はいどうぞ!いらっしゃいませ。
(杉崎啓三)ご苦労さん。
舵異常ありません。
左舷異常ありません。
(汽笛)スタンバイエンジン!スタンバイエンジン。
(ブザー音)スタンバイエンジンサー。
艫を持てオールラインレコー!
(児島克生)艫ラインレッコーサー!おもてラインレッコーサー。
「艫ラインクリアサー」「おもてラインクリアサー」了解。
左舷ワンタッチアヘッド。
左舷ワンタッチアヘッド。
(ブザー音)左舷ワンタッチアヘッドサー。
(汽笛)
(田川敏夫)高松に何しに来た?「セイユウ」のこと調べに来たんだろ!うわぁ!
(衝突音)
(水音)船長!ちょっといいっすか?何だ?乗船前に名物の讃岐うどんを食ってきたんすよ。
うどん?ええ。
自転車で30分も走って田んぼの中の一軒家なんです。
じいさんとばあさんがやってる手打ちでこれが昔懐かしい味っていうか硬からず軟らかからずですね。
あの…。
お前ね…。
はい。
うどんの講釈しに来たのか?いえ問題はその先なんですよ。
1杯150円2杯で300円消費税込み!そりゃ安いなぁ。
でしょ?今度俺も連れてけな!ああ先聞いてくださいってば!満足してまた自転車にまたがってその帰り道です。
奥さん!
(杉崎紀伊子)あらっ児島さん!何してんですか?宝探しよ。
宝探し?これ。
へぇー。
昔はいっぱい落ちてたんだけど近頃はすっかり少なくなっちゃって。
あそっか奥さん高松生まれだったですもんね。
そうよ。
子供の頃あの土手を通って学校に通ってたの。
(笑い)でもガラスのかけらなんか集めて金魚鉢にでも入れるんですか?お供えするの。
え?お墓ですか?海?これみんな奥さんが撒いたんですか?そう。
お墓の周りをガラスの勲章で飾ってあげるの。
誰のお墓なんですか?大好きだった人。
男?女?男よ。
(笑い)親戚かなんかだ!初恋の人とかですか?う〜んそんなところかな。
ふ〜ん。
問題だなこれは。
ね問題でしょ?何が?男の墓ですよ!その周りをガラスの勲章で飾りたいなんてただごとじゃないじゃないですか。
どうして?奥さん初恋の人だって言ったんですよ。
死んだ人だろ。
でも未だに忘れられなくて墓参りに行ってるんですよ!心の中まではわからんよ。
だって夫婦でしょ?俺が船長だったら絶対追及しますね。
どんな男でどういう関係だったのか。
むこうが言わないことを無理に聞くことはない。
夫婦の間に秘密があってもいいんですか?お前も俺くらいの歳になればわかるさ。
まぁその前にまず相手を見つけることが肝心だがな。
はぐらかさないでくださいよ。
こっちがこんなに気揉んでんのに。
勤務があけたら150円のうどん俺がおごってやるよ。
船長!
(サイレン)
(中原刑事)ご苦労さまです。
(汽笛)
(大林冬美)海…。
706です。
はい。
「高松西署の発表によりますと高松港で水死体となって発見された人は持っていた運転免許証から東京の調査会社中央情報リサーチの社員松田昇さん38歳と判明しました」「後頭部に殴られたような傷があり高松西署では他殺の疑いが濃いとみて捜査を進めています」
(サイレン)
(坂下由紀)この人ですか?ええこの人でした。
神戸行きのフェリーに乗ってたんですね。
私見てしまったんです。
この人が海に突き落とされるところ。
(船員たちの話し声)すいません!一等航海士さんは?ああ私ですけど何か?警察の者です。
署まで同行願います。
私がですか?どうして?連行するんだったら訳くらい聞かせてくださいよ。
港で水死体が発見されました。
この船の乗客と思われます。
本船の乗客?確かですか?それを調べてるんです。
乗客のことなら船長の私か事務長に聞くのが筋ですよ。
どうして一等航海士に同行を求めるんですか?何か心あたりは?はぁ…ありません。
これを見てください。
水死体で発見された人の写真です。
見覚えは?はぁ…さぁ。
目撃者がいるんですよ。
制服の袖に金筋3本の船員さんがこの人を怒鳴ってたと。
あっ…そう言えば…。
立ち入り禁止の甲板にいたんで注意したんですよ。
(中原刑事)注意だけ?ええ。
言うこときかないんで大声は出しましたけど。
出航作業中でこっちも気が立ってたもんですから。
それで取っ組みあいになった!とんでもないですよ。
体に触ってもいません。
触りもしないのに海に転落したんですか。
そんなこと知りませんよ。
こっちはすぐその後持ち場に戻ったんですから。
詳細は署で伺いましょう。
児島は疑われてるんですか?目撃者の証言と食い違いが…。
どう違うんですか?さっき取っ組み合いになったと言いましたね。
はい。
目撃者はそう証言してるんですか?はい。
冗談じゃないですよ!!いったいどこのどいつなんですかその目撃者ってのは!!それは言えません。
同行していただけますね。
船長…。
児島お前の言っていることに間違いはないんだな?もちろんですよ。
だったら警察によく話して納得してもらえ。
俺も会社に報告してすぐに行く。
嘘なんか言ってませんよ!何回言ったらわかるんですか!ここは船の上じゃない。
大声を出しても通らんよ。
そっちがあんまりわかんないからだよ!これじゃまるで犯人の扱いじゃないですか!あんたの言うことには一つも裏づけがない。
怒鳴っただけということにもすぐに持ち場に戻ったということにも!出航準備中は乗員はそれぞれの部署に付いてるんです。
お互い行動見てる者なんて誰もいませんよ!!だが乗客がいた。
現にあんた見られてたんだよ。
その目撃者が制服の船員が乗客を海に落としたと証言している。
逮捕状請求しようかえ!逮捕で2日拘留で10日プラス10日。
じっくり付き合ってもらおうか。
(石井支店長)それでお願いします。
あっ船長!警察は逮捕もありうると言っています。
そんな馬鹿な!署長の一存では決められないと言っていた。
上の方からの指示があるようで…。
上の方から?ええ。
県警本部ですか?さぁそれは…。
署長の上といえば刑事部長か本部長か…。
とにかく行ってみます。
ああ待ってください!その辺になるといきなり出向いても…。
そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!児島が逮捕されるかの瀬戸際なんです!!
