さまざまな量に袋詰めされる、ねぎ。
農家出身の経営者が立ち上げたねぎの生産や加工販売を行う会社です。
今、こうした動きが広がっています。
農業をどう成長産業に変えるのか。
その方策の一つとして先月政府は農協改革を打ち出しました。
各地域の農協の創意工夫が発揮されるよう組織の在り方に改革を求めたのです。
農協については60年ぶりの抜本改革となります。
改革が単なる看板の書き換えに終わることは決してありません。
しかし現場の農協や農家からは戸惑いの声が上がりました。
一方、みずから改革に乗り出す農協も現れています。
農家の所得を上げるためにコメの販売方法を抜本的に見直したのです。
私たちの食卓を支える日本の農業。
今度こそ衰退に歯止めがかけられるのか。
改革の行方を考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
担い手の高齢化加えて後継者の不足。
農地が荒れれば後継者が一層不足する悪循環に陥りかねません。
日本の農業の衰退に歯止めをかけ活性化を図るためには農家のほとんどが組合員になっている農協の改革が避けて通れないといわれています。
戦後まもなく設立された農協は立場の弱い農家が強い交渉力を持って農作物を販売することを主な目的とした助け合いの組織で現在も国内で扱われる農作物の販売額の半分を扱う巨大な組織です。
地域の農協が農家から農作物を収穫し、販売ルートに乗せたり農家が必要とする肥料や農薬などの共同購入さらに農家への貸し付けなども行います。
農協は農家のための組織と位置づけられ、農家の収入が増えるよう働くことが期待されているのですけれども意欲の高い農家の力を引き出せていないのではないかという批判が高まっています。
こうした中で政府は、農協改革に乗り出そうとしています。
全国各地にある地域農協の数はおよそ700。
その上に都道府県組織さらに頂点にはJA全中・全国農業協同組合中央会があるピラミッド型の全国組織です。
加えて都道府県や全国組織で販売などを行う組織も含めてJAグループと呼ばれています。
政府内では、このJA全中を頂点にした、この組織構造が個別の農協の創意工夫を妨げているという声が強まっていまして組織改革の在り方についての議論が今後進められていくことになります。
農業を成長産業に変えていくために農協はどうあるべきか地域の実情に合わせて農家の収入を高めようという農協の模索をまずは、ご覧ください。
日本有数の畑作地帯北海道十勝地方。
ここに長年、模範とされてきた農協があります。
更別村農協です。
この地域の主な農作物は小麦や、でんぷん用のじゃがいもなどです。
これらを共同販売というJAグループ独特の方法で販売してきました。
全国の農協でも実践されているこの共同販売。
まず農家から作物を集め販売を手がける上部組織に出荷します。
さらにほかの農協も一括して出荷。
共同で販売することで農協が個別に交渉するよりも強い価格交渉力を持ち農作物の価格を維持してきました。
更別村農協はこのJAグループの共同販売を活用して農家の所得向上を実現してきたのです。
一方、組織頼みの販売方法だけでは農家の所得向上につながらないと考え独自の販路を開拓し始めた地域の農協が現れています。
今月8日山梨県の山あいの水田に大手牛丼チェーンの関係者が訪れました。
県北部にある梨北農協がコメを直接売り込もうと招いたのです。
まだ水は浅くていいですよね。
いいと思います。
2週間、台風来るんで。
ぜひ、ご利用ください!
