北朝鮮に拉致される2年前の横田めぐみさんと母、早紀江さん。
早紀江さんが今月撮影した自宅の映像です。
ベランダに、当時めぐみさんが大切に育てていたゴムの木がありました。
40年近くたった今も命がみずみずしく息づいています。
きょう、日朝政府間協議に臨むため北京に向かった日本の代表団。
拉致問題が10年ぶりに動きだそうとしています。
被害者の家族からは、期待と共に不安の声も上がっています。
前回の再調査に関わった元外務省の担当者。
その経験から北朝鮮との交渉は一筋縄ではいかないと指摘します。
北朝鮮が拉致を認めて12年。
翻弄され続けた家族たちの再調査に寄せる思いを見つめました。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
先月末、北朝鮮の国営メディアは日朝の政府間協議ですべての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施することを国の内外に発表しました。
発表は日本に対して着実に調査を実行する方針をアピールするねらいがあると見られています。
北朝鮮によって拉致されたと政府が認定している被害者だけで12人。
今回の調査対象はこの拉致被害者だけでなくいわゆる特定失踪者など拉致の可能性が否定できない行方不明者さらに残留日本人やいわゆる日本人妻なども加わりました。
国交のない北朝鮮で長い年月日本に帰りたくても帰れない人々。
調査の行方によっては帰国について日本側との協議が行われることになると見られています。
拉致被害者の場合拉致から30年以上。
被害者の平均年齢は65歳を超えています。
どんな思いで国営メディアに流れた帰国に結び付くかもしれない再調査のニュースを聞いたのでしょうか。
本人も日本にいる家族も自分たちでは、どうしようもない国家間の厚い壁。
政府に救出を訴え続けるしか手だてのない被害者の家族の方々は長いこう着期間のあとようやく日朝間で全面的な調査を行うと合意したことについて肉親の帰国につながるきちんとした調査が本当に行われるのか。
期待と共に調査が行われたという形を取って幕引きが図られるのではないかという不安も抱いています。
あす、北京で局長級による政府間協議が行われ北朝鮮が立ち上げるとした特別調査委員会の組織や権限調査の進め方について話し合われ再調査が動きだすことになります。
救出を願って活動を続けてきた拉致被害者の親の平均年齢は86歳を超え拉致問題の解決は、まさに時間との闘いとなっています。
先週、拉致被害者の家族が緊急集会を開きました。
横田めぐみさんの父、滋さんと母、早紀江さんです。
10年ぶりに行われることになった再調査。
期待と共に、北朝鮮の対応への不安を語りました。
北朝鮮が初めて拉致を認めた2002年の日朝首脳会談。
被害者5人の帰国が実現しました。
しかし北朝鮮は8人の被害者は死亡したと説明。
その中にめぐみさんの名前もありました。
北朝鮮の説明は矛盾や誤りが多く到底信じられるものではありませんでした。
その2年後、白紙に戻して再調査を行うとした北朝鮮。
めぐみさんのものとする遺骨を出してきましたが検出されたDNAは別人のものでした。
北朝鮮に翻弄され続けた横田さん夫妻。
この10年の間もみずから街頭に立ち拉致問題の解決を訴えてきました。
81歳になった滋さんのスケジュールが記されたメモです。
国会議員との会合。
アメリカの国務省関係者との面会。
夫婦2人の活動で埋め尽くされています。
今も生活のすべてを娘の救出にささげています。
横田さん夫妻は今回の再調査にあたってひときわ大きな不安を抱えています。
北朝鮮との交渉の難しさを肌で感じてきた人がいます。
元外務省の原田武夫さんです。
2004年に調査団の一員として北朝鮮との交渉に当たりました。
北朝鮮が、めぐみさんが自殺した場所だと説明した松の木。
矛盾を問いただしても北朝鮮側は同じ説明を続けるだけだったといいます。
北朝鮮側の主張を検証しようとしても案内される場所さえ限定され限界を感じたといいます。
日本と北朝鮮がその内容について初めて文書で取り交わした今回の再調査。
すべての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施すると合意されました。
政府が認定した拉致被害者だけでなく調査の対象が拡大されることになったのです。