(ノック)失礼はお詫びします。
生駒丸船長の杉崎です。
刑事部長さんですか?
(青田省司)青田です。
私の部下の一等航海士が高松西署に連行されたことはご存知でしょうか?聞いています。
乗客を海に落としたという疑いのようですが本人は強く否定しています。
私も児島はそのようなことをする男とはどうしても思えない。
船員は誰でも乗客の安全は命をかけて守ります。
まして児島は見習航海士の頃から私が側において育てた男です。
信頼しておられるんですね。
そうでなければ同じ船に乗っていられません。
お気持ちはよくわかります。
しかし船長さん。
私も部下を信じてるんですよ。
その部下が一等航海士への疑いは消えないと言っている。
これは殺人事件なんです。
それにしても逮捕は行き過ぎじゃありませんか?高松西署では一存では決められないと言ってました。
この事件は早々と本部の刑事部長さんが指揮を執るほど重大なんでしょうか?逮捕状の請求はしていません。
では帰していただけるんですか?「警察の調べにはいつでも応じる」。
船長さんがそう保証してくださるならね。
もちろん。
保証します。
さぁ上がれ上がれ。
はい。
お帰りなさい。
大変だったわね児島さん。
最低ですよ。
船長掛け合ってくんなかったら今夜帰してもらえなかったですよ。
コーヒーでも淹れてやれ。
あっビールの方がいいか?はい!
(笑い)
(笑い)さすがの児島さんもだいぶこたえたようね。
警察の調べはそんな厳しかったのか?厳しいなんてもんじゃないですよ。
閉め切った狭い部屋に閉じ込められて2人がかりで責められるんですからね。
「やったろ!お前が犯人だ!」。
あれじゃ気の弱い奴はやってなくたってその気になっちゃいますよ。
冤罪ってそういうことろから生まれるのかしら。
わかりますか僕がくやしいの…。
ええよくわかるわ。
簡単にわかんないでくださいよ。
僕が悔しいのは船員である自分が乗客を海に突き落としたって言われたことなんですよ。
この気持ちは悪いけど女の奥さんにはわからないと思うんだけど…。
わかるって言ってるでしょ!長年船員の女房やってるんだし。
それに…。
それに何だ?つまり誇りを傷つけられたってことでしょ?それで死んだ人私知ってるわ。
死んだ?誇りを傷つけられてか?ええ。
船員だったかどうかは知らないけどお墓には「海」って…。
海?あっあの墓ですか?奥さんがガラスのかけらあげてた。
ええその人。
どういう人なんだ?もう40年以上も前の話よ。
その人はどこからともなく高松に流れてきて川原に小さな小屋を建てて住んでたの。
その人はなぜか「セイユウ」と呼ばれていたわ。
どうしてそう呼ばれるのか5歳の私には想像もつかなかった。
大人はそこに行っちゃダメって言ったけど私はそこに行くのが好きだった。
だってセイユウさんはちっとも恐くなかったしいつもきれいなガラス玉を…。
ダメー!馬鹿野郎!
(泣き声)目に砂が入ったか?よしよし。
ほらっもう泣くな。
(紀伊子)大きなゴツゴツした手だけど優しい手つきだったわ。
よーし泣きやんだからご褒美に勲章をやろう。
青いガラス玉で周りが海みたいに見えたわ。
それがガラスの勲章の由来だったんですね。
それで奥さん今でもあの墓に…。
そうよ。
こうして高松にいる間は供えてあげようと思って。
しかしそのセイユウって人はどうしてガラスの欠片なんか磨いてたんだ?私も聞いたことがあるの。
どうしてって…。
中野…。
飯島…。
西岡…。
平山…。
滝沢…。
人の名前を唱えてるみたいだった。
それはそのセイユウの死とも関係があるのか?さぁ?さっきお前言っただろう。
その人は誇りを傷つけられて死んだって。
言うには言ったけど…。
それはどういうことなんだ?どういうって…。
あはっ…そこが肝心な話じゃないか。
そうですよ!もともとこの話は僕の冤罪から始まったんですから。
わかりました!じゃぁその人の死んだ時の話をします。
おーい!急げ急げ!こっちだこっち!急げ!ほらっ早くしろ!セイユウさんは大きな石を抱いて死んでたわ。
ダメダメ子供は見ちゃダメ。
少し大きくなってから知ったんだけどある疑いで警察に調べられてたんですって。
警察に?何の疑いで?婦女…暴行。
でも違うわ!セイユウさんはそんなことする人じゃない。
濡れ衣よ!今の児島さんと一緒。
そう言い切れるのか?その時お前5歳だったんだろ?言い切れます。
あれは絶対に冤罪。
周りの大人がそう言ったのか?何も言わなかったわ。
どこから来たかもわからない人の名誉なんて誰も考えてあげようとしなかった。
だからあの人は死んで自分の名誉を…。
奥さん!どうしちゃったんですかね?
