相棒 season9 2014.06.30

(樋村学)なかなかいい仕上がりじゃないですか。
(樋村)女性テーラーの仕事とは思えませんよ。
そんな顔しないでくださいよ。
(笹原真紀)肩のラインを見てただけです。
気に入っていただけましたか?ええ。
ありがとうございます。
ではお包みします。
いやこのまま着ていきます。
これから寄るところがあるもんでね。
着てきたものを自宅に送っておいてください。
かしこまりました。
お願いします。
はい。
ありがとうございました。
(伊丹憲一)おう。
(芹沢慶二)どうも。
(米沢守)死亡推定時刻は昨夜の9時頃。
死因は階段の角に頭を強打した事による脳出血です。
上の踊り場にアタッシュケースが落ちていて中身が散乱してました。
(芹沢)誰かともみ合ったって事ですか…。
(伊丹)おい身元は?スーツのポケットにこれが。
新帝都銀行銀座支店支店長樋村学…。
ちなみに自宅は品川です。
(芹沢)帰り道じゃないって事ですね。

(杉下右京)終わりました。
(神戸尊)どうも。
(米沢)すみませんねぇ…返却する証拠品の整理なんか頼んで…。
いいえ。
どうせ暇なんで。
おや…ひょっとして…。
やはりオーダーメードスーツでしたか。
よくわかりましたねえ…。
ええ。
左右の袖の長さが微妙に違います。
ああ入ってますねえ!いい芯です。
体にピッタリ合わせるオーダーメードならではの仕立てですねえ。
ほう!古谷洋服店でしたか。
え…ご存じで?銀座で3代続く老舗のテーラーです。
なんでも店主はロンドンで修業したそうで丁寧な仕事だと評判ですよ。
よく知ってますね。
あもしかして杉下さんテーラーで作ってます?僕もロンドンにいた頃にサヴィルロウで作った事がありましてね。
非常に気に入りました。
あ君も一度試してみたらどうですか?いやいや僕はあつらえるよりも選んで買うのを楽しみたい…。
あそうですか。
ところでこのスーツですが何かの事件の証拠品でしょうか?ええ。
昨夜遺体で発見された新帝都銀行の支店長が着ていたものです。
この方です。
「融資業績3年間トップ」。
(米沢)かなりデキる人物だったようです。
敵も多かったらしく怨恨の線を当たってるようです。
失礼します。
クローゼット拝見してもよろしいですか?
(樋村小百合)はいどうぞ。
杉下さん興味があるのは事件ですか?スーツですか?もちろん事件ですよ。
どのスーツも細いラベルに2つボタンです。
まあ最近のトレンドでいうとそうでしょうね。
鑑識で見たスーツはもっとこう…クラシカルな感じでしたけど。
ええ確かに。
死亡時に着ていたスーツは太いラベルに3つボタンでした。
急に趣味が変わったんですかね?英國堂…。
英國堂?ええ。
同じ銀座にあるテーラーです。
ご主人はいつも英國堂の洋服を着ておられたのですか?ええ。
本店の重役に薦められたとかで…。
皆さんそちらで作るそうなんです。
皆さん?
