オイコノミア「“子どもを持つ”ってどういうこと?(後編)養子縁組を考える」 2014.07.15

(テーマ音楽)問題です。
この4人の共通点は何でしょう?答えは全員が養子ということ。
子どものいる家庭を築く。
その方法は決して一つだけではありません。
一見縁遠いように見える養子もこれからの私たちにとって重要なテーマ。
今回は養子縁組について経済学で考えます。
又吉です。
お願いします。
森口です。
よろしくお願いします。
解説してくれるのは森口千晶さん。
養子制度を経済学的手法を使って研究し今注目されています。
どういうきっかけで養子の研究を始めたんですか?私は30代をずっとアメリカで過ごしてたんですね。
その時に1人は産んだんですけど2人目ちょっと無理かなと思ったときにアメリカって公園に娘連れて遊びに行ってたら必ず養子がいたんですね。
「ハーイ」とか言って公園で一緒に遊び始めると向こうもね「この子は養女です」と。
すごい誇らしげに「養女です」って。
そういうのを日常的に見れたので日本に帰ってきたら何かそういうのを見ないってことと話題にもあんまりなってないっていうのと私が「養子もいいと思うんだ」って言うとみんな「ホント!」って何か驚くんですね。
でもそれはどっちかというと親の側の考え方なんですけど子どもの側にもっと切実な…。
家庭に恵まれない子どもに家庭を与えるっていうそういう役割を子どもの側から見ると果たしてるという。
そこをうまくこう…懸け橋になるのが養子縁組だなと。
そういうふうに思ったというのはありますね。
なるほど。
この「オイコノミア」っていう番組が始まった2年前にですね「経済学は人を幸せにする学問だ」という事を教えていただいてその時に僕が思ったのは孤児を経済学でなんとか救う方法とか考えられないかっていうのを一番最初に思ったんですよ。
いかに孤児が強く生きていくかという文学がありますよね。
「何もかも憂鬱な夜に」って読んだんですけどあれも主人公は施設で育ってますよね。
はい。
家庭に恵まれない青年が何かの理由で殺人を犯してしまってというお話ですよね。
又吉さんが解説を…。
そうですね。
書きましたね。
やっぱり無駄な命はなくて全ての命にはそういう絶対動かへんちゃんとした生きる理由があるっていうことがすごく大きかったんですよね。
それ以前から孤児であったりとか命に対してとか疑問がすごくあったのでそれで結びついてより強くなった言葉でもあったんですよねそれは。
ええ。
そういうことは経済学で考えたりすることってあるんですかね?私も何らかの理由で親の保護を受けられない子どもたちがどういうふうに幸せになるか?ともすれば文化とかイデオロギーとか冷静に分析するのが困難なこともあるんですけど。
実証的にどの要因が重要なのか?そういうところを見ていこうっていうことが経済学のアプローチだと思います。
まず「生みの親から適切な保護を受けられない子どもの存在」から考えてみます。
親を無くした子どもたちにはいろいろな理由があるということですよね。
ええそうですね。
親の保護を受けられない子どもたちのことを「要保護児童」って言うんですけど。
歴史的には親が死亡する。
その子どもが家庭を失うっていうのが多かったんですけど。
そればかりじゃなくて予期しない妊娠で望まれないで生まれてきた子どもで母親が養育できないっていうふうに要保護児童になる子どもたち。
それから虐待とかネグレクトですかね。
親が育児放棄をしてしまって子どもを公的に保護する。
そういういろいろな理由で要保護児童がやっぱりいますね。
野生動物は生まれてすぐに立ち上がる赤ちゃんもいるほど自立までの期間が短いのが普通です。
人間の赤ちゃんは他のほ乳類と比べても脳の容積が大きく出産の際母体にぎりぎり安全な大きさで生まれるため未熟な状態なのです。
人間は歩けるまでおよそ1年知性が備わるまで3年お手伝い程度の労働が出来るまで5年以上かかります。
このため他の動物に比べて長期間保護をしてくれる「親」が必要になるのです。
他の動物とは違うということですよね。
そこを社会としてなんとかしてうまくシステムを作っていこう。
その中で親がどういうふうな養子を迎えているかというデータを見ることによってその親がどんな動機を持ってるかが分かってくるんですね。
養子縁組を決めるもうひとつの要因とは養子を望む「育ての親」の存在です。
そもそもどのような動機から養子を迎えるのでしょうか?まず…主に……が挙げられます。
19世紀半ばから20世紀初頭のアメリカ。
東海岸の施設で養育される多くの子どもたちが鉄道の普及に伴い「孤児列車」に乗って中西部に送り出され農家の働き手として養子に迎えられました。
次に…育ての親が子育てを通して親子の絆を結び幸福感を得ようと養子を迎える場合です。
更に…家庭に恵まれない不遇な子どもを救済するため養子を迎える場合です。
アンジェリーナ・ジョリーは実子もいますが利他的動機からアジアやアフリカの施設で暮らす子どもたちを養子に迎えました。
