猫のしっぽ カエルの手「長寿の村へ〜沖縄・大宜味村〜」 2014.06.29

島の北部に位置するこの集落は海と山に挟まれた自然豊かな村。
那覇空港から路線バスに揺られて2時間ベニシアさんはやって来た。
(ベニシア)ありがとう。
日本に来て40年。
いろいろな所へ旅したけれど沖縄は初めて。
大宜味村に広がる…山原と書いてやんばる。
山や森林など自然が多く残るこの地域を表す言葉だ。
ここでは独自の生態系が育まれている。
そして実は日本一の長寿の村でもある。
屋根2つの色。
あっ赤いハイビスカス。
この辺の人みんなハイビスカスのお茶飲むんかな?あそこおばあちゃんがいる。
こんにちは!こんにちは。
おばあちゃん何作ってるんですか?ハンダマ作ってますよ。
ハンダマン?沖縄の島野菜…う〜ん。
これゆでるだけでいいの?はい。
へえ〜。
今おばあちゃんいくつ?93歳です。
すごいな。
(笑い声)やっぱり野菜作ったら長生きするかな?そうですよ。
あとで食べてみたいな。
手伝いましょうか?ニラ私作ってるよ。
大原で。
キュウリも作ってる。
そうですか。
大宜味村で初めて出会ったのはなんと93歳の元気なおばぁ。
よっ!うわっすごい。
おばぁは照りつける日ざしを物ともせずに次の畑へ向かうという。
いい自転車やん。
バイバイ。
元気なおばあちゃん。
ベニシアさんが沖縄を訪れたのは実はこの村で長寿食を作る人に会うため。
こんにちは。
(笑子)は〜い。
笑子さんですか?はいお待ちしてました。
いらっしゃいませ。
ここは食堂かな?そうです。
どちらかと言うと農家レストランです。
いつからこれ?20年前ですね。
工夫して手作りであちこち…。
この辺に自生するもの何があるかなと興味があるのね。
昔から伝統野菜みたいな形で自生してるものとかそういうものを自然との関わりで皆さんよく工夫して頂いてきてますので。
沖縄の人が長生きするの有名ですから。
20年前からこの食堂を営む笑子さんはもともと管理栄養士。
結婚を機にこの村で暮らすようになり地元のおばぁたちが作る見た事のない伝統野菜に出会った。
独特の味と高い栄養価を持つこの野菜こそが長寿の秘けつ。
そう感じた笑子さんはおばぁたちに教わった伝統料理を基にオリジナルのレシピを作った。
その味の評判は口コミで広がり県外からもお客さんが集まってくるようになった。
沖縄の野菜ベニシアさんにとっては見慣れないものが多い。
これだけしか分からない。
これゴーヤですね。
ゴーヤです。
うち…大原でも作ってます。
作ってます?ゴーヤは結構苦いですけど沖縄のほかのもの苦いものもあるんですか?あります。
方言でンジャナっていいます。
やっぱり苦い野菜で。
結構味的にも色彩的にも個性の強い植物が多いです。
これも面白い。
何かユズみたいだけど。
これはシークワーサーです。
酸味の強いシークワーサーはこの村から全国に広まった。
すごく個性的な香りですよ。
うんおいしい。
大丈夫。
これゴーヤ苦いんですけどおろし金でおろして苦みと酸味のジュースをおばあちゃんたちはよく飲みます。
やっぱり暑いと酸っぱいものと苦いもの体が欲しがるんですねきっとね。
これおいしいよ。
これは…これ海藻?海藻です。
方言でモーイ。
和名ではイバラノリ。
海藻です。
この村では皆さん海から取ってきたものを乾燥させて常備していて行事の度に使ってきた素材でやっぱりその地のものが新鮮で体にいいですね。
まずこの辺の人のためですからね。
笑子さん野菜たちが育つ畑に案内してくれると言う。
そこは畑というよりジャングル。
ベニシアさんが見た事のない植物が生い茂っていた。
ドラゴンフルーツ。
ええ〜っ?初めて見た。
