親の離婚や病気虐待。
さまざまな事情で親と離れて児童養護施設などで育つ子どもたち。
心の傷を抱えたまま大人になった時さまざまな壁にぶつかり自立に苦しむ人が後を絶ちません。
どんな環境に育っても安心して暮らせる社会を造るには何が必要なのか。
今日から3日間にわたって考えます。
こんばんは「ハートネットTV」です。
虐待や離婚病気などの理由で親と暮らせない子どもたちは今全国でおよそ4万6,000人います。
その子どもたちが安心して社会に巣立ち自立していくためには何が必要なのか3日間にわたって考えていきます。
虐待などで親と暮らせない子どもをまず保護するのは児童相談所と呼ばれる行政機関です。
児童相談所は保護した子どもの状況に応じて児童養護施設などの施設や里親などに委託します。
こうして社会で子どもを育てる仕組みを社会的養護といいます。
子どもたちは原則18歳になると施設などを出て進学や就職など社会へと自立していきます。
ところがこの施設を巣立った人たちの多くがその後生活に行き詰まっているという実態が明らかになってきました。
まずはその現状からご覧頂きます。
ホームレスの人たちを支援している現場で最近ある不安が広がっています。
ホームレス状態に陥る若者たちの中に施設で育った人が増えているのです。
この千葉県市川市のNPOには生活に行き詰まった施設出身の若者が何人も相談に訪れています。
2年前このNPOの支援で生活保護につながった30歳の女性です。
父親から暴力を受け小学4年生の時に保護されて児童養護施設に入りました。
中学を卒業後一度は家に戻りましたが再び虐待を受け逃げ出しました。
しかしどこにも居場所は見つかりませんでした。
そんな時声をかけられたのが住み込みで働けるスナックや風俗店でした。
生きていくためにほかの選択肢はありませんでした。
「私は何のために生きているのか」。
女性は次第に精神的に追い詰められていきました。
施設を出て間もなく路上生活に陥った男性もいます。
男性は幼い時に母親を亡くし父親も病気がちだったため小学2年生の時から児童養護施設で育ちました。
二十歳で施設を出ると印刷関係の会社に就職。
しかし人間関係につまずきすぐに退職します。
家賃が払えなくなりアパートを退去。
頼れる家族や親戚はなくすがる思いで育った施設に連絡を取りました。
住む場所はなく路上生活を続ける中で食べる物にも困った男性はついに万引きをして逮捕されました。
その後男性はNPOの支援を受けて路上生活から脱出。
頑張って!現在は生活保護を受けながら独り暮らしのお年寄りに食事を届けるサービスを手伝っています。
スタジオには女優・タレントのサヘル・ローズさんと山梨県立大学教授の西澤哲さんにお越し頂きました。
(3人)よろしくお願いします。
サヘルさんはイラン出身で4歳の時に両親を亡くされて孤児院で育ちましてその後養母に引き取られて日本にやって来るんですが経済的に苦しい生活が続いて一時は公園で寝泊まりするホームレス状態にも至ったと。
今は女優・タレントとして活躍しながら児童養護施設も訪問していらっしゃるんですね。
そうですね。
今のVTRサヘルさんにはどういうふうに映りました?すごく心が痛くなる言葉がいくつもあって「居場所がない」というのもそうですしあと「家族というものがよくわからない」。
「なぜ生まれてきたんだろう」という同じ人間としてこの世に命を授かったのになぜこういう思いをしなきゃいけないんだろうというのをすごく見て心が痛みました。
やっぱり公園での生活も自分も経験しているのもあるんですけれど。
私は養母と里親と一緒に生活をしていた時期があったんですが屋根がなかったり壁がないというその不安の中での一時的な生活でもすごく怖かったですし。
でも居場所がないからそこで生活をせざるをえない彼の気持ちを考えると本当は扉を開けて「ただいま」って言ったら「お帰り」っていうその温かみのある家族が本当はいて…いるべきじゃないですか。
そうですね。
でもそれがいなくて帰る場所がないという。
居場所というのは帰る場所もそうだけれども心を置く場所その心の居場所すらないんだなというふうにすごく感じて心が痛みました。
こういうふうに社会に出てさまざまな困難にぶつかる若者たちというのは実際多いんでしょうか?そうですね。
とても多いんだろうと思ってるんですが実はそこをちゃんと捉まえられてない。
彼らがどのような生活をしているのか。
施設出たあと。
そういったところの追跡ができてないというのが正直なところです。
追跡調査がないんですが我々は養護施設に関係している関係者たちはそういうふうな女の子の場合の性風俗店の就労であるとかあるいは男の子の場合は路上生活とか反社会勢力に入っているというような状況も含めて非常に危惧をしています。