1日80トンのコメを消費するこの牛丼チェーン。
梨北農協は、そこに自分たちのコメを使ってもらえれば安定した売り先ができると考えたのです。
契約を結んでもらうために農協では、牛丼チェーンが求める新しい品種のコメの栽培を手がけています。
みつひかりという品種でコシヒカリに比べて5割ほど収量が多く価格が安いといいます。
こいつらを穂にできるかどうかっていうのがこれからポイントになりますね。
ああ、これがね。
この梨北農協。
実は以前から数々の改革で注目を集めてきました。
その一つがコメの販売方法の見直しです。
比較的高い価格で地元のコメを売ることに成功しました。
梨北農協は改革以前は多くの農協と同様に農家からコメを集め上部組織に出荷してきました。
県内のほかの農協も同じように出荷するJAグループを通じた共同販売です。
そのため梨北のコメはほかの産地のコメと混ぜられ山梨県産として売られていました。
梨北のコメとしての評価を価格に反映することができなかったと梨北農協では感じていました。
そこで上部組織にコメの販売を委託するのではなく農家から買い取ることを決断。
独自の価格設定で直接卸業者などと取り引きを始めたのです。
新たな販売方法では梨北農協が大きなリスクを負います。
買い取ったコメが安くしか売れなかった場合農協が損失を抱えることになるからです。
それでもコメを高く売るためには避けて通れない選択だったと考えています。
去年の農協の出荷価格表なんですけど。
梨北農協の決断は地元の農家に刺激を与えています。
コメを生産している専業農家の山本弘行さんです。
高値での買い取りが実現したとして山本さんは高齢農家の水田の借り受けを増やし始めました。
地域では耕作放棄地の拡大に歯止めをかける一定の役割が期待されています。
組合長の堀川さんは地域の農業を維持するためにJAグループにこだわらない独自の改革を続けることにしています。
JAグループの頂点に立つJA全中。
萬歳章会長は地域の農協の創意工夫を阻んできたという強い批判を受けて改革に取り組むという姿勢を強調しています。
今夜は農業政策に大変お詳しい、名古屋大学大学院教授、生源寺眞一さんにお越しいただきました。
今のリポートにありましたように、従来どおりに農協が集荷して、そして、販売ルートに乗せているやり方をやっている農協もあれば、リスクを取って高値で買い取って、そして、すべて販路を自分たちで見つけているという梨北のような取り組みもありました。
今、農協の改革に向けた機運というのを、どう捉えてらっしゃいますか?
私は、現場ではかなり機運が高まっているんではないかと思っているんですね。
ただ、農協はこれまでにも、いろんな改革はしてきているんですね。
特にバブルの崩壊、90年代の初めですね、それ以降やっぱり信用事業の基盤を整えるということで、ずいぶん合併が進んでるんですよね。
ですから、一時3000を超えていたのが今700です。
そういう意味ではですね、改革もある意味では進んでいるんですね。
ただ、農協の仕事の本丸である農業の部分については、やや遅れていると、ライバルもいろいろ出てきているということで、現場ではかなり、実は危機感は強まっているんではないかと、これは私の見立てなんですけどね。
梨北のように自分たちで販売ルートをもっと見つけようということをやっているわけですけれども、実際にその農家の方々からも、農協に期待する一番は、販売ルートを拡大してほしいという点ですよね。
そうですね。
それでやはり、高い値段で売ってほしいという、こういう希望は非常に強いですね。
ただ、お米の世界では農協が集荷します。
それを全農にというのが以前のルートでしたけれども、必ずしも今、全農にということではなしに、自分で売るような、そういう動きも広がっているんですね。
ただ、梨北のように全量を買い取って、全量を自分で販売すると、これはまだまだ少数で、だからまあ、注目されていると、こういうことかと思いますね。
実際その食品チェーンに買い取ってもらえるような交渉も行っているようですけれども、ああいう全くこれまでとは違うルートへの開拓というのは必要でしょうか。
そうですね、今の日本の食生活を考えますとですね、外食とか加工食品ですね、あるいは調理済みの食品、これのウエイトが高いんですね。
外部化率というような言い方をしますけれども、45%、これが外食とかあるいは調理済みの食品ですね、そういうところがですね、直接農家にアプローチするということもありますので、農協の側もこれに対応する、こういう世界になってきているんじゃないかと思いますね。
しかし、農協に対しては、農家目線が足りないのではないかという声、よく聞くんですけれども、衰退がなかなか止まらない日本の農業、農協は、向き合い方が遅れてきた、その遅れてきた理由というのはどう見てますか?