(小百合)ええ。
オーダーメードは別名ビスポークと呼ばれています。
語源は「ビー・スポークン」。
「話しながら作る」という意味ですよね?そして話しながら自分の体にフィットしたものを作っていく…。
体だけではありません。
テーラーはなんのために着る服なのかを重要視します。
つまり仕事やプライベートの予定などもこと細かに話す事になる。
長年の客になりますとね家族の知らない事も知っていたりするようですよ。
は〜まるでホームドクターみたいですね。
まさしく。
ですから銀行などのように機密性を重んじる業種は情報漏洩を防ぐためにも同じテーラーを使う慣習があるようです。
なのにそのテーラーを変えた。
ええやはり気になりますねえ…。
(古谷勲)ちょっと上かな…。
はい。
うんそうそう…。
(真紀)いらっしゃいませ。
(古谷)いらっしゃいませ。
警視庁特命係の杉下と申します。
同じく神戸です。
店主の古谷です。
あの新帝都銀行の樋村学さんこちらのお客様ですよね?樋村様…ええ。
どなたがご担当を?私のお客様です。
おや女性の方でしたか。
一着だけですが…。
テーラーの笹原と申します。
最後にこちらにいらっしゃったのがいつ頃か覚えてますか?昨日いらっしゃいました。
(樋村)なかなかいい仕上がりじゃないですか。
何時頃でしょう?閉店間近だったので…8時頃だったと思います。
何か変わった様子はありませんでした?仕上がりを取りにいらしただけでしたので特には…。
あの樋村様が何か…?実は今朝遺体で発見されました。
昨夜9時頃お二人はどちらにいらしたかお伺いしてもよろしいですか。
私ならここで作業をしておりましたが。
私は奥のフィッティングルームで片付けをしてました。
そうですかそうですか…。
どうもありがとうございました。
もうよろしいんですか?ええ形式的な捜査ですので。
それよりひとつお願いがあるのですが。
スーツを一着仕立てていただけませんか。
え!?刑事さんのですか?実は樋村さんのスーツを一目見てすっかり気に入ってしまいましてね。
あなたにお願いしたいのですが。
申し訳ございません。
当店はご紹介がないと…。
かしこまりました。
ありがとうございます。
ちょっと杉下さん…。
ああ君は先に帰ってください。
「ああ」って…。
いかがですか?一宮の低速織機で織られた生地です。
今愛好家の間で評判の生地ですねえ。
昔ながらの機械で一日に数メートルしか織れないとか。
はい。
触っていただければわかりますが織り目がゆるやかですので生地に自然なふくらみがございます。
ああいいですねえ…。
ちなみにチャコールグレーはありますか?少々お待ちください。
(真紀)でしたら…。
あ…このくらいのお色はいかがですか?この生地を決める瞬間…なんともいえません。
これ。
これに決めました。
生地元の倉庫にあったと思いますので明日にでも取りに行ってきます。
では先に採寸に入らせていただきます。
こちらは紹介制だったんですねえ…。
はい。
一見のお客様には申し訳ないんですがなるべく古いお客様を優先したいという店主の方針です。
そうとは知らずにお願いしてしまって…。
いえあんなふうに私をご指名してくださる方はなかなかいません。
ですから古谷は受けさせていただいたんだと思います。
こちらはスーツのデザインといい伝統を大切にするお店なんですねえ。
はい。
うちはご年配のお客様も多いですしそう心がけています。
利き腕は右手でよろしいですね?触っただけでわかるものですか?筋肉の付き方が違うんです。
プロですねえ…。
警察手帳を出し入れしやすいように胸元に少し余裕を持たせておきます。
いろんな事に細かく気を配るんですね。
お客様がお店に一歩入った瞬間からテーラーの仕事は始まっているといわれてます。
どうりで。
では僕も気になった事をひとつ。
ひょっとして近々お休みを取る予定だったのでは?どうしてですか?メジャーをしまわれてました。
テーラーの方は肌身離さず持っているものじゃありませんか?昨日片付けをした時に道具を整理したんです。
あそうでしたかすみません。
つまらない事訊いてしまいました。
よく見てらっしゃいます。
さすが刑事さんですね!恐縮です。
まさか本当にスーツが目当てだったわけじゃないですよね?はい?いや急に仕立ててほしいなんて。
君は引っかかりませんでしたか?え…何に?彼女の言葉です。
私のお客様です。
一着だけですが…。
テーラーは本来長い付き合いをする事が前提です。
なぜ「一着だけ」などと決め付けた言い方をしたのでしょう。
亡くなった人だからじゃないですか?いえその事実はまだ伝えていませんでした。
ああそうか…。
いやでもわざわざ注文しなくたって…。
神戸君。
はい。
あれほどしっかりしたスーツにはなかなか出会えませんからねえ。
今から仕上がりが楽しみです。
ハハハ…。
で何かわかったんですか?ひとつだけ。
彼女は店を辞めるつもりかもしれません。
辞めるって…事件の直後ですよね。
本人は否定していましたが気になります。
ああ…。
毎度の事ながら一課の目を盗んでここに来るのは心拍数が上がります。
おや…何か?こちら新帝都銀行の融資検討に関する資料なんですけども…。
「笹原真紀…勤務先古谷洋服店」。
杉下警部がこの店のスーツを気にされていたものですから…。
「新店舗準備金」…新店舗準備金って事は彼女独立を考えてたんでしょうか?「支店長決済」とありますね。
支店長の一存で決められる融資枠があるそうです。
年間1億円が樋村さんに任されてました。
…とすると笹原真紀は被害者と直接の利害関係にあった事になりますよね。
300億か…。
人が死んでもおかしくねえ額だな。
おっ…。
出たよ…。
聞き込みですか?