これトゲがありますよ。
これ食べられるの?食べられるんです。
これがフルーツになるんです。
どのぐらいのフルーツ出来るの?このぐらい?大きく出来ます。
真っ赤です。
真っ赤?甘いの?甘いです。
日照時間が長く冬も温暖な沖縄は植物にとっては天国のような場所。
これも野菜です。
えっ?シビランっていって酸味のある野菜なんですけどおいしいです。
知らない人がここ来たら分からない。
雑草みたい。
これはウコン。
あっウコン!ウコンって一度植えると大概地下に残っててこういうふうに育ってくれるんですよ。
初めて見た。
へえ〜。
あっホントだ。
匂いがすごい。
これ育てたいけど大原無理よね。
いや大丈夫だと思いますよ。
これいろんな病気に効くのね。
お酒好きな方がウコンをショウガを使うみたいにおろし金でおみそ汁の中に入れたりそういう使い方を昔からずっとつないできてるんですね。
ウコンは沖縄はものすごい昔から?使ってます。
畑談議に花が咲く。
本土では貴重で値段の高い植物たちが大自然の中で伸び伸びと育っている。
自然に増えているんですよね。
だけどたまに種が風に乗って飛んできたものがたまたま育ったりしてるのもあるんですね。
無理して整然と植えるよりは勝手に育ってよの方がいいのかなと思ってるんですけど。
自由にさせて下さい。
気楽な感じね。
こういうふうになるのホント自然で楽じゃないですか。
だから育ちたい場所で元気よく育って下さい。
そして恵みを与えて下さいでいいんじゃないですかね。
みんな伸び伸びしてるから好きな所で。
地元ではアカバナーと呼ばれるハイビスカスの花を摘む。
ここもある。
ここもあります。
すごい!こういうふうにするのもすごくぜいたくを感じる。
これって一日の花なんですよ。
今日夕方にはしぼんで落ちます。
ですからお昼から収穫して。
じゃあ毎日?活用した方がもしかしたら花にとっても本望なのかなと。
いつまでそれできるの?一年中?一年中。
ええ〜っ?暑い国のマジックみたい。
南国ならではのフレッシュなハイビスカスとシークワーサーで暑い夏にぴったりのジュースを作る。
アカバナーとシークワーサーのミックスジュースです。
そうですか。
(2人)アカバナーとシークワーサーのミックスジュース。
まずは花のお茶を作る。
これ毎日作ってるの?毎日作るぐらい花は咲きます。
ちょっとお箸でかき混ぜましょう。
こうして?こうやってつけるような感じで。
大体何分ぐらい置いとく?なるべくだったらサッとですね。
というのは置いとくと今度はアカバナーからぬめりが液の中に抽出されるんです。
あとはこれにシークワーサーの果汁を搾って。
これを搾って。
すごく香りがいいね。
こういうもの作るの楽しいね。
何か香りがすごくいいから。
何か唾液も出て来ました。
この中に入れます。
色が変わる?あ〜やっぱりきれい。
子どもの頃の色遊びを思い出す。
これで出来上がりです。
爽やかな酸味が利いたジュースが完成。
お疲れさま。
お疲れさま。
暑い中。
うんおいしいね。
おいしい。
これ一日畑やったら飲みたくなるね。
なります。
何か飲んだらス〜ッとここから元気が出てくる。
そうそう。
だから次の時代は畑に戻るんじゃないかなと思う。
私もそう思います。
やったらホッとするところがある。
やめられないですよね?朝目覚めと同時に畑の風景を連想してまた見たいとか水をかけてあげたいというふうな感じでどうしても畑で育ってる植物の方に気持ちが行ってしまうんで。
ここのものを使ってるのがあれですね。
できるだけ身近で取れるものを利用するという事にこだわってますので。
このジュースも…。
そうですよね。
ベニシアさんちょっと早めの夏休み気分。
