被害者の心を深く傷つける性暴力。
支援の動きが始まっています。
強かんや、強制わいせつなどの性暴力。
警察に届けられるのは氷山の一角です。
国の調査で、被害者の多くは依然として誰にも打ち明けられない実態が浮かび上がりました。
この事態を打開するために今、期待されているのがワンストップ支援センターです。
体や心のケアから裁判の支援までさまざまなサポートを1か所で提供します。
長く続く心の傷を癒やすため被害者自身も立ち上がっています。
当事者だからこそ分かる思いを共有し、支え合うグループです。
被害者が前に歩くために私たちは何ができるのか。
その声と向き合い支援の在り方を考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
犯罪被害者への対策が最も遅れているのが性暴力被害者への支援だといわれています。
同意のない性的接触は恐怖、屈辱を伴う重大な人権侵害で尊厳を傷つけられた被害者の心身に深い傷を与えます。
性暴力の被害者が救済されていくためには被害を受けた直後速やかに適切な治療やカウンセリングを受けさらに犯罪を犯した加害者が訴追され、処罰されるため警察や司法関係者との連携も必要です。
しかし性暴力被害の大きな特徴は打ち明けづらいということです。
内閣府が行った男女間における暴力に関する調査では異性から無理やり性交された経験があると答えた女性は7.7%。
このうち誰にも相談しなかった人は67.9%にも上っていまして多くの被害者が適切な支援を受けることなく沈黙を続けている実態が浮かび上がっています。
男女を問わず、また少なからず幼い子どもたちも被害を受けている中ですべての被害者を、救い上げ支えるためにどうすればいいのか。
国は、3年前ようやく第2次犯罪被害者等基本計画で性犯罪被害者支援を重要なテーマの一つと位置づけました。
そして、被害者の気持ちに寄り添いながら、迅速に医療的、心理的、法的な支援を一つの場所で受けられるワンストップ支援センターをすべての都道府県に設置するよう促すとしました。
これまで設置されたワンストップ支援センターは16か所にとどまっています。
支援体制の充実そして被害者への理解をもっと深めてほしいと被害者や、その家族がみずから訴える動きが加速しています。
取り残されてきた性暴力被害者への支援。
被害の実態から、ご覧ください。
10代、20代の女性の悩み相談を続けてきたNPOです。
今、性暴力被害を受けた人の証言を記録する取り組みを進めています。
これまで証言をしてくれた女性は、15人。
団体では映像を作品にして公開し性暴力被害の実態を社会に訴えたいと考えています。
聞き取りから改めて浮かび上がったのは周囲の人たちの心ない言動で被害者の心が繰り返し傷ついているという現実です。
みずから体を傷つけたり過食や拒食になったりする人も多いといいます。
人知れず、心の傷を深めている性暴力の被害者。
今、こうした人たちを救うために広がり始めているのがワンストップ支援センターです。
都内にある支援センターです。
対応するのは、性暴力の知識を持った専門スタッフ。
24時間電話を受け付けています。
このセンターの仕組みです。
まずセンターでは被害者から状況を聞き取ります。
そして病院、警察、弁護士など必要とされる機関との連絡を一手に引き受けて行います。
一つの窓口で手続きが進むためワンストップ支援センターと呼ばれています。
この支援センターによって救われた女性です。
被害に遭ったのは、1年ほど前。
社員旅行でのことでした。
宴会で酒を飲まされ酔ったところを取引先の男性に強かんされたといいます。
会社に、被害を訴えたところ思わぬ形で自分が責められました。
助けを求めてインターネットで検索したところセンターのホームページを見つけて駆け込みました。
被害の翌日、女性は支援センターと連携している産婦人科の病院で検査を受けました。
被害から72時間以内であれば多くの場合、薬で妊娠を避けることができます。
性感染症の検査や心の状態もチェックしました。
弁護士事務所にも同行してもらい会社との交渉に備えました。
退職後は、紹介してもらった精神科に1年間通院。
今では、別の会社で働けるほど回復しています。
しかしワンストップ支援センターは多くの地域でまだ整備されていません。
その一つ、沖縄県です。
支援センターを作るため活動をしている田中真生さんです。
田中さんは当時、小学5年生の娘が性暴力被害に遭いました。
犯人は、自分が再婚した夫。
気が付いたとき娘は、すでに妊娠していました。
娘をどうやって守ればよいのか。
当時の田中さんの日記には誰にも相談できない混乱の中で悩みを深めていたことがつづられています。
「すごく、すごく苦しい」。
「何もかも投げ出して死んでしまいたい」。
被害から1年3か月後夫は警察に逮捕されます。
田中さんは動き出しました。
仲間を募り沖縄県に陳情書を提出。
24時間、被害を相談できるワンストップ支援センターの設置を求めました。
実名を公表しみずからの体験を語りながら署名を集めたのです。
1万人以上の署名に後押しされ沖縄県にもワンストップ支援センターが来年1月を目標に設置されることが決まりました。
今夜は、性暴力の被害者の心のケアに大変お詳しい、武蔵野大学教授、小西聖子さんにお越しいただきました。
性暴力を受けた被害者、そして家族の方々の苦痛、今の田中さんのケースを見ますと、本当に計り知れないものがあるわけですけれども、小西さんは実際に、その治療にも当たっていらっしゃいまして、何も言えずにじっと黙っている方々って、そんなに多いんでしょうか?