(芹沢)ええ実は…。
なんでもありませんよ。
そういう警部殿は?我々は支店長決済の事で少々…。
支店長決済?ほら年間1億ってやつですよ。
ああ…そうでしたか。
どうぞどうぞ。
では。
どうぞどうぞ。
どうぞどうぞ。
どうも。
(芹沢)いいんすか?所詮1億だろ?こっちはお前300億だぞ。
額の問題ですか?
(乾井昭弘)お電話いただいた笹原真紀様のご融資に関する件調べておきました。
検討段階で保留となってますね。
保留って中止って事ですか?
(乾井)恐らく。
何があったんでしょう?さあ…?いきさつは樋村とご当人にしか…。
見事なものですねえ…。
もう何十年もこればかりやってますからね。
しかしハサミ一本とは…。
道具は結局最初に学んだ道具が一番安心出来ますからね。
古谷さんはロンドンで修業されたそうですね。
いやあ…修業というほどのものでは…。
あところで笹原は何か失礼はございませんか?なんの問題もありませんが。
そうですか。
そうでしたらよろしいのですが。
いや女だというので気になさるお客さんもいらっしゃるもんで…。
僕は一向に。
もっとも紳士服に女性のテーラーがいるとは思っていませんでしたのでいささか驚きはしましたが。
男のスーツというものは鎧です。
その鎧の裏側には女に見られたくない恥や見栄が隠れているのです。
ああ…なるほど。
しかし女性の目から見た紳士服というのも参考になるのではありませんか?どうでしょうか…。
それより「あの店は色気で客を釣ろうとしてる」なんて噂も立ちかねませんし…。
ああそうですか…。
難しいものですね。
(扉の開閉音)ああ…。
お客様をお待たせしておいてどこに行ってたのかね?いえお待たせしていたわけでは…。
ええ。
今日は僕が勝手に寄っただけなんです。
お願いしておいた生地が入るというお話でしたので。
だったら時間ぐらいお伝えしておかないか。
申し訳ありません。
いかがですか?ああ…結構ですねえ。
ありがとうございます。
先ほどは申し訳ありませんでした。
いえこちらこそお見苦しいところをお見せしてしまって…。
なかなか厳しい方のようですね。
「女がテーラーになるなんて」が口癖なんです。
確かに僕も女性のテーラーとは初めて聞きました。
なぜ紳士服のテーラーになられたのですか?ああ…申し訳ない。
立ち入った事を訊いてしまいました。
僕の悪い癖。
いえ…。
亡くなった父がテーラーでスーツを仕立てていました。
父が亡くなったあとも母が父の部屋にスーツを掛けたままにしていて。
それを見ているとただのスーツなのにまるで父がそこにいるような気がして…。
お父様の分身のようなものだったのかもしれませんね。
はい。
丁寧に作ったスーツに直しを重ねてさらに体になじませていく…。
そう父がテーラーの話をしていました。
そしてテーラーの世界に入り夢をかなえられた。
女を雇ってくれるところなんてどこにもありませんでした。
私は運が良かったんです。
このお店は3年前に亡くなられた古谷さんの奥さんの口添えで入れてもらいました。
そうですか奥さんの口添えで。
元々古谷さんは反対でした。
なるほど。
それで店を辞め独立しようとされていた。
独立?樋村さんに新店舗の融資の相談をされていたそうですね。
その話は樋村さんに持ちかけられたんです。
樋村さんから持ちかけられた…。
はい。
でもお断りしました。
お断りしたのはなぜでしょう。
それは…お店を持つにはごひいきのお客様や仕入先の人間関係も必要です。
私には…まだ早いと思ったんです。
どうかされましたか?
