日本のお家芸レスリングの女子選手たち。
恒例のボウリング大会です。
その中で飛び切り元気な女性がいました。
世界女王…たとえ遊びでも勝負となれば負けたくありません。
あ〜めっちゃ悔しい。
今度リベンジします。
(場内アナウンス)「エリ・トウサカフロムジャパン」。
登坂選手が一躍脚光を浴びたのは去年の世界選手権。
世界の強豪を次々と撃破。
強さの秘密は…相手の攻撃を一瞬でかわし足元に飛び込みます。
この技を武器に優勝。
二十歳で女王の称号を手に入れたのです。
ずっとなりたい…。
勝ちたかったし。
自分の目標を達成できた事はすごいうれしいです。
子どもの頃から負けず嫌いだった登坂選手。
涙を流す度に人一倍努力を重ね強くなってきました。
しかし今大きな壁にぶつかっています。
ライバルたちの激しい追い上げ。
技が研究され決まらなくなってきたのです。
(ブザー)更に世界女王は負けられないという重圧。
最強であり続けるために新しい技に挑む登坂選手。
オリンピック3連覇吉田沙保里直伝の高度な技。
必要なのは重圧をはねのけ攻める勇気。
自分はもっとこれ以上に厳しい練習をしていかないと。
世界選手権代表の座を懸けた大会。
新しい技を自分のものにする事ができるのか。
最強の女王を目指す闘いの日々を見つめました。
名古屋市の南愛知県大府市にある一軒家。
女子レスリングの強豪至学館大学の選手寮です。
26人の部員全員が共同生活を送っています。
来た時にこんなんなっとっても知らんから。
持てんぐらいになっとっても知らんから。
富山県の実家を離れレスリング漬けの毎日を送っている登坂選手。
食べる事が何よりの楽しみです。
でも史織が炊いた時全然臭くなかったっすよ。
駄目駄目。
特許の問題か。
知ってる人にしか分からへんっていう。
絵莉の昨日のパンケーキ見た?見た。
めっちゃうまそうだった。
あれめっちゃうまかったですよ。
今はまっているのはパンケーキの食べ歩き。
いろんな店に行っては写真を撮りツイッターに載せています。
むかつくむかつく。
だってこないだ教えてもらったもん。
デデッデデデ…。
・「あれからぼくたちは」「らいおんハート」じゃないの?違う違う。
「らいおんハート」どんなんやったっけ?大学では日本一厳しいといわれる練習が待っています。
アヤカ!うぃ〜。
練習?うん。
練習。
頑張れ。
バイバイ!じゃあな〜。
死ぬ…。
絵莉も死ぬ。
指導するのは全日本チームも率いる…パワーとスタミナをつけるため徹底的に体をいじめ抜きます。
この道場でこれまで4人のオリンピックのメダリストが育ちました。
55kg級3連覇の…卒業後もここでトレーニングをしています。
登坂選手胸を借りますが…。
全く歯が立ちません。
はい。
行くよ。
よ〜いドン!登坂選手は国際大会でも活躍する多くの部員たちと競い合う中で力をつけてきました。
(栄)負けるな負けるな!お〜抜いた抜いた!