(泣き声)児島さん負けちゃダメよ。
濡れ衣は自分で晴らしなさい。
もちろんですよ!僕は死んだりしませんよ!お前だけの問題じゃない。
船の上の事件だ。
船長の俺に全責任がある。
濡れ衣を晴らす手がかりは僕を犯人だって証言した目撃者だな。
何者かわかったのか?警察は名前を教えてくれませんでした。
でも言葉の端々では地元高松の人しかも女性みたいなんですよ。
よし手分けして乗船名簿を調べよう。
確認が取れなかった一人というのは?乗船名簿の住所に該当者がいないんです。
偽名か…。
それにもう1つ不思議なことが。
どういうことだ?操舵手の三宅くんが2〜3回行ったことのあるバーのママを見かけたと言ってるんです。
船上で?神戸で降りるところを。
後ろ姿だけで断言はできないそうですが…。
乗船名簿には?それがないんです。
そのバーの場所わかってるのか?はい。
(街の音)いらっしゃいませ。
ちょっと失礼。
初めてだけどいいかな?はいどうぞ。
こちらへ。
ああ。
ああ「ゆき」って店の名前はママの名前だね?あらっどうしておわかりに?あそこに名札がかかってる。
火元取締り責任者坂下由紀。
まぁ目ざといのねぇ。
仕事柄ね海の上だったら1キロ先のボートまで見逃さない。
船員さんですか?船長です。
ああこの店船乗りよく来るの?いえあまり。
あっ私の船の乗員が2〜3回来たと言ってた。
その方お名前は?三宅です。
船名は生駒丸。
思い出した?いいえ…申し訳ありませんけど。
三宅はママのことよく覚えてるよ。
神戸港でも見かけたって。
私神戸なんかに行ってません。
生駒丸から降りたんじゃないんですか?人違いしてらっしゃるのよ。
2回や3回のお客様ではお互いにほらっよく覚えてないでしょ?しかしですね…。
そりゃそうだよ!あっ惚れると他人までその人に見えるって言うけど三宅もその口かな?
(笑い)ああ…ちょっとごめんなさい。
ああどうぞ。
(電話)
(電話)はい。
何!
(汽笛)あーちょっと乗船ですか?
(大林冬美)あっいえ。
あの…一等航海士さんは?私ですけどこの3本筋が目印です。
あっ…。
一等航海士に何か?あ…。
事件のことを伺いたいんです。
事件?この船から人が落ちた時の。
(ため息)どうして私に聞くんですか?それは…。
私が警察に呼ばれたから?地元の新聞じゃ船員が関与かって書いてあるところもあるし無責任な報道にはつくづく頭にきてるんですよ!関与は否定してらっしゃるんでしょ?当たり前でしょ。
だから勤務にもついてるんです。
ごめんなさい。
私は忙しいんです。
どこの新聞かテレビか知りませんけど取材だったら警察行ってください。
取材じゃありません。
プライベートでお聞きしたいんです。
プライベートに?犯人が航海士さんだとは思ってません。
でも誰が…。
(ため息)それはこっちが聞きたいですよ。
何か手がかりありませんか?近くに誰かいたとか変わったことがあったとか。
あなたもしかして海に落っこった人の関係者ですか?いいえ違います。
じゃ犯人に心当たりでも?そうなんですね?あなた僕が犯人だとは思ってないって言いましたよね。
会ったこともない僕を!ということはこの事件について何か知ってるってことですよね?教えてください。
いったい何知ってるんですか?あっ!セイユウの墓ですね。
地元でも覚えてる人はほとんどいない。
この辺りもすっかり変わってしまったようですな。
あのセイユウさんをご存知なんですか?知りたいんですよ。
どういう人物だったのか教えていただけませんか?いや…どういうって言われても。
婦女暴行で警察に調べられ川で自殺したということはわかりましたが…。
婦女暴行だなんて!していない?していません。
あなたはそれを証明できますか?証明と言われても…。
こうして墓参りをしていらっしゃるのは事実をご存知だからでは?すいません。
私ちょっと急ぎますので。
杉崎さん!生駒丸の船長の奥さんですね。
もう1つうかがいたいことがあるんですよ。
前にもセイユウのことを聞きに来た男がいたでしょ?いいえそんな人は。
この男なんですがね?見覚えありませんか?さぁ…。
テレビのニュースや地元の新聞にも写真が出ました。
あっ。
杉崎船長の船から海に落とされた男ですよ。
確か東京の調査会社の?私は同僚なんです。
あのこの人セイユウさんのことを調べに来たんですか?そうです。
そしてご主人の船で殺され容疑が部下の航海士にかかっている。
奥さんの墓参りも事件と何か関係が?ありません。
ある訳ないじゃないですか!ただいま。
どうしたんだ?明かりもつけないで。
具合でも悪いのか?私あなたにお話ししなければいけないことが…。
おいおいあまり脅かさないでくれよ。
この前セイユウさんの話をしたでしょ?ああお前が子供の頃の。
あの時言えなかったんでけど…。
ちょっと待て。
言えなければ言わなくていいんだぞ。
でも…。
言えないのには訳があるんだろ。
無理に聞きたいとは思わんよ。
どうしても聞いていただきたいの。
セイユウの婦女暴行のことか?おわかりになった?お前の様子がおかしかったからな。
セイユウさんの濡れ衣は幼女暴行だったの。
その対象はわたし。
その夕暮れセイユウさんはもう1つガラスの玉を持って来てくれたの。
丁寧に丸みをとって今までよりずっと大きな勲章。
おじちゃ〜ん。
きいちゃん誰か来てるの?おいっ待て!紀伊子に何をした。
きいちゃん大丈夫?おい何をしたんだ!おいっ!その話に尾ひれが付いて幼女暴行の噂になったってことを私はずーっと後になってから知ったの。
あの時大声で違うって叫んでたらセイユウさんは死なずにすんだかもしれない。
セイユウさんの自殺の原因は…私だったんです。
長い間俺にも言えず一人で苦しんでいたんだな。
言ってもしかたがないことだもの。
それがなぜ話す気になった?実は今日お墓の前でセイユウさんのこと調べに来た人に会ったの。
それがあなたの船から転落した人の同僚だったのよ。
何?東京の調査会社の人。
その人セイユウさんの自殺が私に関わりがあること知ってるみたいだった。
東京の調査会社が40年前のセイユウの事件を調べてるのか。
今頃になってなぜ?その訳を聞けばよかったんだけど私なんだか恐ろしくなっちゃって逃げ出してきちゃたの。
だって…。
わかるよ。
いきなりお前の秘密の部分に踏み込んできたんだからな。
ええ…。
それに…。
