか?はい。
夫は難病を患っています。
難病?筋痛性脳脊髄炎別名慢性疲労症候群という難病です。
20年前に発症しました。
初めは病名も分からずどんどん弱っていきました。
10年前からは私一人では介助できなくなり施設に入りました。
日曜日だけ外出できるんです。
そうでしたか。
夫は教師でした。
私はただ途方に暮れるだけの主婦でしかありませんでした。
だましていた事を謝ります。
いえそんな事は…。
人に言えないような仕事をしてきた事は事実です。
下総さんがお会いになっていたのは全部うその私です。
お許し下さい。
彩子さん。
どうかもう二度とこのような事はなさらないで下さい。
お願いします。
お話しできる事はそれだけです。
俺に力になれる事は何かないだろうか?俺は彩子さんに対してその気持ちは少しも変わってないよ。
彩子さんの力になりたいと思ってますから。
俺はあなたを見直したぐらいなんだ。
俺でよければ力にならせて下さい。
何がしたいんですか?え?そんなふうにしつこいのは私がこういう女だから安心したんですか?その服とても似合ってますね。
今までの事はいい思い出にします。
もうお会いする事はできません。
さようなら。
お帰り下さい!ねえ寂しいの?お前も寂しいのか?うん寂しいよ。
父ちゃんと別れてここに来たから。
お前父ちゃんが好きだったからな。
母ちゃんには悪い父ちゃんでもオート三輪に乗ってる父ちゃんの事が大好きだったもんな。
「何かを運ぶ事には価値がある」って父ちゃんがいつも言ってたよ。
物は積んであっても役に立たないが運ぶ事でようやく誰かの役に立つ。
だからトラック運転手になったんだ俺は。
だけどお前の父ちゃん死ぬまで寂しい人だった。
だから俺も寂しいんだ。
寂しいって誰かに言ったの?言わないよ。
誰にも言わない。
本当に言いたい事は誰にも言わないんだ。
誰にも言わないし誰からも言われない。
そんな人間がこの先本当に生きてる価値なんてあるのか。
ちょっと待って下さいね。
はい降ろしますんでねちょっとお待ち下さい。
涼しいですね風が。
はいじゃあ私が。
お願いします。
はい。
あちょっと失礼します。
は〜い。
すいません。
観光協会の方ですよね?介護旅行の会社の者です。
トラベルヘルパーです。
よろしくお願いします。
トラベルヘルパー?はい。
あの人たちをヘルパーしてるんですか?そうです。
介護が必要な方に快適な旅をして頂けるようお運びするのが私の役目ですから。
それじゃこの辺を見てますのであとでまた。
運ぶ?回想
(千代)源一まあ茶でも飲み。
源一寂しいんはしゃあない。
自分がやりたい事をやらなあかんで。
なっ。
おばあちゃんありがとう。
2014/07/05(土) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
土曜ドラマ 55歳からのハローライフ(4)「トラベルヘルパー」[解][字]

運送会社をリストラされた下総源一(小林薫)。独身貴族を気取っていたが、古書店で出会った謎めいた美女(安田成美)に心を奪われ、出口の見えない恋に溺れていく。

詳細情報
番組内容
長距離大型トラックの運転手だった下総源一(小林薫)は60歳でリストラされ、今は不定期便のアルバイトをしている。独り身のアパート生活を慰めるのは趣味で始めた読書。ある日、源一は行きつけの古書店で店主(麿赤兒)と親しげに話す客・堀切彩子(安田成美)と知り合い一目ぼれする。惰性のように送っていた生活にが然ハリが出てくる源一。かつてのプレイボーイぶりを発揮し、頻繁に彩子を誘ってはデートを重ねるのだが。
出演者
【出演】小林薫,安田成美,有薗芳記,草野イニ,原田美枝子,宮下順子,麿赤兒
原作・脚本
【原作】村上龍,【脚本】大森寿美男
音楽
【音楽】清水靖晃

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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