(角田六郎)ん…?なんか気付かない?おやスーツを新調されましたか?わかる?わかります。
へへ…これスーツの木村。
上下で29800円。
信じられるか?課長は買い物上手ですねえ。
だろ。
あそういえば例の支店長殺しあれスーツのほうから追ってんだってな。
ちなみに支店長のスーツ生地代で30万だそうです。
30万!?え!そんなにするのか?たかがスーツが!仕立て代でさらにウン十万。
おい。
俺のはお前替えズボンがついてんだからな。
あ…。
ああ…。
樋村さんの携帯から割り出した関係者です。
銀行の支店長だけあって付き合いがずいぶん広かったようですねえ。
安藤総一郎。
株式会社安藤総合ビルの社長です。
全国にビルを持つディベロッパーですね。
はい。
現在300億のプロジェクトを動かしてるんですが突然メーンバンクを差し置いて新帝都銀行が融資元になったようなんです。
300億…なるほど。
一課が追っていたのはその件でしたか。
それだけじゃないんです。
気付きませんか?はい?3つボタンに太めのラベル。
あの店の仕立てに似てますよね。
確かに。
(安藤総一郎)どうぞ。
(伊丹)失礼します。
今回の融資のご担当はどなたですか?
(安藤)担当?
(伊丹)メーンバンクがあるにもかかわらず突然銀行を変えた。
こういう場合裏で個人的なやり取りがある事が多いものですから。
銀行とうちの担当者が癒着していると言いたいんですか?ええまあ…。
その担当者と樋村さんとの間に何がしかのトラブルがあったのではないかと…。
新帝都銀行に決めたのは他でもないこの私ですよ。
社長が?社長の私が会社の不利益になる事をしてなんの得があるんですか。
失礼します。
警察の方です。
おやおやまたお会いしましたね。
もう…!いい加減にしてもらえませんか?ご心配なく。
邪魔はしませんので。
だからもうしてますって。
(携帯電話)
(舌打ち)はい伊丹。
何…?わかったすぐ戻る。
米沢さんですか?空耳でしょう。
おい行くぞ。
はい。
じゃ失礼します。
失礼します。
(安藤)でそちらはどんなご用ですか。
申し訳ございません。
係が違うもので…。
そう言われてもねえ私も忙しいんでね…。
ではひとつだけ。
なんですか…。
いい生地ですねえ…。
ちょっと失礼。
何をするんですか!申し訳ない。
いい洋服には目がないもので…。
低速織機で織られた生地ですねえ。
ひょっとして銀座の古谷洋服店ではありませんか?ええ。
なぜわかるんです?実は僕も今作ってるんです。
スーツ。
そうですか。
古谷さんとは若い頃からお世話になってましてね。
あ確か樋村さんも同じテーラーをお使いでしたよね?樋村君は…いや違いますよ。
彼は英國堂です。
ああでは洋服の話をされたんですね?樋村さんと。
ええ。
どこで作ったか訊かれたので。
ああ…。
(米沢)こちら被害者の手帳なんですけどもこの部分を見てください。
池田…。
安藤氏に容疑がかかった事で改めて調べてみました。
そこで上がってきた人物です。
池田典昭。
1人で池田リサーチという調査会社をやっています。
あんた前科があるんだよな?そんなあんたに銀行の支店長が何頼むんだ?
(池田典昭)信用調査ですよ。
融資の前に相手の資産状況を調べるのは当然でしょう。
(芹沢)誰を調べてた?