セイユウのことを調べていた調査員が俺の船で殺された。
私のお墓参りもその事件に関わりがあるって見られたみたい。
児島さんの濡れ衣にとっては悪い材料になるでしょ?悪いだけでもない。
事件の動機が少し見えてきた。
動機って?セイユウの冤罪を調べられては困る人物がいるんじゃないかな。
その人が真犯人かもしれないわね。
でもどうやって探すの?今のところ手がかりは「ゆき」というバーのママだ。
クルーが勤務をやり繰りして見張ってる。
そのママのマンションに男がいるらしいということは突き止めた。
お帰りなさいませ。
どうもありがとう。
あっ!このホテルに泊まってたんですね。
フロントで名前聞きましょうか?大林冬美です。
どちらから来たんですか?東京。
あっでも宿泊カードに書いた住所はでたらめです。
それじゃ名前もでたらめ?いいえ。
それは本名です。
あなたこの間いきなり僕訪ねて来て逆に質問されて逃げちゃいましたよね。
あれからずっと考えてたんですよ。
いったいどんな人なんだろうなって。
育ちが良くて率直ででも世間知らずのお嬢様違いますか?逃げたのはまずかった。
私も後でそう思いました。
それじゃ仕切りなおしませんか?はい。
あれが屋島。
でこっちが鬼ヶ島。
このホテルのラウンジはデートの名所なんですよ。
でも僕には殺人事件の疑いがかけられてるしあなたも景色どころじゃなさそうだ。
何かを恐れてるように見えるんだけど。
私ある人を探してるんです。
その人が生駒丸の事件と関係があるんですね?なければいいと祈ってます。
どういう人?あっそれは…。
言えませんか?ごめんなさい。
あなたにとって大切な人なんですね。
わかりました。
もう話してくれなんて言いません。
僕もその人が事件と関わりのないことを祈りますよ。
一緒に捜していただけませんか?え?初めての土地で人捜しは大変なんです。
私一人では…。
いいんですか?もしその人が事件と関わりがあるとすると僕と利害が対立するんですよ。
それはわかってます。
でも私は事実を知りたいんです。
それは児島さんも同じでしょ?そこのところでは目的が一致するんじゃありませんか?あなた世間知らずなだけじゃなくて勇気もあるんですね。
(笑い)81歳の祖父からはいつもおきゃんって呼ばれてます。
(笑い)
(電話)はい中原。
おうっうん。
何児島が!うん。
よしわかった。
児島航海士が大林冬美と?これで事件と背後がつながりました。
しかし航海士がどうして政治の世界と…。
大林一族の政治力は各方面に及んでますから。
本部長もその辺を懸念しておられた。
児島航海士にもう一度事情聴取を!いやその前に公安に調査を依頼しよう。
支店長何か?杉崎さんは児島航海士の身元保証人でしたよね?ええそうですよ。
学生時代からの経歴もご存知ですか?それは経歴書に。
いやもっと詳しく。
とくに思想身上とか政治活動とか。
思想身上?どうしてそんなことを?本社に警察が調べに来たそうです。
それで人事課から問い合わせが。
どういうことですかそれは!!青田さんあなたにお訊きしたいことがあります。
あっ生駒丸の船長さんでしたね。
警察はどうして児島の思想身上まで調べるんですか?この事件には政治的背景でもあるんですか?ここで大声は困りますよ。
中へどうぞ。
この事件に政治的な背景があるか。
そのご質問にはお答えできません。
ではこちらから申しておきます。
児島は偏った思想身上の持ち主でもなければ政治活動に関わったこともない。
親代わりの私が断言します。
そうですか。
しかし船長さん。
今親代わりと言われたが彼の女性関係についてもご存知ですか?女性関係?最近若い女性と交際してるようですよ。
警察は若い男女の交際にまで干渉するんですか。
ただの交際ならいいんですがね。
それはどういう意味ですか?本人にお訊きになったらいかがですか?
(紀伊子)児島さんが若い女性と?知ってるかお前?いや〜知らないわ。
そんな人ができたら真っ先に私に紹介するはずだけど。
警察がマークしてるんだ。
どういうことそれ?わからない。
児島の調査をしてるのは刑事部ではなく公安関係らしい。
今度の事件は最初から県警本部の刑事部長がタッチしてるんだ。
いくら殺人事件でも異例のことだよ。
ただの事件じゃないってこと?う〜ん…。
背後に政治的な何かが…。
失礼しま〜す。
遠慮しなくていいっすからね。
ここは僕んちみたいなもんだから。
ほ〜らジャストミートお食事中!さぁどうぞどうぞ!あのご紹介しますね。
こちら「ホテル花樹海」に滞在中のお嬢さんで…。
はじめまして大林冬美です。
です。
奥さんの家庭料理吹きまくって引っ張ってきちゃいました。
ご飯まだあります?ええ。
ありあわせでよかったら。
そのありあわせが旨いんだよ!ね?じゃちょっとお待ちになってね。
まぁお座りなさい。
はい。
失礼します。
船長一つお断りしておきたいんですが…。
なんだ。
私はこの人の名前が大林冬美さんで東京から来た人だっていう事こと意外は何も知りません。
そうか。
「相手が言いにくいことは訊くな」。
船長から教わった教訓です。
うん。
ですから…。
何を力んでるんだ?俺は何も訊くとは言ってない。
そうすか。
はぁ失礼しました。
奥さん僕手伝います。
内緒で一つ訊いていいかな?はい。
名物の讃岐うどん食べた?あっいえまだ…。
そりゃいけない。
今度一緒に行きましょう。
あぁ。
ありがとうございます。
1杯150円。
田んぼの中の一軒家でじいさんとばあさんがやってるんだそうだ。
ああいいな!私そういうの大好きです。
そう?はい。
(由紀)ねえ。
私送ってく。
いや…それはまずい。
だって…もう会えないかも。
時期をみて君が東京に来ればいい。
行ってもいいの?本気になってもいいんですか?行くわよ私!何笑ってるんですか?気になるか?なりますよ。
いち早くいいムードになっちゃって。
讃岐うどんのお話よ。
田んぼの中の店に連れてってくれるって。
僕が話した話じゃないですか!ずるいな船長!どこにあるの?その田んぼの中のお店って。
前奥さんに会ったじゃないですか。
ガラス玉のお墓の近くですよ。
あああの辺。
ガラスの玉の墓って?あああのね奥さんが玉砂利みたいにガラスのかけらを。
「海」って刻んであるお墓ですか?知ってんのか?誰の墓かも?はい…。
あなたはセイユウさんとはどういう?
