(所沢)来い。
(安田)いいところですねぇ。
ホント海も近いわ。
それに静かだし。
いつかこんな所に住みたいな。
(岡部)いやー僕も。
(友永)ここが俺の終のすみかだよ。
(岡部)終のすみかって人生最後の居場所ってことですか?
(井村)まだまだ元気じゃないですか。
社長。
(安田)さっき奈美恵さんに伺ったんですけどあの左の手前のボトルシップ。
あれは最近作られたんですって?
(友永)ああ。
元気なころは3日もあれば作れたがあれは3カ月もかかったよ。
(井村)僕なら1年かかっても無理ですよ。
(一同)ハハハハ。
(岡部)大したもんだ。
(奈美恵)お父さん。
褒められてるんだから喜べば?
(3人)フフフフ。
(友永)実はね…。
これも俺の手作りなんだよ。
(安田・井村)えっ?
(岡部)ステッキですか?
(友永)ここをこうやって引っ張る!
(安田)おおー!
(友永)折り畳み式の傘の壊れたやつをね使ったんだよ。
(安田)ああー。
(友永)こうやって離れた所のものを引き寄せる。
(3人)ハハハハ。
(岡部)そりゃ便利だ。
(友永)このスイッチを押すと。
(井村)おおっ。
レーザーポインター?
(友永)奈美恵。
あの本を取ってくれないか?
(奈美恵)アハハ。
でわたしが取るんです。
(一同)フフフフ。
(友永)物の名前が出てこないときに便利なんだよ。
(岡部)なるほどねぇ。
(井村)そんなものが作れるならすぐにでも現場復帰できますよ!
(安田)ええ。
もう一杯お作りしましょう。
(友永)いや。
俺はもういい。
俺は先に寝るよ。
(奈美恵)えっ?もう寝るの?
(友永)うん。
奈美恵。
後は頼んだよ。
(奈美恵)分かりました。
(岡部)いやどうも。
(友永)まあゆっくりしてってくれ。
(岡部)ああはい。
すみません。
せっかく来ていただいたのに。
(井村)いえ。
社長リハビリは順調なんですか?
(安田)脳梗塞の後遺症は?
(岡部)前は1人で歩くのも難しいって聞きましたが。
(奈美恵)つえを使って立ち上がるところまでは何とか。
でもほとんどのことはわたしがそばにいないと。
(井村)そうですか。
(安田)でも相当な回復だよ。
あんなのが作れるんですから。
あのー。
あそこには誰が?
(井村)社長の息子さん?
(岡部)ああ。
氷持ってきますね。
(邦宏)おらっ!うーっ!死ね!おらっ!うわあー!おっしゃ!・・
(舌打ち)
(岡部)でもちょっと考えれば…。
・
(割れる音)
(邦宏)うっ。
うっ。
あ…。
うっ!
(邦宏)う…。
ううっ。
・
(物音)
(3人)あっ。
おおー!何だ?
(3人)ああっ!
(井村)か…火事!火事!
(所沢)はあー。
何で切れんだよ!?チキショー!ええっ!?
(村田)ううーん。
(村田)はあー。
うーん。
(草薙)どうでしょう?先生。
(村田)分からん。
わたしの専門は犯罪心理だからね。
そうですか。
(村田)君はここの卒業生なの?
(草薙)ええ。
先生の授業も受けてました。
えー。
覚えてないなぁ。
(草薙)ああ。
結構サボってましたから。
フフッ。
失礼します。
(弓削)草薙さんの学生時代なんて想像つかないなぁ。
(草薙)バイト三昧で大学にはロクに行かなかったんだよ俺。
(弓削)卒業以来初めてですか?懐かしいでしょ?
(草薙)そんな心境だと思うか?
(弓削)すいません。
(草薙)新米気分が抜けねえな弓削は。
(弓削)すいません!
(学生)行く。
行くよね?
(学生)行く行く。
(学生)ヤバい時間。
(草薙)「湯川学」
(弓削)どうしたんすか?学生時代同姓同名のやつがいたんだ。
(草薙)学生時代からあいつは超がつく天才だった。
でもちょっと変わり者でな。
俺たちはあいつのことを変人ガリレオって呼んでたんだ。
変人ガリレオ。
(ノック)
(ノック)
(あかり)湯川先生は外出されています。
あっ。
(あかり)もうお戻りになられると思いますが。
お約束ですか?
(草薙)同級生なんですよ。
(あかり)中でお待ちになりますか?ああー。
ああ。
(あかり)どうぞ。
(あかり)どうぞ。
(瑤子)塩野谷さん。
プラズマ流体の実験データ取り終わりました。
(あかり)サンキュー。
じゃあER流体に移ろっか。
準備はどう?
(小淵沢)スターラーは1050でいいですか?
(あかり)そうね。
(瑤子)先輩。
電圧は?
(あかり)20ボルトに設定して。
(瑤子)はい。
(あかり)じゃあいくね。
(小淵沢)はい。
(あかり)よく見てて。
ER流体の粘性が強くなるから。
このまま流動パラフィンを滴下していくと。
(瑤子)泡が出てくるんですね!
(小淵沢)これは何の現象ですか?何だろう?
(瑤子・小淵沢)えっ?はっ?ちょっとこれ変!
(小淵沢)えっ!?
(小淵沢)うおおっ!
(あかり)うわあー!ああー!あああー!あーあーあー!あーあー!
(栗林)はあー。
あっ。
いた。
(栗林)先生。
湯川先生!
(湯川)ああ。
実習の時間です。
研究室にお戻りください。
よく寝た。
(栗林)先生はもう助教授なんですから自覚を持っていただかないと。
分かっています。
わたし別に文句言ってるわけじゃないんですよ。
先生より長く大学にいる者としてアドバイスっていうか助言っていうか。
栗林さん。
すいません。
忘れてください。
あれは何でしょう?えっ?ええっ!?うわあーっ!
(瑤子)どうしたらいいんですか!?
(小淵沢)分かんないよ!
(あかり)落ち着いて落ち着いて!
(草薙)とにかく窓開けろ!窓って俺か。
ほう。
(あかり)湯川先生!すいません!実験に何か手違いが!
(栗林)とにかく泡止めて!
(あかり)止まらないんです!なかなか面白い光景だ。
湯川!俺だよ草薙。
草薙。
なぜ君がここに?
(草薙)ああ。
ちょっとやぼ用でな。
今刑事やってんだよ俺。
(栗林)駄目です先生!湯川先生!刑事?そうか。
いやー懐かしい。
12年ぶりだよ。
(栗林)先生!
(あかり)助けてー!
(栗林)もう!ああもう!
(草薙)変わんないなあ。
(栗林)お前誰?
(小淵沢)小淵沢ですよ!
(4人の騒ぐ声)
(小淵沢)やっと終わった。
(瑤子)疲れた。
(栗林)はあー。
塩野谷君ともあろう者が単純なミスをしたもんだねぇ。
(あかり)ごめんなさい。
しかし科学を学ぶ君たちにとってさっきのような非日常的な体験というのは大切だ。
それが独創的な発想につながらないとも限らない。
ですよね!ほら。
(栗林)何が「ほら」だ。
調子に乗るな。
運が悪かったな。
草薙。
(草薙)いや。
なかなか楽しかったよ。
で僕に相談というのは?