(伊丹)樋村さんは殺されてるんだ。
今さら守秘義務なんて通用しねえぞ。
手帳には「安藤総合ビル」ではなく「安藤総一郎の件」ってありましたよね?池田典昭がこの事件に関与しているとすれば安藤さんに銀行を変えさせるために樋村氏が何かを探らせていたと考えるのが自然でしょう。
つまり脅迫のネタですか。
「樋村さんに頼まれたんですよ」「なんでもいいから安藤の弱みをつかめって」
(伊丹)「そんな事だと思ったよ…」
(池田)「だけど結局なんにもつかめなかったんです」
(伊丹)「なんにも?」5年前に奥さんを亡くしてからも女の影ひとつないし…。
(伊丹)ちょっと警部殿…!伊丹さん5秒で終わります。
え…?あなたが樋村さんにその事を報告したのはいつの事ですか?去年の…11月ですけど。
どうもありがとう。
え…?失礼します。
本当に5秒でしたね。
(真紀)樋村さんですか?ええ。
最初にいらっしゃったのは12月だったと思います。
やはりそうでしたか。
どうかなさいましたか?実は樋村さんが脅迫目的である人物の身辺を探っていた事がわかったんです。
ある人物?安藤総合ビルの安藤総一郎氏です。
こちらの古いお客さんだとか。
はい。
樋村さんから何か訊かれませんでしたか?何かとおっしゃいますと?テーラーではお客さんといろんな話をするとか。
その中では人に言えないような秘密を話す事もあるとか。
彼の狙いが安藤氏を脅迫するネタを手に入れる事だったとしたら突然テーラーを変えたのはそのためだったのではないかと。
他のお客様の事を口外する事はありません。
では採寸表はどうでしょう?採寸表?テーラーにおける採寸表や型紙は客の情報を詰め込んだカルテのようなものだと聞きます。
僕の時も話すたびにいろんな事を書いてらっしゃいましたね。
それはそうですが…。
樋村さんが採寸表を盗み見た可能性がないとは言えません。
こちらへどうぞ。
(真紀)古谷の棚です。
安藤さんはずっと古谷のお客様です。
うちではお客様の情報をそれぞれ管理してます。
お客様から聞いたお話はテーラー同士でも明かしてはいけない。
古谷はそれぐらい徹底してるんです。
つまり自分の客以外の採寸表を見る事は出来ないというわけですか。
こう申し上げては失礼ですが何か思い違いをされてるのではないでしょうか?結局樋村さんは何もつかんでなかったって事ですよね。
だから安藤さんを脅す事は出来なかった…。
そうでしょうか?え?何か思い当たる事でも?ひとつだけ。
ひとつだけ?明日安藤さんを追い詰める事になりますが。
どうして私が脅迫されなきゃならないんです!ではそんな事実はないと?バカげてます。
大体私がなんのネタで脅されると言うんですか。
社長就任祝賀会…創立40周年記念式典…。
ビル落成式…創立50周年。
これを見る限り5年前からですねえ。
安藤さんが三つ揃えのスーツに変えられたのは。
これなどは真夏にもかかわらずきちっと三つ揃えを着てらっしゃる。
突然なんです?5年前というと確かちょうど奥様を亡くされた頃じゃないでしょうか。
何を言ってるんだ。
初めてお目にかかった時から気になっていました。
安藤さんのスーツ少々仕立てが変わってますよね?一見しただけではわからないように上手く仕立ててありますが場所によって芯地の厚さが違います。
先日背中の生地に触れた際に気が付きました。
我々の関心は事件の解明にしかありません。
秘密は守ります。
お話し願えませんか?樋村君の提案を断ってしばらく経った頃です。
悪いがいつもどおり大洋銀行でいく。
私は一度出した結論は変えない主義でね。
さすがは安藤さん。
男らしいお答えです。
でもね結局はうちを選ぶ事になるんですよ。
驚きましたよ。
奥さんが亡くなってからですか?ああいう趣味に走られたのは。
なんの話だ?人は見かけによらないもんです。
そんな立派なスーツの下に…まさか女性用の下着が隠れてるなんてねえ…。
こっちには確実な証拠があります。
融資が無事成立したらお渡ししますよ。
(安藤の声)だけど私じゃありません。
実際に銀行を変えたんですよ。
殺すつもりなら要求に応じたりはしないでしょう。