新しい出会いにワクワクしている。
翌日恒例の朝の散歩。
ベニシアさんの背丈を越えるほど大きな葉を茂らせるのはイトバショウ。
イトバショウからはこの村の特産美しい芭蕉布が生まれる。
1反の生地を織るために必要なイトバショウはおよそ200本。
琉球王朝の時代から500年以上の歴史を持つといわれる芭蕉布作り。
戦後一時は消滅も危惧されたが平良敏子を中心に伝統技術を受け継ぎ発展させてきた。
手間のかかる根気の要る作業が20工程以上も続く。
糸をよって機で布を織る。
今も昔と変わらぬ作り方を守り続けている。
若い者からおばぁまで手間を惜しまず村の女性たちが力を合わせて紡いでいく。
そうしてようやく丈夫な布が出来る。
麻のような風合いでとても軽い芭蕉布。
一番の特徴は風通しがよい事。
沖縄の爽やかな海風がよく似合う。
芭蕉布を作る職人の一人に会いに来た。
おばぁ。
(山川)はいいらっしゃいませ。
こんにちは。
笑顔で迎えてくれたのは…今細くしてんの?それとも一緒に?太さを均一にして糸をつないでいくんですね。
(山川)一からこれ終わるまでみんな手仕事さぁ。
(笑子)これが全然ほどけないんです。
すごい。
(笑子)強く結んでて。
帽子かっこいいね。
帽子がすごくかっこいい。
この間ねおじいさんの昔の着物をあれしたからあっちにすだれ作ったからね余り生地があったから。
帽子作ったの。
のれんを作って余ったもんだから帽子を作ったって言ってますね。
何年前?最近?最近?最近作った。
ええ〜元気。
(笑子)もともとはこの芭蕉布っていうのは綿とかほかの布は高価で買う事ができないもんですからこの芭蕉布を自分たちで機織りして着物を作ったらしいんですよ。
(山川)これは体力が要る。
ちむさーさーすんしたらあかんよ。
日暮らししかできないよ。
(笑子)焦っては糸紡ぎはできないって。
ゆっくり楽しみながらだったらできるね。
朝何時ぐらいに起きるんですか?6時に起きる。
これ終わってからまた裏の野菜短く切ったり虫取ったり。
生涯現役。
それがおばぁの元気の秘けつ。
笑子さん村の至る所にあるおばぁたちの畑で野菜の収穫を手伝う。
大切な仕事であり楽しみでもある。
この畑の持ち主はベニシアさんにハンダマを教えてくれたあの働き者のおばぁだ。
地元ではサクナと呼ばれる野菜が収穫期を迎えた。
台風を迎えたので心配してたら一番真っ先に「これだけは大丈夫よ」って伝えてくれた訳。
(澄子)台風にも強いですよこれは。
台風に倒れてなかったですよこれ。
台風にこのサクナは強いから。
おばぁの手は止まらない。
次々と虫食いのない葉を選び出す。
(笑子)おばぁ慣れてるから速いですよねやっぱりね。
ホントですよ見てびっくりしますよこの手さばきに。
これを1人でやろうというんですからすごいですよね。
私手伝うよって…。
半分私当てにしてなかったと思いますよ。
おばぁ汗かいてる?おばぁまだ動き足りなくて今から汗かくのかもしれない。
汗が出てないよおばぁは。
93歳プロの百姓。
おばぁたちは地域の宝物と笑子さんは言う。
もともとは村のあちこちに自生していただけだった栄養豊富な島野菜。
その価値に気付きおばぁたちに本格的な島野菜作りを勧めたのが笑子さんだった。
畑の隅々に隠れるように自分の健康と関わる食材が育ってるっていう。
だからそういう食材にすごく魅力を感じたしできたら復活させたいなと。
それをするには自分が料理をして提供して食べて頂いてそしてそこからやっぱり波及していくっていうのが一番かなと思いましたので季節の流れで自然の中から恵みを受けるっていう意味も野菜の中にもちゃんと見えてきてるんじゃないかなと思うんですけどね。