その辺りのデータがありますのでご紹介します。
施設を出た人たちのその後が分かる調査というのは非常に少ないんですけれども東京都が4年前に行った実態調査です。
例えば進路の問題です。
施設出身の人の最終学歴を見ますとおよそ3/3が中学卒。
6割が高校卒。
大学や短大卒は僅か6.6%なんですね。
一方で東京都全体の大学などの進学率を見ますと65%。
明らかに差がある訳です。
働いている人の収入を今度は見てみますと月収15万円未満がおよそ半数。
20万円未満の人が8割を占めています。
正社員ではなくて非正規雇用で働いている人の割合が多い事も分かっています。
更に生活保護を受けている人の割合も東京都全体に比べて施設出身の人はおよそ4倍高いという数字になっています。
これだけ見てもかなり差があるなと感じますが。
この調査については1つ留意しておかなければいけないのは調査対象になっている人たちのうちで調査回答を得たのが2割程度。
2割弱というような。
つまりあとの80%以上の人たちは調査に回答しないという人もいたと思いますけれども多くは今実際にどうしているか連絡がつかないといったような実態がこの背後にあるという事ですよね。
といいますと実態はもしかしたらもっと悪い状況かもしれないと?恐らくもっと非常に悪いだろうというふうに推測します。
社会に出てやりたい事も多分たくさんあるのにそこのスタートラインに立てないというのはすごく歯がゆいですよね。
このように困難を抱えがちな施設出身の若者たちにどう支援していったらいいのか。
東京都内のある相談所を取材しました。
児童養護施設などで育った人たちを専門に支援している「ゆずりは」。
施設の職員をしていた高橋亜美さんが4年前に立ち上げた相談所です。
この日は両親の離婚が原因で施設で育ち今も心の傷に苦しむ女性が訪れていました。
「ゆずりは」に相談を寄せる人は年間およそ200人。
家賃が払えない。
望まぬ妊娠をしたが中絶するお金がない。
生活に困窮したりトラブルに巻き込まれるなど内容は多岐にわたります。
「ゆずりは」では弁護士や医師行政などと密に連携。
相談の内容に合わせて専門家につなぎます。
相談者の多くは子どもの頃親から十分な愛情を受けられず心に深い傷を負っています。
おととしの暮れ住む家もなく所持金僅か30円の状態で駆け込んできました。
自立した生活を取り戻すためのサポートが続いています。
渡辺さんは小学2年生の時に両親が離婚。
その後一緒に暮らしていた母親の行方が分からなくなり児童養護施設で育ちました。
アルバイトでこつこつと学費を貯め大学進学を目指す頑張り屋の子どもだったといいます。
18歳で施設を出る時の渡辺さんの思いがつづられていました。
「あっという間の10年。
いつの間にか僕も社会に出て、大人の仲間入りをする。
いろいろと不安がある。
がんばるぞ!!」。
渡辺さんは見事第1志望の大学に合格。
学費と生活費を稼ぐため飲食店で毎日7時間働きながら大学に通う生活が始まりました。
積み重なっていく疲労。
大学2年のある日渡辺さんはふと目にしたパチンコ店に立ち寄ります。
生活費を少しでも増やしたい。
そんな誘惑にかられたのです。
しかし思うようにはいきませんでした。
負けた分を取り戻そうと焦るあまり貯金や奨学金をつぎ込み家賃も滞納するようになりました。
大学は中退。
アパートを出て公園でホームレス生活を送るしかありませんでした。
僅かな所持金も底をつき渡辺さんは最後の手段と思って自分が育った施設に連絡。
「ゆずりは」につないでもらったのです。
「ゆずりは」はすぐに連携する弁護士に相談し渡辺さんが抱えていた借金や滞納金を整理。
同時に安心して生活できる住まいを確保。
地元の不動産屋と交渉して事務所のそばに安く部屋を借りました。
特に心配だったのは渡辺さんのお金の管理です。
再びパチンコにのめり込んでしまわないか一緒に家計簿をつけて見守る事にしました。
今渡辺さんは日給7,000円の派遣の仕事を見つけ地道に自立への道を歩もうとしています。
しかしパチンコはなかなかやめ切れずにいました。
不安定な派遣の仕事。
経済的な不安から早く蓄えを作りたいとつい足が向いてしまうのです。
このままでは「ゆずりは」の人たちにも見放されてしまう。
渡辺さんは家族のように無条件に頼れる人がいない事に不安を募らせていました。
この日「ゆずりは」を訪ねた渡辺さん。
どうしようもなく不安な気持ちをぶつけました。
たとえ親から愛情を受けられなくても本気で向き合ってくれる人はいる。
そう気付いた渡辺さん。
(高橋)ありがとね。
はいおやすみ!
