日曜美術館「京の“いろ”ごよみ 染織家・志村ふくみの日々 冬から春へ」 2014.06.29

晴れてきた。
ちょうどね今臘梅が咲いてますでしょう。
これがきれいなんですよね。
とっても好き。
匂いがしますよねここまで来るとぷんと匂ってますね。
こちらも臘梅がある。
フフフッ今一番ね。
まだかな。
ちょっとまだ早いかな。
ああまだちょっと早いわね。
これもすごくきれいなの。
白梅でね。
ほらつぼみがこんな。
なんかつぼみの頃っていいですね。
ちょっとぽっと咲きかかったとこがすばらしいと思うの。
ほんとにキューッとね力を内に蓄えてこれからぱっと開こうとしてる寸前の。
ほらかわいいでしょ。
すごくきれい。
縮緬を縫ってね玉にしてねつけたような感じがするの。
あんまりかわいくて。
この何とも言えない…予感をね思わせる梅のつぼみっていうのはすばらしいわ。
ほんっとにきれいですねこれは。

(水音)降ってますかね?ちらちらと…ちょっと。
あれやんでる?「私は太陽の豊かな手のひらが大地をあたため氷にとざされ雪におおわれたさまざまの生物に冬を越えよと力をあたえているように思われる」。
寒さの中水は澄み切り冴えわたる。
この時期でないと出会えない色がある。
どっちを先に染められますか?こっち。
工房の朝は早い。
染織家である娘の洋子と6人の弟子と共に日々色と向き合う。
赤い。
ここほらきれいねぇ。
こういうのほんとは木の方がよく染まるんですよね。
枝とか葉っぱよりはこういう所の方がしっかり染まると思うの。
なんていうんですか幹の方に色は蓄えてると思う。
ここに咲こうとしてるものが蓄えてあるという気はする。
なんかぽっとピンクに見えたりベージュに見えたりして。
(取材者)先生雪ですね。
ん?
(取材者)雪ですね。
あらほんと。
寒いはず。
(取材者)どうでした?今回の桜の色は。
いいと思います。
これね今こんなですけどちょっと干してるとぽ〜っとピンク色になってくる。
きれいですよ。
こういうなんていうのほのかな色が桜なのよね。
はっきりした色じゃなくてほのかな方がいい。
臈長けてますね。
私はそう思います。
非常に臈長けた色ですね。
これを別の時期にやったって出ないと思う。
だから結局匂い立つ匂うっていうのは今だからですね。
生命ですよ。
命よ。
植物の命を頂くんだから匂い立つのが本来ですよ。
その植物の持っている命をどうやって導き出すかによるでしょうね。
決められたように炊き出して媒染して出ましたではないと思います。
こちら側に聞かないと分からないですね。
そんなにものを言うわけじゃないんだけどとってもなんか…桜の精って感じしますね。
でもこれ生かすのが難しいのよ。
フフッ。
立春を過ぎた頃。
凍てつく大地にも少しずつ目覚めの兆しはある。
(機を織る音)「自分の中で生まれたイメージがある必然性を得るにはどうしても目に見えない世界からの働きかけがあるような気がする。
遠い記憶旅の思い出あるいは亡き人からのメッセージであるかもしれない」。
梅は枝を切るほどよく花が咲くという。
これを。
ああ。
そいつそっからいってくれ。
違う違うその上。
おうそれそれ。
はい。
そのぐらいに縮めてくれるけ。
はい分かりました。
佐野藤右衛門さんとはご近所のよしみで伐採した植物を時々分けて頂く。
全部自然が回ってるだけなんや。
わざわざと違うてちょうど剪定したりそういうものをうまく利用しているだけでどんなもんでも地球上のものは昔から皆そうやから。
その循環を繰り返してる一部分がこれであって完成品が志村さんや。
細かい事言わんでもあ〜あ〜あ〜で分かんねや。
今のように数字で示すとか容量で示すとかそういう世界ではないわけなんや。
人間のその時の感覚。
感覚の中から感性が生まれてくるだけの事や。
その感性は志村さんの出来上がったもんや。
無駄はないねん。
佐野藤右衛門さんのところから梅を頂いてきた。
(取材者)藤右衛門さんは志村さんはあんまり多くを言わなくても分かりあえるんやって。
アハハッそうかもね。
そんな感じしますね。
だからほら「今年は4月2〜3日に桜咲くよ」って言われてね「どうして分かるんですか」って言ったら「満月だもん」って。