新たな対象には拉致の可能性が否定できない行方不明者も含まれることになりました。
拉致事件を調査する民間団体ではこうした行方不明者を特定失踪者と呼んでその足取りを独自に調べてきました。
その数は、およそ470人。
必ずしも拉致とは限らないケースもありますが可能性が高い人も含まれていると見ています。
42年前に妹が行方不明になった生島馨子さんです。
こういうふうにポーズをつけるのが得意だったんです。
家財道具もそのままに東京のアパートから突然いなくなった妹の孝子さん。
失踪する理由も見当たりませんでした。
しかし、証拠がないため政府から拉致だと認定されることはありませんでした。
最近になって、北朝鮮からなんらかの情報があった場合に備えDNA鑑定のサンプルを提供するよう警察に求められました。
失踪の理由が見当たらない中家族の行方を捜し続けている人がいます。
新潟市に住む大澤昭一さん、78歳です。
40年前、行方不明になった弟の孝司さん。
佐渡の農地事務所に勤めていました。
1974年、寮の近くにあった焼き肉店で食事をし知り合いの家に立ち寄ったあと消息を絶ったといいます。
島の外に出た形跡もありませんでした。
大澤さんは当初拉致の可能性を考えることはなかったといいます。
しかし12年前拉致被害者が帰国したことで考えは大きく変わりました。
政府も把握していなかった曽我ひとみさんが拉致の被害者だったこと。
その現場も、孝司さんが消息を絶った佐渡だったことから弟も拉致されたのではないかと考えるようになったのです。
大澤さんは拉致につながる情報を求め年に何度も佐渡を訪れてきました。
孝司さんが失踪直前に歩いたとされる道をたどっています。
当時を知る人はいないか孝司さんが通っていた理髪店に毎回足を運んでいます。
40年の月日が流れても再会できる可能性はあると信じています。
この12年進展が見られなかった拉致問題。
政府に認定された拉致被害者の家族の中にはこれまでの国の対応に疑問を抱いてきた人もいます。
飯塚耕一郎さんです。
36年前に拉致された耕一郎さんの母田口八重子さん。
北朝鮮は死亡したと説明しています。
耕一郎さんは、今も母親の面影を探し続けています。
ことし、八重子さんが拉致されたと見られる宮崎県の青島海岸を初めて訪れました。
耕一郎さんは、当初、政府が八重子さんが死亡したとする北朝鮮の説明をそのまま発表したことに疑問を抱き続けています。
今回の再調査で耕一郎さんには気がかりなことがあります。
調査の対象が広がり拉致問題が中途半端な形で幕引きされることがないか危惧しています。
北朝鮮による拉致が起きてから30年以上。
その事実を北朝鮮が認めてからも12年になります。
横田早紀江さんはめぐみさんがいなくなって数年後洗礼を受けました。
今も娘の帰国が実現するよう祈り続けています。
今夜は長年、拉致問題の取材を続けています、社会部の今西記者と共にお伝えしてまいります。
被害者の家族の方々の深い祈りがありましたけれども、声を上げたくても声を上げられない。
帰りたくても帰ることができない、被害者の方々が、北朝鮮にいる。
再調査が全面的、包括的に行われるというニュースを聞いて、どんな思いを胸にしてらっしゃるのか、余りありますね。
帰国した拉致被害者などによりますとね、北朝鮮で被害者は一定程度、日本のニュースを把握していたということなんですね。
まして今回は、北朝鮮の国内メディアが、再調査の件を発表しています。
北朝鮮に残された拉致被害者が、再調査で動き出したということを知っている可能性、高いと思います。
北朝鮮では、なかなか自分の意思を表に出すことができません。
胸中察するに、じっと行く末を今、見守っているところだと思います。
政府が認定している拉致被害者、12人いますけれども、安否が分からない状態のまま、ことし、平均年齢は65歳を迎えます。
こうした被害者自身も年を取っていまして、こういう方々の、まさに運命が、日朝の政府の交渉に委ねられているという状況です。
今のリポートで、飯塚耕一郎さん、調査対象が拡大されたことによって、拉致被害者の調査が中途半端な形で幕引きされるのではないかという不安を語っていらっしゃったのが印象的ですけども、拉致被害者の家族の方々からすれば、まずは12人に集中して調査してほしかったという思いが強いんでしょうか?
