(一同)乾杯〜!こちら長崎のとある居酒屋。
(歓声と拍手)ビールのおつまみに欠かせないのが揚げかまぼこ!うま!揚げたて?おいしいですね。
これ一番おいしい。
俺これ俺これ。
それが特にビールが進みます。
(笑い声)うわ〜!俺も参加したいっす〜!この長崎のソウルフードかまぼこを作っているのが伊藤陽平さん。
その性格は揚げたてのかまぼこに比べるとちょっとクール。
伊藤さんこの仕事どんなところが楽しいもんなんですかね?
(伊藤)う〜ん…やる気あんのぉ〜?そんな伊藤さんの人生デザインとは!海に囲まれた長崎の街。
その中心地に伊藤さんの職場がある。
創業54年のかまぼこ製造会社だ。
およそ120人の従業員が毎日5トン以上のかまぼこを製造している。
原料は近海で捕れた新鮮な魚。
商品はおよそ130種類。
一口に「かまぼこ」と言ってもいろいろあるんだね〜。
この仕事に就いて5年目の伊藤さん。
仕事は毎日大変なんだって。
(取材者)今日何時起きですか?4時起き!そりゃ眠い。
出勤時間は毎朝5時。
出来たてを全国に運ぶため午前中に製造を終えて昼までに出荷をしなくてはならない。
大変な理由その2。
商品の数だけ覚える事がある。
かまぼこは味に深みを持たせるためにイワシやアジタチウオなど10種類以上の魚のすり身をブレンドして作る。
どの魚をどんな割合で配合するかは商品によって異なる。
また商品によって扱う機械も異なる。
今作っているのは揚げかまぼこ。
こちらは蒸しかまぼこ。
確かに全然仕組みが違うね。
5年目ですけどまだまだまだ覚える事はたくさんあるので。
伊藤さんは毎朝5時から一つ一つかまぼこを揚げている。
機械ではなく職人の手で作る方が絶妙な食感に仕上がるんだって。
多い日には1人でおよそ2,000枚ものかまぼこを揚げる。
そのきつさを乗り越えるため伊藤さんはある秘策を編み出した。
まあ楽しい事を考えたりとか。
はっ!アイドルとか。
へへへへへ!まあ…まあAKBとかですね。
(「永遠プレッシャー」)・「私に期待しないで」・「理想の彼女になんて」・「きっとなれないプレッシャー」そう好きな音楽でテンションを上げる作戦だ。
何か頭にひらめいた曲を心の中で歌ったりとかしたら気分的にもやっぱ楽になりますし。
こうして仕事の大変さを紛らわせている伊藤さん。
そんな彼に対して周囲の評判は?多くはしゃべらないけど…ひと言で言えば…意外と…と言っては失礼ですが高評価!それには訳が…!伊藤さんは仕事をする際必ず上司の指示を仰いで作業にかかる。
作業が終わるとすぐ次の指示を聞く。
そして言われたとおりに次の作業に取りかかる。
こうして一つ一つ確認をする事でミスを防ぎ手早く業務をこなしてきたのだ。
そんな姿勢に厳しい視線を送る人も。
(大倉)伊藤!その仕事ぶりを見ているうちにある事に気づいた。
積極的に「これしてみたい」とか「あれしてみたい」とか。
した事ない事に挑戦していく姿勢に関してはもうちょっとほしいなとかは思いはする。
1人で作業やってる訳じゃないので。
みんなでやってるんで自分勝手な行動とるとやっぱ周りの人に迷惑かけるので。
自分のミスで迷惑はかけたくないなっていうのはあるので。
ここで伊藤さんの収入を見てみよう。
月17万円もらえる給料のうち3万円を家に入れている。
伊藤さんは会社からバイクで30分ほどの実家で暮らしている。
もともとかまぼこ好きではなく特にかまぼこに興味があった訳ではないという伊藤さん。
高校生の時憧れた仕事はスポーツインストラクターだった。
当時バスケ部のキャプテンだった伊藤さん。
全国大会で活躍しスポーツ系の大学に推薦入学したいと考えていた。
しかし…。
優勝とかできれば特待じゃないですけどそういうのもやっぱあったので狙ってたんすけど自分が大会前に腰を痛めて優勝できんやったですもんね。
3位で止まったっすもんね。
まあ後悔といったらそいくらいかな。
ちゃんと病院に行っとけばよかったかなって感じで。
大学への進学を諦めた伊藤さん。
高校卒業後地元で雇ってくれる会社を探した。
そこで見つけたのが今の会社だった。
母の美恵子さん。
塗装会社で週6日働いて家を支えている。
父親は伊藤さんが高校生の時病気で入退院を繰り返すようになり働けなくなった。
進学をしなかったのは経済的な理由も大きかったのだ。
週に5日飲食店でアルバイトをして伊藤さんは家計を助けてきた。
(母)高校卒業して
(会社に)入ってからはちょっと「お小遣い」って言って弟にやってたんですよ。
はい。
私たちがやらなくても。
(取材者)もらってた?