(電話)あいいよ。
出る。
もしもし。
杉崎。
ああ。
ん…?そうかよし。
児島とそっちへ向かう。
男が動いた。
出かけるぞ。
はい。
男って?児島を犯人と証言している女性のマンションに潜んでいた男だ。
えっ?冬美さんにはせっかく来てもらったが…。
私も連れてってください。
捜してる人?あの人の名前は田川敏夫。
父の秘書で私のフィアンセです。
父は代議士でその父も…。
政治家?ええ。
政治家で大林といえば…。
大臣を歴任した大林永之介という方が。
それが祖父です。
誰でも知ってる超大物じゃないの。
高潔な人格者として信望を集めてる方だ。
今年81歳で今は東京の病院に…。
(冬美)その祖父が半年ほど前…。
(大林永之介)おきゃん。
はい?高松の市役所にな。
四国の高松?うん。
社会福祉課あてに10万円を送ってくれ。
おじいさまのお名前で?いや差出人は「友」とだけ。
住所も書くな。
でもそれだけでは送金は…。
いや銀行も郵便局もいかん。
普通の封書でな。
そういうの違法でしょう?いや長い間わしはそうやってきたんだ。
だがもう体が続かん。
長い間って…おじいさまがご自分で?うん。
毎月10日人には頼まず自分でポストへ入れてきた。
これからはそれをおきゃんに頼む。
いや何も聞くな。
誰にも言うな。
パパやママにも?うん。
お前の許婚にもだぞ。
これはなわしとおきゃんだけの秘密だぞ。
(冬美)私は言われたとおり誰にも話さず毎月10日の送金を続けました。
でもその祖父はお医者さまからもう長くないって言われて…。
このごろよくうわごとを言うんです。
「セイユウ」って何度も…。
セイユウ?ええ。
周りは誰もその意味がわからなくて。
祖父に訊いても何も話してくれません。
謎の送金と関係があるんでは?私もそう思って高松へ来たんです。
地元の古い人に訊いて回ってセイユウと呼ばれていた人のことがわかりました。
でも祖父と結びつく手がかりはありません。
そのうちに生駒丸の事件が起きました。
被害者は東京の調査会社の人。
その会社の名前に聞き覚えが。
聞き覚えって?父と田川さんがよく話していたんです。
その会社は政敵の手先だから気をつけるようにと。
政敵?ええ。
私なんだか悪い胸騒ぎがして東京へ電話したんです。
でも彼は行方がわからず父は教えてくれませんでした。
胸騒ぎは当たっていたんだね。
あのとき彼は生駒丸に乗っていたんでしょうか?そりゃ乗船名簿調べれば…。
乗っていたとしても実名は書いてないだろう。
目撃証人の坂下由紀も偽名で乗ってるんだ。
だけど政敵だったら動機はありますよね。
漠然と政敵というだけでは動機にはならんよ。
問題は調査員が何の調査に来ていたかだ。
何だと思う?わかりません。
セイユウだよ。
どうしてわかるんですか?女房が墓の前で殺された調査員の同僚に会ったんだ。
墓で?今度の事件がセイユウと関わりあることは確かだ。
船長…ようやく事件のアウトラインが見えてきましたね。
セイユウがこの高松に流れてくる前に何をしていたか。
そこらがカギになりそうだな…。
でもそこまではなかなか。
私が訊いて回った古い人たちもそのことは知りませんでした。
手がかりはある。
墓だ!でも墓には「海」としか記してないですよ。
建てた人物がいるだろう。
そうか…そうですよねセイユウが自分で建てるはずない。
まず地主を調べよう。
登記書から当たってくれ。
はい。
墓のある土地の所有者は何代も替わってました。
セイユウが死んだ当時の地主は吉村竜一郎という人で今女木島にいます。
彼は元海軍の機関課の士官で今は自前の漁船で釣りのガイドをしているそうです。
吉村さんですね?私関西汽船の船長をしております杉崎といいます。
(吉村竜一郎)あんた船長なら潮の流れがわかるだろう。
は?今船は出せんよ。
いや釣りをしにきたんではありません。
セイユウのことをお訊きしたいんです。
セイユウ?墓を建てたのはあなたですね?吉村さんは元海軍の機関課の士官だって伺いました。
墓の碑銘は「海」。
セイユウって人も海に関係があったんですか?いまさらセイユウのことを聞いてどうする?奴は世間に殺された。
またそれを蒸し返したいのか?セイユウが襲ったとされる幼女は私の妻です。
何!?妻はそのことを夫の私にも言えず1人で苦しんできました。
高松に戻ってきた今も墓参りを欠かしません。
船乗りの私は海という墓碑名にも因縁を感じます。
セイユウがどういう人物だったのかお話しいただけませんか?長い話になる。
奴の本名は藤堂吉武。
お察しのとおり敗戦までは海軍の士官だった。
おい。
戦友!