(栄)お〜いいよ登坂!こうやって走ってたんですよ昔。
(場内アナウンス)「エリ・トウサカフロムジャパン」。
その登坂選手が世界の頂点に立ったのは去年9月の世界選手権。
闘志あふれるレスリングで快進撃を続けます。
最大の武器は一瞬の隙をつく…攻めてきた相手をかわし素早く足元へタックルに入ります。
彼女のカウンタータックルからは誰も逃れられない。
圧倒的な強さで優勝を決め世界を恐れさせました。
どんな人が相手でも誰が相手でも取れる技っていうのは一つ絶対に…得意技って言えるものはないと駄目だと思うし。
タックルがうまい選手はやっぱり得点力があるから負けてたとしても取り返せるし強いと思います。
登坂選手のカウンタータックルは並外れた反射神経が生み出します。
反応の速さを全日本選手権4位の選手と比較しました。
ランプがついた瞬間足を動かします。
右の選手が動き出した時既に登坂選手はこれだけ動いています。
動き始めるまでの時間は…まばたきほどの速さです。
反応時間は全日本チームの中でも一番です。
この反応の速さでタックルに入る一瞬のタイミングを逃しません。
まず相手がタックルに来るのを察知して素早くよけます。
そのまますかさずタックルへ。
素早い反応でほんの僅かな間に一連の動作を行っているのです。
このカウンタータックルはロンドンオリンピックの金メダリスト小原日登美さんも苦しめました。
3年前絶対的な強さを誇った小原さんから大会唯一のポイントを奪ったのです。
自分がタックルを取ろう取ろうって焦っているところをうまくカウンターをされて逆に足を触られてしまったので一瞬やっぱ焦ってしまいました。
あの時は。
乾杯!小原さんの予想どおりチャンピオンになった登坂選手。
レスリングの話になると強気な発言が飛び出します。
本当に…このひと言のために連れてこられた。
しかし今登坂選手は大きな壁に突き当たっています。
去年12月世界チャンピオンになって初めての全日本選手権。
決勝の相手は登坂選手が当時2連勝中だった…誰もが圧倒的な勝利を疑いませんでした。
(ホイッスル)しかし思わぬ苦戦を強いられます。
(ホイッスル)膝元へ鋭いタックル。
バックを取られて2ポイント先取されます。
第1ピリオドは0対4とリードを奪われます。
後半の第2ピリオド登坂選手がようやく巻き返しに出ます。
タックルから相手の足をつかみ連続技を仕掛けます。
相手の体を回転させ2ポイント追加。
更にポイントを重ねなんとか逆転しました。
苦戦した登坂選手。
その原因は世界女王は負けられないという初めて感じた重圧でした。
(取材者)臆病?うん。
あの時はすごい臆病になってたと思います。
今年4月。
世界選手権の代表選考を兼ねた大会を2か月後に控え候補選手を集めた強化合宿が行われました。
姿勢を正して。
これから合宿を始めます。
礼。
(一同)お願いします。
登坂選手の48kg級は実績のあるベテラン勢が引退し若い選手たちがしれつな争いを繰り広げています。
試合巧者の…吉田沙保里選手と戦うのを避けて階級を下げてきました。
全日本選手権で登坂選手を苦しめた…打倒登坂の一番手に挙げられています。
登坂入江のスパーリング。
入江選手は一段とスピードが増していました。
登坂選手が攻め込んでもことごとく技を返されてしまいます。
(取材者)どうするの?追い上げてくるライバルたち。
女王の座を守るにはどうすればいいのか。
自信を失いかけていた登坂選手。
栄監督は一つのアドバイスをしました。
カウンター主体の相手の攻撃を待つスタイルから自ら攻めていくレスリングに転換しろというのです。
これから先…登坂選手は今の自分には攻めのバリエーションが少ないと感じていました。
身につけるべき攻撃的な技とは何か。
模索を続けていました。
選んだのは世界のトップ選手しかできないといわれる難しい技でした。
それはロンドンオリンピックで伊調馨選手が見せた技。
電光石火の…脇腹に頭を素早く潜り込ませ片足を取るタックルです。
相手のバランスを大きく崩し連続して攻め続ける事が可能になります。
高いポイントが奪える攻撃的な技です。
こんにちは〜。
