虫の世界を生き生きと描いた「ファーブル昆虫記」。
その副題には「昆虫の生態と本能の研究」とあります。
ジャン=アンリ・ファーブルは虫が持つ神秘的な能力「本能」に驚き昆虫研究のメインテーマとしました。
虫の観察と実験を何度も繰り返しやがて本能のすごさと限界を知るようになります。
「ファーブル昆虫記」第3回。
精巧な仕組みを持つ「本能の謎」を解き明かします。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さあ今月は「ファーブル昆虫記」を読んでおりますけれども何か私たちが思ってた「ファーブル昆虫記」とはちょっと違う。
僕らが思い込んでたのは昆虫についてのみ図鑑の説明文のように書いてあったような記憶をした。
全然そうじゃなくてとてもこう文章もすてきで。
という事で今回の第3回は「昆虫記」を読みながら生物の本能に迫っていきたいと思います。
指南役はフランス文学者で埼玉大学名誉教授奥本大三郎さんです。
どうぞよろしくお願いいたします。
今日は「本能」というのがテーマ。
昆虫は特に本能に支配されてる生き物だというふうにファーブルは考えたので「昆虫記」のそのあとに「昆虫の生態と本能の研究」という副題が付いてるんですね。
じゃあ本能はかなりメインのテーマになるわけですね。
どうしてこんなに不思議な行動をするんだろうってそう考えていくと本能に集約せざるをえないと。
前回あの狩りをするハチが獲物のある部分にこうチュッと何か注射じゃないですけど麻痺させてそれを巣穴に運んでいくという。
ありましたね。
そこで「続く」になっていたんですけれどもさあ今日はなぜ殺さずに巣穴に持っていくのかその謎に迫りながらファーブルが導き出した狩りバチの本能について見てまいりましょう。
狩りバチは獲物となる虫の運動神経を針で刺し麻痺させてから巣に運びます。
しかし驚くべき能力はその狩りの方法だけではありません。
獲物を巣に運んだ狩りバチは卵を産みつけます。
獲物は幼虫の餌でした。
親バチは幼虫が獲物を新鮮なまま食べられるように殺さず麻痺させていたのです。
幼虫は産みつけられた場所から獲物を食べ始めおよそ1週間で食べ尽くします。
ファーブルはその様子を観察しある事に気付きます。
幼虫は獲物の体液や内臓を包む脂肪層次に筋肉と命に関わらない部分から食べていき最後に神経呼吸器官に進みます。
ファーブルは幼虫が最後まで獲物を殺さずに食べる事に驚きこう記しました。
ファーブルはこの観察をきっかけに昆虫に秘められた神秘的な能力本能に魅せられ研究にのめり込んでいきました。
いや〜よくできてますね。
その本能と言いますか仕組みと言いますか。
ファーブルはこの不思議ですばらしい仕組みを生理学への挑戦状みたいな感じで受け取って。
考えてみれば不思議な事ばっかりですよ。
例えばクモに少しでも運動能力が残ってるとかき取られちゃうでしょ卵。
それの届かないところ。
そこだけなんです卵は。
これバッタですけれども。
さっきのはクモでしたけども。
この裏側の手の届かない辺りに卵を。
ひっくり返して産みつけられてますね。
傷口の辺りから体液が染み出してくる。
それをまず吸うんですね。
それでだんだん力つけて表面の脂肪層とかね筋肉とかね。
あんまり重要でない内臓。
その次に割と重要な内臓。
心臓を最初にやっちゃったら…。
死んじゃいますね。
それで終わりでもう腐ってしまうでしょ。
ほぼ空っぽになるまできれいに頂きます。
こんだけ食べられて何で死なないんだろう。
生き作りですよね。
言ってましたよね何かその生き作りの工程をね。
我々の生理学っていうのは自分で自信は持ってるよと。
いいもんだとは思うけどもどういう順番で食べるのかなんて果たして。
それを人間の生理学の知識で…。
いけるのかと。
無理だって言うんですね。
何でファーブルは分かったんですか?その順番。
それでそこで全て終わりですから。
この順番でやってまだ死なないまだ死なない小さなものですよ。
そうなんですよね。
それをやってくわけですか。
虫においしいという概念があるのかどうか分からないけど別にやみくもに近い所から食べていけばよさそうなもんですけど。