(吉村)わしが呼んだ「戦友」という呼びかけを近くで遊んでいた子供が聞き違えて「セイユウ」と呼ばれるようになったんだ。
藤堂が磨いていたガラス玉は樺太の海で死んだ5人の部下への手向けだった。
昭和20年8月。
藤堂はサハリンコルサコフ…当時樺太大泊の海軍武官府で邦人の緊急引き揚げ輸送を担当していた。
樺太奥地からの引き揚げ者は膨大な数で使える船舶の全てを動員してもとうていさばききれるものじゃない。
8月23日にソ連軍の航行禁止令が出て連絡船宗谷丸が大泊を出る最後の船となった。
定員800名の船に4500人まで詰め込んでも行列はまだ数キロ先まで続いていた。
(藤堂吉武)吉村俺は…。
片足がタラップに引っかかっている人間まで引きずり下ろした。
引きずり下ろしたのは何百キロも歩きつづけてやっと大泊にたどり着いた開拓団の人たちだ…。
疲れ果てて埠頭に座り込み幾日も乗船の順番を待っていた。
それを俺は…!
(吉村)藤堂!きさまの責任じゃない!誰かがやらなきゃならなかったんだ!俺は言った。
「必ず日本に帰してやる」。
その言葉を信じた人たちは浜の漁獲倉庫で待ち焦がれている。
何人いるんだ!450人。
そのうち何人を?全員連れて帰る。
無理だ!奪い返そうとしている船は200トンの鉱石船だぞ。
どこに乗せる場所がある!?船倉居室…甲板から機関室操舵室まで隙間なくつめこむさ。
ソ連兵の厳しい監視の中でそんな…。
無事に済むとは思っていない。
だから5人の兵と武器も用意してある。
(機銃掃射の音)
(吉村)恐れていたとおり監視のソ連兵と激しい戦闘になって5人の部下は全員殺された。
だが450人の引き揚げ者は1人の死者もなく乗船して人の重みで重心の上がった船は大きく傾きながら荒天の宗谷海峡へ脱出した。
大時化だ!乗り切れるのか!?戦闘でソ連兵を殺してきた。
引き返して銃殺されたいとは思わんだろう!?進むしかないということだ。
マグネットコンパスがいかれても…。
コンパスがやられたのか?ソ連兵も狙いどころは心得ていたようだ。
今は俺のカンだけで走っている。
(吉村)カンだけで!?風は北西風だ。
船が波頭を右舷船尾に受けていれば船首は間違いなく北海道を向いている。
そんな粗雑な!ほかに方法があるか!いいからきさまは機関室へ行って速力を上げろ!うねりで船首が下がる!この船は予想より石炭を積んでない。
燃料を節約しないと海峡を渡れないぞ!いや全速力で走る。
ソ連船に捕まれば全てが終わりだ!燃料切れで漂流してしまえばもっと悪いことになる!石炭が切れたら燃えるものを焚け!そんなものがどこにある!海で薪でも探せというのか!?この船を燃やせ!天井も壁も全部燃やしてしまえ!みんな!生きて陸へ着きたければ手伝え!燃えそうなものはどこからでも剥ぎ取って機関室へ運ぶんだ!
(吉村)奴には最後までかなわなかった。
コンパスがこわれ燃料も切れたボロ船で大時化の宗谷海峡を渡りきったんだからな。
北海道の北東部。
紋別近くの海岸だった。
船胴も操舵室も丸裸になった船が浜辺へのし上がったんだ。
明け方で人里から遠く離れていたために誰の目にもふれなかった。
引き揚げ者はどうなりました?上陸すると大勢が砂浜にひざをついて…泣き出した。
そのうちに…2人3人と立ち上がって藤堂に向かって拝むように頭を下げて散っていったよ。
450人…。
いや…その後ろの家族を合わせるともっと多くの命を助けたことになる。
たいした人物だったんですね。
そうだ。
たいした奴だった。
だからあの眺めのいい丘で眠らせておいてやりたいよ。
だけどそれほどの人物が戦後はどうして?故郷の高知に帰った藤堂を待っていたのは戦災で崩れ落ちた生家と両親と妻と5歳の娘と…。
家族全員が埋葬された無縁墓地だった。
一家全滅だったんですか?樺太からの脱出で使い果たした奴の気力はそこで切れた。
ふらっとわしの前に現れたとき抜け殻のように変わってしまっていたよ。
戦後も数年たって高松の復興も進んでいたが藤堂の時間は止まったままだった。
西岡…。
(吉村)わしが訪ねて行っても関心を見せず誰とも関わらない。
ただ生きてるだけの男だった。
私の妻はその頃5歳でした。
セイユウは戦災で失った娘を偲んでいたのかもしれませんね。
それほど娘を思っていた藤堂が同じ年ごろの幼女を襲うわけがない!だが世間の奴らはそれがわからなかったんだ。
川で大きな石を抱いて死んでいたそうですね。
身に覚えのない疑いがよほど悔しかったんだろう。
普通の人間だったら苦しくなって離します。
それを離さなかったというのは…。
すさまじい意志の力ですよ。
わかってくれるか。
海軍士官だった藤堂が最後に示した男の意地だ。
あの…。
大林永之介という名前をご存じでしょうか。
大林?大物の政治家です。
ああ…名前だけはな。
昔セイユウさんと何か関わりが?藤堂は政治とは無関係の男だ。
セイユウがこんなにすごい人とは思ってもみませんでしたよ。
うん…。
だがあなたのおじいさまとの関係がわからない。
ねえもしかしてさおじいさん樺太からの引き揚げ者の中にいたんじゃないの?そんな話は聞いたことありません。
何か共通するものは?年齢ぐらいです。
生き方は?何ですかその「生き方」って。
大林永之介氏は今どき珍しい私心のない政治家として知られている。
今聞いたセイユウの人物像とどことなく重なるものが。
あります。
私もそんな気がしてました。
おじいさまに会えないだろうか。
船長さんが?セイユウの樺太脱出の話をしたい。
わかりました。
私と一緒にいらしてください。
僕も行きます。
いやお前は警察に監視されてる。
(携帯電話)
(田川)はい。
先生。
冬美さんが高松の船長を病院に連れて来たそうです。
(大林邦彦)なに!?