(草薙)ああ。
お前に捜査協力を頼みたいんだよ。
えっ?捜査協力?先週日ノ江島で火事があって家の中から男の遺体が見つかったんだ。
初めは焼死と思われたんだが検視に回して事態が変わったんだ。
(桜子)あっ初めまして。
監察医の城ノ内です
(草薙)貝塚北署の草薙です。
よろしくお願いします
(弓削)弓削です。
よろしくお願い…
(草薙)こんな美しい先生がいらっしゃるとは
(桜子)ああーまあ。
フフフ。
お上手。
ウフフ
(桜子)おし
(弓削)ううっ
(桜子)友永邦宏さん男性31歳ここ見てほしいの。
刺創があるのが分かる?
(弓削)シソウ?
(草薙)刺された傷だよ
(弓削)う…
(桜子)ああっ!吐くならあっちでね
(弓削)うえーっ!
(桜子)傷の大きさは横3cm縦0.5cm。
胸背部にわたって貫通してるわつまり…
(桜子)これは殺人事件ねおそらく犯人は少なくても刃渡り30cm以上の刃物でガイシャを串刺しにしたんだ。
(栗林)串刺し!?
(あかり)刃渡り30cm以上!?
(草薙)例えば日本刀だ。
なるほど。
なかなか興味深い話だが僕に何の相談があるんだ?実は密室殺人なんだよ。
密室!?
(草薙)その家のドアには内側から鍵が掛かってた。
犯人がどうやって逃げたかが分からない。
(あかり)マジで!?合鍵を持っていたんだろう。
(草薙)チェーンロックだ。
合鍵があってもどうにもならないんだよ。
(栗林)窓から逃げたんでしょ。
(あかり)それじゃ密室になりません。
(草薙)窓には泥棒よけの格子がはまってた。
(あかり)ほらぁ。
(栗林)君が威張ること…。
(あかり)家の周りに足跡は?
(草薙)いや残ってない。
もちろん怪しい人影を見たという目撃証言はゼロだ。
本物の密室殺人だ。
犯人はこつぜんと現れ被害者を刺し殺しこつぜんと消えていった!そのとおり。
(栗林)そんなバカな。
つまりテレポーテーション!
(栗林)はあ?しかも刀を持った男。
侍?
(栗林)侍!?
(あかり)侍がタイムスリップしてきたのかも!
(栗林)タイムスリップ!?ハハハ!何を非科学的なことを!塩野谷君。
そんなものはあり得ない。
あり得ない?誰が証明したんです?えっ?西暦2000年11月2日。
インターネット掲示板でのある男の書き込みに注目が集まった。
彼が自分は2036年からやって来たタイムトラベラーだと名乗ったからだ。
タイムトラベラー!?未来からやって来たんですか?その書き込みの中で彼が説明したタイムマシンの原理や操縦法は非常に詳細で2036年までに起こると語った幾つかの予言。
第2次湾岸戦争の勃発。
アメリカでの狂牛病の発生。
ローマ法王の死などはその後見事に的中していた。
ホントか?
(栗林)嘘!そして2001年3月。
彼は予定の任務を完了したという言葉を残してこつぜんと姿を消した。
彼の言葉が本当ならばタイムスリップは可能だということになる。
(あかり)可能なんですよ!ちょっと待ってください。
湯川先生。
いくら何でも物理学者がタイムスリップを認めたら駄目でしょ。
もちろん今の科学技術でタイムマシンをつくることは絶対に無理だ。
しかしアインシュタインが相対性理論を発表して以来時間の概念は常に論議の的になってきたんだ。
タイムスリップが絶対に不可能だとは僕は思わない。
そりゃそうだけど。
(草薙)なるほど。
(あかり)科学のロマンですね。
しかしそうなるとタイムスリップしてくるのは当然未来の人間だということになる。
侍が過去からやって来てしかもわざわざ人を殺して去っていくなんて理屈が通らない。
(栗林)そうだよ!
(あかり)わたしは例えばって言ったんです。
(栗林)言ってないね!言いました!おそらく君が言う密室殺人は科学とは何の関係もないトリックだ。
物理学者の出番じゃないね。
(栗林)そう!湯川先生はお忙しいんです!お帰りください!
(草薙)しかしお前ならトリックを解明できるかもしれない。
ほら。
あんときだってそうだったろ。
(あかり)あのとき?
(草薙)湯川は学生時代この天才的な頭で殺人事件を解決に導いたんだよ。
(栗林)えっ!?
(あかり)ホントですか?先生。
もう昔のことだ。
どんな事件だったんですか?今は警察に協力する時間はない。
さあ実習を始めよう。
(あかり)えー。
(栗林)はい。
準備準備。
湯川。
もう帰ってくれ。
(栗林)お疲れさまでした。
(草薙)実は今度の事件現場の近くは穴場のビーチなんだよ。
ビキニ姿の若い女がうじゃうじゃいるぞ。
(栗林)そんなことで湯川先生が釣られるわけ…。
えっ?うじゃうじゃ?そりゃもう。
迷ってるの?素晴らしい。
男のロマンだな。
ロマンですねぇ。
ううー。
(草薙)よし。
じゃあ現場行こっか。
現場?殺人事件の現場だよ。
そのために来たんだろ。
僕はバカンスに来たつもりだが。
(草薙)バカンスは後。
行くよ。
じゃあ先生。
僕が女の子ナンパしておきます。
栗林さんにそんな才能が?フッ。
今まで黙ってました。
(栗林)君たち2人で来たの?物理学は好き?
(女性)はっ?何言ってんの?この人。
(女性)ヤバくない?
(女性)意味分かんない。
(草薙)消防が駆け付けたとき中は火の海だったそうだ。
(草薙)ドアが開かなかったからたたき破って消火活動したらしい。
なるほど。
(草薙)うえっ。
(せきばらい)火事の現場というのはなかなかすさまじいものだな。
そっちが寝室だよ。
はあー。
親は母屋に暮らしててここには被害者である息子友永邦宏が住んでた。
被害者はここに倒れてたんだよ。
(刑事)おい
(草薙)電話の子機がそばに落ちてたから電話中だったと思われたんだが。
(刑事)子機か通話記録が残ってないんだよ。
まあもしかしたら電話をかけようとしたときに襲われたかもしれないけど。
検視結果から推測すると犯人は後ろから被害者を刺した。
そして火を付けた。
その火が部屋にあった花火に引火してそりゃもうすさまじい光景だったらしいよ。
お前に考えてほしいのは犯人がどうやってここから出ていったかだ。
確かにどこからも出られない。
となるとこう考えるのが普通だ。
ああ。
犯人はこの部屋から出なかった。
出なかった?例えばこの床下に犯人の焼死体が転がっているかも。
えっ?この下に?おい。
何もないぞ。
そうか。
残念だ。
確信があったんじゃないのか?仮説を立てても実証で否定されればその考えは潔く捨てる。
それが物理学者のアプローチだ。
じゃあ犯人はどうやってここから出たんだよ?フッ。
フフフフ。
フッ。
ハハハハハ。
湯川。
ハハハハ。
さっぱり分からない。
分からない?実に面白い。
(栗林)ホントだって!うちの先生ね助教授になったばかりでまだ若くて青臭いんだけどさルックスは結構イケてるんだよ!
