ハートネットTV 特集WEB連動「選ばれる命・反響編」 2014.07.02

おなかの中の子どもに障害があるかどうかを調べる出生前検査が今急速に広がっています。
この現実をどう考えればいいのか。
「ハートネットTV」では3回にわたって伝えてきました。
障害のある子を育てていけるのか。
自らの判断で命を絶っていいのか。
誰にも相談できず悩みを抱える妊婦。
一方海外では子どもを産み分け選択するビジネスも普及。
人々の命に対する意識を大きく変えようとしています。
その事に危機感を抱く人も少なくありません。
世界中が今この難しい問題と向き合い模索を続けています。
3回の放送を終え番組には200通を超えるさまざまな意見が寄せられました。
シリーズ最終回の今日はこうしたご意見や感想を基に考えます。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
今おなかの中の子に障害があるかどうかを調べる出生前検査が急速に普及しています。
この医療技術とどう向き合っていけばよいのか。
放送後皆さんから寄せられたご意見さまざまありましたが今日はその感想やご意見を基に番組をより深く進めていきたいと思います。
久保さんは今お子さん2人いらっしゃいますけれどもこのテーマどう感じていますか?私は今から13年前に長女を妊娠した時に初めてこの検査の事を知ったんですね。
それまでは本当に何も分からなくて赤ちゃんは元気に生まれてきてくれるのが当たり前と思ってたような気がするんですね。
でも決してそうではなくて命って何だろうという事を深く考えた事を今思い出します。
さまざまな議論がこの出生前検査にありますがその議論のポイントというのはどこにあると思いますか?まずこの議論で注目されがちなのが母親と父親のその親の選択そしてその時の葛藤というところに注目が集まりがちです。
その決断がじゃあ倫理的に正しいのかどうなのか。
その倫理に関する議論が非常に重要なんですね。
ただ倫理の議論ともう一つ大事なのが環境を巡る議論なんです。
つまり障害をもって生まれてきた子どもを本当にしっかりと育てられるような社会が今どれだけ達成できているのか。
そうした環境を巡る議論も倫理とはまた別のポイントとして押さえておく必要があると思います。
ブルボンヌさんはどう感じてます?
(ブルボンヌ)今までの回を拝見させて頂いた時に本当に胸が苦しくなってしまって。
私も性的少数者…つまり不幸なご家庭なんかだと「お前なんて生まれてこなければよかった」みたいな言葉が出てしまうような立場にいるので私だってもしかしたらお母さんがこんな自分を望んでいたのかなって正直思う瞬間はありますから私はそこをうまく時間をかけてすてきな親子関係にできましたけどこの問題って本当にいろんなところに実はつながっているんだなというのを思い知りましたね。
それぞれの視点があると思いますがこの出生前検査について簡単に説明したいと思います。
この出生前検査というのは胎児の状態を知るための検査です。
治療が必要な胎児には出生前後から準備ができたり母体の健康を守る事につながったりする事もあります。
通常の妊婦健診などで受ける超音波検査も出生前検査の一つです。
羊水を採取する羊水検査では胎児の染色体について調べる事ができます。
一方で血液検査は一部の胎児の染色体異常などの可能性を確率で示すもので確定検査ではありません。
そして去年4月から始まった新型の出生前検査も血液検査です。
染色体の本数が通常より1本多い13トリソミー18トリソミー21トリソミー。
ダウン症候群の有無の可能性を推定できます。
この3つには内臓の病気や運動知的発達障害を伴う事もあります。
それぞれの染色体により症状には特徴がありますが同じ染色体異常でも赤ちゃんの状態には個人差がかなりあります。
この1年でおよそ8,000人の女性が新型の出生前検査を受けました。
では実際に検査を受けた方から届いた声をご紹介します。
私自身も検査を受ける時に今のりりーさんの「孤独な時間」というお話がありましたが誰にも相談できずお医者様からもアドバイスもなくて本当にどうしていいんだろう?これ受けるべきなのか受けて結果どう受け止めていいのかというのをすごく悩んだのを覚えてるんですね。
だから本当にこの検査は始まったけれども…私たちだけで結果どうするかという事を考えるのは本当につらいと思います。
ではなぜ決断に苦しむのか。
この検査による決断が実際子どもの命を左右する事につながっているからです。
こういった声も届いています。
自分で乗り越えていかないといけないという女性の声でした。
ブルさんどうでした?人の心としてどうしてもより完璧ないいものをと望んでしまうのはしょうがない事だと思うんですね。
だからこそ事前にそれがとてもご本人というかむしろ子ども自身がつらい思いをしてしまうんじゃないかって事に気付いてしまうっていうのが先に分かってしまった時にそれでもその子との幸せがきっと見つかるはずだって言うのは他人が言うのは簡単なんですけど実際にそれを抱えてらっしゃるご本人からしたらやっぱりその選択をしたあともこうしてご自身も罪の意識にさいなまれる訳ですし私は本当にどっちがいいって事を言えないまま今日ここに来てしまいましたね。
でも本当につらいと思います。
本当につらいと思う。