ところで樋村さんはどこであなたの秘密を知ったのでしょう?恐らく調査会社か何か使ったんでしょう。
融資の際に相手を調査するのは連中がよくやる事ですから。
あなたを探っていた男なら何もつかめなかったと証言していますが。
私にわかるわけがないでしょう!テーラーの古谷さんは当然あなたの秘密を知っていましたよね?そうですが?いやあ古谷さんは漏らすはずはない。
あの人はそんな人じゃない。
遺体発見現場のすぐ裏が愛人のマンションでした。
そのマンションから見つかった樋村さんの荷物です。
こちら…。
つまり樋村さんは愛人に会いに行く途中で殺されたってわけだ。
「学生時代に麻薬使用で逮捕」…。
(米沢)「品川に20歳の隠し子」…。
なるほど…これで脅迫してたんだ。
どうやら樋村さんは他でも同じ手を使っていたようですね。
どうりで業績が上がるわけですね。
一課が脅迫を受けていた人物を片っ端から当たっているようです。
ありました。
コピーのようですね。
昭和45年…って40年前からの付き合いなんですね。
あ…。
なるほど…。
指紋お願いします。
(米沢)名刺の指紋と採寸表の指紋を照合してみました。
同一人物で間違いありません。
やっぱり情報を流したのは笹原真紀か…。
しかし彼女はなぜ樋村さんに協力をしたのでしょう?融資は断ったと言ってましたね。
それも嘘だったのかもしれません。
まさかこういう事情があったとは…。
ようやくつながり始めましたね。
(扉の開閉音)いらっしゃいませ。
(古谷)ああ…いらっしゃいませ。
ああそれ僕のスーツですね?はい。
なるほど…こんなふうに作業を重ねて仮縫いさらに本縫いまで気の遠くなるような作業ですね。
今日はなんのご用ですか?誤解は解けたんですよね?いやどうやら思い違いではなかったようです。
あなたが樋村氏に安藤さんの情報を渡した事それがすべての始まりでした。
ちょっとお待ちください。
安藤様は私の古いお客様です。
この子に任せた事は一度もございませんが…。
いいえ。
たとえ一度も話した事がなくても情報を流す事は可能です。
こちらの書類に見覚えがありますよね?樋村さんが持っていました。
笹原真紀さんあなたの指紋が残っていました。
言い逃れできませんね。
採寸の時樋村さんに持ちかけられたんです。
コピーを渡してくれるだけでいいんです。
協力してくれれば私もあなたの力になりますよ。
私の…?独立資金を融資します。
自分の店が持てるんですよ。
(樋村)口先だけじゃ信じてもらえないと思いましてね。
(真紀の声)自分の店を持つのが夢だったんです。
だからつい…誘いに乗ってしまいました。
鍵の番号奥さんの誕生日ですよね?本当に…申し訳ありませんでした。
しかしあなたは実際に融資は受けていませんでした。
なぜでしょう?古谷さん先日あなたの仕事を見ていてひとつ気になった事がありました。
道具は結局最初に学んだ道具が一番安心出来ますからね。
その言葉に引っかかりました。
テーラーにとって裁断は最も緊張する場面だそうですね。
もし少しでも生地を傷めてしまえばもう使い物にならない。
本来裁断にはこのようなハサミを使うのが普通です。
ところがあなたは…あこれ!この使い慣れたハサミを使用していました。
もし基本から洋服を学んだのであればどの道具も偏る事なく手に馴染んでいたはずです。
古谷さんあなたが最初に洋裁を学んだのはロンドンではなく刑務所ですね。
刑務所では刑務作業という更生や社会復帰のために作業が与えられます。
木工金属印刷…そして洋裁。
このお店には婿養子で入られていたんですね。
竹下勲…。
結婚される前のあなたの名前ですね。
21歳の時ケンカで相手に重傷を負わせ傷害罪で懲役3年の前科があった。
おっしゃるとおりです。
(古谷)出所したあと洋裁の仕事がしたくて探しましたが刑務所帰りの人間を引き受けてくれるところなんかどこにもありませんでした。
けど先代は引き受けてくれた。
それどころか私を後継ぎにしてくれたんです。
それに応えようとして私は死ぬ気になって勉強しました。
樋村氏に雇われていた池田という男に話を聞きました。
最初はあなたに安藤さんの採寸表を流すよう話を持ちかけていたそうですね?