(女性)おじさんはその先生のためにナンパしてんの?
(女性)その人に気に入られたいわけ?ああそうさ!だって僕が将来…!
(奈美恵)どうぞ。
(草薙)ありがとうございます。
(奈美恵)いいえ。
ああ。
彼は僕の友人で帝都大学で物理学を教えてる湯川学といいます。
今回の不可解な出来事を解明するために捜査協力を依頼しました。
(友永)湯川学?初めまして。
(友永)わたしが死んだ邦宏の父親です。
これは娘の奈美恵。
よろしくお願いします。
もう一度事件のときの状況を。
(奈美恵)あの夜は…。
これはどなたがお作りに?えっ?
(友永)わたしです。
見事なものです。
(草薙)湯川。
事件の話を。
僕にはとても作れない。
実はこれも。
こうすると遠くのものを引き寄せることが。
折り畳み式の傘の柄を使ったんですね。
それからここにレーザーポインターを。
なるほど。
娘さんに取ってほしい物があるときに便利です。
そのとおり。
ではあらためて事件の話を。
湯川。
(草薙)気にならなかったか?何が?
(草薙)家族が死んだってのに全然悲しんでるふうじゃなかったろうあの2人。
実は相当嫌われてたんだよ死んだ友永邦宏は。
(女性)あれは前の奥さんの息子なのよ
(刑事)前の奥さん?
(女性)ええ
(女性)でも30年前に離婚してその奥さんあれがまだ1歳だったときに出てったんだって
(刑事)じゃあ今一緒に住んでいる奈美恵さんは?
(女性)二度目の奥さんとの間の娘さん
(女性)でもその奥さん交通事故で亡くなられたんだって。
その後友永さん脳梗塞で倒れちゃって
(女性)偉いわよ奈美恵さんは。
お父さんの面倒ずーっと見てるんだから
(女性)でもそこに突然来たのよあの息子が。
30年もたって
(奈美恵)ちょっと!
(友永)邦宏。
どうして急に?
(邦宏)おふくろが死んじまったんだよ。
覚えてんだろ?自分が捨てた女ぐらい
(倒す音)
(邦宏)あんたには俺を養う義務があるんだ。
父親なんだから俺はあの離れに住もうかなぁ。
ハハハ
(奈美恵)お父さん
(邦宏)超いいじゃん
(草薙)邦宏は自分が定職に就けないのは無責任な父親のせいだと言ってあの離れに住み着いたんだ。
(男性)しかもあいつには1,000万を超す借金があったんだよ
(男性)とやかく言ってんじゃねえやい!
(男性)その借金は友永さんが土地を切り売りして返してやったんだってさ
(男性)まったくロクなやつじゃなかったよ。
水上バイクでそこら中走り回ったり
(男性)おい!こら!いいかげんにしろ!
(笑い声)
(花火の音)
(男性)花火パンパンパンパン打ち上げたり。
迷惑してたんだよ俺たちは
(笑い声)
(草薙)あれが邦宏の水上バイクだ。
はっきり言って厄介者だったわけだよ。
死んで喜んでいる人間が結構いるはずだ。
僕は犯人が誰だとか動機が何だとかそんなことはどうでもいい。
僕の興味は犯人がどうやってあの離れから消えたのか。
それだけだ。
(所沢)おりゃ!すみません!この辺りでは何が釣れるんですか?ああ。
色々いるよ。
シロギスも釣れるし夜になるとフエフキダイのでかいのもかかる。
(草薙)すいません!先週の土曜の夜は釣ってましたか?
(所沢)あっ。
友永さんちで火事があった晩ね。
そこの岩場で釣ってたよ。
(草薙)不審な人物見ませんでしたか?
(所沢)ちょうど獲物がかかっちゃってさそれどこじゃなかったよ。
(草薙)ああそうですか。
(所沢)それがさ途中で糸が切れちゃってさ。
糸が切れた?あの。
それはどんな大物だったんですか?いや。
大物かどうか分かんないんだけどね。
12号のテグスが切れるなんて初めてだよ。
その後すぐあの離れから煙が上がり始めたんだよ。
おっ!来た!糸が切れた。
警察が物理学者を連れてきたの。
(紺野)物理学者?
(奈美恵)うん。
捜査協力だって。
(紺野)あいつが死んで誰が困るっていうんだよ。
でもしばらくは喪に服したふりぐらいした方がいい。
俺たち会うのはしばらく控えよう。
うん。
分かった。
(栗林)お願い!一生のお願いだよ!湯川先生とさ遊んであげて。
ねえ?
(女性)もうしつこい!
(栗林)湯川先生と…。
栗林さんにはナンパの才能はないようだ。
あーあ。
せっかく女の子がうじゃうじゃいるのに。
残念だったな。
・
(男性)すいません!
(栗林)待ってよ!待ってよ!僕と遊ぼうって言ってんじゃないんだってばー!・
(女性)何やってるんですか?
(栗林)お願いしまーす!うちの先生と遊んでやってください!女の子を連れていくって約束しちゃったんです!
(女性)でも全然相手にされてないんだ?はい…。
えっ?情けない。
(栗林)塩野谷君!?何で君ここにいるの!?
(あかり)わたしも殺人事件の捜査に加わりたくて。
(栗林)はあ?
(あかり)でも栗林さん。
湯川先生の助手だからってそこまで自分を捨てなくても。
(栗林)ハハハハ…。
分かってないな君は。
ここは夏のビーチだぞ!みんな自分を捨てに来てんだ!
(あかり)意味が分かりません。
・
(歓声)
(栗林)えっ?
(歓声)湯川先生!?
(栗林)草薙さんもいる。
(歓声・拍手)あっ!うまっ!うまっ。
(栗林)うおー!やった!終わり。
終わり。
うちの先生。
うちの先生。
先生!うちの先生!
(歓声)
(女性)湯川先生ってビーチバレーの選手だったの?
(栗林)カッコよかっただろ?はい先生。
枝豆どうぞ。
どうも。
(女性)カッコイイ!ビーチバレーは初めてだ。
(女性たち)えーっ!?初めてであんなにお上手なんですか?ボールの進入角度に合わせて手を差し出し反発力を計算してレシーブすればだいたいはコントロールできる。
できるんだよ!
(女性たち)すごい!超ヤバい!つまり物理学における弾力と位置エネルギーの法則ですね?そのとおり。
先生のアタックどうだった?
(女性たち)アタックもカッコよかった!アタックはいかにしてボールの軌道曲線とジャンプの最高到達点を合わせることができるかが重要なポイントだ。
(女性たち)カッコイイ!地球の…。
(栗林)先生のアタックに乾杯!
