(鳥の鳴き声)
(風の音)
(泣き声)
(足音)
(教師)因藤どぎゃんしたとか?
(因藤)足が痛くて歩ききらんです。
けがしたとか?ひどか靴擦ればい。
おいはここに置いていってくれんですか?因藤。
わがそん水筒に何ば入れてきたと?え?ジュースです。
そいはいかんばい。
これば飲め。
うまかろ。
今来た道に湧き水があっとさい。
因藤よかや。
何かつらか事や嫌な事があった時まずさいゆっくり水ば飲め。
そしたらとりあえず気持ちも落ち着くたい。
濁っとう水や臭か水は駄目ばい。
こん水と同じごたきれいで澄んだ水ば飲まんば。
(佐伯)因藤さん。
(佐伯)ハロワに通われて結構長いんですよね。
はい。
もう6年になります。
こういった会社に応募して面接試験までこぎ着けた経験はおありですか?いや一度もないんですよ。
いつも書類選考の段階で…はい。
何か資格を取るなど職業訓練を受けられた事もないですね?働かなければ…退職金が安かったし職業訓練を受ける余裕というのはなくてですね…。
肉体労働の研修ならもう何度も受けましたけれどもね。
それでしたらやはりそちらの方で頑張るしかないんじゃないですか。
う〜ん…。
やる気はあるんですよはい。
道路工事の交通誘導荷物の梱包作業ビルの清掃。
はい。
ただあの…腰をねやってからはどうにもこうにも…ええ…。
しかし今更事務職と言われましてもですね…。
そこを…。
そこを通すのがあんたらの仕事だろうが!訳知り顔で偉そうに説教されるためにここに来てんじゃねえんだよ!
(相談員)落ち着いて下さい。
落ち着いてなんかいられねえよ!これ以上落ち着いたら俺はもうホームレスになるしかねえんだよ〜!ねえ置いてかないでよ〜。
遅えよ!どんだけ遅えんだよ。
どこ行こう?どこ行こっか?
(潔子)揚げギョーザは3割引きになりま〜す。
いかがですか〜?お安くなってますよ〜。
フライセットが半額になりました。
いかがですか〜?いかがですか〜?お安くなってますよ〜。
いらっしゃいませ〜。
あそこ本当もう駄目なのか?え?結構お客さん来てたじゃないか。
見に来たの?ん?うん。
気持ち悪い。
ん?うん。
こんな総菜安くならなきゃ誰も買わないのよ。
初めから安くできないのか?それじゃタイムサービスの時もっと安くしなきゃならないだけじゃない。
ん?あそっか。
はい頂きます。
売り場が替わるのよ。
サラダ専門店が入るんだって。
私はクビになるって決まったの。
今更ウダウダ言ったってしょうがないでしょ。
私を当てにしないでよ。
当てになんかしてないよ。
しょうゆ。
ソース。
あはい。
ちゃんと働くよ。
びっくりした孝志いたのか。
行ってらっしゃい。
おいちゃんと勉強やってるのか?そろそろ就職活動しなきゃいかんだろ?