(池田)テーラーは信用が命なんでしょ?銀座の老舗のオーナーに傷害の前科があるなんてバレたら店はどうなるんでしょうかねえ。
お引き取りください。
本当にバラしますよ。
どうぞ。
その時は潔く店たたみます。
あなたが樋村氏に協力をしたのはこの古谷さんの秘密を守るためでした。
私はテーラーです。
そんな事絶対出来ません。
せっかくのチャンスふいにする気ですか?お断りします。
そうですか…。
じゃあこっちならどうでしょう?
(真紀の声)あんな事が出回ったらこのお店も古谷さんも…。
どうして古谷さんのためにそこまで?古谷さんの過去を知らされた時気付いたんです。
過去を抱えてテーラーを続けてきた古谷さんだからこそ私を雇ってくれた。
女だからこそ厳しく育ててくれたんじゃないかって。
なのに私は…古谷さんの期待には応えられなかった…。
採寸表を渡した時点で私はテーラーの資格を失ったんです。
お店の名前を汚してしまってすみませんでした。
長い間お世話になりました。
ああ…。
このシャツガーターですが本来は仕事中に袖を留めるためのものですよね?ところがあの時古谷さんは袖を伸ばしたまま仕事をしていました。
まるで何かを隠しているかのように。
現場には争った形跡がありました。
犯人も傷を負っている可能性が高いと思われます。
真実を話していただけませんか?これ以上笹原さんを傷付けないためにも。
この傷を負った日の前日安藤様が店にお見えになりました。
君とは30年の付き合いだ。
疑うわけじゃないが訊いてもいいかね?は…どうぞ。
ある人物に脅迫されていてね。
例の事を知られた。
なんですって…!?いやいい。
君の顔を見てわかった。
つまらん事を訊いてすまなかった。

(古谷の声)ファイルの並びがいつもと違っていたので何が起きたのかすぐわかりました。
誰がやったのか…なぜやったのかも…。
(樋村)お願いします。
(真紀)はい。
(真紀)ありがとうございました。
(古谷)樋村さん。
なんでこんなところに?池田という男をよこしたのはあなただったんですね!なんの話だ。
採寸表を返してください!
(樋村)ちょっと何すんだよ!まったく老舗のテーラーが聞いて呆れる。
店主は前科者だし女のテーラーなんているし…。
邪魔するとあんただけじゃなくあの女も困る事になりますよ。
女のくせにテーラーだなんて…しかも客の秘密を売るテーラーなんて噂が立ったらどうなりますかね!ああーっ!どうぞ連行してください。
元々残った仕事が片付いたら自首するつもりでおりましたから。
英國堂で聞きましたよ。
彼女を雇ってくれるよう頭を下げたそうですね。
あのプライドの高い古谷さんがって驚いてましたよ。
あなたが逮捕されれば当然笹原さんのイメージも悪くなりテーラーを続ける事は出来なくなってしまう。
あなたはそうなる前になんとか笹原さんを受け入れてくれるところを探そうとしていたんですね。
ひとつ聞いておきたいのですが。
なぜ刑事である僕のスーツを彼女に作らせたのでしょう?断る事も出来たはずですが。
私のわがままです。
もう一度最後に笹原が仕立てたスーツを見ておきたかったんです。
たとえ女であろうが誰がなんと言おうとテーラーとしての実力は私が一番よく知ってんですから。
(嗚咽)人は洋服の下にいろいろなものを隠してるって事ですかね。
ですが互いを思いあう気持ちはもっと早く明かすべきだったのかもしれませんねえ。
彼女やっぱり辞めちゃうんでしょうか?古谷さんの思いを受け継ぐのは彼女だけなのですから出来れば続けてほしいですねえ。
ですよね。
あ…!それに僕のスーツがまだ未完成じゃありませんか!ああ…だったら辞められちゃ困りますね。
困りますねえ…。
ハハ…。
2014/06/30(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season9[再][解][字]

「右京のスーツ」

詳細情報
◇出演者
水谷豊、及川光博 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0×0818)
EventID:1660(0x067C)