(女性たち)乾杯!乾杯。
はあー。
わたしあんなリアクションできない…。
・
(女性)でも相手の動きが読めないじゃん。
(草薙)ああいう小難しいトークが昔からあいつの武器なんだよ。
(草薙)ただずーっとあの調子だから結局女の子とは何の進展もない。
ベクトルを考えれば自分が腕を振る方向と攻撃するゾーンを計算することができる。
(女性たち)へえー!
(あかり)そうなんだ…。
(女性)ホント天才って感じだね。
(女性)カッコイイし超天才!君は今回の殺人事件に興味あんの?はい。
すごく。
物理学科の学生がどうして?湯川先生も物理学科の学生だったんですよね?わたし湯川先生が殺人事件を解決したって話が気になっちゃって。
あれ詳しく聞かせてもらえませんか?えっ?
(あかり)お願いします。
実は大学2年のとき殺人の容疑をかけられたんだよ俺が。
殺人の容疑!?
(草薙)ああ。
(草薙)あっ草薙です。
グリーンコーポ東本郷じゃなくてグランコーポ東本郷じゃないですか?やっぱり。
大丈夫です。
はい
(男性)あっ…。
ごめんな!
(草薙)「ごめんな」って落としたらどうしてくれんだよ!?
(チャイム)
(ノック)
(草薙)江島さん!
(舌打ち)勘弁してくれよ…江島さん。
ドレミピザです
(草薙)江島さーん…・
(女性の悲鳴)
(管理人)江島さん…。
江島さん!
(草薙)あっ…はっ?
(草薙)警察は彼女の死を他殺だと考えてた。
なぜなら…。
(刑事)この鍋に見覚えありますか?
(草薙)あの部屋に転がっていたものじゃ?
(刑事)ここに血痕が付いてたんですよ
(刑事)亡くなった江島千夏さんの血痕です。
江島さんはベランダから落下する前にこれで殴られたのではないかと思われますはっ?
(草薙)警察は俺を疑ってた。
江島千夏というその女がベランダから落下したとき部屋にいたのは俺だけだったんだから。
ちょっと待ってください。
俺は何もしてません。
だって…。
あの人…。
マンションの下で男の人とぶつかったんです。
雨はとっくに上がってたのに傘を差してて上の空な感じでしたその人がどうしたの?においです!その男の香水と同じにおいがあの部屋でもにおったんです!あの男あの部屋にいたんですよ!間違いありません男は岡崎っていって家具屋の営業マンだったんだよ。
警察の事情聴取に対してそいつはあの部屋に行ったことを認めたんだよ。
でも男がマンションを出た後女は墜落死したんでしょ?時間の整合性が合いません。
(草薙)そのとおり。
岡崎の供述もソファのカタログを持っていっただけだって。
そもそも警察は最初からそいつをシロだと思ってたんだからそれ以上は聴かないよ。
怪しいと思われてるのは草薙さんだけ?絶体絶命だよ。
キュッ。
フッ。
自分の無実を証明できるものが何にもなかった。
それでどうしたんですか?同じバドミントン部のあいつに助けを求めたんだよ。
そのとおり。
そのときシャトルにはマイナスの加速がかかっているわけだ。
(栗林)さすが湯川先生!これを利用してドロップショット…。
・
(草薙)湯川!湯川!おい湯川!
(草薙)邪魔して悪いんだけどちょっといいかな?
(湯川)邪魔かどうかは話を聞いてみないと分からない実はお前に頼みがあるんだ。
俺を助けてくれないか
(草薙)つまりその女を突き落としたのは俺じゃないって証明してほしいんだどうして僕が?
(草薙)俺の周りにお前ほど頭のいい人間はいないでも僕の専門は物理学だよ。
殺人事件なんて…
(草薙)じゃあこれならどうだ?直接手を下さずに人を転落死させる方法はあるか。
これを科学的に証明してほしい犯人がトリックを仕掛けたというのかい?例えばろうそくを使ったとかろうそく?例えばだよ死体をひもで縛ってベランダからつるす。
そしてそのひものもう一方をどこかに固定してそのそばに火の付いたろうそくをセットするろうそくが短くなるとひもが燃えて切れるそう!そうすれば犯人が立ち去った後で女をベランダから落下させることができるんじゃないかな?そういう仕掛けは考えられないだろうか?やってみたら?えっ?アイデアがあるなら試せばいい。
実験で結果が得られれば僕のアドバイスを聞くよりもよっぽど有意義だでも俺なんかが…。
そんな実験に価値があるなんて価値のない実験なんてないよ。
草薙君
(栗林)湯川君この間のリポートなかなか良かったじゃないありがとうございます
(栗林)でもさ君天才なんて言われてるらしいけど駄目だよ天狗になっちゃ。
若いときにちやほやされて駄目になった人間はたくさんいるんだから
(草薙)誰?助手の栗林さん来年は助教授かも。
良かったら僕のゼミに来ない?湯川君考えておきますうんあれ?湯川君Aランチ?僕は80円高いBランチ。
僕を目指して頑張りなさい。
ハッ…実験か…やったんですか?実験。
あのマンションの1階に空き部屋があってさ。
事件があった部屋と同じ間取りだっていうから管理人に頼んで入れてもらったんだよ。
よし…やった!・
(拍手)湯川…実験は成功のようだねでもろうそくが燃え尽きるには時間がかかるね事件があった部屋に君が来たときこのようにろうそくは燃えていたのかい?
(草薙)最初から短いろうそくを使ったとかなるほど。
すでに燃え尽きていたと言いたいわけか念のため聞くけどその部屋の柱にはビニールのひもが結ばれていたのかい?お前は意地が悪いな。
こんな方法じゃトリックは成立しないよ!俺が説明したときからお前は分かってたんじゃないのか!?先に言ってくれよ!こんな実験には意味はないって僕は問題点を指摘しただけで意味がないとは言っていない。
価値のない実験はないと言ったはずだでも…まずはやってみる。
その姿勢が大事なんだ。
実際の検証からしか新発見は生まれないもし君が実験をしていなければ僕は協力する気にはならなかった協力してくれるのか?この部屋の間取りは事件のあった部屋と同じなんだね?ああうん直接手を下さず人を転落死させる方法そうハハハハ…。
ハハハハ!湯川?分からないえっ?ハハハ…面白いねはっ?でも現象には必ず理由があるんだよ君のアイデアは基本的には悪くない。
死体が落ちた後に姿を消すひもがあれば問題は解決する姿を消すひも?えっ?おい湯川なるほど分かったのか!?そうか教えてくれ駄目だ。
まだ仮説の段階だ。
仮説は実証して初めて確かなものになるそれで実証したんですか?湯川先生は。
ビデオテープをくれたんだよ。
(あかり)ビデオテープ?これを警察に見せろって。
帝都大学の湯川学です。
今からある実験を行いたいと思いますまずこの鍋に少量のお湯を入れますそして火にかけます
(刑事)何かな?これ
(草薙)今から彼が実証してくれるんです。
直接手を下さず人を転落死させる方法
(刑事)ええっ?沸騰してきましたこのようにたっぷり水蒸気が上がったらふたをしますそしてそのまま一気に冷やします次にこの氷でふたの蒸気穴をふさぎます。
するとふたは鍋から離れなくなります
(刑事たち)フフフ…これは鍋を冷やしたことによって中の水蒸気が水に戻ったからです。
内部の圧力が低いため大気圧で押されて離れなくなったんです
(刑事)関係ないよね?事件と
(草薙)続きを見てくださいお吸い物のふたが…
(刑事)草薙さん。
それよりもあなたにもう一度お聴きしたい…とにかく見て!