それでファーブルは実験をやってみるんですよ。
どんな実験なんでしょうか。
ちょっとご覧頂きましょう。
ファーブルは狩りバチが卵を必ず決まった場所に産みつける事に注目しこんな実験をします。
獲物の腹側で孵化した幼虫を取り上げ背中の方に置いてみます。
すると幼虫はうろうろするだけでいつまでたっても獲物を食べ始める事ができませんでした。
更にこんな実験も。
獲物を板に縛りつけ動けないようにしました。
そこに幼虫を置くと食べ始めはしますが神経を麻痺させられていない獲物は痛みで筋肉を収縮させてしまいました。
硬くなった筋肉は幼虫を混乱させます。
幼虫はやみくもに獲物を食べ途中で死なせてしまいました。
結局腐った獲物を食べた幼虫も死んでしまったのです。
ハチの親が産みつけた場所なんですけどもそれからずれると大体食べるきっかけがないみたいになっていくんですね。
ハチの親が産んだ卵が食べ始めていくそこから食べていくと腐らないんですよね。
だってしかも固定までしても駄目なんですね。
固定してもやっぱり痛いからピクピクするんじゃないんですか。
反応しますからねかむと。
となるとねこれは親バチの本能なのかその幼虫の本能なのか。
どっちもですよ。
両方ですか。
両方ですね。
そうですよね。
その親バチがもう絶対決められた場所にこの場所に行くと基本的に幼虫はこの順序で食べるだろうって所に置かなきゃ駄目なんですね。
そうなんですよね。
それがどうして分かるかっていくら考えても分からない。
だからやっぱり一応「本能」という言葉に預けるしかないんじゃないですか?じゃあ本当に本能というプログラムがめちゃめちゃすごかったらたとえ間違った所に産んでも幼虫は何とかしそうじゃないですか。
それは知能でしょ。
幼虫がもし状況判断を加えてそして良さそうな所を食べていくっていうのはやっぱりそれは知能に属すんですよね。
知能と本能は違うんだ。
そこまで便利じゃない。
でねこんな実験をファーブルはしているんだそうです。
ハチがバッタを捕まえて穴の中に埋めたんですよ。
この狩りバチが埋めました。
埋めました。
そして蓋をしています。
目の前でナイフの先で掘る。
目の前で取り出します獲物を。
ハチはずっと見てました。
でも一生懸命蓋をする。
ここにさっき取ってきた餌はいるのに。
ここにいます。
いますけどハチとしては一生懸命蓋をする。
穴は埋めるっていう本能は働いてるわけですよね。
もはや餌は入ってないよという事に関してはもう関係ないというか。
全くナンセンスなんだけれどハチとしては「やらして頂きます」という。
さっきちょっとおっしゃった知能と本能の差なんですか。
そうでしょうね。
これ状況判断というものがもしあればもうやってもしょうがないんで。
あるいはこれを持ってきてここへもう一回埋め戻して蓋をしそうなものじゃないですか。
それは絶対しない。
できないんですよ。
ですからまだコンピューターはありませんパソコンもありません。
だけど…そういうふうにファーブルは考えます。
ファーブルの言葉があるんだそうです。
あんまりバカなので驚いちゃう。
あんまり賢いんで驚いちゃう。
それが2つ虫の中にあると。
本能の賢さ本能の愚かさというのを対照的にあるんですよね。
ファーブルは示してるんです。
ファーブルも非常に驚いたんですけどいろんな虫を通じてそれがあるんです。
しかしいろんな事をね実験してましたね。
ファーブルのすごいところは観察と推測みたいな事じゃなくて何と言うんですかね数学的にしらみつぶしにしていく。
条件をいろいろパターンを出して。
方法論が非常にしっかりしててやっぱり場合分けをして…なるほど。
もうやり残した事はないかしっかり考えますね。
予想で出た結論は納得いかないんですね。
あるいは…分かったような気にならないんだ。
そうそう。
さて多くの昆虫に対する鋭い観察力と念入りな実験によってファーブルは他にも新たな発見をしてまいります。
ある晩ファーブルの家で事件が起きました。
息子のポールが大声で呼ぶので急いで駆けつけるとその光景にファーブルは目をみはります。
オオクジャクヤママユという大きなガが40匹も部屋の中をひらひらと飛び回っていたのです。