それから桜と月が関係があるのはうちのここも同じ事だと。
「つぼみが花となって花瓣がほころびた時色は花へ移行し彼岸の世界へ去ってしまうのである。
色は花の咲く前でなければ此岸には留まらないのである」。
梅のつぼみがあるでしょうゆきちゃん。
はいあります。
残酷で…フフフッ残酷ですけど。
(2人)せ〜の〜で。
いいわしっかりした。
光の加減でぽっとピンクに見えたり黄色に見えたりねしますね。
(糸をしごく音)まだまだこれで完全に乾くまで色が何となく変わりますよね。
(糸をしごく音)その糸を鉄や石灰などの鉱物を含んだ水に浸し更に多くの色を授かる。
はいどうぞ。
(女性)これはやっぱり赤みのグレーだ。
うん…いや地が濃かった。
(水音)昔から「梅鼠」っていうんですよ。
江戸時代は梅鼠ってすごい粋なね庶民の色でしたよ。
粋な色だったのね。
ちょっとね今日のこの梅濃いのね。
梅が濃いからグレーがなかなか。
でもほらだんだんなってくるのよ。
またその時期とかうちの状況とか私たちの心理とかもう全部違う。
それぞれ違うから言えませんね。
今年はこれと。
「生きるものすべてに再び還らぬ生というものがあるならば転生というものもあり得ると思わずにはいられない。
梅が再び生まれ変わって私の織る着物の中で匂い立ってほしいと願う」。
縮緬の玉がはじけた。
梅は寒の中で咲く潔さがある。
梅に負けてはいられない。
私の中にも次々と発想が芽吹いている。
この混ざった感じがね…。
ほんとにきれい。
どうしよう。
とっときたいわ。
どうしたらとっとける…。
こんなふうにいろいろ描いてはいるんですけど今ちょうどこれをやろうかなと思って。
(取材者)これはどういうところから発想を得て?抽象画の作家のその人の絵を見ていつもそれ見てるんですけども大好きだからしょっちゅう見て。
ちらっとねちらっとだけ。
こういった感じのものなんです。
全然違うんですけどある1か所がはっとこんなとこで浮かんで。
全然違うものなんだけど浮かんできちゃうのそれ見てると。
あっというくらい小さな人が見たらえっこんなとこからこんなもの出るのと思うでしょうけど自分としてはそういう感じなんですよね。
これもそうなのよ。
全然違うイメージなの。
今私これ織ってますけどね。
こういう感じね。
なんと…。
フフフッここら辺。
この辺からヒント得たの。
でここがやってみたいんだけどもなんか私としては日本的なイメージになってくるのね私やりだすと。
なんか知らないけどこういうのをバーッと入れたいと思って作ったんです。
やってるうちにとんでもないイメージが湧いてきたのは日本のね絵巻なんです。
絵巻のねその一部がまた浮かんできてこれがずっと旅をしてるわけ。
僧侶が旅をして海の近くに行ってまたずっと山辺の方に。
肩はいくかもしれません。
分かりません。
まだ分かりません。
旅してるのこれ私が。
ずっと旅してる。
(機を織る音)こんな日が来ようとは夢にも思わなかった。
ついに皆様が自分で染め自分で織り身にまとって下さいました。
ほんとに輝いています。
自然と人間の間に取り持つものそれを皆さんがね心の中に抱いて下さったような気がするんです。
1年前私は娘の洋子と共に染織の学校を始めた。
地の中でぼかすのが秘けつ。
90を目前にして無謀なのは承知の上。
染めや織りの根っこに何があるのか今この時代だからこそ広く伝えたいという思いに突き動かされた。
10代から70代生徒のほとんどが染織は初めて。
しかし1年間の成果は想像をはるかに超えていた。
(着物の紹介アナウンス)
(拍手)
(一同笑い)
(着物の紹介アナウンス)生徒たちは自らの手で自分だけの着物を織り上げてくれた。
(拍手)
(着物の紹介アナウンス)
(拍手)ここへ来て本当に色やものに思いがこもるという事を目の当たりにさせて頂いて。
こういう事で人間の気持ちというものが動かす事ができるのかもしれないと。
なんかほっとするような人の心の揺らぎといいますかそういうものをこちらで見させて頂いたような気がします。
(着物の紹介アナウンス)着物を織る事は長編小説を書く事に似てるあなたたちが今織ってるのは私小説私の小説だっておっしゃったのがすごく印象に残ってます。