ハイクラッチ習得へ本格的な特訓が始まりました。
しかし簡単にはいきません。
こちらから仕掛けようとしても脇に入り込めないのです。
登坂選手は先輩の吉田選手にアドバイスを求めました。
吉田選手が指摘したのは頭と腕の使い方でした。
そうそう。
分かる?この出方の違い。
ちょっと頭下げる。
重要なのは相手を待つのではなく自分でタイミングを作り出す事。
胸に頭をつけ手を引っ張ります。
相手が引き戻そうとした時その力を利用してはね上げ一気に前に出るのです。
大会までひとつき半。
教わった事を身につけようと何度も何度も繰り返します。
今はまだなかなかうまくいかないですけど。
何となく形は分かったかなと思います。
そのタイミングによって入れる入れない…。
私ももちろんそれはあるのでそこは試合で使えたらいい事ですし。
苦戦してますけど何回も練習する中でできてくるんじゃないですかね。
練習を終えた時には夜の8時を回っていました。
(取材者)疲れた?もう本当に疲れました。
一日が終わってやっと休める。
(取材者)また明日も練習?はい。
頑張ります。
ありがとうございました。
(取材者)じゃあ明日もよろしく。
はい。
お願いします。
お疲れさまです。
登坂選手とレスリングの出会いそれは9歳の頃。
おはようございます。
(取材者)おはようございます。
ふるさと富山県高岡市のレスリングクラブでの事でした。
コーチは…国体で優勝した経験があります。
11年前息子にレスリングをさせたいと思いここへ見学に連れてきた修さん。
幼い登坂選手も一緒でした。
ところが興味を示したのは意外にも娘の方でした。
活発な登坂選手はあっという間にレスリングのとりこになりました。
女の子にはできればさせたくないかなと親としてはそう思ってたんですけど。
どうせすぐやめるかなと思ってやらせたんですけどそれがまあ今まで続いてるっていう…。
しかしレスリングを始めた頃はなかなか勝てませんでした。
相手は自分より体の大きな子どもばかり。
遊ぶ時間も減らして一人で練習を続けました。
負ける度に泣きじゃくりました。
いつもどおりでいいよ!いつもどおりで。
それでもレスリングをやめる事はありませんでした。
悔しさをバネに努力を重ねてきたのです。
ひたむきにレスリングと向き合ってきた登坂選手。
人一倍の負けん気が世界女王への道を開きました。
レスリングに関しては。
大会まであと1か月。
登坂選手はまだハイクラッチをものにできずにいました。
実はこの技には入り方が甘いと返し技を食らうというリスクがあるのです。
攻めるための技が逆に大きな失点につながる。
その事が登坂選手の心に迷いを生んでいました。
その結果踏み込みが甘くなりました。
深く踏み込めないため相手に両手が届かないのです。
ハイクラッチなんですけど…崩してる時に逆に攻撃を食らっちゃうというか自分が入りたいと思ってるところでこうやって入ろうと思ってこうやった時に取られるっていう事がすごい増えてるので…。
なかなか難しいですけど。
世界女王は負けられないという重圧。
思い切り踏み込めないという迷い。
一人懸命に闘っていました。
悩んでいるだけでは何も変わらない。
登坂選手は名古屋市に向かいました。
プロ野球やボクシングなど一線級のアスリートが通うトレーニングジムです。
大学での練習とは別に自分で新しいトレーニングを取り入れたのは初めての事です。
8kgのおもりを持ってステップを繰り返すトレーニングは股関節の可動域を広げます。
こうしてハイクラッチの踏み込みを少しでも深くしようというのです。
大会まで2週間。
登坂選手はこの日のスパーリングで吉田選手に挑みました。
世界に君臨し続ける無敵の女王。
その強さを追い求める二十歳の新星。
2人の真剣勝負です。
登坂選手ハイクラッチを仕掛けます。
足に指一本触れる事ができません。
吉田選手は一方的に攻め続けました。
この相手には勝てると思ったら強気で行けるじゃないですか。
けどこの人には勝てないと思ったらもう駄目だって思うところが少しでもあれば絶対に勝てないと思いますし。
だから練習の時からそういった気持ちでもう試合で戦ってる。