(刑事)はぁ…ここに置いときます。
さてこの砂袋。
重さは約40kgあります。
これは亡くなった江島さんとほぼ同じ重さです。
江島さんが亡くなったときTシャツを着ていたのでこの砂袋にもそれをかぶせました。
次です掃除機のコードを目いっぱい引き伸ばしますそしてこのコードをTシャツの袖に通します通したら砂袋をベランダまで運びますこうすると掃除機はガラス戸に引っ掛かります。
これでコードの一端は固定できます。
さてあと一端はどうするか。
まず死体をつるしてしまいましょうここでさっきの鍋が登場しますこれで準備は完了です。
見ていてくださいまず最初の変化は鍋のふたの蒸気穴にくっつけられた氷。
当然溶けていきます。
溶けると中に空気が入る。
空気が入れば大気圧に押されていたふたが外れます
(落下する音)これで実験は完了です。
ありがとうございます。
栗林さん。
もう切っていいですよ
(栗林)湯川君。
こんな遊びに僕を付き合わせないでよ。
もう二度とやんないからね。
今回だけだからね!これから俺の取り調べ?
(ため息)相変わらず四色問題の証明を試みているのかい?
(石神)もしかしたら一生かかっても無理かも
(石神)今日はここまでかな。
僕は授業があるから。
じゃあまた。
湯川ああ。
またな石神・
(草薙)湯川!彼女の頭を鍋で殴ったのはやっぱりあの家具屋の岡崎ってやつだったよ。
あいつ江島さんとは不倫してたんだよ。
そして別れ話がこじれてケンカになった。
マンションの前で俺とぶつかったのはその直後だったんだその男が殺したと?いや実はあいつは殺してなかった。
彼女がベランダから落ちたのは男に捨てられたことをはかなんだ自殺だったんだやっぱり。
僕は彼女の死がおそらく自殺だろうと最初から思っていたよ
(草薙)えっ?あの実験は成功するまでに10回以上もかかってしまったんだ。
実際はあんなやり方ではうまくはいかない。
僕は直接手を下さず人を転落死させる方法があるということを証明してみたかっただけだでもあのビデオを見て警察が捜査方針を変えてくれたおかげで真相が分かったんだ。
お前に助けられたよ。
ありがとう湯川じゃあ失礼。
これから量子情報論の講義なんでね
(草薙)実はそんときから湯川は物理学者にしておくのはもったいないと思ってたんだよ。
そんなことがあったんですか。
・さあ帰ろう。
(あかり)えっ!?あしたは朝いちで講義なんだ。
行きましょう栗林さん。
(女性たち)えーっ!?ヤダ!
(草薙)おーい!ちょっと待て。
まだ事件の真相分かってないんだぞ。
(あかり)そうですよ!僕はもうじゅうぶん満足した。
(あかり)そんな!わたし来たばっかりなのに!ゆっくり遊んでいったらいい。
(草薙)いや彼女は殺人事件に興味あって来たんだよ。
(あかり)捜査のお手伝いに来たんです。
それなら事件現場はあっちだ。
幸運を祈る。
帰りましょう栗林さん。
(女性たち)ヤダー!
(栗林)あっ…。
ちょっと…。
わたしものすごいビキニ持ってきたんだけどなー。
この子たちなんて目じゃないくらいの超ビキニ。
湯川先生が残ってくれるっていうんだったらわたし着ちゃうんだけどなぁー。
フフフ…。
塩野谷君。
一緒に事件現場に!僕はビキニは嫌いじゃない。
ビーチで眺めるビキニは素晴らしい。
もし女子学生全員がビキニ姿で僕の講義を聴いていたとしたら僕はかなりうれしいだろう。
しかしまじめな君が超ビキニを着て殺人事件の現場に立ってる姿を想像したら。
(あかり)わたしはビキニを着て捜査するって言ったわけじゃ…。
栗林さん帰りましょう。
(栗林)はい。
(女性たち)えーっ!?
(あかり)ゆ…湯川先生!ビキニ見せたら気変わるかもよ。
嘘です。
ホントはそんなの持ってきてません。
僕も帰るよ。
(あかり)うーん!わたしは帰らない!
(草薙)お忙しいところすいません。
7月10日の夜に何があったのかもう一度お聞かせ願えますか?
(安田)友永社長の…。
いや前社長のお宅で酒を飲んでいたんです。
(草薙)一緒にいたのは?
(岡部)前社長と娘さんですがそのときはもう前社長はお休みになっていて。
氷持ってきますね
(岡部)奈美恵さんはちょうど席を外してました。
最初に窓が割れる音がしたんです。
窓が割れる音?
(岡部)でもちょっと考えれば…・
(割れる音)
(3人)あっ。
おおー!何だ?ああっ!
(井村)か…火事!火事!
(草薙)その離れに友永さんの息子さん邦宏さんが住んでたことはご存じでしたか?
(岡部)知ってました。
(安田)でもあの火事で亡くなったわけじゃないんでしょ?息子さんは。
(岡部)刃物で刺し殺されていたとか。
(井村)きっとあのガラスの割れる音は犯人と格闘したときの音だったんですよ。
その後で放火したんだよ犯人が。
(岡部)ひどい話だよな。
(草薙)やっぱり犯人を見た記憶ありませんか?逃げてく人影とか。
(安田)まったく見ていません。
(岡部)ドアにも窓にも内側から鍵が掛かっていたんでしょ?
(井村)どこに消えたんですか?犯人は。
それが謎なんですよ。
こちらは何をされている会社なんですか?溶接や溶射技術を用いた金属加工などをやっています。
(草薙)溶射?産業製品を表面コーティングして強化する技術ですね。
(岡部)ええ。
浄化ポンプや飛行機のエンジンなどを扱ってます。
(安田)あと爆発成形という特殊な金属加工も。
かなり専門的なことをされてる会社なんですね。
(井村)友永前社長が町工場から始めた会社なんです。
実は中学しか卒業されてないんですよあの人は。
でも金属加工の技術を猛勉強して会社をここまで大きくしたんです。
素晴らしい。
(栗林)湯川先生。
ご一緒してもよろしいですか?どうぞ。
(栗林)あっBランチ。
さすが!僕なんかAランチですよ。
栗林さんもBランチにすれば?