(弟)もらってましたね。
(母)そんな親が知らないところでですね弟に優しくしてくれてるからやっぱりお兄ちゃんだなあっては思いますね。
親がやれないからですね。
だから何とも言えないです。
家はですねそれで何とかやりくりできてる。
だからお兄ちゃんが一番つらい思いをしてたかなって思いますね。
家族を支えるために選んだ就職の道。
今はどう思ってる?まあ保育園から高校まで学費とか全部出してもらってたので。
まあ恩返しじゃないですけどね。
まあできる事…まあそんくらいしかできないので。
まあ少しでも…まあ生活費じゃないですけどまあ役立てられるのならしようかなと思ったので。
そんな伊藤さんの1週間のスケジュールを見てみよう。
月曜から土曜までが仕事。
大好きなバスケは就職してからも続けている。
仕事終わりに向かったのは母校の高校。
週に一度高校の時の友だちと一緒にバスケをしている。
小学生の時に始めたバスケ。
お手並み拝見。
決まった!さすが元キャプテン。
ふくらはぎもすごいね。
2人がかりでマークされるが…シュート!伊藤さんなんだかイキイキしてるね!いやあそりゃあしますよ。
(取材者)そりゃあしちゃう?そりゃあ好きなスポーツですけん。
もう会社出たらこんな感じですよ。
クールだと思っていた伊藤さん。
こんな一面もあるんだね。
今年で入社5年目。
伊藤さんは新たな仕事の段階を迎えていた。
それはすり身を練り上げる作業を担当する事。
「臼」と呼ばれるこの作業はその日のすり身の状態を目で見て肌で感じながら練り上げなければならない。
かまぼこ作りにおいてはこれができてこそ一人前と見なされる。
伊藤さんは先輩たちのアシスタントとして4か月前からこの作業を手伝っている。
そんなある日。
大倉さんに呼ばれた。
大アジとアジ角と新角で…。
なんと「臼をやってみろ」との指示だった。
細かく切ったすり身を練り上げるまでの間に塩調味料でんぷんを含んだ水などを入れていく。
この塩と水を入れるタイミングが重要。
入れ方しだいですり身の食感が変わってしまう。
伊藤さんはひとまず指示された種類のすり身を切り始めた。
更に臼に移しよくすり潰す。
すり始めてから15分後。
一番最初に入れるように言われた塩を入れた。
その後調味料と水を立て続けに入れた。
最後に卵白を加え仕上げていく。
アシスタントの間に手順は覚えたのかな?伊藤さんが練り上げたすり身を実際に油で揚げて試食してみる事に。
果たしてその出来栄えは?