なぜこれほどの数のオオクジャクヤママユが訪れたのでしょうか。
実はこの日羽化したばかりのメスのガが研究室の机の上に置いてあったのです。
ファーブルはこのメスが40匹ものオスを引き寄せたのではないかと考えました。
しかしオスたちはどうしてここにメスがいる事を知ったのでしょうか?ファーブルは4年間にわたって謎を突き止めようとします。
まずオスの大きな触角に目をつけました。
そしてオスの触角を切り落とし外へ放ち再びやって来るかどうか実験しました。
すると触角がないオスはやって来ませんでした。
ファーブルは触角に大きな意味があると考えます。
そこでメスを木やブリキの箱に入れロウで隙間を密閉してみました。
オスは一匹もやって来ませんでした。
しかし少しでも隙間を空けるとオスは飛来したのです。
実験と観察を何度も繰り返しメスが何らかの匂いを発しているのではないかと推測したファーブル。
いつも同じ時間にやって来るガに驚きこう記録しています。
最終的に匂いを感じる事ができなかったファーブルは「知らせの発散物」という物質があると結論づけたのです。
まあこの文章の美しさときたらないですね。
普通の昆虫図鑑には絶対載ってない。
その論文には載ってない。
「囚われの雌の魔法の呼びかけに応えて馳せ参じてきたのだ」。
とにかく目に見えないものですからねありとあらゆる想像を誘うんですけども最終的に全く空気を遮断した時に来ないんですよね。
ちょっとでも穴があいてると入ってくる。
だから何かそこから漏れ出てるんじゃないかと。
「知らせの発散物」というような結論に達するわけですよ。
それが後になって性フェロモンの発見。
現代ではすばらしいセンサーがありますからそれを検出する事ができるわけですね。
ファーブルの時代に全くそういうものはない。
目に見えないところのありとあらゆる可能性を潰していって知らせの発散物要するにフェロモンを予言したわけですね。
その知らせの発散物というのは匂いみたいなのはするんですか?人間の鼻では分かりません。
でもやっぱり匂いの微粒子と同じようなものですね。
でもそれがあるんじゃないかとファーブルは予測を立てて。
それこそ電磁波かもしれないとかね。
それから不思議なモールス信号みたいなものかもしれないとか。
昆虫の実験と観察を行ってさまざまな新発見をしたファーブルなんですが自身の生活は実は困窮を極めておりました。
画期的な新発見を論文で発表したファーブルは研究者の間で注目を集めていました。
進化論を唱え脚光を浴びていたダーウィンもファーブルの観察眼の鋭さに注目しその能力を認めていました。
しかしいくら昆虫の論文を発表してもお金にはならず教師の仕事だけでは生活は楽にならなかったのです。
そこで収入を得るため特許を取得しようとします。
ファーブルは植物のアカネから赤い染料を取り出す事に成功しました。
しかし先にドイツで人工染料が開発されてしまい事業化はできませんでした。
そんなファーブルに追い打ちをかけるような出来事が起こります。
ある日授業で植物には雄しべと雌しべがあり人間と同じように受精するという事を若い女性に教えました。
これが大きな問題となります。
当時フランスの教育界はカトリックの勢力が強くファーブルの授業は不謹慎であると非難され辞任に追い込まれてしまいます。
更に収入が無くなったファーブル一家は家も追い出されてしまいました。
決して負けないファーブルは本を書いて生活費を稼ごうと決意しました。
ファーブルは物理や化学だけでなく歴史文学更には家事などあらゆる分野で本を出版し家族を養ったのです。
何でファーブルはそんなカトリックから目の敵にされるんですか?ファーブルは例えば…ところが女の子の教育というのは修道女修道院の付属の学校に任せるというのがその当時のカトリックの教会で。
とにかくもう男と話もさせないというそういう状況が長く続いてますから。
そこに女の子がうれしそうにそういう大学もどきの所に行って自然科学あるいはいろんな社会の原理なんかも知るというのは都合が悪かったんでしょうね。
じゃあもうにらまれた。
