時は戦国動乱の時代。
武士たちはのぼりを立てて戦に向かいました。
一方こちらは今日の主人公ワオキツネザル。
尻尾を立てて行進する姿はまるで戦国時代の武士のようですよね。
「我こそはワオキツネザル〜!」。
おっとやっぱり!激しい戦いが始まりました。
強烈なキックにかみつき!でも武士たちとは大きく違うことがあります。
それはこちら。
子どもを背負っていますよね。
戦っているのはメスだけなんです。
ここにも。
こちらにも。
メスたちは子どもを連れたままライバルから縄張りを守るために戦っているんです!一方こちらはオス。
全く戦いに参加せず遠くで見ているだけ。
群れを切り盛りするお母さんと平和主義のお父さん。
「かかあ天下」のワオキツネザルに密着します。
(テーマ音楽)アフリカ大陸の東インド洋に浮かぶマダガスカル。
日本の1.6倍の面積を持つ世界で4番目に大きな島です。
取材に向かったのはその南部。
9月上旬は乾期の真っただ中。
雨はほとんど降りません。
乾燥した大地を流れる川に沿って木々が茂っている所があります。
ここが今回の舞台ベレンティ保護区。
動物や植物の保全のため1936年に設置されました。
お早速現れました。
頭からお尻までの長さは40センチほど。
この長〜い尻尾が特徴です。
白と黒の輪っかが連なったように見えませんか?そして顔は鼻が突き出てまるでキツネのよう。
これでも原始的なサルの仲間です。
だから「輪尾狐猿」というんです。
手前にいるのはオス。
後ろはメスです。
体格にはほとんど違いがありません。
ワオキツネザルは普通15匹ほどの群れで暮らしています。
おっと!すごいジャンプ力。
全身をバネのように使って枝から枝へ。
体の20倍8メートルもジャンプすることだってあるんですよ。
こちらは子連れのお母さん。
どこへ行くにも赤ちゃんと一緒です。
ジャンプの時もこのとおり。
しがみつく赤ちゃんも大変ですね。
子どもを連れてお母さんがやって来たのは群れのメスの所。
メスたちはこうしてよく集まります。
一方こちらはオス。
大抵メスたちから少し離れ群れの端にいます。
まるでメスに遠慮しているかのようです。
その遠慮ぶり。
食事の時私たちは決定的な場面を目撃しました。
主に木の葉や実などを食べるワオキツネザル。
乾期の今は食べ物が不足しがちです。
そんな中このタマリンドの実はとても貴重な食べ物。
ワオキツネザルたちはタマリンドに頼って厳しい乾期を乗り切ります。
こちらのオス。
地面に落ちたタマリンドの実を探しています。
見つけました。
おいしそうに食べ始めます。
メスがやってくると…あれ?オスは実を手放しちゃいました。
こちらでもメスがオスに近づいています。
今度もオスはせっかく見つけた実を手放しました。
オスはメスに要求されると食べ物を渡しちゃうんです。
こちらのメスは半ば強引にオスから食べている実を奪ってしまいました。
一見メスの言いなりになっているかのようなオス。
でもこれこそがワオキツネザルの生き残り術なんです。
乾期に出産の時期を迎えるワオキツネザル。
どんなに食べ物が少なくてもお母さんは赤ちゃんにお乳を与える必要があります。
そのためにはたくさん食べなければなりません。
だからオスが食べ物を譲ってくれると大助かり。
一方オスにとってもそうすることで自分の子どもが元気に育つことにつながります。
子どものために食べ物をメスに譲るなんて紳士的で優しいオスなんですね。
見直しました。
毎日タマリンドの木を渡り歩くワオキツネザルの群れ。
移動中必ずやることがあります。
これです。
逆立ちをして枝にお尻をこすりつけていますよね。
自分のにおいを付けて縄張りを主張しているんです。
貴重なタマリンドの実を確保するため縄張りはとっても重要です。
上から見たベレンティ保護区の森。
この群れは直径200メートルほどの縄張りを持っています。
森全体ではおよそ600匹のワオキツネザルが暮らしていてこんなふうに隙間なく縄張りが並んでいます。
過密状態なんです。
そのため縄張りの境界付近では群れ同士の争いが後を絶ちません。
あ群れの先頭が立ち止まりました。
向こうからたくさんのワオキツネザルがやって来ました。
隣の群れです。
ここは2つの群れの縄張りの境界なんです。
尻尾を立てて自分たちの存在をアピールしています。
手前の1匹があくびのように大きく口を開けました。
すると相手の1匹もあ〜ん。
でもこれあくびなんかじゃありません。
鋭い牙を見せつけることで相手を威嚇しているんです。
にらみ合いがしばらく続いたあと…。
ついに戦いが始まりました!2つの群れが入り乱れての大乱闘。
激しいキックも繰り出します。
こちらよ〜く見ると…。
背中に子どもがいます。
戦うのはもっぱらメス。
ほとんどが子連れのお母さんです。
子どもを抱えながら素早い動き。
お母さんたちやりますねぇ。