私は今日米の養子縁組の比較をしてるんです。
ちょっと日本の事を説明する前にアメリカの話をしてもいいですか?年間に大体12万件養子縁組が行われていて40%はその再婚する配偶者の子どもを養子にするっていういわゆる「連れ子養子」なんですね。
10%が「血縁養子」。
残りの50%が血のつながりのない子どもを養子に迎えて我が子のように育てるという「他児養子」って読むんですけど。
生後6か月までとかの子どもたちがとても多いんですね。
本当は実子を自分で産んで新生児を抱きたいけれどもそれがかなわない場合に養子縁組で迎えたいっていう。
恐らくここはそういう情緒的な動機で迎えたいっていう親が多いんだろうなと考えられます。
日本は養子縁組の数って年間およそ8万件あって人口比でいっても養子大国だっていうことが言えるんですけど。
でも内訳を見るとこれが驚くほど違うんです。
この67%が「成年養子」なんですね。
アメリカの場合は100%「子ども養子」だったんですけど。
成年養子つまり大人と養子縁組をしている。
これは「婿養子」なんです。
婿養子っていうのは本当に一つの実利的な動機の典型的な例といってもいいと思うんですが。
とても才能のある人を選べるっていうところですよね。
ただ要保護児童の問題に対して貢献してるかというとやっぱりしてないですね。
そこのところはやっぱり日本は非常に子ども養子小国だということがこのデータから分かりました。
アメリカは血縁関係の無い赤ちゃんを迎える他児養子日本は大人を迎える婿養子が多いのです。
アメリカはなぜ子ども養子が盛んなんでしょうか?それで私も歴史的にデータを見てみようと思ってグラフを書いたんですが。
これはアメリカに毎年何件の他児養子縁組が起こってるかっていうグラフなんですね。
アメリカの他児養子縁組数は1950年代から60年代にかけて急増しますがその後いったん減少。
しかし90年代から再び増加傾向に転じました。
なぜこうなったのでしょう?1920年ぐらいから盛り上がりを見せるんですけど一つは粉ミルクが…そのころにほぼ母乳と同じ栄養の粉ミルクが大量生産できるようになるんですね。
そうすると新生児を迎えられる。
その辺りから急上昇します。
戦後はもう本当に「みんな待ってます」っていう状態でいつも養子を望んでいる家庭の…つまり養親候補者の数の方がずっと多い。
へぇ〜!ここまでは増えていた。
ここまでは増えたんですけどここで急に下がりますよね。
ここはやっぱりアメリカは人工中絶が法的に許されてなかった。
この1970年前後の判決で州によってだんだん中絶してもいいってことになって子どもが生まれなくなったんです。
だから養子縁組で送り出される婚外子の数が減った。
だけど養子縁組を望む親の数はとても多い。
この辺までいるわけですね。
その人たちが海外の子どもたち特に90年代から中国が養子縁組を国際的にも開放したから特に増えてきていますね。
もうひとつ重要な…ここが増えてる要因なんですけどアメリカの政府が大きな決断をしたんですけどやっぱり全ての子どもは家庭的な教育を受ける権利があるというので養子縁組をどんどん斡旋していきましょうという。
特にこの辺りからアメリカでは養子縁組の多様化が起こっていてゲイカップルも州によっては養子縁組を迎えることができて家族のあり方が本当に変わってきています。
すごくアメリカは養子を迎え入れることに対して前向きというか日本はアメリカのようにはなってないですよね今のところ。
そうなんですね。
私も日本はどういうふうに変わってきたのか未成年を対象とした養子縁組の数をデータで見てみました。
はい。
日本の未成年養子縁組数は年々減少傾向にあります。
そんな中1988年から新たに「特別養子縁組」が認められました。
特別養子では親権が生みの親から育ての親に完全に移ります。
いったん結ばれた縁組は簡単には解消できず戸籍の記載も実の親子と変わりません。
この制度で養子縁組数が増えると予想されたのですが…。
日本ももっと子ども養子が増えるんじゃないかっていう期待があったんですけどでも蓋を開けてみると一時期盛り上がるんですけどでも全体の低下傾向は全然止まらなかったというのが日本の子ども養子縁組の変遷です。
う〜ん?なぜでしょうね。
なぜでしょうね。
ホント不思議でたまらないですね。
子どもの数が減っているってことなんだろうか?だから要保護児童の人数調べてみたんですけどずっとこの間減少傾向が無くて3万人〜4万人の間でず〜っと推移しています。
だからその要保護児童の数が少ないという理由ではないのではないかと私は思っています。
はい。
あっこんにちは。
こんにちは。
お話を伺いに来たんですが。
はいどうぞお入り下さい。
こちらの民間支援団体では子どもを育てられない親の相談に乗っています。
そして一つの選択肢として養子縁組の橋渡しを行う場合があります。
いつぐらいからされてるんですか?
