クローズアップ現代「働き方はどう変わる〜“残業代ゼロ”の課題〜」 2014.07.01

あなたは…
先進国の中でも特に労働時間が長く生産性が低いといわれる日本のサラリーマン。
先週、そうした働き方を変える新たな制度を作ることが閣議決定されました。
労働時間ではなく成果で給料が決まる今回の制度。
年収1000万円以上の労働者などを対象にしています。
働く場所や時間に縛られない自由な働き方も実現できるといいます。
しかし、労働組合などは成果主義によってさらに長時間労働や過労死が増えると反発。
残業代を削りたい企業のための制度だと批判しています。
時間から成果へ。
働き方の大きな変化は私たちに何をもたらすのか考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
今夜は近田が担当します。
先週、国が決定した成長戦略。
そこに盛り込まれたのが新たな労働時間制度の創設です。
来週から法整備に向けた準備が始まろうとしています。
現在、労働基準法では働く時間は1日8時間。
週40時間が原則とされています。
これを超えて働きますと割り増し賃金が支払われます。
いわゆる残業代ですね。
これに対して働いた時間ではなく仕事の成果によって報酬が支払われるという新たな制度が打ち出されました。
これ、全員というわけではありません。
年収が1000万円以上。
仕事の範囲が明確で高い職業能力を持つ労働者が対象です。
この制度が打ち出された背景の一つが日本の労働生産性の低さです。
諸外国に比べまして労働時間が長いわりに生産額が伴っていないというデータです。
日本はOECDの加盟国の中でこう見ていきますと34か国中20位。
決して高くはないんですね。
これが時間ではなく成果で報酬が決まることになれば労働生産性が上がって国際競争力が高まるとしているんです。
しかし、反発も起きています。
制度の対象がなし崩し的に広がり長時間労働による過労死の問題が一層深刻になるんじゃないかという懸念の声が上がっています。
連合は今回の制度を残業代ゼロ制度だとして強く反発しています。
そもそも日本ではこれまでも裁量労働制労働者に時間管理を任せる仕組みを一部の職種で導入するなど成果主義の拡大を進めてきました。
今回の新たな制度はこれを大きく後押しするものといえます。
まずは、いち早く裁量労働制による成果主義を取り入れた企業で働く人たちの姿を、ご覧ください。
都内のIT企業です。
マーケティング部門で働く藤村能光さん。
会社のウェブサイトの制作を担当しています。
この会社は、働いた時間ではなく成果や能力で社員を評価しています。
会社が藤村さんに求める成果はウェブサイトの閲覧数を増やし知名度アップにつなげることです。
社員の給料は成果と連動した独自の仕組みで決められています。
まず、社員が仮に転職した場合どのくらいの年収を得られるかを算出。
その金額に、成果や能力に対する社内の評価を反映させ給料を決めています。
成果さえ出せれば働き方は自由です。
外での取材が多い藤村さん。
会社には戻らず近くのカフェで仕事を始めます。
ウルトラワークとは藤村さんの会社が勧める働き方。
メールで事前に報告しておけばいつ、どれぐらい仕事をするかを自分で決められます。
成果主義には常に結果を求められる厳しい側面もあります。
世界170か国で事業を展開する大手外資系企業。
管理職、一般職を問わずほとんどの社員を成果で評価しています。
企業向けのネットワークシステムの営業を担当する原寛世さん。
原さんが求められている成果はメガディールと呼ばれる億単位の契約を複数取ることです。
行ってきます。
原さんの会社では出した成果によって同じ年代の社員であっても年収で2倍もの差がつくことがあるといいます。
出勤、退勤の時間を自由に選ぶことができる原さん。
自宅で家族との食事を終えると…。
すぐに仕事です。
夜9時からはアメリカにいる上司との電話会議。
顧客との交渉の進み具合をほぼ毎日報告するよう求められています。
原さんが手がけているのは数か国にまたがる大がかりなプロジェクト。
日本の契約交渉だけが遅れていることを上司に指摘されました。
成果だけを求められる厳しい働き方。
それでも原さんは、そこにやりがいを感じているといいます。
成長戦略では新しい労働時間制度の対象となる人の年収を1000万円以上としています。
民間企業で働く人のうち年収が1000万円を超える人の割合は3.8%。
経済界は、さらに対象の拡大を求めています。
団結して頑張ろう!
一方、警戒を強めているのが連合です。
年収や職種が限定されていても長時間労働を防ぐ仕組みが伴わなければ過労に陥る危険性があると懸念しています。
今、会社から過剰な成果を求められ長時間労働に陥る人が増えています。
労働相談を受け付けている都内のNPOです。
寄せられる相談のうち長時間労働に関するものがおよそ3分の1を占めています。
中でも、裁量労働制などで課せられたノルマによる長時間労働が増えているといいます。
NPOに相談を寄せた20代の女性です。
IT企業の正社員として官公庁で使われるシステムのマニュアルを作成していました。
しかし、短期間に1人で完成させることを求められ深夜や休日も働かざるをえなくなりました。
次第に体調が悪化。
3か月後にはキーボードを打つことすらできなくなり女性は休職を余儀なくされました。
スタジオには、労働経済学がご専門の安藤至大さんにお越しいただきました。
安藤さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今回、政府が労働時間の規制緩和を強く求めてきた、その理由はどこにあるんでしょうか?