多いですね。
たぶん、この番組見てる方の多くは、そういう被害を受けた人がどれくらい苦しいかっていうのを、ご存じないんだと思うんですよね。
私の所に来られる方の被害からの年数の平均って、6、7年ぐらいです。
受けてから?
はい。
その間はずっと苦しくて、ずっと誰にも言えなくてっていう状態の方が多くて、例えばこういう方が一番よく言われるのは、加害者が怖いって、それはまあ、皆さん、分かると思うんですけれど、そうなると、男性全体が怖くなる。
さらにそうすると、人がたくさんいる所は、みんな怖くなる。
駅も行けないし、電車も乗れないし、コンビにも行けないっていう状態になる。
こういう人が結構たくさんいます。
例えば、18歳で被害に遭ったとしても、5年間、電車も乗れず、学校も行けず、職場も行けなかったら、そのあともダメージって、ものすごく大きくなりますよね。
社会的な、本人に与える影響って、とても大きいんです。
もし、もっと早く介入できれば、何か支援が受けられれば、これがもっと短く、例えば半年とか、1年ぐらいで、もちろん、ダメージは大きいけれども、軌道に乗っていくということもできると思いますね。
被害者の中には、幼いお子さんたちも多いということですよね。
結構、若い人、未成年の人が多いのが特徴だと思いますね。
子どもの場合は、やっぱり、お母さんが怒るからっていうような言い方で、本当は、お母さんもすごいショック受けてらっしゃるんですけど、なかなか言えない。
大人まで持ち越す方もいますし、子どもの中には男の子も結構、被害を受けてることもあります。
そうした中で、自分が悪かったんじゃないかとか、自己肯定感を非常に低めて、心の痛みというのも非常に大きいでしょうね。
自分を責めるっていうのが、こういう被害を受けた方の共通の症状だと言ってもいいくらいですね。
自分を責めたり、自分でこうやって汚れてしまったんだというふうに思ったり、自分に価値がないって思っていると、価値がないものを守ることって、人はできないので、むしろ今度、次に危ないことがあったときなんかにも、自分を守れないし、もうどっちでもいいんだっていうふうになって、今度は非行とか、そういうことにもいきやすくなってしまうって、そういう問題もありますね。
こうした深刻な被害があるにもかかわらず、日本の取り組みっていうのは非常に遅れ、3年前にワンストップ支援センターを、すべての都道府県に設置するよう促したにもかかわらず、まだ16か所しか出来ていないと。
なぜ遅れるんですか?
本当に性暴力の被害については遅れてるっていう気がしますけれども、一つは、これ、被害を受けた方がやっぱり言えない状況がある。
その人たちがどういうふうに大変かが、全然社会に伝わらない、その声が出てないわけですよね。
声が出ないと、今度は、また世の中も、そういう問題はないように思ってしまうという悪循環が一つあるように思います。
家庭の中や、身近なところにある暴力の被害っていうのは、例えば虐待やDVも含めて、どれもなかなか表に出ないうちは分からない。
例えば20年ぐらい前は、そうだったと思うんですけれども、例えばDVだったら、DV防止法というものが出来て、制度が出来て、その中で、今やDVということばを知らない人はいないですよね。
もちろん、そちらも問題はありますけれども、ずいぶん分かるようになった。
そういうことからすると、性暴力はまだ、何か制度として、被害者を支援していくものが出来ていないというふうに言えると思います。
そしてようやく出来たワンストップ支援センター、16か所ですけれども、ここの体制は十分でしょうか?