(田川)永之介先生に会わせたいと。
いかん。
すぐに行くと言え!
(冬美)パパ!どうしておじいさまに会ってはいけないの?お前こそ勝手なまねは許さん!先生にも僕にも言わずいったいどこへ行ってたんですか。
ご存知のはずよ。
高松の空港で私を見かけたでしょう?高松?私はそんなところには行ってない。
そちらが高松の船長さんですか。
杉崎です。
父に会いたいとのことだが…お断りします。
パパ!近親者以外は面会謝絶。
医者からもそう言われている。
では冬美さんあなたからおじいさまに話してください。
船長さんは?あちらで待っています。
(戸を開ける音)おきゃんどこ行ってた?
(冬美)高松よ。
えっ?セイユウという人のことを聞いてきました。
何を聞いた?樺太から引き揚げ者をボロ船で連れて帰ったお話よ。
樺太から?ご存じないの?いや。
(冬美)すっごい話よ。
私感動して涙出ちゃった。
話してくれ。
(機銃掃射の音)
(冬美)船長さん。
祖父がお話したいと言っております。
(冬美)おじいさま。
杉崎船長さんよ。
セイユウのことをよく調べてくださった。
ありがとう。
礼を言います。
豪気な人物とは思っていたがそれほどの男とは思わなかった。
セイユウにお会いになったことは?ありません。
おかげで…全て話す決心がつきました。
お前たちもわしの末期のざんげだと思って聞いてくれ。
先生それは…。
(邦彦)ざんげなら身内だけで…。
身内だけじゃざんげにならん。
だからこの人に…。
聞いてくださるか。
伺います。
セイユウに会ったことはないがわしもシベリアから復員した軍人だった。
(永之介)本当に辛かったのは抑留よりも帰国したあとだった。
世間からは犯罪者に対するような非難をあびせられ心はすさみ半ば捨てばちになっていた。
友人を頼ってはるばる高松に来たがその友人は消息不明。
空腹に耐えかねて畑の女性に食糧を無心した。
バカが!お前みたいな軟弱な兵隊がおったけん戦争に負けたんや!
(永之介)あのとき…わしはけだものになっていた。
その婦女暴行の疑いがセイユウと呼ばれる男にかけられた。
警察で調べられたセイユウは自殺したと聞いたのは高松を出たあとだった。
セイユウがどうやって死んだかも…。
聞いた。
川底で大きな石を抱いていたそうだ。
最後に示した男の意地。
戦友の吉村老人はそう言っていました。
死ぬべきはわしだったんだ。
今もそう思っている。
だが…死ねなかった…。
それで…高松に匿名の寄付を。
そんなことで罪が消える道理はない。
だが…今あんたに話して少し…軽くなったような気がする。
お話ししたいことが。
(邦彦)大林永之介の出身は関東で10年ほど前に衆議院選挙の地盤を息子の私に譲り自分は参議院の全国区から出ています。
同じ関東が地盤で父のライバルといわれている政治家がいます。
ご存じですか?総理総裁までされた大物ですね。
その息子さんも代議士でしょう。
高松に調査員を派遣したのはその息子峰谷たけしですよ。
峰谷たけしは警視庁のエリート官僚から政界に出た。
全国の警察に殷然たる影響力を持っています。
高松に調査員を派遣したのは政敵の過去を調べるためだったんですか。
政治家の経歴は隠せません。
だが父の過去には昭和20年代の一時期不明な部分があった。
峰谷はどうやらそれが高松らしいと突き止めたんです。
調査員はセイユウのことも知っていたようですが。
病院の看護婦にスパイがいたんです。
それが「セイユウ」という父のうわごとを聞いた。
(青田)これは?大林永之介ですよ。
どうやって?看護婦です。
その気になればわけはない。
40年前の農婦暴行事件では遺留品の折りたたみナイフから犯人の指紋が検出されている。
それと照合していただけませんか?あの事件はとっくに時効ですよ。
だが新たな疑惑はあまりにも大きい。
だから本部長のご配慮で当時の調書も見せてもらいました。
しかし指紋の照合となると…。
時効の事件の再調査には上からの命令が必要だ。
東京の峰谷も青田部長によろしくと言っています。
お願いしますよ。
高松に父の秘密のあることは私も察していました。
さきほどの父の告白でその不安が現実になった。
セイユウが犯したとされる婦女暴行事件の調書は地元の警察に残っているはずです。
それと永之介先生が結びつけば…。
高潔な人格者という父のイメージは決定的な打撃を受ける。
息子の私の政治生命にも響きます。
それを防止するために政敵の調査員を殺したんですか!?私は高松には行ってない!冬美さんが見たというのは錯覚です。
それだけ強く否定されるところをみると行ったという証拠は残していませんね。
生駒丸の乗船名簿もバーのママに書かせたんでしょう。
バーのママ?何の話かわかりませんね。
万一まずい証言が出てきても政敵に劣らぬ政治力でもみ消せるとでもお考えですか!?人間をバカにしちゃいけません。
あなたがたの政治的な暗闘の渦の中で私の部下の航海士が溺れかけてる。
かつてセイユウが名誉を踏みにじられて自殺したように。
お父上の永之介先生はあなた方とは違っていた。
他人の私に絶対に人には言えない秘密を話された。
まさか…あなたはそれを誰かに?話します。
あなた方の出方しだいでは。
私はそれを永之介先生に託された使命と考えます。
セイユウの自殺の原因はお前じゃなかったんだ。
じゃあほかに事件があったってこと?セイユウが警察で調べられたのは農婦暴行事件でだった。
幼女暴行は噂だけで事件にはなっていない。
本当に?本当に私のせいで死んだんじゃないのね?ああ。
信じらんないわ…。
だって40年もずっと心にわだかまってたんだもの。
大林永之介先生の告白は2人の人間を救ってくれた。
お前と児島と。