やはり一番大きいのは、企業側の要求だと思います。
企業側の要求?
ホワイトカラーの労働者のうち全員ではないんですが、一部にある意味、放し飼いにしたほうがうまくいく、うまく働ける人というのがいるんです。
放し飼い?
例えば場所であったり働く時間、こういうものを労働者側に決めてもらったほうがうまくいくということで、すでに裁量労働制という、裁量労働という働き方が可能になっています。
これは研究者だったり記者、クリエーター、こういう人たちに適用可能になっています。
こういう働き方だと、今、自由に働けるんだけれども、実は深夜とか休日、こういう時間に働くと、やはり割り増し賃金が必要だと、しかし、昼間じゃなくて夜に進んで働いたのに、それで割り増しが必要というのも、ちょっと納得感がないんじゃないかとか、また、この仕事が裁量労働に適用されるのかどうかということで、争いもあったりするんですね。
ということで、もっと明確な基準が欲しいと考えているんだと思いました。
企業の本音はそこなんでしょうか?
2つあって、その裁量が利く働き方のところも1つ、もう1つは、やはり貢献度と賃金のバランスというものが取れてないポジションでも出てきたということが大事だと思うんですね。
どういうことでしょう?
例えば、課長とか部長っていうラインの人たちっていうのは、管理監督者として、残業代とか払われていないと。
しかし、同じぐらいのランクの人で、経験もあるし、賃金もそれなりに高い人なんだけれども、管理者じゃない人っていうのは、やはり残業代が必要だったり、こういうところで、逆転現象が起こっちゃったりするんですね。
貢献度が高い人のほうが、給料が安いとか、それより社内で納得がいく賃金制度をうまく運用したい、そういう考えがあると思います。
一方で、労働者側、働く側の意見、声というのはどのようにご覧になりました?
長時間労働、または健康被害の問題というのが、これだけある現状を見て、それに対する対策が明記されていないということで不安に思うのは、当然だと思いました。
今後の議論において、労働政策審議会などで、具体案が議論されていくと思いますが、そこで休日をどのくらい取らないといけないか、また労働時間の上限はこのくらいだというような、明確な基準をぜひ考えてほしいと思っています。
その来週から審議が始まります。
働き方をどうにかしないというベクトルは一緒だと思うんですけど、制度設計、具体的にどう進めばいいっていうふうに考えてらっしゃいますか?
そうですね。
まず考えないといけないのは、長時間労働っていうのも、全部が悪いってわけじゃないんですよね。
長時間労働、例えば、この時期は集中して働いて、技能を身につけたいであるとか、または生活費を稼ぐ、子どもを学校にやる、いろんな場面でお金が必要だという人もいるかもしれません。
なので、長時間労働すべてが問題というわけでは、本人が望まないのに、長時間労働を押しつけられたり、または本人が仮に望んでいたとしても、健康被害が起こってしまうような形の長時間労働をいかに防いでいくかということが大事だと思っています。
分かりました。
さて、企業にとって生産性の向上と残業削減、これ両立が非常に難しい課題ではありますけれども、その難しい課題に取り組む企業の模索、次はご覧いただきましょう。
先月開かれた企業の経営セミナーです。
テーマは残業ゼロ。
企業の経営者や管理職が参加。
成果主義を導入しても社員が長時間労働に陥らない経営手法を学びました。
ことしから残業の削減に取り組み始めた会社があります。
おはようございます。
都内の医療設備会社です。
病院のレントゲン室の設計などを行っています。
去年、成果主義を導入。
多くの社員が深刻な長時間労働に陥っていました。
社長の木村純一さんです。
社員に残業の削減を呼びかけたところ返ってきたのは厳しい反応でした。
どうすれば残業を減らせるのか。
木村社長は、定期的に社員と話し合ってきました。
その結果、残業を減らすために改善しなければならないポイントが見えてきました。
医療設備の検査を担当する鯨岡恭輔さん。
1か月の残業は70時間を超えていました。
鯨岡さんの場合朝9時に出社し、打ち合わせ。
その後、2つの病院を回って設計したレントゲン室の検査を行います。
残業の原因となってきたのは会社に戻ってから行う書類の作成と経費処理でした。
木村社長がまず手をつけたのが経費処理の方法です。
自動で交通費の精算ができるシステムを新たに導入。
ICカードで利用した区間や料金が表示され経費処理が、僅か数分で終わるようになりました。
書類作成の方法も大幅に変えました。
病院での検査の仕事で外回りが多い鯨岡さん。
これまでは会社に戻って報告書を作成していたため帰宅が深夜になっていました。
そこで会社は、鯨岡さんにタブレット端末を支給。
検査結果を、その場で記入できるようにしました。
データを職場に送信。
鯨岡さんが会社に戻ってくるまでに同僚が報告書を作成する分業体制を作ったのです。
社員どうしの分業が進むようにこの会社ではチーム全体の業績が上がれば個人の給料も上がる仕組みを取り入れました。
その結果、忙しい社員の仕事を時間に余裕のある社員が率先して引き受けるようになったのです。
こうした取り組みにより残業時間は大幅に減少。
かつての半分以下になりました。
成果主義と残業削減の両立。
木村社長は一方的な押しつけではなく社員の声に耳を傾けながら働きやすい環境作りに取り組むことが重要だと考えています。
企業側もかなり試行錯誤されてましたけれども、ここからどんなことが見て取れますか?