1つは信用事業、つまり金融ですね、あるいは共済、保険、ここが収益を出して、全体の農協の運営を支えていたという、これが一つあると思うんですね。
もう一つはですね、農協が販売し、市場で売るわけですね。
手数料を頂いて、残りを農家にお渡しすると、このシステムは、農協にとってのリスクは小さいと、それから農家のほうも、自分で売る必要はないわけですから、両者にとってわりと安定したシステムだったんですね。
今だいぶ変わってきてますけど、そういう安定したシステムがある意味では改革の動きを遅らせてきたと、こういう言い方もできるかもしれませんね。
農家は農協に渡して、農協は上部組織に渡して、終わりと?
あるいは卸売りの市場に出してですね、それで競りで決まるという、そういう形ですね。
これが長く続いてきたんですね。
野菜とか果物なんかもそうなんですね。
そこに今や、農協のライバルも登場してきているということで、次にご覧いただくのが、そのライバルです。
農協ではなく、企業に自分たちの農作物を販売しようと、出荷しようとする動きが出てきています。
それをご覧いただきましょう。
じゃあ、きょうも一日よろしくお願いします。
京都で農業を営む株式会社です。
主に地元の特産九条ねぎを生産・販売しています。
九条ねぎは柔らかく甘みがあるといわれ高値で取り引きされています。
年間の出荷量は900トン。
売り上げは6億6000万円に達しています。
この会社がここまで出荷量を増やせたのは自社でねぎを栽培するだけでなく地域の農家からも買い集めることができたからです。
なぜ農家は農協ではなくこの会社にねぎを出荷するのか。
農協へ出荷した場合多くはそのまま卸売市場に運ばれ競りにかけられます。
市場の価格は季節や天候によって大きく変動するためいくらで売れるか分かりません。
一方、この会社と契約すると1年先の買い取り価格が提示されます。
そのため農家は出荷量に応じた翌年の収入の見通しが立ちます。
価格の変動に振り回されることなく経営が安定するとして農家は次々と、この会社にねぎを出荷するようになったのです。
社長の山田敏之さん。
家業である農業をビジネスとしてさらに拡大するために会社を設立しました。
ただ、この方法では会社が大きなリスクを負います。
市場価格が低迷し安くしか売れなかった場合会社が損失を被ることになるのです。
そのリスクをどう回避するのか。
この会社が出した答えはねぎを安定した価格で売るための商品開発でした。
3年前、ねぎの加工工場を4億円かけて建設。
0.1ミリ単位でねぎのカット幅を調整したり袋詰めの量を変えたりして取り引き先のニーズに合わせた商品開発を行っています。
そうすることで市場価格に左右されず一定の価格を維持しようとしているのです。
お世話になります。
今月2日、スーパーとレストランを経営する企業との商談で新たな商品を提案しました。
カット幅を通常の3ミリから1ミリまで薄くした商品です。
これまでにない食感でさらに需要を掘り起こそうというねらいです。
全然違いますね。
本当ですね、全然違いますね。
1ミリなので本当にふわふわなんで。
だから肉系でしたらなんでも合いますね。
この会社と出会ったことで規模を拡大しようという農家も現れています。
正月用の苗なんです。
30年前から九条ねぎを作っている農家の井上平夫さん。
6年前に会社と契約してからは少しずつねぎの生産を増やしてきました。
これなんです。
私の計画書。
安定した収入が得られるようになったとして規模を拡大するために土地を新たに購入したいと考えています。
こんにちは。
お世話になります。
さらに、九条ねぎの生産を新たに始める人も出てきています。
これまで主にコメを作ってきた澤田利通さん。
会社の誘いに応じて九条ねぎの生産を始めました。
きっかけの一つはこの会社が行う栽培指導でした。
本格的にねぎを作ったことがなかったためねぎ専門だからこそできるこの会社の指導が頼りです。
日々の管理には会社が作った詳細な栽培マニュアルが欠かせないといいます。
生産法人の知恵によって、付加価値をつけて、農家の経営が安定して、そして規模拡大につながり、栽培の指導までやっているっていう、どうご覧になりました?