世界選手権だと思ってやれば絶対強いと思いますよ。
気持ちだと思います。
あとはその気持ちの部分だと思いますね。
最強であり続けるために欠かせないもの。
それは攻める気迫。
大会当日。
ゆうべは遅くまで寝つけなかったという登坂選手。
ハイクラッチが完成しないままこの日を迎えました。
ライバルたちがひしめく48kg級。
世界選手権への切符はたった一枚です。
ここまでハイクラッチは一度も出していません。
積極的な攻撃ができません。
(ホイッスル)なんとか逃げきり決勝に駒を進めました。
(場内アナウンス)「準決勝の第2試合」。
一方ライバルの宮原選手と入江選手は準決勝で対戦しました。
まずリードしたのは青のユニフォーム入江選手。
スピードある攻撃でリードを奪います。
宮原選手は反撃のチャンスを待っていました。
入江選手にバックを取られた時でした。
鮮やかな返し技から押さえ込み。
1発で試合をひっくり返します。
登坂選手中途半端な攻めが命取りになる事を見せつけられました。
もっと強くなるために新しい技に取り組んできた日々。
正念場を迎えます。
2人の対戦は4年ぶり。
前回登坂選手は敗れています。
絵莉ファイト!絵莉さんファイトです!
(ホイッスル)宮原選手の返し技を警戒し慎重に出方をうかがいます。
開始30秒登坂選手がハイクラッチを仕掛けます。
しかし頭をつけて防がれてしまいます。
甘いハイクラッチでは宮原選手に返し技を決められます。
なかなか技を繰り出せない両選手。
(ホイッスル)審判から警告が与えられます。
第2ピリオド開始早々でした。
(場内アナウンス)「赤登坂選手4ポイントです。
6対0」。
逃げる宮原選手に食らいついてのハイクラッチ。
ハイクラッチを仕掛けた瞬間右足を大きく踏み込みそのまま迷わず前へ。
最後は両足をつかんで背中から落としました。
(場内アナウンス)「残り10秒です」。
そして…。
(ホイッスル)
(拍手)
(場内アナウンス)「ポイント6対2で赤至学館大学登坂絵莉選手が優勝です」。
迷いを振り切り攻め続けて手に入れた勝利です。
試合後同じく優勝を決めた吉田選手のもとへ。
やってましたね。
はい。
いろいろ練習した事が多分出るんで。
はい。
よかったです。
ここぞという集中力というのが本当に今日改めて感じる事が自分もできたしその絵莉の頑張りを見て私も頑張る事ができたので。
世界選手権代表の座を射止めた登坂選手。
新しい技で2連覇に挑みます。
あ〜疲れた。
もうよかった本当に。
攻めが一番強いっていう事を感じましたね。
もっともっと相手も練習してくるだろうし研究もされるだろうし。
なので自分はもっとこれ以上に厳しい練習をしていかないと。
考えながらやっていかないといけないなと思います。
負けたくないですよ。
攻め続ける二十歳登坂絵莉選手。
目指すは絶対的な女王です。
2014/07/17(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「攻める勇気を レスリング 登坂絵莉」[字]
日本の女子レスリングの新星、登坂絵莉選手に密着。去年、世界選手権で初優勝、最強の座を守り続けるため自らのレスリングスタイルを変える決意をした20歳の挑戦に迫る。
詳細情報
番組内容
女子レスリング48kg級の登坂絵莉選手は、昨年、日本選手権で2連覇、世界選手権で初優勝し、リオ五輪の金メダルに最も近い選手だと言われている。今、登坂選手は吉田沙保里選手にアドバイスを仰ぎながら、得意のカウンターから“自ら攻める”レスリングへの改良に挑んでいる。世界で勝ち続けるためには弱点の克服が不可欠だと考えているからだ。最強の座を守るため新たな進化をめざす20歳の闘いを見つめる。【語り】杉本哲太
出演者
【語り】杉本哲太
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – 相撲・格闘技
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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