織りながら何かを書き記しているのと同じ事なのかというふうに色に対する認識が変わったような気がします。
(進行役)第1期生首席は吉水まどかさんです。
(拍手)
(吉水)1年間を通して一番よく考えたのは生きるとか死ぬとか分かんないですけど自分が生きてるんだなとか糸を染めて植物が染めたあと出し切りましたよっていう感じだったんでそこに罪悪感はなく逆に新しく生まれ変わって糸の中に色として移動したというかいろんな工程の中でいろんな命が集まって自分の体に来てくれてるんだなとかそういう事を感じました。
(一同)ありがとうございました。
大地にまいた種から小さな芽が出た。
(一同)ありがとうございました。
この日嵯峨釈迦堂はにわかに活気づく。
(念仏)毎年松の枝と藤のつるで作った松明を3本燃やし農作物の豊凶を占う行事。
(人々の歓声)「春をさきがけて夜空に舞う火の粉はまるで春の瀧を思わせ冬への決別を宣言する潔さを感じる」。
「昇る炎舞い下る炎何か季節の区切りを歴然とみせられているようだった」。
「雲の彼方に逝く冬と目覚める春が行き交っているかのようだ」。
「朝散歩に出たとたん季節に先をこされたとそう思った」。
「うき世のものとも思われずというのはこういうことか。
桜の花ひとつひとつが無限に透明になって空華という花がもしあるならばそんな思いがするのだった。
日本人は美しさのきわみを匂うがごとくと形容する。
これは桜からの連想が最もふさわしいように思われる」。
桜が咲き誇る頃。
工房の桃の節句だ。
じゃいただきましょう。
ではおひなさんいただきます。
(一同)いただきます。
旧暦に沿ってひと月遅れで祝う。
おいしい。
甘いね。
昔ふるさとの近江八幡で手に入れたひな人形。
時を重ねて存在感を増す「襲の色目」の衣装。
白い肌細くしなやかな手の妖しさに毎年の事ながら魅入られる。
日本には紅葉狩りとか月見とか雪見とか季節をほんとに愛でるんですよね。
それともう「万葉集」から「古今」「新古今」の中に歌われてる自然というものは特別にどうだこうだって理屈はなくてただ咲いているただ散っている。
雪が来たそして雪の来る前にはこうだとかうぐいすが鳴き出したから春が近いとかそんな事ばっかりを歌っているのにそこに私たちは何とも言えない世界を感じますよね。
それは言葉でも言えないくらいやっぱり日本人の自然とのほんとに融合している魂がそこにあるからだなと思うんですよね。
そこまで自然の事を見分けたり驚いたり悲しんだり自分の思いを託したりする民族あるかしらと思うくらいですよね。
「時をまたずに散ってゆく桜の花のうす紅はひとの心にしみ入るような憂いがある」。
「植物の命の尖端はもうこの世以外のものにふれつつありそれ故に美しく厳粛でさえある」。
桜が静かに終焉を迎える頃背筋が伸びる思いで染め場に向かった。
蓮の糸を染めてみようと思う。
古くから神聖なものとして語り継がれている。
蓮糸は茎から繊維を採り出して作る。
日本では蓮が採れる時期も量も限られるためほんの僅かしか採れない貴重な糸だ。
1年ほど前から蓮糸への思いを温めてきた。
蓮糸で織られたという伝説の残る織物「綴織當麻曼荼羅」を目にして衝撃を受けたからだ。
阿弥陀如来の化身に導かれ蓮から糸を紡いでゆく中将姫。
蓮糸を井戸の水で五色に染め一晩のうちに曼荼羅を織り上げたという。
作られてから1,200年以上蓮糸の物語と共になぜ現代にまで守り伝えられてきたのかずっと考え続けてきた。
そんな中私にもたらされた蓮の糸。
一体何を意味するのだろうか。
植物染料を染めてきて一番大きな課題というかある意味賜り物ですよね。
私も全くその力も信心もないんですけどもこの手に委ねられたって事は事実ですからねそれをどういうふうに生かすかっていう事。
仏の教えをどこかに思うようなものをね私は作らせて頂かなきゃいけないのかなっていう今そういう思いに何となくはなっていますね。
蓮糸を何で染めたらいいのか…。
考えた末お坊さんから頂いたブータンの茜を選んだ。
奧の深い大地の色が望ましいと思う。
すごいこれでも十分赤いわ。
蓮からね。
蓮から。