とても興味深いビデオだと思いました。
このビデオから、そもそもなんで残業があるのかっていうことが、よく分かると思うんですね。
残業があることの理由として、大きく2つ挙げられます。
1つはやはり景気だったり、仕事の受注には波があるということがあって、それと日本の雇用保障というものを組み合わせると、仕事が一番ないときに8時間労働、そして仕事があると、残業で対処するっていうことが、これまでずっと行われてきたんですね。
そうすると例えば、今の会社でも、受注してしまったら、仕事やらないといけないですよね、誰かがやらないといけないということが、まず1点目です。
そして2つ目は、仕事の切り分けが難しかったということだと思います。
切り分け?
一つの会社の中でも、仕事が忙しい人もいれば、普通の人もいる。
こういう差がなんで生まれるかといったら、仕事をうまくこま切れにしてみんなに分担してもらえたら、話は簡単なんですけれども、そうじゃないと。
この仕事はこの人に全部任せたほうが、うまくいくっていうこともあるんですよね。
しかし、今のケースのように、IT技術の発達とかをうまく活用して、仕事を切り分けてほかの人にやってもらう、こういうことが可能になると、これから仕事量の平準化が可能になっていくと思います。
成果主義って、これまでも何度か話に、話題に上って、でもそこまで上がらなかったような印象も受けるんですけれども、今回、これからの法制化、どのように先生は見てらっしゃいますか?
まず、成果主義って何かっていうことが、とても大事だと思うんですが、これまでも日本の会社って、成果主義の面は十分にあるんですね。
時間だけで給料が決まってきたわけじゃなくて、固定給部分と、歩合やボーナスや、また成果を上げた人が昇進するという部分、あと残業代とか、こういう形で成果給部分はあったんです。
なので、ここ自体がこれからどう変わるかといったら、それほど大きく変わらないんじゃないかなと思っているんですね。
というのは、1人の人間にいろんな仕事を担当してもらうっていうのがあって、そのうち評価しやすい部分、数字で測りやすい部分で評価しようとすると、ほかの部分があまり集中して取り組まれなくなってしまうという問題があるということを日本の会社も分かっているわけです。
というわけで、うまい、納得感のある成果主義ですね、これを、これからやっていかないといけないということだと思います。
納得感のある成果主義ということですね。
これから、働き方も変わる中で、企業側、雇う側もそうですし、働く側、労働者側も含めて、この新しい時代にどのように対応していったらいいか、成果主義も含めて、どのように考えていらっしゃいますか?
まず、今、少子高齢社会を迎えたということは、とても大事なポイントだと思います。
これから生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの人たち、これが大体粗い数字で言って、10年間で1000万人ずつのペースでどんどん減っていくんですね。
でも高齢者はたくさんいるということで、生産性を上げていかないといけないというのは、大事なポイントです。
そこで、例えば女性であったり、高齢者にも働いてもらわないといけないっていうことをいわれているわけですよね。
ということで、働きやすい職場を作っていくということこそが、会社にとっての生産性向上につながっていくと思います。
これから、長期雇用ばかりが正しい働き方じゃないとなってきて、会社を移ること、転職とかも増えていくでしょうし、仕事の中身を変えていく、職種を変えるということもあると思いますので、そういうことも考えながら、労働者は、自分の働き方をどんどん見直していかないといけない時代が来たと思うんですね。
2014/07/01(火) 19:32〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「働き方はどう変わる〜“残業代ゼロ”の課題〜」[字]

新たな成長戦略で注目される雇用改革。「時間」でなく「成果」で給与が決まる制度が盛り込まれた。長時間労働に陥らない働き方をどう作るか、今後の制度設計を考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本大学准教授…安藤至大,【キャスター】近田雄一
出演者
【ゲスト】日本大学准教授…安藤至大,【キャスター】近田雄一

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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