(大倉)こいはつんつるりんしとったいね。
はい。
物も堅かった。
ああはい。
堅かろうが?食べた時に堅かろうが?堅かったです。
どう考えたって。
はい。
大倉さんによると伊藤さんの塩を入れるタイミングが遅かったためすり身の温度が上がり固くなってしまったそうだ。
そのため揚げた後もうまく縮まずしわが出なかった。
いわゆるつんつるりん。
(大倉)分からない事は聞いてみたりとかして人んとを見てみたりしてでこう覚えていく形ばとらんと。
ねえ。
ただこうしてああしてあいして伸ばせ詰めろとかいうのやったらねえ誰でんできるやろうけん。
はい。
お客さんに食べてもらう時にいい状態に自分が作れるかやろうけん。
はい。
ちょこちょこ盗もうと思って見はしてたんですけどやっぱ見るのとやるとじゃ違うんで。
まあ改めて難しさを感じましたね。
2日後。
伊藤さんはまだ塩を入れるタイミングをつかめずにいた。
とりあえずまあ言われた事ば思い出しながら自分なりにそん工夫してちょっとやってみようかなとただ思ってるだけなんで。
1回目に塩を入れるのが遅かった事を反省した伊藤さん。
この日は早く入れようと準備していた。
入れようとしたその時。
大倉さんから「まだ塩を入れるな」という指示。
伊藤さんはひとまず塩を入れるのをやめた。
でもなぜそう言われたのかは分からない。
大倉さんが近くに来てもその理由を聞こうとしない。
(大倉)何か気になる事なかったとや?ああ。
やよかとばってん。
何でかっていう事ば考えろよここで。
理由があっけんおいは「打つな」って言うとやけん。
あいは早すぎる。
まとまってもなかやっかものが。
見とって分からんやん?まとまってもなんもなかとに塩ば打ってどがんすっとや?ああ。
1回1回する事に対して考えろ。
もっとこう。
ああ。
これまで言われた事をこなしてきた伊藤さん。
今回はそれが通用しないようだ。
伊藤さんは理解ができないまま適当なところで水を入れた。
しかしうまくすり身に吸収されず水がはねてしまう。
その様子を見た大倉さんたまらず伊藤さんに声をかけた。
見ようけよ。
今わいが加水したのとおいとの違いば。
ああ。
大倉さんは少しずつ水を入れ始めた。
そしてすり身の状態を確認する。
大倉さんがタイミングを見計らって水を加えていくとどんどんすり身に吸収されていった。
え?まあはねよらんのも一つある。
伊藤さんがやると水はなかなかすり身に入っていかずはねていた。
一方大倉さんが水を入れるとすぐに水はすり身に吸い込まれていく。
実は大倉さんはすり身の練り具合を観察し水を吸収できる滑らかさになったかどうかを見極めていたのだ。
まあそれは…。
わいはもっとこう自分の中で考えていかんばぞ。
うん。
そいが勉強たい。
今おいがお前に臼ばやらせたいっていう。
うん。
大倉さんははねない理由を最後まで教えなかった。
不器用器用ってありますばってんがやっぱり…「何でこがんふうに曲がるんとですかね?」とか。
「何でこがんふうになっとですかね?」とか。
だけん今からそういうとをなんか自分の中ではついてきてもらいたかですね。
自分につけていってもらいたいもんね。
大倉さんの熱い思い伊藤さんに届くかな。
次の日。
大倉さんがいつものようにすり身に水を入れ始めた。
それに気づいた伊藤さん。
初めて自分から大倉さんの横に来てその様子を見始めた。
伊藤さんは今見た先輩の動きをまねして水を入れてみるが…まだコツはつかめないようだ。
少しずつでもいいので自分が成長していけたらいいなと思いますけど。
まだ…。
自分に欲が出てきたね。
伊藤さん。
これまでとは一味違う人生デザインに一歩踏み出した。
2014/06/30(月) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「かまぼこ製造会社 社員」[字]
29歳以下の若者の悩みや新たなチャレンジをドキュメントし、一人ひとりが選んだ働き方・生き方を描く。今回は、長崎のかまぼこ製造会社に入った伊藤陽平さん(22)。
詳細情報
番組内容
長崎名物かまぼこ製造会社で働く伊藤陽平さん(22)。かまぼこ作りは朝が早く、多岐に渡る商品に応じて仕事を覚えなければいけないなど、大変な事ずくめ!それでもミスが出ないよう、一つひとつ着実に業務をこなしてきたが、これまで仕事をあまり楽しいと思ったことはない。入社5年目を迎えた今年、伊藤さんの成長を願う上司から新たな試練が…。果たして伊藤さんは期待に応えて、仕事にやりがいを見いだすことはできるのか?
出演者
【語り】Mummy−D
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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