やっぱりおなかの中にいるとつながっているので…毎日の鼓動を感じたりとか…。
それがある日突然自分の意思で赤ちゃんにさよならしなきゃいけないというのは本当につらいと思います。
でもそれも赤ちゃんを思っての事なので…。
いろんな事情があっていろんな判断がある訳ですけれどもその判断の一つとして中絶を選ぶ方も実際多くいます。
現在日本では中絶はどういった位置づけになっているのかこちらをご覧下さい。
人工妊娠中絶に関しては刑法によって日本では原則禁止されています。
しかし母体保護法に定める要件を満たしている場合に限り中絶手術を受けられます。
その要件とはどういったものかと言いますと…つまり胎児の障害を理由とした中絶は法律のこの要件の部分の拡大解釈において行われているのが実態です。
なかなか分かりにくい状態になっていますけど…。
社会的にはこの問題は宙づりにし続けてきたまま来てしまったんだと思います。
その結果当事者となった親たちの選択というものを迫るような形になって選択をしたんだったらあとはその選択を背負って下さいと。
どちらの決断をしたにしてもある種さいなまれる後悔というものを背負い続けるのかあるいは産んだんだったら産んだんでしっかりと育て上げろよ。
自分たちは関わらないけれどもというようなある種突き放した環境というのがここまで来た。
その事が多くの当事者に対して一つのしかかってしまっているという状況があると思うんですね。
なかなか結論が出ない問題ですけれども出生前検査を行うにあたってなんですが検査への信頼更にはそれを行う医療機関への信頼は欠かせません。
しかし今月その信頼を問う裁判の判決が出ました。
この裁判は北海道函館市の産婦人科医院で胎児の出生前検査の結果について誤った説明を受け精神的な苦痛を受けたなどとして両親が損害賠償を求めたものです。
函館地方裁判所は今月「検査結果を正確に知らされていれば両親は出産するかどうかの選択や養育のための準備などができたはずで病院側のミスによりこうした機会を奪われた。
過失は重大と言わざるをえない」として病院側に1,000万円を賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
どうして訴訟に至ったのか今回訴えを起こした夫婦が番組の取材に応じてくれました。
誤診により子どもの障害の事を知らずに出産に臨んだ両親。
生まれてきた子どもは多くの疾患を抱えた状態でした。
誕生後子どもに懸命の治療を施しましたが僅か3か月で短い命を閉じました。
夫婦は障害のある子を受け入れる準備も生まれてからの苦しみから救ってあげる機会も誤診により失われたと言います。
このご両親の言葉どう聞きました?やはりお医者さんの言葉は本当に重くて私たちは全面的な信頼を寄せていますよね。
それだけにこういったミスは絶対に許されないですしもしこのミスが起きてしまったならどうしてこういう事が起きたのか二度とこういう思いをする人がいないようにしっかりと本当に検証して二度と起きないようにしてもらいたいとすごく願います。
医療技術が進むんだったらしっかりそこの辺りは体制を整えないとあまりに無責任ではないかなと思いますが実態として重大な決断をする妊婦に対して十分な説明や相談に応じてくれたりする仕組みが社会に整っていないという意見が数多く寄せられています。
多分本当の末端の医療現場というのはそれぐらいドライに動いてしまっている現実もあるんだとは思うんですね。
技術っていう物理的な科学が進んで得てしまったものに見合ってない心の問題をちゃんとケアできる体験している方たちの機関だとかがどんどんこれから動いていかないとその間というのはどんどん開いていってしまうのかなという気がしますね。
医師の教育という面でもね…。
それから医療の役割をどこまで求めるのか。
医師というのは医療上の知識で判断をするという事それから必要な治療を教えてくれるあるいはそれを実行する場合がありますけれども例えば育児に関してこういった育児のしかたがありますよとか生活相談はあまりやらないという例があったりする訳ですね。
そうしたものが整っていないからこそ葛藤を拡大している社会なんだという事をもうちょっと共有していきながら議論を進めていく必要があると思います。
こうした状況というのは現在出生前検査を行っている世界のほかの国でも共通の課題となっています。
今月上旬の放送でドイツの支援体制を紹介したところ賛同する声がたくさん届きました。
ドイツでは出生前検査による中絶と真っ正面から向き合って妊婦の相談に応じる体制を築いています。
こちらご覧下さい。
こちらはドイツ国内に1,500か所ある妊娠葛藤相談所と呼ばれる公共の相談機関です。
出生前検査の結果を受けて決断を迫られた妊婦を支える拠点となっています。
相談に応じるのは専門の教育を受けた相談員。
妊婦は無料で何度でもカウンセリングを受ける事ができます。
診断直後女性はショック状態の中で決断を迫られる上中絶の場合は子どもとの別れも体験します。
全てが短期間にやって来るのでしっかり相談する事が大切なのです。
関連するさまざまな団体ともつながりを持っているため必要な情報や支援を提供してくれます。
こうした体制がある事で多くの女性とその家族が救われています。
相談員は最初からどういう結論になろうともそれが正しい道だと私たちに言ってくれました。