(栗林)とんでもない。
助手の僕が助教授と同じBランチだなんて。
アハハハハ。
(栗林)またあの事件のことを考えてるんですか?犯人が被害者を刺した後外に出て内側の鍵を掛けるのは不可能だ。
(栗林)何度も言うようですけど先生…。
内側から鍵を掛けて外に脱出することも不可能。
(栗林)教授会からにらまれたら先生だけでなく…。
つまり犯人は最初からいなかった。
いなかった!?死んだ被害者以外あの離れには誰もいなかった。
だって被害者は刺し殺されたんですよ。
刺し殺された…。
でしょう?実は刺し殺されたというのは正しくない。
被害者は死んでいた。
そしてその体には刺し傷があったというのが正確な表現です。
そりゃそうだけど…。
ですけど。
・
(草薙)湯川!面白いことが分かったんだよ。
面白いこと?友永さんと最初の妻…。
邦宏の母親だよ。
実は離婚が成立してなかったんだよ。
だから二度目の奥さんは籍を入れることができなかった。
それより奈美恵だよ奈美恵。
実は彼女2番目の奥さんの連れ子だったんだよ。
(草薙)友永さんと血のつながりもなければ養女になったわけでもない。
今も他人のままなんだよ。
これが何を意味するか分かるか?いや。
つまりだ遺産は全て邦宏のものになるはずだった。
ところが死んだ今となっては全て奈美恵のものだ。
奈美恵には殺す動機があったんだよ。
興味ないね。
おい。
言っただろう。
僕は犯人が誰だとか動機が何だとかそんなことはどうでもいい。
湯川。
やれやれ。
人間ってのは変わんねえもんだ。
・
(奈美恵)お父さん。
お昼ご飯だよ。
(友永)ああ。
ありがとう。
今日は少し涼しくなるんだって。
散歩行こうか。
邦宏が死んでまだ間もないんだ。
近所の人にそんなとこ見られたら不謹慎だってまゆをひそめられる。
そうね。
奈美恵。
(奈美恵)うん?いや。
頂くよ。
(奈美恵)どうぞ。
・
(チャイム)
(奈美恵)はい。
(あかり)あっ。
帝都大学で湯川先生の研究室にいる塩野谷あかりです。
あの。
事件現場を見せていただけないでしょうか?えっ?
(あかり)ああー。
うわっ。
すごっ…。
(あかり)うわっ…。
うわっ!?原形ないよ。
うーん。
人の手を使わずに刺す…。
どういう意味?
(あかり)えっ?人の手を使わずにって。
(あかり)ああ。
事件についての証言や現場の説明を客観的に見ると犯人は最初からここにいなかったんじゃないかと思うんです。
どこか別の場所にいて何らかの方法で邦宏さんに刺し傷をつけたのかも。
それはあなたが考えたの?
(あかり)はい。
自分の知識を何かの役に立ててみたくて。
発想が柔軟なのね。
湯川先生のとこの学生さんって。
(紺野)はい。
学生が1人で?いかにも優等生って感じの女の子。
(あかり)うーん。
(草薙)湯川!
(栗林)出掛けてます。
(草薙)どこに?
(栗林)さあ。
また何か新事実でも?
(草薙)ええ。
まあどうせ湯川は聞く耳持たないでしょうけどね。
(栗林)あの人は人間関係には興味ゼロですから。
天才と呼ばれる人間にはありがちありがち。
その点僕は人の気持ちの分かる科学者ですけどね。
栗田さんでしたっけ?
(栗林)栗林です。
ああ失礼。
あなたも物理学の専門家なんですよね。
子供のころは神童と呼ばれてました。
その新事実とやらは僕がお聞きしましょ。
お役に立てるかも。
いや。
実はあの奈美恵という娘には恋人がいるんですよ。
ほう。
紺野…。
紺野宗介30歳。
リゾートプランナーです。
リゾートプランナー。
2人の間には結婚の話も出てるらしいんですがおそらく邦宏の存在が障害になってた。
邪魔だったんだ。
邪魔なやつは消したくなる。
彼女にはアリバイがありましたが紺野が共犯なら殺人は可能です。
なるほど!どうですか?
(栗林)はっ?謎は解けますか?
(栗林)謎?犯人がどうやって邦宏を殺したかです。
さっぱり分からない。
ちょっと待ってください。
草薙さん。
今しゃべって損したと思ってるでしょ?
(草薙)いや。
思ってませんよ。
いや思ってる!万年助手の僕とかかわって時間の無駄だったって。
(草薙)いや。
失礼します。
(栗林)いやいや。
普通無理だって。
今の話だけで謎を解くのは。
(草薙)気にしないでください。
絶対無理です。
情報足りな…。
(草薙)ああ俺だ。
何か新情報…。
新情報ない?
(草薙)シーッ!シーッ!あっ分かった。
すぐ行く。
(栗林)時間下さい。
もうちょっと考えさせてください。
何かねぴかっと出そうなんで。
待って草薙さん!痛ぇ!お忙しいところすいません。
実はもう少し詳しく聞きたいことがありまして。
どうぞ。
(あかり)ありがとうございます。
いただきます。
(あかり)ああー。
(奈美恵)さっきのあれってどういう意味?
(あかり)あれ?
(奈美恵)自分の知識を役に立てたいって。
(あかり)ああ…。
わたし自分が何のために勉強してるのかよく分からないんです。
(奈美恵)えっ?
(あかり)子供のころから理系が得意で大学の物理学科に進んだんですけど。
ああ。
そう聞くと優等生っぽいでしょ?
(奈美恵)ええ。
でも物理学を究めたって就職先ないんですよ実際。
(奈美恵)そうなの?
(あかり)だってそんな専門知識を必要とする仕事って限られてるでしょ?先輩を見てると全然関係ない企業の営業とか事務とかにいっちゃったりそれでなきゃ学校に残って研究を続けるとか。
それに理系の女の子ってそれだけで男の子から敬遠されるし。
結婚も難しそうだし。
だから最初からわたしもそういうの全然期待してないし。
でも科学って人の役に立ってこそ価値があると思うんです。
だから草薙さんが湯川先生を訪ねていらしたときはびっくりしたっていうか。
殺人事件を解決できるかもしれないんだって思ったらもうわくわくしちゃったんです。
あっ。
わくわくだなんてすいません。
(奈美恵)だからわざわざ1人で調べにいらしたのね?すいません。
ずうずうしかったですか?塩野谷さんってホントはすっごく女の子っぽいんでしょ?
(あかり)えっ!?普段からそういうの出せばいいのに。
そんなこと言われたの初めてです。
わたしはすごくカワイイと思う。
(あかりの笑い声)ありがとうございます。
あっ。
奈美恵さんはずっとおうちにいらっしゃるんですか?ええ。
父がいるから。
(あかり)えっ…。
脳梗塞で倒れてから体が不自由になっちゃって。
わたしがいないと駄目なの。
(あかり)そうなんですか…。
でももうそれが当たり前の生活になってるから。
ああ。
あの離れの先の方も調べてみてもいいですか?湯川先生にいつも言われてるんです。
答えが出ないときは視点を変えてみろって。
一見関係のないことがヒントになることがあるって。
湯川先生が好きなの?