いえいえ、そんなことは全然ないと思いますね。
16か所それぞれにいろんな問題を抱えてると思います。
例えば、財政的にやる気はあっても、財政的に、ずっと持続的にやることができないで大変であるっていう所もあれば、今度は一応、形は出来たんだけれども、産婦人科医との連携とか、弁護士との連携っていうところがなかなかうまくいかないという所もあれば、それから24時間の支援員を置くのが、ワンストップセンターの標準的な形だと思いますが、それもとても大変なことなんですね。
例えば、そういうことをボランティアでって、なかなかできないです。
持続可能じゃないですよね。
そうですね。
今、お話ありましたように資金も、そして専門員も、サポートも少ない中で、性暴力を受けた人々が声を上げ始めています。
そして支援を受けられるよう、ネットワークを作りながら、この体制のぜい弱さを乗り越えようとする動きも出てきました。
支援の窓口をどう増やすか。
岡山県では、全国でも珍しいネットワーク作りが始まっています。
岡山県被害者サポートセンターおかやまVSCO
(ヴィスコ)です。
ここには併設された病院はなく窓口には相談員がいるだけ。
独自の仕組みで運営しています。
特徴は、県内にある78の産婦人科の病院とネットワークを作っていることです。
被害者が、どの病院に行っても性暴力被害に関する支援を受けることができます。
すべての病院で被害者の気持ちに寄り添った支援を実現できるようスタッフは病院を回ってきめ細かな配慮を要請しています。
この病院では被害者が訪れたときに人目を避けることができる部屋を用意することになりました。
こうしてセンターでは県内すべての産婦人科を窓口にして人目を気にして孤立しがちな被害者を救う機会を増やそうとしているのです。
こんにちは。
性暴力の被害を受けた人たちが、互いに助け合う動きも広がり始めています。
この日、都内のレストランに集まった6人の女性。
皆、性暴力被害に遭った人たちです。
代表の山本郁恵さん。
16年前、知り合いの男たちから集団で強かんされました。
被害者を支援する会合で出会った3人がお互いの気持ちを共有する会を始めたのは、2年前のこと。
今では救いを求める被害者の声が各地から寄せられています。
大分県から参加したこの女性は8歳のときに誘拐され強かんの被害に遭いました。
その後、事件が公になるにつれ男性の友人から心ないことばをかけられるようになりました。
当事者だからこそ分かる思い。
今を生きるために支え合う場になっています。
サロンの活動が知られるようになり体験談を語ってほしいという依頼も寄せられています。
この日、山本さんたちが訪れたのは和歌山県の警察学校です。
現役の警察官70人を前に被害直後、警察の対応で感じた気持ちを伝えました。
当事者の声が性暴力被害に対する社会の理解を変えようとしています。
今の…ですけれども、例え性暴力の被害を受けても、そこで人生が終わるわけではないと、胸を張って生きていけるんだということも伝えたいという思いがあるそうです。
本当に、ああやって顔を出してね、お話してくださるグループというのが出来てきたんだなっていう感じがしますね。
ふだん、臨床してても、私以外にもそういう被害に遭った人がいるんですかっていうのが、わりと多くの方が、みんなひとりで、私だけだって思ってるので、声が出るということは、それから、そういう人がいることが分かることは、すごく大事だと思います。
多くの被害者が泣き寝入りをしたり、救済されない状況、本当に一刻も早く変えていかないといけないと思うんですけれども、何が一番大切ですか?
どんな支援も、やっぱりニーズがあるということを、社会が知らないと、変わっていかないと思うんですね。
例えば、災害だとか公害だとか、そういう被害についても、あっ、この人はこういうふうに考えてるんだというのが分かるの、非常に大事ですよね。
そういう意味では、性暴力被害者の声が、ちゃんと社会に通るっていうことが、すごく大事だと思います。
だから、声が聞こえるようになるということですね。
そのために、国連は20万人に1人、こういう所を作れ、ワンストップ支援センターを作るのを推奨してるんです。
そこまでいかなくても、せめて100万人に1人ぐらい作ってっていうのが、本当に私が今思っていることですね。
それを希望しています。
こうやって被害者の方々が、あるいは家族が声を上げ始めた、その声を本当にしっかりと受け止めていかなくてはならないですね。
そうですね。
そこは少し変わってきたと思うんですね。
2014/07/17(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「性暴力被害 動き始めた支援」[字]
自分が望まない性的行為「性暴力」。警察に届出がある被害は、氷山の一角だ。支援センター設置の動きなど、被害者救済の体制をどう整えていくのか、現場の模索を伝える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】武蔵野大学教授…小西聖子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】武蔵野大学教授…小西聖子,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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