(篠塚)始めたのが2009年からになりますね。
国内外109名のお子さんを縁結びしておりまして。
国外の方が多い傾向にありますね。
こちらが海外に渡られたお子さんたちの写真なんですが向こうの養父母さんたちが撮ってくださった写真ですね。
へぇ〜!かわいいですね。
(篠塚)そうですね。
特に海外の方々が積極的に送ってくださいますね。
へぇ〜!こういうのを生みの親御さんに見せるとやはりですね喜ぶという方が多いですね。
大事に育てられてるのが分かりますね。
はい。
生みの親の方が国外を選ぶ方が割合多いんですよ。
それはやはりオープンなコミュニケーションを求めている方というのが多いからだと思いますね。
コミュニケーションを取れればそれは生みの親にとっていいことですし更に子どもさんにとってもそれだけ大切に思われて養子縁組を選択されたと分かればですねその子が大きくなったときにも生みの親に対する思いというのが強くなると思いますし理解も深まると思うんですよ。
明るいイメージというかねみんなの捉え方とかが変わっていくんじゃないかなと思いますね。
あっよろしくお願いします。
こちらは民間の妊娠相談所。
「予期せぬ妊娠をした」「医師の診察を受けていない」「お産費用がない」「産んでも育てられない」などさまざまな相談を受けつけています。
内容に応じて医師と連携し医療機関や行政機関支援団体などを紹介しています。
妊娠相談を受けた場合どういうふうになさってるんですか?お母さんが自分で育てたいのかそれとも育てることができないと思っているのかその中で養子縁組の提案もしていきます。
ちゃんと自分で考えてもらって自分で決めてもらうという事をしています。
へぇ〜!なるほど。
実は代表の小川さん自身も養子を迎えています。
当時アメリカのカリフォルニアに住んでまして不妊治療したんですけど子どもが出来なくてですね。
主人が「じゃあ養子縁組で子ども迎えたら?」って言ったときにすごくドキってしたんですね。
「そんな簡単に言うけどそんな簡単な事じゃないよ」と言うと「だって僕と君だって血がつながってないのに別にいいじゃないの」みたいに言ったときにああそうだなと思って夫婦でも血がつながってないのでまあいいよねみたいな。
日本から迎えたいと思って日本のいろんなところに電話したんですけど見事に断られてしまって「そんな外人と結婚してる人駄目」とか「遠くに住んでるから駄目」とかいう理由がほとんどだったんです。
すごいおかしいなとか思ったんですね。
それでも何とかやっと迎え入れる事になったんですがどこに行っても「養子縁組で」って言ったら日本ではハッって何か引かれちゃって悪いことを聞いちゃったみたいになって本当にすごく大変だったんですね。
今少し変わってきてますけども。
はい。
日本の場合だと何か血がつながっていればずっと絆がつながっている感じがするけど最近そうでないことも意識してきた。
血がつながってなくても夫婦でもいい関係家族が出来る訳だから決して子どもだってね血がつながってないから家族にならないということは無いと思うんですね。
当事者であったり関係してる方がそういうふうに自然に話してくれたりだんだんみんなもそういうことなんだなとすごくポジティブな仕組みというか方法だと思うんで。
そうなっていけばいいですよね。
はい。
お話を伺いに行ってきたんですがすごく印象としてこんなにも日本から海外に迎え入れられる子どもたちが多いというのが知らなかったのですごく意外だったんですよね。
でもすごく向こうで生活してる子どもの写真とか見たらすごく楽しそうだった。
幸せそうだったんであっこういう世界があるんだっていうふうに思ったんですけど。
でも日本ではそういうふうに子どもを迎え入れようとしている人はあまりいないという事ですかね?どうもそうみたい。
じゃあどうしてそういうふうに少ないんだろうっていうので日本では子どもを持ちたいけれど望んでるんだけど生まれない。
そういう不妊のカップル数ももしかして少ないのかもしれないと思って調べてみたんですね。