(あかり)ち…違いますよ!どうして急にそんなこと…。
湯川先生は尊敬はしてますけど好きとかそういうことは。
あっ…。
変人ガリレオですよあの人は。
アハハハ。
変なこと言わないでください。
そう。
ごめんなさいね。
どうぞ色々と調べてみて。
(あかり)どうして奈美恵さん急にあんなこと?わたし何か変なこと言ったかな?ガラス?
(あかり)あっ!?塩野谷君。
塩野谷君。
(あかりのうめき声)大丈夫か?湯川先生!?痛ててて。
わたし何で…。
(悲鳴)心配ない。
これだよ。
こんなものが命中する確率なんて限りなく低いぞ。
ある意味すごいことだ。
すごいって…。
大丈夫か?痛てて…。
(奈美恵)ごめんなさいね。
わたしも一緒に行けばよかった。
(あかり)いえ。
1人で調子に乗って歩き回ったわたしが悪いんです。
塩野谷君。
はい?光るものを見つけたと言っていたな?ああ。
小さなガラスのかけらだったような…。
ガラス?火事。
窓が割れた。
窓がどうしたんですか?でもその前に。
最初に窓が割れる音がしたんです窓が割れる音?
(あかり)湯川先生?火事の前に窓が割れた。
(奈美恵)今度は何を調べてるのかしら?
(あかり)何を調べてるんですか?先生。
(安田)スペースデブリモデルというのは宇宙開発分野における成形爆薬の応用技術なんですそれを友永前社長が開発された?ええ。
その完成度の高さには世界中が注目してくれて。
今はあのNASAにも技術提供をNASAに?社長はメタルの魔術師って呼ばれてたんですメタルの魔術師…ここわたしが倒れた場所…。
(あかり)えっ!?えっ…ちょっ!?あっ…。
おおー。
(所沢)途中で糸が切れちゃってさ
(安田)メタルの魔術師って呼ばれてたんです
(あかり)ガラス?
(あかり)湯川先生。
何か分かったんですか?教えてください。
駄目だ。
まだ仮説の段階だ。
仮説は実証して初めて真実になる。
じゃあ早く実証してください。
待ってろ。
(あかり)あっここです。
(栗林)おい小淵沢。
バッテリー充電したんだよな。
(小淵沢)はい。
しました。
(栗林)あれ?ああ。
(草薙)これは?
(栗林)事件現場を再現しました。
(草薙)これから何始めるんだ?
(あかり)わたしにも分かりません。
(栗林)先生。
準備できました。
では始めましょう。
これを見てくれ。
この金属板はステンレスだ。
厚さは約1mm。
しかし均一ではなく薄いところと厚いところがある。
(草薙)いったい何するつもりだ?決まってるだろう。
友永邦宏がどうやって殺されたのか。
それを再現するんだ。
再現!?このケースには爆薬が装てんしてある。
爆薬!?
(栗林)黙って聞いて。
そして爆薬の裏側には起爆装置が取り付けてある。
起爆装置?ここからはこの金属板をこのケースに溶接した状態の物を使用する。
さらにこのケースをマレージング鋼でできた防音装置に収納する。
そしてあれが被害者。
その向こうが窓。
そしてこれをここに。
(小淵沢)はい。
あの離れにもこんな本棚があった。
そこにこれと同じような物を犯人はセットしたんだろう。
(あかり)犯人が?湯川。
あのもう少し分かりやすく教えてくれないか?じゃあこれを見てくれ。
通常爆薬を爆発させた場合その力は球状に広がる。
四方八方といった具合に。
しかしこのようにABという伝播速度が異なる爆薬を装てんすることで爆発によるエネルギーはこのように集中し金属板は溶けて流体になり高速の飛翔体が形成される。
つまり爆発の瞬間金属板はこのように先端部がとがった状態に変形し飛び出していくわけだ。
なあ。
俺には何のことだかさっぱり分からねえよ。
わたしも理屈は分かるんですが事件とどういう関係があるんだか…。
つまりこういうことだ。
栗林さん。
お願いします。
(栗林)はい。
点火3秒前。
210。
点火。
(爆発音)完了。
湯川先生。
(あかり)ああっ!?えっ…。
(草薙)えっ!?
(栗林)刀で刺したみたいです。
(小淵沢)先生。
うん。
これが貫通したんだ。
(草薙)これが?
(あかり)どうしてこんなふうになるんですか?小淵沢君。
映像を?はい。
(あかり)えっ…。
何?
(小淵沢)いきます。
(栗林)おおーっ!?こりゃすごい。
湯川先生。
これで僕の仮説は実証された。
これと同じことを犯人が…。
いったい誰が?
(あかり)「爆発圧着における金属の流体的挙動の解析」
(草薙)友永さん!?約20年前に学会で発表された論文だ。
実に素晴らしい内容だよ。
爆発によって金属がどのように変形するかを膨大な実験によって明らかにしている。
爆薬の種類量金属の材質形状サイズ。
無数といっていい組み合わせを一つ一つ試しているんだ。
あの人にかかればどんな金属も望みどおりの形状に変形させることができるだろう。
メタルの魔術師と呼ばれたのも納得だ。
(あかり)すごい。
こりゃもう学者顔負けだよ。
中学しか卒業してないあの人にこんなことが?とてつもない努力家だ。
(チャイム)
(奈美恵)はい。
お父さまはご在宅ですか?
(奈美恵)はい。
ご用件は?息子さんを殺害したのは友永さんあなたですね?何を根拠にそんなことを?根拠はあなたの書かれた論文です。
友永さん。
これから僕の仮説を話しますがその前に奈美恵さんに1つだけ確認しておきたいことがあります。
えっ?事件のあった日もしくはその前日あたりにお2人はあの離れに行かれましたか?正直にお答えください。
あのボトルシップを取りに。
そのとき少しの間だけでも友永さんを1人にしませんでしたか?
(邦宏)ボトルシップ?
(友永)そっちの部屋の押し入れに段ボールがある。
俺が昔作ったボトルシップが入ってるんだ
(奈美恵)今夜お父さんの昔の部下の方たちが来るからそれを見せたいってじゃあ段ボールごと持ってけ。
邪魔でしょうがねえんだよ手荒に扱われたくない。
お前も行ってくれはいなるほど。
そのときですね。
あなたがこれを仕掛けたのは。
あなたは1人になったすきに…。
これをセットしたんです。
(奈美恵)これは?遠隔操作で人を刺し殺す装置です。
そして事件のあった夜。
(安田)もう一杯お作りしましょう
(友永)いや。
俺はもういい。
俺は先に寝るよ
(奈美恵)えっ!?もう寝るの?
(友永)うん。
奈美恵。
後は頼んだよ
(奈美恵)分かりました
(友永)まあゆっくりしてってくれあなたがこの部屋を出たのは事件が起こる直前でした。
そしてあなたは邦宏さんに電話をかけた。
通話記録が残っていなかったのはそれが内線電話だったからです。
その電話の目的は彼を窓際に立たせるためだった。
何だよ?そしておそらくあなたはこんなことを言ったんでしょう。
お前の水上バイク誰かが盗もうとしてるぞ何!?ターゲットが射程圏内に入ったのを確認したあなたは遠隔操作のスイッチを押したんです。
そして次の瞬間。
(爆発音)
(邦宏)うっ!?