(渡辺)おやすみなさい。
(高橋)明日もよろしく!5日後。
朝5時に起きて仕事に向かう渡辺さんの姿がありました。
渡辺さんのおっしゃった「血のつながり」だったり「見放さないでいてくれた」というその言葉すごく心に突き刺さります。
私は7歳の時に今のお母さんと出会って養子縁組みが成立して。
私は血のつながりがない彼女が自分の娘のように愛情を注いでくれてるんですけれどもやっぱり施設で育っているためその施設の中でいた時って正直名前で呼んでもらう事もそんなになかったですし。
本当は親がもともといた人間としては誰かに頭をなでてもらいたかったりだっこしてもらいたい事ってすごく愛情が欲しいんですけれども。
でも働いてらっしゃる方もやっぱり1人の大人が多くの子どもたちの面倒を見ていたりする事もあるので愛情が均等に回るかといったらそうでもないんですね。
そうすると正直だんだんと愛情に飢えてしまう自分がいるのが分かるんですよ。
その中で生活していくとついてきてしまう癖もたくさんあって。
例えば物を見たりするとどこかに隠してしまったりとかご飯が出るとお菓子が出るとほかのおねえちゃんたちにとられないように自分でポケットに入れて夜こっそり食べてしまったりだとか。
それを今のお母さんが私を引き取った時にそれをやってしまうんですよね。
その時に優しく彼女は私に持ってる癖とか体についてしまったそういうものを全部一個ずつ直してくれた。
それはやっぱり愛情があったからだと思うんですけれども。
確かに36歳の大人ではあるんですけれどもどこかで…そこをね「ゆずりは」の高橋さんに受け止めてもらってその時にしっかり自分の気持ちをぶつける場所があるというのはね。
それはやっぱり高橋さんが目と目を見て「ちゃんと見てるんだよ」というのを示してあげたからだと思うんですよね。
やっぱり乳幼児期大事な大人まあ親であったりそうでない場合もありますけどその子どもに愛情を注ぎますよね。
そうする大人の目を通して自分というのは何なのかみたいなのを見いだしていく。
それが思春期のアイデンティティーとかまでつながっていくんですよね。
だからこういう虐待受けたり養護施設で暮らしている子どもたちっていうのはそういうふうな部分が基本的に足りてない。
だから自立というのはいろんな自立がありますけども経済的だとか職業的だとか。
でも根本にある…それが欠けているという部分がよく今の渡辺さんの語りから見て取る事ができましたね。
でも渡辺さん自身は自分が愛情が足りていないという事を客観的にも分かっている。
だから分かってるからこそ苦しいんでしょうね。
というのは?自分が36として社会的にはこうであらねばならないというのは分かってる。
だけど心の中にある子どもがそれを許してくれない。
そういう事が分かってるのでとてもとても苦しい状況に置かれているんだと思いますよ。
自分の中でいろんなその場その場での葛藤があるんでしょうね。
だから依存欲求愛情欲求が満たされてない。
恐らくパチンコ…ギャンブル依存ですよね。
ご本人は生活費をなんとかするためだとおっしゃってますけど根底には依存欲求の問題があるんじゃないかなと思います。
寂しさなんだなってすごく思いますね。
あと施設出身の人たち社会に出て問題にぶつかりやすいと。
ほかの何か理由というのがあるんでしょうか?ごくごく単純に言って一般家庭である程度適切に養育を受けた人たちであっても今18歳っていうのは自立の年齢ではないですよね。
こういうふうな社会的養護というのは児童福祉法の壁で18歳未満までしかケアしないと。
そうなると18歳になったらもうあなたは全部これから自分でやりなさいよみたいな極めて残酷な状況に置かれる事になる訳ですよね。
その時に帰る場所がないあるいは頼る場所がないという辺りから勢い性風俗店やストリート路上生活にという事になってしまっているというのが実態ですね。
なかなかそうなると自立というのは難しいんでしょうかね?頼れる人がいなかったり寄り添って下さる方がいないと。
なかなかないので大変です。
そうなると自分が育った出身の施設を頼れるんじゃないかと思いながら実際は頼れていないという現状をどう見たらいいんでしょうか?制度的にはアフターケア事業というのがそれぞれ児童養護施設には課せられてますけども実態としては今本当に虐待を受けて大変な問題精神的問題行動上の問題を抱えた子どもたちがたくさん入ってくる施設で特に慢性的な人手不足人員不足ですし。
今現に目の前にいる子どものケアだけで手いっぱいというのが実情だろうと思いますね。
そういうしわ寄せの中で子どもたちの生きづらさにつながってしまっているというのがね。
これなんとかしないと。
そうですね。
「ゆずりは」みたいな場所がもっとたくさんあったら本当はいいんですけれどもね。
さあ明日ですがある児童養護施設で始まった子どもたちを支える取り組みをご紹介します。
今日はどうもありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2014/07/01(火) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ“施設”で育った私 第1回[字][デ]
7月特集「“施設”で育った私」。虐待や貧困、離婚などの理由で、親と暮らせない子どもたち。施設を出た後、ホームレスになるなど生活に行き詰まる人が相次ぐ実態に迫る。
詳細情報
番組内容
7月特集「“施設”で育った私」虐待や貧困、離婚などの理由で親と暮らせない子どもたちは、全国で4万6千人。施設から出た後、生活に行き詰まる人が相次いでいることが分かってきた。困った時に頼れる親がなく、アパートの保証人が見つからずにホームレスになる人、家を飛び出したものの行き場がなく、住み込みで風俗の仕事をせざるをえなかった人。施設出身の若者たちの埋もれてきた実態に迫り、自立のために何が必要か考える。
出演者
【出演】サヘル・ローズ,山梨県立大学人間福祉学部教授…西澤哲,【司会】山田賢治
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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