でもご本人はどうなるの?あなたは誰にもしゃべらなくても政敵から暴露されるかもしれない。
これがセイユウの墓ですね。
そうです。
女木島へは?ええ行ってきました。
あなたのお勧めに従って吉村さんの話を聞きましたよ。
警察のこの人への対応は申し訳ないものでした。
当時の調書を見るとセイユウの無実は被害者の女性の証言からも遺留品の指紋からも明らかだったんですよ。
じゃあどうしてセイユウさんは自殺なんか…。
世間の噂を警察が打ち消さなかった。
まあ当時は治安も悪かったし報道も発達していませんでしたからね。
世間も警察もセイユウさんに汚名を着せたまま忘れ去ってしまったんですね。
当時の調書を見たと言われましたね。
ええ。
遺留品の指紋というのは?折りたたみナイフから検出されてます。
それを照合すれば犯人が特定できますね。
40年たっていて事件は時効でしょう。
だが政治的な圧力がかかれば…。
そうなんですね?お答えできません。
もう一つ一緒に見ていただきたいものがあります。
(職員)これです。
昭和20年代の終わりごろから毎月10日づけで一度も欠かさず。
500通を超えています。
何か書いたものは?最初の1回だけ。
毎月送るから子供の教育にでも役立ててほしいと。
金額は?最初は1000円でしたがしだいに増額されて今は10万円です。
総計するとかなりの額になりますね。
ええ。
2000万を超えているでしょう。
今の価格では億に近いでしょうね。
何に使われたんですか?母子家庭の奨学金です。
世間に発表されたことは?ありません。
匿名の趣旨を尊重してのことですが歴代の市長以下知る人ぞ知る美談です。
ん?これ…。
筆跡が違いますね。
(職員)そうなんですよ。
それまでは40年間年齢の変化は伺えるものの雄渾な男性の筆跡でした。
それが半年ほど前からこの女性的な優しい字に変わったんです。
送り主に何か異変でも…とみんな心配してるんです。
どうでしょう。
警察のほうで調べていただけませんか?奨学金を受けた100人以上の市民が何とかして足ながおじさんにお礼が言いたいと願っています。
なぜお見せしたかったかもうおわかりでしょう?匿名の人は大林永之介氏ですね。
足ながおじさんの動機は単なる慈善ではありません。
一生をかけた…いやおそらく死後まで続くつぐないです。
筆跡が変わったのは孫娘の冬美さんですか?そのとおりです。
一番愛し信頼できるんでしょうね。
死後までもつぐないを…。
想像もできないことですね。
セイユウの死から受けたショックがそれだけ大きかった。
送金の日付の10日というのはね…。
セイユウが川底で発見された日なんです。
そうでしたか…。
毎年の命日ではなく毎月の命日にしたのは片時も忘れないためでしょうね。
全部自分で宛名を書いて…。
大臣を歴任した大物の政治家が自分の手でポストに投函したんです。
それでも警察は40年前の事件を洗い直しますか?それも政治的な権力争いの一方に加担して。
いや…大林永之介氏が40年前に犯した罪は重い。
重いです。
だがセイユウの壮烈な死に己を恥じ終身刑にも等しい罰を自らに課した。
収賄や汚職で追及された政治家は多いが恥のために死んだ者は1人もいない。
彼らと大林永之介氏とどちらの罪が重いと思われますか?再調査は…しません。
政治的な圧力は私が職を賭して阻止します。
あなたにもおわびしなければならない。
我々は児島航海士もあなたもそしてあなたの奥さんも大林一族とのつながりがあると疑ってました。
疑いは晴れたんですか?事件を目撃したという女性の身辺を今洗い直してます。
船長。
ん?頼むぞ。
田川さん…。
乗ってたんですか。
今回の乗船名簿は本名を書きました。
私もこの人も…。
一等航海士さんにはとんだ濡れ衣を着せて申しわけありませんでした。
本当のこと言ってくれるんですか?はい。
あのとき児島さんはどなっただけで相手の体には触りもしませんでした。
そのあと私が言い争って海に落とした…。
この船が高松に着いたら自首するつもりです。
あのときはお2人とも偽名で乗っていた。
初めから殺すつもりだったんですか?いや違います!取引するつもりはあったが殺す気はなかった。
これだけは信じてください!言い争ってるうちに相手の頭が鉄柱にぶつかり転落してしまったんです。
信じましょう。
権力争いで計画的な殺人まであっては日本の政治はお先真っ暗ですからね。
それともう一つ。
この人は事件とは何の関係もありません。
私に隠れ家を提供してくれただけです。
私…田川さんのためなら何でもしようと…。
偽証を提案したのは私です。
許してください。
冬美さんには何て…?私のほうから婚約解消を申し出ました。
(田川)彼女から伝言を頼まれました。
(冬美)「船長さん児島さん。
少し落ち着いたら150円の讃岐うどんをごちそうになりに行きます」「セイユウさんのことは一生忘れません」「祖父に頼まれた送金も私が生きている限り続けます」ストップエンジン。
ストップエンジン。
ストップエンジンサー。
艫接岸完了。
艫了解。
フィニッシュエンジン。
(航海士)フィニッシュエンジン。
フィニッシュエンジンサー。
2014/07/17(木) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
船長シリーズ 高松−神戸ジャンボフェリー、殺人海峡[再][字]
ガラスの墓標と妻の謎に事件の接点が…
詳細情報
◇出演者
高橋英樹、音無美紀子、若林しほ、船越英一郎 ほか
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ドラマ – 国内ドラマ
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