野菜だけでなくここに暮らす人たちに魅了された笑子さん。
年を重ねるほどに元気になるおばぁやおじぃ。
この村の野菜と先達の知恵を次の世代へ伝えていきたい。
笑子さんの夢は広がる。
つい楽しくなってルンルンして動いている時は年忘れてますやっぱり。
動ける限りはおばあちゃんたちにあやかって200歳はやっぱり夢みてますよ。
「200歳を目指す」と笑う笑子さん。
薬草としても評価されている島野菜を研究しおいしく食べられるようにアレンジしてきた。
ベニシアさんのために長寿料理を作る。
おばぁと一緒に収穫したサクナはミョウガに似た香りが特徴。
ちょっと癖があるので刻んでエビと一緒に天ぷらにする。
(笑子)何かおいしそうでしょ?地元でモーイと呼ばれ親しまれている海藻は豚の顔の皮や刻んだニラなどと一緒にカツオだしで煮込む。
(笑子)こういう感じ。
モーイが持つ粘りが出て冷えると自然に固まる。
(笑子)出来上がりです。
粗熱を取って冷蔵庫で冷やし固めます。
モーイドーフはおばぁたちの大好物だ。
笑子さん手作りの長寿食が完成した。
近所のおばぁが集まってベニシアさんを歓迎する宴会が始まる。
(笑子)ヨモギの酒。
ええ〜っ?ヨモギの酒。
それ初めて。
これ長寿の酒。
(笑子)あやかって。
乾杯。
乾杯はおばぁの作ったヨモギ酒で。
ベニシアさん60歳。
笑子さん63歳。
この中に入るとかなり若い方。
おばぁ食べる?どんな?ごまあえにしました。
おいしい。
おいしい?ここの村に住んでる人ほとんどみんな自分の野菜作ってる?作ってます。
すごいね。
いい事よね。
(笑子)これモーイドーフ。
へえ〜。
あの…海藻?海藻の豆腐。
(笑子)おばぁたちがおいしいって。
これもおいしい。
(沖縄弁で)何言った?こんなに赤いきれいな服どこでお色直ししてきましたか?60歳って言ってたけど今はねこんな若々しいから18歳かと。
18?うれしい〜。
花の盛り。
60代は花の盛り。
おばあちゃん長く生きると思ったら秘密は何ですか?毎日働いて動いて体操して。
体を動かすのが一番健康にいいですよ。
朝毎日家族の健康手を合わせてラジオ体操するの。
忘れるなよ。
忘れないよ。
・「忘んなよーや忘んなよ我思とんどーかなさんどー」・「色気ある人ボケません」・「スポーツカラオケ囲碁俳句趣味のある人」畑仕事や仲間とのおいしい時間。
とにかく毎日を楽しく過ごす。
それが長寿の秘けつ。
命こそ宝。
その言葉をお土産にベニシアさんはまたバスに乗る。
ここで見た海と出会った人たちの心の美しさ。
旅は時にとても大切な事を教えてくれる。
2014/06/29(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「長寿の村へ〜沖縄・大宜味村〜」[字]

ベニシアさん、長寿日本一の村、沖縄大宜味村(おおぎみそん)で伝統料理の普及に尽力している金城笑子さんを訪ねる。ウコンなど、初めて見る沖縄特有の食材に興味津々。

詳細情報
番組内容
ベニシアさんは、日本一長寿の村、沖縄県大宜味村(おおぎみそん)に金城笑子さんを訪ねる。金城さんは、20年前に食堂を開店、村に伝わる伝統料理の普及に尽力している。ベニシアさんは、ドラゴンフルーツ、ウコンなど初めて見る沖縄の食材に興味津々。ハイビスカスとシークワーサーを使ってジュースを作る。笑子さんの案内で、芭蕉布の糸を紡ぐ92歳のおばあさんを訪ねる。夜は笑子さんの家で、踊れや歌えやの大宴会。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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