お〜っと!見事な跳び蹴りが決まりました。
蹴られたほうのおなかの辺りには赤ちゃんがいます。
子どもを狙って攻撃することはありませんが巻き添えになることはしばしばです。
赤ちゃんも一緒に戦っているんですね。
この時オスは離れた場所から見ているだけ。
優しいオスは戦いを嫌っているようです。
ちょっと待った!ヒゲじいどうしました?いやオスは優しいにも程がありますよ。
こんな時ぐらい体を張って戦ってもいいんじゃないですかね?ああやっぱりそう思いますよね。
でもねこれにはちゃんと理由があるんです。
メスとオスでは縄張りの重要性が全然違うからなんですよ。
は?どういうこと?ワオキツネザルのメスは生まれた縄張りから離れることはほとんどありません。
これに対しオスは群れを移ることがよくあるんですよ。
へえそうなんだ。
だからもし縄張り争いで自分がいる群れが負けて縄張りを奪われたとしてもオスはその勝ったほうの群れに移ってしまえばいいんです。
そのため「どっちが勝とうがわれ関せず」という姿勢でいられるんですよ。
はぁそういうことだったのか。
その証拠がこちら。
1匹のオスが別の群れの縄張りに入ってきたところです。
あ〜はいはい。
でも別の群れのメスは一向に攻撃する気配を見せません。
縄張りにとらわれないオスを敵として見ていないからなんです。
なるほど!メスだけが戦う理由が分かりましたぞ。
きっとメスはこう言ってますよ。
「縄張りが奪われるとタマリンドの実が食べられなくなるからタマランド〜」なんてね。
激しい縄張り争いが終わったようです。
戦いは毎日のように行われますが力が拮抗しているため大抵の場合引き分けになります。
戦いが終わってホッと一安心といったところでしょうか。
あこのメス頭に傷を負っています。
でもこれくらいの傷でへこたれるわけにはいきません。
縄張りを奪われることは生きる糧を失うこと。
だからメスは戦い続けるのです。
第2章では1匹の新米お母さんに密着。
ベテランお母さんに助けられながら群れを支える一人前のメスへと成長します。
突然ですがここで「ダーウィンNEWS」です。
北海道札幌近郊の森。
雪の上で意外な生きものが見つかるといいます。
案内してくれたのは…え?どこどこ?うん?小さな毛玉?実はこれ眠っているコウモリなんだそうです。
名前は…突き出した鼻の形確かにテングみたいです。
このコウモリたち平川さんによると冬眠中ではないかといいます。
冬の初め雪の中に入りそのまま積もる雪に埋もれていたコテングコウモリ。
春になると雪解けとともに表面に現れ飛び立つというんです。
飛び立つ瞬間をカメラは捉えました。
雪の上のコウモリ。
体の表面の温度は6℃ほどです。
冬眠中は体温を下げていると考えられています。
夕暮れ。
ここからは赤外線カメラで観察です。
あ体の表面の温度が上がり始めました。
動きも活発になってきましたよ。
夜を待って活動を始めるようなんです。
日没から30分余り。
飛びました!これが冬眠からの目覚めではないかといいます。
これまでこういった状態で見つかるコウモリは知られていません。
実際に雪の中で一冬越しているということを最終的に証明をしたいと思っています。
雪の上で眠るコテングコウモリの謎。
ただいま調査中です。
アフリカマダガスカル。
ワオキツネザルが暮らすベレンティ保護区の夜明けです。
ここは昼と夜の温度差が激しく昼間は40℃にもなりますが明け方は10℃近くにまで冷え込みます。
大きな木の枝分かれした所。
ワオキツネザルたちが集まっています。
こうして身を寄せ合い寒さをしのいでいるんです。
こちらはメスたち。
その子どもも一緒です。
オスたちはメスから少し離れた枝の上に集まっていました。
夜寝る時も別々なんですね。
日が高くなると群れが移動を始めます。
やって来たのは日当たりの良い高い木の上です。
おや?手足を開いて奇妙なポーズ。
朝の深呼吸でしょうか?実はこれ日光浴。
全身で日光を受け止めようとしています。
体温を上げるのが苦手なため朝はこうして体を温めるんです。
群れを切り盛りするワオキツネザルのメスたち。
今回私たちは若いメスが群れの仲間に助けられながら成長していく姿を捉えることができました。
おなかに2匹の赤ちゃんを抱いているのはアリコと名付けられた8歳のメスです。
その隣で赤ちゃんをなめているのは3歳のメスローラ。
実はアリコが抱いている赤ちゃんの1匹はローラの子どもなんです。
ローラは9月上旬に初めての子どもを産みました。
一方アリコは子育て6回目のベテランお母さん。
2匹に血のつながりはありませんが新米お母さんのローラの子育てを助けているんです。
赤ちゃんを2匹とも連れたままアリコが木から下りてきました。
ローラも慌ててその後を追いかけます。
自分の赤ちゃんのことが気になるんでしょうね。