私の気持ちは軽くなりました。
こうした事がなければ私たち夫婦はここまで分かり合えなかったと思います。
恐らく残りの一生お前は中絶をしたと自分をなじり続けた事でしょう。
相談は産む決断をした夫婦の支えにもなっています。
ダウン症の子どもを持つ家族とも会い障害がある子どもを育てていく事を実感できました。
ミアは待ち望んでいた私たちの子どもで授かった命なのだと気付けたのです。
相談所は妊娠中だけでなく娘が生まれてからもダウン症についてのさまざまな情報を提供してくれて私たちの決断は正しかったのだと自信になりました。
なかなか支援が手厚いなと感じますけれども翻って日本はと思ってしまいます。
これすぐやってほしいなって思いますよね。
出生前診断自体非常に新しい技術だと思われがちなんですけれども羊水検査などを含めるともう50年近く前からそうした妊娠を巡る葛藤というのはずっとあった訳ですね。
…となればそういったカウンセリング体制を整え続けてこなかったからこそ今いきなりこの問題がポンと出てきたかのように映っているんだけれども本来であれば寄り添いながらその葛藤に対してカウンセリングを続けると。
そうすると実は社会的なこの問題を巡る言葉ももっと成熟していたのかなと思う訳ですね。
ただ今日本はこういった時期に来ていますから今からでもこういった施設であるとかサービスというものを丁寧に整えていくという事が重要だと思います。
僕もそういったものがあれば是非使いたかったなって思いますね。
そうした中で障害のあるお子さんを育てている方からこうした声も数多く届きました。
本当にやさしい社会になってほしいなと思うのと20代30代の女の子私たちの周りを見てもそうなんですけれども経済的に本当に苦しいし仕事を一回辞めて戻れる保証もないし預ける所もないし「産む自信がないんだよね」なんていう声もよく耳にするんですね。
だからやっぱり社会として政府も託児所だったり子どもが預けやすい環境だったり経済的なサポートがあったりという事をもうちょっとしっかりと考えてほしいなという事は強く思います。
検査の結果によって中絶を決意された方たちを私たちが責める事は絶対にしたくないですしそれはお母さんたち自身が親御さんたち自身がもう私たちなんかからは比べ物にならないぐらいご自身を罰していると思うんですよ。
気持ちの上で…。
ただこの技術が進んでいった時に何か一般的な価値観で人より劣っているとされているものがじゃあこれから生まれえる機会を失っていくのかというふうな事を考えた時には私はやっぱりドイツで事前にダウン症の子を幸せに育てていらっしゃる家庭を見て産む決断をされた方たちにもすごく望みを感じますし私たちも例えば性的少数者って「種の保存に反するんじゃないか子孫が残せないんだし」なんて言われたりもするんですけどきっとそういう完璧じゃない事が大事なんじゃないかなと。
そこで人って優しさとか大事な事を覚えられる瞬間ってあるのかなと思うので本当にどの立場の人も大変だと思うけどそこから光を見つけてほしいですね。
生まれてきたんだったら絶対に生まれてくる意味ってあると思うんですよ。
そこをしっかり尊重できる社会になっていく事が大事なのかなって…。
やっぱり社会って多様性が必要だと思うんですよね。
この出生前診断を進めていく事によって結果としてやっぱり障害当事者であるとかゆくゆくはこの範囲が拡大をされてそれこそブルボンヌさんが恐らく懸念されているであろう同性愛者も生まれてくるべき子どもではないという形で選択の対象にされたりとかという事で偏見であるとか選別というのが拡大する危険性というか懸念というのがある訳ですね。
だからこの問題複雑で難しいんだけれども複雑なのはたくさんの問題が同時進行であるからでそれは一個一個丁寧に対処していく必要があると。
議論を重ねていく必要があるんだという事は忘れないでほしいなと思います。
今回さまざまな意見ありました。
賛成反対だけではない意見が寄せられました。
これからも考えていきます。
皆さんもどうぞホームページに書き込んで下さい。
今日はどうもありがとうございました。
2014/07/02(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV 特集WEB連動「選ばれる命・反響編」[字][再]

お腹の子どもに、障害や病気があるかどうか調べることができる出生前検査。番組に寄せられた200を超える意見をもとに、命の選別についてどう向き合うべきか考える。

詳細情報
番組内容
お腹の子どもに、障害や病気があるかどうか調べることができる出生前検査。番組には視聴者から200を超える意見が寄せられた。医療機関でのケアが不足、障害に対する十分な情報を得られないまま、中絶を決断した女性。出産後、重度の染色体異常の子どもだと知り、さまざまな困難に直面しながらも育児を続ける母親。どんな子どもも産み育てられる社会を作っていくことが大切だと訴える男性。命をめぐる難しい選択について考える。
出演者
【出演】荻上チキ,久保純子,ブルボンヌ,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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