政府はもちろん全員を取り戻すんだと説明していますけれども、今回、再調査の対象が広がったこと、これ、拉致被害者の家族からは、これ、どういう拉致問題に影響を与えるのかという懸念が出ています。
家族は、北朝鮮にとって帰国させやすい人から調査結果を小出しにして、拉致被害者が棚上げされるのではないかと、そういうことにならないようにしてほしいと訴えています。
特に北朝鮮が死亡したと説明している8人の家族。
命が懸かった問題だけに、拉致被害者の家族は、再調査が肉親の帰国につながるものになるのか、政府間で不十分な妥協が図られないのか、神経をすり減らしながら、推移を見守っています。
一方で、こつ然と肉親が消えてしまった家族の方々いらっしゃって、生島さん、大澤さん、もしかして北朝鮮に拉致されたんではないか、その真相が究明されるという期待も語っていらしたんですけれども、否定できない、拉致が否定できない方々が470人から860人と、非常に数が多い中で、全員帰国というハードルというのは非常に高くありませんか?
そうですね、こうした方々は警察当局の捜査で、拉致かどうかがはっきりしていない方々なんですね。
政府は全員を帰国させるとしていますけれども、助けるべき被害者の全体像、これがまだ把握できていない中で、全員をどう救出するのか、そして何をもって解決とするのか、むずかしいかじとりを迫られることになると思います。
再調査っていうのは、具体的にどう行われますか?
あす開かれる日朝政府間協議、ここでは、北朝鮮が特別調査委員会について日本側に説明することになっています。
日本側はその権限、組織を見極めたうえで対応を協議して、今週中にも北朝鮮に対する制裁措置の一部を解除するかどうか、判断することにしています。
そして実際に調査が始まって、北朝鮮側が調査結果を伝えてきた際には、外務省や警察庁の担当者からなる検証チームを現地に派遣することにしています。
ただ前回、その調査団の一員だった、元外務省の原田さんの発言ですけれども、今のリポートにありましたように、北朝鮮の主張を検証しようとしたけれども、限界を感じた。
なかなか確かめようがない部分がある中で、きちんと調査が行われているということに向けて、どんな戦略で臨むべきですか?
そうですね、帰国した拉致被害者の一人の蓮池薫さんに以前、この番組でインタビューした際に、蓮池さんは、とにかく北朝鮮は体制を維持することが第1目標だと、今はとにかく、経済状況の改善が必要で、日本を必要としているんだと、そして拉致問題を解決することで国交正常化、それを通じた経済協力という、日本には大きなカードがあるんだという話をされていました。
こうしたカードをうまく使って、拉致被害者の帰国という北朝鮮の決断を、どう導き出していくのか、ここが問われていると思います。
声を上げることが出来ない北朝鮮にいる方々の思いに応えられる交渉ができるために、何が一番大切でしょうか?
やはり今回、これはあくまでも再調査なんですね。
8人死亡、4人が入国していないという前回の調査結果に矛盾があったわけですね。
これに北朝鮮がどう応えるのか、そして、その点に関して、日本政府がどう誠意ある対応を引き出せるのか、これがやはり大きな焦点だと思います。
北朝鮮がこれまで死亡の説明をしてきた背景には、帰国した拉致被害者の家族、帰国した拉致被害者を見ますとね、その被害者の存在を隠したいなんらかの事情があるんだと、つまり被害者は生存している可能性は十分あるとしていました。
帰国した蓮池さん、以前、インタビューの中で、みずからの経験をもとに、北朝鮮との交渉にあたっては、一定の柔軟性はこれ、必要なんだけれども、命に関わる部分では妥協してはならないと。
被害者の運命を取り引きの材料にしてはならないと話しておられたのがすごく印象的です。
拉致問題を巡る交渉の本質というのは、外交交渉であると同時に、事件の被害者を取り戻す交渉です。
人命が懸かった問題なんですね。
今回の取材で、横田早紀江さんは祈るしかないと話しておられましたけれども、家族は政府に託すしかないわけですね。
確実に帰国につながる交渉を求めたいと思います。
本当に、冒頭で言いましたけれども、北朝鮮が国営メディアで、調査をするということを伝えた。
北朝鮮に残っている被害者の思いに、本当に、応えてくれるような交渉になってほしいと、切に思います。
今夜は社会部の今西記者と共にお伝えしました。
2014/06/30(月) 19:30〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「拉致再調査 思いは届くのか」[字]
拉致問題が再び動き出そうとしている。北朝鮮が、「特別調査委員会」を立ち上げ、包括的、全面調査を行うと約束したのである。被害者家族の再調査によせる思いを見つめる。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】NHK社会部記者…今西章,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】NHK社会部記者…今西章,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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