こちらは出生した1,000人のうち何人の子どもが体外受精などの高度不妊治療によって生まれたかを比べたものです。
日米の不妊治療の技術と値段には極端な違いはないので体外受精児の比率が高いほどその国の不妊治療に対する需要が高く熱心に実子を望む夫婦の数が多いことを示します。
今では15人がアメリカでは体外受精によって生まれている子どもなんですけど日本は25人なんですね。
はい。
これを見て分かることは実子に恵まれないで子どもを持ちたいと思っている夫婦の数は恐らく日本の方がアメリカよりも多いですね。
でも養子縁組を迎えようとは考えていないのではないか?よく伝統的に日本人は血縁関係を重視する。
やっぱり実子じゃなかったらもう子どもを望まないっていう説もあるんですね。
はいはい。
私はでもどうかなと思って一つには1950年ぐらいからずっと統計取れるんですけど戦後すぐとか養子縁組とっても多いんです。
他児養子多いんです。
伝統だったらずっと低いんじゃないか。
そうですね。
そうですよね。
日本の場合まだ臨界に達する何かこう数がある程度増えて見かけるようになって「ああ!」と思ったときにみんながそういうふうにそれが普通でそういう事も考えようと思い始めるのがもしあるとすればアメリカはそこに達して日常生活でも養子のいる家族を見るんですけど日本は多分そういうふうにも見ないので考え方が変わるところまで行かないのかもしれない。
そういうふうに思いました。
うん。
家族ってやっぱり僕は必要なんじゃないかなと思うんですね。
夫婦ってもともとは血のつながりはないですよね。
そうですよね。
だけど一生お互いに支え合って暮らしていく。
それが家族の形とするならばそこに血のつながりがない子どもを迎え入れても家族っていう関係性は絶対に作っていけて必ずしも迎え入れる側が子どもに対する…何て言うんですかね?助けるっていうだけではなくて子どもの存在が救いになる時って必ずあると思うんですよね。
養子を迎え入れるっていうのは僕はあっていい考え方なんじゃないかなと思いましたね。
今の日本の制度は何か婿養子とか家のための養子縁組がしやすいような制度なんですがアメリカは子どもの幸せを考えるための養子制度があってそれがあるから人間の行動が変わって。
制度によって考え方を提示するってことなんでしょうね。
少しこう変えると養子縁組っていう選択肢が同じテーブルに載ってくる。
そうですね。
はい。
アメリカでもみんながみんなそうしてる訳じゃないですもんね。
選択肢としてあって選んでるってことですよね。
そのとおりだと思います。
いろいろと勉強になりました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
「たとえば想い出が共通の家族」。
2014/07/15(火) 00:00〜00:25
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「“子どもを持つ”ってどういうこと?(後編)養子縁組を考える」[字][再]

桃太郎、赤毛のアン、スティーブ・ジョブズ。3人には共通点がある。みな、「養子」だということ。今、養子制度について、経済学でも分析が始まっている。

詳細情報
番組内容
アメリカでは年間12万件の養子縁組が行われており、その半数は血のつながりのない子どもを迎え入れ育てるというものだ。実は日本でも8万件の養子縁組が行われている。ところが内訳は驚くほど違う。7割近くが大人の養子、いわゆる婿養子なのだ。古くは徳川将軍家で行われ、歌舞伎の世界などでは今でも珍しくない。今、経済学的手法で過去から現在にかけての制度設計を比較・分析し、よりよい制度を目指した模索が始まっている。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】一橋大学教授…森口千晶,【語り】朴ろ美

ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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