そうですね。
しかも、ほかの農家の方のものも集めているということですね。
営農指導と販売という意味では、農協の役割もかなり本質的な部分をやっておられるという、こういう印象ですね。
そうやってその意欲が高まるというと、希望にもつながるわけですけれども、そうなっていくと、この生産法人というライバルが生まれたことによって、農協の存在意義はどうなるのか。
農協もずいぶん、刺激を受けていると思うんですけれども、もう一つ、農業の場合にはやはりかなり多数の生産者でもって、全体の供給が支えられてるわけですね。
例えば非常に急速に規模の拡大が進んだ酪農も。
今でもやはり1万7000、8000の農家が生乳を生産して、供給してるわけですね。
中には自分で、酪農の場合、特にそうなんですけど、自分で販売するということは、なかなか難しいですよね。
そうしますと、やはり農協が集めてという形。
これ、ほかの品目についても、1軒か2軒の農家だけで全部供給できれば話は別ですけれども、そうじゃないのが農業の特徴だと思いますね。
いろんな規模もあるでしょうし、いろんな年齢の方もいらっしゃるでしょうし、やっぱりそういう、生産法人の出荷、選択しない部分のところを受け入れると?
そういう方もおられますと思います。
そういう意味では、農協がまだまだ力を発揮できる部分って、私はあると思いますね。
ただ、農協の、地域の農協の創意工夫っていうのは、今の組織の中では阻害しているんではないかという見方が政府内には声が高まっているということで、改革の議論が行われようとしているわけですけれども、どのように農協の改革の議論というのを進められるべきだとお考えですか?
私自身は永田町、あるいは大手町、ここが主戦場になって、白か黒かという、こういう議論をするんではなくて、まさにボトムアップ、つまり市町村レベルの農協で、それぞれがどういう方向でいくのか、これを議論していただく、これが大事だと思いますね。
一つは、これは以前からある議論なんですけれども、農家、農業中心の協同組合でいくのか、あるいは農協は医療、高齢者の福祉とかあるいは日用品とか、あるいは食料品を販売するAコープ、いろんな事業をやっているわけですね。
そういう意味では地域のインフラを支えてる面もあるわけですね。
そうしますと、そこはむしろ地域協同組合的な方向でいくべきだという議論もあるんですね。
その辺は徹底的に議論していただくと、場合によると、一つの農協で全部カバーできないということであれば、2つの農協になるということも、農業の協同組合と地域の協同組合ということもあるかもしれません。
そういう意味での議論を今、現場でやっていただくというのが非常に大事だと思いますね。
地域の特性を踏まえたうえで、自分のところの農協はどうあるべきかということを、地元で考える。
そうですね。
議論すると。
しかし、日本の農家の平均年齢は、今や65歳を越えて、担い手をどうやって確保していくのかが最大の課題にもなっていますよね。
そうですね。
その中で農協というのは、どうあるべきだとお考えですか?
私はやはり2つだと思います。
一つは、メンバーだから、みんな当然、利用するんだと、こういう発想はもうやめたほうがいいと。
農協の組合員だから当然利用するんだという発想はやめる。
むしろ、いろいろ比較をしたうえで選んでもらうと、そういう存在になるということは非常に大事だと思いますね。
これが一つと、これは実は農村の在り方にも関係しているように思いますね。
2014/07/16(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「再生へ待ったなし〜農業改革の行方〜」[字]
日本の食が揺らぐなか成長戦略で打ち出された農業改革。農協に自立した経営が求められる一方で、食の生産から加工販売まで取り組む脱農協の動きも加速。改革の行方を追う。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】名古屋大学大学院教授…生源寺眞一,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】名古屋大学大学院教授…生源寺眞一,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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