でもなぜローラはアリコに赤ちゃんを預けっぱなしなんでしょう?アリコがローラの赤ちゃんにお乳をあげています。
実はまだお乳が出ないローラに代わりアリコが面倒を見ていたんです。
群れのメス同士深い絆で結ばれているんですね。
木の上で遊んでいるのはアリコの子どもです。
しばらくするとローラの肩に乗ってしまいました。
ローラは戸惑うばかり。
アリコが見かねたように子どもを引き取りにきました。
どうやらローラはまだ赤ちゃんの扱い方にも慣れていないようです。
(鳥の鳴き声)ローラが出産して5日がたちました。
ローラが自分の赤ちゃんをしきりになめています。
やっぱり気になってしかたがないようです。
あっ!赤ちゃんがローラのほうに行きました。
我が子を優しく抱きとめるローラ。
おっぱいを飲ませています。
ようやくお乳が出るようになったんですね。
アリコはようやく自分の子どもの世話に専念できます。
他のメスの子にお乳まで与えて子育てを助けるメスたち。
一致団結して厳しい自然を生き抜いていきます。
乾期はピークを迎えました。
強い日ざしが容赦なく照りつけ乾燥は更に厳しさを増していきます。
いつものように縄張りを歩き回りタマリンドの実を探すローラたちの群れ。
でも食べられる実は少なくなっています。
黒っぽい色をしているものの多くは虫に食われていて食べられません。
今度は地面に降りて探します。
実を拾いましたがすぐに捨ててしまいました。
どうやら食べかすのようです。
地面に落ちているのはほとんどが食べかすや虫食いの実です。
これも駄目。
でもひたすら探し続けるしかありません。
食糧不足は幼い赤ちゃんを抱えたメスたちにとって深刻な問題です。
この時期残り少ない食べ物を巡って頻繁に縄張り争いが起こります。
ローラたちの縄張りに隣の群れが近づいてきました。
手前がローラたちの群れ。
不穏な雰囲気です。
相手は引き下がる様子はありません。
ついに戦いになりました。
両者入り乱れて木の上へ!目にも留まらぬ空中戦です。
この直後とんでもない事件が起こりました。
枝の上に1匹の赤ちゃんが取り残されています。
ローラの子育てを手伝っていたアリコの子どもです。
アリコは我が子を守ろうと赤ちゃんに近づきます。
その瞬間頭上から敵が襲いかかってきました。
このままではアリコがやられてしまいます。
その時です。
右から群れの仲間が助けにきました。
あのローラです。
その隙にアリコ親子は逃げることができました。
もう一度見てみましょう。
赤ちゃんを助けようとして襲われそうになったアリコ。
絶体絶命のピンチにローラが助太刀に入りました。
敵に会心の一撃。
見事にアリコ親子を救ったのです。
幸いアリコにも赤ちゃんにもケガはないようです。
子育てを手伝ってもらった恩返しだったのでしょうか。
ローラも群れを切り盛りする一人前のメスに一歩近づいたようです。
厚い雲が空を覆うようになりました。
半年にも及ぶ乾期が終わりようやく雨期がやって来たんです。
待ちに待った雨。
生きものたちが活気を取り戻す季節です。
この時期森の木々は一斉に花を咲かせます。
色とりどりの花々が森を彩ります。
乾期の間ワオキツネザルを支えてきたタマリンドの木も生気を取り戻しました。
長く厳しい乾期を耐え抜いたローラたちの群れは食事の真っ最中。
ワオキツネザルはタマリンドの新芽も大好物なんです。
これでしばらくは食べ物に困ることはなさそうです。
子どもも新芽を食べています。
生まれておよそひとつき。
ジャンプだってできるようになりました。
子どもたちは食べ物の豊富な雨期の間に乳離れしこの森で生きるすべを学んでいきます。
マダガスカルに暮らすワオキツネザル。
群れのメスたちは見事なチームワークで互いに助け合いながら生きていました。
メス中心の「かかあ天下」こそこの島ならではの厳しい自然の中で命をつないでいくための秘策だったのです。
2014/06/29(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「ワオキツネザル“かかあ天下”で生き残れ!」[字]
マダガスカルにすむワオキツネザルの群れは超“かかあ天下”。メスはオスの食べものを横取り。縄張り争いで戦うのもメスだけだ。新米ママの子育てに密着しながら謎に迫る。
詳細情報
番組内容
マダガスカルの乾燥地帯に暮らすワオキツネザル。群れの中で、メスはオスよりも順位が高い。メスにせがまれれば、オスはすぐに食べものを渡す。縄張りを守るため、他の群れと戦うのも子どもを背負ったメスの役目。オスは一切参加しない。実はこの“かかあ天下”こそ、厳しい自然を生き抜く秘策が隠されていた!互いに助け合いながら、群れを守るメスたち。新米お母さんの子育てに密着しながら、不思議な生き方に迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:2688(0x0A80)