植物から採れた糸で植物の色を染める。
じゃ手袋お願いします。
賜り物である蓮の糸。
自分の手で染める。
火つけてくれた?じゃいきます。
蓮の糸です。
どろんどろんになったね。
フフッ。
オレンジ色ね。
やっぱり植物繊維についてるって色ね。
絹についてる色とはちょっと違う。
ちょっと違う。
植物繊維の…。
(しごく音)私たち人間の我欲とかいろいろなものを少しでも利用して自分たちの生活を楽にしようとかそういうものが一切なくむしろそれに黙々と従ってる植物とか動物とかの方が魂の位は高いっていう事を植物をあがめなきゃいけないという事が分からなければ人間救われないと思いますよねこのままではね。
で今その警告を発しているのが蓮糸かもしれないわね。
早く目覚めよってね。
あまりにも逆行してるわけでしょ自然からね。
だからもう一度流れの根本を変えなさいっていう事を伝えているのかもしれませんね。
「早朝の森の中でふと頭上を見上げたとき水あさぎ色に澄み切った空に若葉の尖端が新生児のようにうごめいてあれは地球のささやきだろうか恥じらいだろうかいまあの瞬間にしかあり得ない不思議な光景」。
わっ最高!わ〜。
新しく入った弟子と草を採りに出かけた。
あれがカラスノエンドウだし。
これがそうなの。
これがそうなのね。
これに集中しましょうね。
毎年なんか種類が変わってくるのねここら辺。
今年はなんか野人参が優勢だわ。
(取材者)野人参でお染めになった事は?ないの。
だからやってみたくて。
自然だもん。
先生がやっぱ一番たくさん採ってる。
いつでもそうなの。
私がむしゃらに採るから。
みんなお上品に採ってる。
あ見て。
お豆。
あすごい。
お豆たくさん。
ちょっとついてる。
いっぱい入ってるからいいよ。
枝も入ってます。
この新芽がきれいね。
なんてきれい!今が一番きれい。
わあ…。
青空と…。
あ〜きれいな色。
(2人)せ〜の!よいしょ!今年のカラスノエンドウとまた来年のカラスノエンドウとは違うだろうしひょっとしたらもう見当たらないかも分からないでしょ。
結局は植物をある程度敬ってその植物から色を頂くっていう。
そうすると植物に対して自分たちはどういう向き合い方をしたらいいかといえば植物が喜んでくれるいい色を出して喜んでくれる。
それが「復活」かなって思うんですよね。
だから古代は植物染料とも言わないですよね。
こういう草木で染めるのを祈りの染めだって言ってるんですよね。
なぜそんな事言うかというとみんなこれ薬草なんですよね。
薬草で染めてそれで着るとかそれを身にまとう事によって悪から病気とか疫病とかいろんな事から身を守る。
そういうために染めてたらしいの。
だから祈りながら染めた。
祈りは最高の科学であるって書いてあるんですよ。
すごいなと思って私。
祈る気持ちがなくて植物染料をこうやって扱ってはいけないって事でしょうね。
そういう事忘れてますよね今の現代人はとっても。
2014/06/29(日) 09:00〜10:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「京の“いろ”ごよみ 染織家・志村ふくみの日々 冬から春へ」[字]

元日に大きな反響を得た番組の第2弾!季節とともに生きる89歳の染織家に再び密着。今回は冬から春。桜や梅の命が鮮やかな色の糸に生まれ変わる。前回を越える特別編!

詳細情報
番組内容
元日に大きな反響を得た番組の第2弾!人間国宝の染織家・志村ふくみさん(89)の日々に再び密着。京都の小さな工房で、植物の声に耳をかたむけ、その命から一期一会の“いろ”に糸を染め上げる。まさに季節とともにある暮らし。その糸で織り上げる着物は、一編の物語を見るような情感あふれる世界。今回は冬から春を追う。目覚めの季節、桜や梅の枝に宿る命をどんな“いろ”に染め上げるのか。前回を越える60分の特別編!
出演者
【出演】染織工芸家…志村ふくみ,【語り】余貴美子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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