既にカトリック派からしてみたらあいつが何かボロ出したら打ってやろうとは思ってる。
それはもう難癖をつける種はずっと探されてたんですね。
そこに「雄しべと雌しべなんてまあやらしい」と。
「まあエッチな話!なんですか!」と。
本人は多分そんな気持ちで言ったんじゃないんでしょうけど。
普通の植物の話として言ったんでしょうけど。
結局ファーブルは教師としての職務をはく奪されてしまって無収入?もう嫌になって辞めちゃったんですね。
知恵がある人だから赤い染料を植物から取り出すみたいな事業をしようとするけどそれもちょっとタイミングが悪くて。
それが成功するんですよ。
かなり能率のいい抽出法を発明してもうお金が入り始めたんですよ。
もうこれで安心して虫の研究ができると思ったやさきにドイツで人工染料が出来ちゃうんですね。
食べてくためにはいろんな本を書いた。
そうですね。
物理数学天体地理100冊ぐらい。
100冊!それで随分その本が売れて一部は教科書にもなってそれでやっと豊かになるんですよね。
ちょうどその55歳から一応自由を手に入れると。
それまでまとめてたいろんな事を「昆虫記」という形でまとめようかと。
そうですよね。
そうなんですよね。
そこに行き着くんですねどんな時でも。
そう考えるとファーブルにおけるファーブルという昆虫ね昆虫はもういつか「昆虫記」を書き上げるという本能の下にせっせとせっせと…。
本能に従ってる時きっと昆虫は気持ちいいというか正しいんでしょうね。
その従ってない事が気持ち悪いし。
どうしても人間って本能から出られないんでしょうと僕は思いますね。
それが結果的に非常に愚かな事である場合もあり非常に優れた事である場合もありますけども。
我々の生活都市化というかねこれが人間の本能をどんどんどんどん鈍麻してるんじゃないか。
生まれた時からきれいなトイレがあって部屋の隅々まで明るい。
おっしゃった本能をすごく駄目にしてしまうもしくは知識を完全に優先してしまう時にやっぱり幸せではなかったりとか体がむずかゆいのか分からないけどうまくフィットしない事にはなりそうですね。
だから何かおかしい。
…と思う事が我々にもあるんだと思いますね。
俺は本能のままに目の前にあるものを食べてしまうけどこれに何を上手に動かすとこの本能がちゃんと…。
だって人間長生きするように本能は仕組まれてるはずなのに何かのバランスがおかしくなって本能の誤作動で俺ありったけ食ってるわけだから。
そうするとそこの整備という事をファーブルから俺学べるような気がするの。
突き止める方法とかも。
今俺は何故に過食なのかという事は多分実験で分かるはず。
でもいろんな局面でこの事を考えると俺うまくいく事いっぱいあると思う。
そうかも。
さて次回は昆虫観察に専念したファーブルが年を取ってどう昆虫に向き合ったのか。
そこのところを探ってまいりたいと思います。
奥本先生どうもありがとうございました。
2014/07/16(水) 23:00〜23:25
NHKEテレ1大阪
100分de名著 ファーブル昆虫記 第3回「本能の謎を解き明かす」[解][字]
昆虫の本能を次々に明らかにするファーブルだが、ある事件から窮地に陥ってしまう。だがそのピンチは彼に新たなチャンスを与える。第3回は「昆虫記」誕生秘話に迫る。
詳細情報
番組内容
ファーブルは、狩り蜂の幼虫が、心臓など致命傷になる場所を巧妙に避け獲物を生かしたまま食べるという事実を発見。こうした本能に関する研究はダーウィンなどからも高い評価を得た。しかし、女性が同席している講演会でおしべとめしべの解説をしたことが問題視され、ファーブルは職を失う不運にみまわれる。そこで筆一本で生きる決意を固め、書き始めたのが昆虫記だった。第3回では、昆虫の本能と昆虫記誕生のきっかけを語る。
出演者
【ゲスト】仏文学者大阪芸術大学教授・埼玉大学…奥本大三郎,【司会】伊集院光,武内陶子,【語り】斎藤英津子,【声】池水通洋
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
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