(所沢)痛っ。
何で切れんだよ!?チキショー!
(3人)あっ。
おおー!何だ?ああっ!か…火事!火事火事…以上が僕の仮説です。
塩野谷君。
これが実験でこの仮説を裏付けてくれたステンレス板。
そしてこっちが先日海岸から20m沖合の海の底で見つけたステンレス板です。
しかしターゲットが射程圏内に入ったからといって確実に命中するとは限らない。
セットの角度が少し違っただけで目的を達成することはできなくなる。
そのためにそのステッキが重要な意味を持つことになるんです。
えっ?ステッキを伸ばしたときの長さが約120cm。
ちょうど邦宏さんの心臓の高さと同じです。
あなたはそのためにステッキを改造したんです。
そしてレーザーポインターもステンレス板の軌道を測定するための細工だったんです。
・
(物音)
(奈美恵)お父さん。
これね?ああ。
ありがとう
(邦宏)用が終わったらさっさと帰れよ友永さん。
あなたのたった1つのミスはそのステッキの仕掛けを僕に教えたことです。
さすが天才物理学者だ。
ガリレオと呼ばれるだけのことはある。
(友永)わたしの部下が束になってもあなたにはかなわない。
あなたが立てた仮説は完ぺきに正解です。
お父さん。
どうしたんですか?湯川先生。
先生があの事件を解決したんですよ。
僕じゃない。
あの人はわざと僕に教えたんだ。
えっ?
(奈美恵)父は誰かに気付いてもらいたかったんだと思います。
(奈美恵)だから部下の方たちや湯川さんにあのステッキを見せたんです。
ここをこうやって引っ張る
(安田)おおー!それからここにレーザーポインターをなるほど。
娘さんに取ってほしい物があるときに便利ですそのとおりそれは…。
完全犯罪になってしまえば自分が逮捕されないから。
父はきっとわたしのためにあの人を殺したんです。
あなたのために?あの人がいなくなれば自分の財産をわたしに譲ることができる。
そしてわたしは彼と結婚することができる。
(刑事)ああ!?そこまであなたのことを考えてるならどうしてあなたを養女にしなかったんですか?友永さんはあなたをホントの娘のように愛してたんでしょ。
本当の親子になってしまったら自分の介護がわたしの義務になってしまうから。
(刑事)そっち持って。
せーの。
(刑事)せーの。
椅子頼む。
(刑事)はい。
(奈美恵)そんなのわたしにとっては何の苦労でもなかったのに。
わたしはお父さんの娘だから。
お父さんは自分が重い罪を犯して刑務所に入ればわたしが自由な人生を送れると思って。
僕は…。
友永さんに操られたわけだ。
(刑事)調書に記録されたことは今後の裁判や検事取り調べの際証拠として採用されますので慎重にお答えください。
(奈美恵)父のことをよろしくお願いいたします。
(紺野)奈美恵。
(奈美恵)宗ちゃん。
お父さんを独りぼっちにしちゃいけない。
一緒に待つから2人でお父さん待とう。
宗ちゃん。
・奈美恵さん。
僕たちは裁判で証言台に立ちます。
そして情状酌量を訴えます。
(奈美恵)えっ?社長が1日でも早く奈美恵さんの元に戻れるように。
社長に伝えてください。
社長のお世話は僕たちみんながしますからって。
ありがとうございます。
ありがとうございます!
(刑事)あなたはご自分が殺人犯だと自白をされました。
この内容に誤りはありませんか?
(あかり)湯川先生。
わたし将来の進路を決めました。
うん。
警察官になります。
科学捜査研究所に入って湯川先生から学んだことを犯罪捜査に役立てます。
なるほど。
悪くない。
その前にキャラを変えてみようと思って。
もうまじめさんは卒業します!恋もしてもうホントに超ビキニも着て大学生活を充実させます。
ちょっと待て。
恋とビキニがどうして大学生活を充実させるんだ?あっ。
ビキニはおまけです。
いや。
僕が気になってるのは恋の方だ。
ビキニは面積という物差しがある。
しかし恋なんてものはまったく不確かなものだ。
先生。
恋が大学生活を充実させるという因果関係を証明することは不可能だ。
そもそも恋の単位は何だ?絶対的な尺度でその質や量を測ることができない存在…。
もういいです。
それは自分で考えます。
失礼します。
全然分かってない。
まったく分かってない。
うそうそうそ。
(遊沢)あれが…。
(鬼塚英吉)GTO。
2014/07/05(土) 15:00〜17:00
関西テレビ1
ガリレオΦ[再][字]【福山雅治主演!大人気ドラマのスペシャル版!湯川が初めて捜査協力】
「ガリレオ誕生の秘密!!海辺の超密室殺人事件に天才物理学者が挑む!」
福山雅治 北村一輝 長澤まさみ 三浦春馬 渡辺いっけい 真矢みき 香里奈 蟹江敬三
詳細情報
番組内容
とある島で密室殺人事件が起きた。事件解決の糸口を求め、専門家の意見を聞くために帝都大学を訪れた草薙刑事(北村一輝)は、大学の掲示板で懐かしい名前を発見する。その男の名は、湯川学(福山雅治)。かつて草薙と同じバドミントン部の仲間で、今は帝都大学理工学部物理学科の助教授だ。学生時代から“超がつくほどの天才”と名をはせていたこの男の頭脳にいちるの望みを抱き、草薙は、湯川の研究室を訪ねることにした。
番組内容2
湯川と再会した草薙は、助手の栗林宏美(渡辺いっけい)の制止に耳も貸さず熱心に湯川を口説く。はじめは「興味はない」と冷たくあしらっていたが、草薙に「事件現場の島には、ステキな水着美女がウジャウジャいるぞ」とそそのかされてその気になった湯川は、捜査に協力するため事件現場に向かうことになった。そして、湯川研究室の研究生で好奇心旺盛な塩野谷あかり(長澤まさみ)もこの事件に興味を示し、勝手に湯川たちに
番組内容3
ついて行く。
一方、事件現場を訪れた湯川と草薙の前に現れたのは、被害者の父親で車いす生活を余儀なくされている友永幸正(蟹江敬三)、被害者の妹で父親の介護をしながら生活を共にしている奈美恵(香里奈)、そして彼女の婚約者、紺野宗介(長谷川朝晴)…。謎めいた人々が次々と捜査線上に浮かび上がってくる中、果たして犯人は誰なのか?動機は?そして何よりも、どうやって密室殺人を完遂させたのか…?
出演者
福山雅治
北村一輝
長澤まさみ
三浦春馬
佐野和真
品川祐
香里奈(特別出演)
渡辺いっけい
真矢みき
蟹江敬三
ほか
原作・脚本
【原作】
東野圭吾『落下る』『操縦る』(文藝春秋近刊『ガリレオの苦悩』所収)
【脚本】
福田靖
監督・演出
【演出】
西坂瑞城
【プロデュース】
鈴木吉弘
牧野正
音楽
福山雅治
菅野祐悟
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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