(孝志)バイトバイトバイト。
忙しくて大学行く暇なんかないよ。
(ドアが閉まる音)何なんだあいつは。
あれで大丈夫なのか?あれじゃ大学行かせた意味がない。
今は行くだけじゃ意味がないのか。
あっ…。
(潔子の寝息)おはようございます。
おはようございます。
まだ一本中入れときましょうか。
歩行者通ります!自転車通ります!恐れ入ります。
ツーブロック先を迂回して頂けますか。
はい分かりました。
お気を付けて。
(久保山)因藤さん。
はい!あの男知ってる人ですか?遠目でよく分かりませんけど私この辺りに知り合いはいませんね。
そうですか。
最初は何か騒音とか苦情でも言ってくるのかと思ったら「何か因藤さんの事を見てるようだ」って作業員が言うもんだから。
私ちっとも知りませんでした。
すいません。
いえ関係ないならいいんです。
出版社に勤めてたんですか。
ま出版社といっても弱小ですよ。
売れるような本は作っていませんでしたね。
恥ずかしながら小説書いてました。
へえ〜。
自分の小説を書くために小さな出版社に入って時間をつくったんですけども小説家にはなれず会社も潰れてしまいました。
僕なんか若い時から資格取る事ばっかり考えてましたからねつまらない人間ですよ。
久保山さん。
生きるのにつまらないなんて思う必要ないんですよ。
臭い。
あ…恐縮です。
いや何か臭いませんか?ん?うん…ん?うん。
(福田)おい因藤だろ。
因藤茂雄じゃないのか?それコンビニ弁当か?うまそうだな。
誰ですか?覚えてないか?因藤。
俺だよ。
臭いか?香水つけ過ぎたかな。
どちら様ですか?覚えてないか。
福田だ。
中学の時同じクラスだった。
まあ俺は鳥栖に半年しかいなかったから無理ないか。
福田?そうだよ。
思い出せないか。
でもお前は間違いなく因藤茂雄だろ?どうして分かったんですか?それだよ。
鳥栖の東中学の時にずっとそれぶら下げてたじゃないか。
福田貞夫?お前俺によくしてくれたんだよ。
転校生で友達いない時もいつもそれで水飲ませてくれた。
懐かしいな。
うん。
この近くに住んでんだ。
へえ〜そうなのか。
明日もまたここへ来るか?いや…うん…いや…。
まあ同じ町内なんだけれども移動するんだ。
もう200m…500〜600m先だ。
うんそうか。
多分また会えるな。
うん。
また会おう。
(目覚まし時計のベル)あっ!アイタッイタッ…。
ああ…ああ…。
じゃあ今日もよろしく。
出発します。
お願い致します。
やあ。
転校生?え?違うばいただの新入生たい。
俺は転校生だ。
遠くの小学校から来たとね?うちの父親は自衛官で関東の方から春休み中に引っ越してきた。
「ばい」も「たい」も話せないんだ。
あすまん。
悪く言ったつもりはないんだ。
おいは因藤茂雄。
言葉が分からないなら教えてもよかよ。
はい自転車通りま〜す。
福田?
(せきこみ)おい…おい大丈夫かよ?
(せきこみ)大丈夫。
すまん水はあるかな?うんあるよ。
(せきこみ)ほら飲めよ。
いいのか?いいから飲めよ。
あ〜うめえ…。
あのころと同じだな。
(せきこみ)はい。
はいはいはいはい…。
はい車通ります!はい!お願い。
はいよ!主任!はい。
少しだけ帰りを待って頂きたいんですけど。
あの〜あれが…すぐ近くに住んでいる者で送っていきたいんです。
10分ぐらいならなんとかしますけどそれ以上は保証しませんよ。
ほかの人が怒りだしますからね。
分かりました。
すぐ戻ります。
ありがとうございます。
もう大丈夫だ。
風邪をこじらせたんだ。
だったら出歩くなって。
因藤に会いたくてな。
福田。
お前まさかここじゃないだろうな?バカ違うよ。
これ抜けた所だ。
申し訳ない。
これだ。
ん?え?おい…。
アタッ…。
すごい家じゃないか。
ちょっと寄ってくか?あ…ああ。
いやいやいやいや…俺は現場に戻らなきゃ。
早く家に入れよ。
あこれ…これ…。
実は今女房の実家に身を寄せてる。
そうか。
じゃあな。
(犬の鳴き声)お?
(犬の鳴き声)あの人お手伝いさんでな俺とどうも相性が合わなくて参ってる。
大変だな。
じゃあ。
なあ。
ん?また明日この辺来るか?もう現場はね変わるんだよ。
もうここには来ないな。
じゃあ。
ん?あの…携帯の番号教えてくれるか?持ってるだろ。
うん…あいいよ。
読めるだろはい。
ありがとう。
あ俺の番号はあとでこの番号に電話して教えるから。
いいよいいよそんなの。
用がある時でいいよ。
じゃあ。
じゃあ。
頼む…頼む…。
何?どうしたの?いや違うんだ。
痛みが治まってくれと…。
腰痛いの?頼む…。
会社に電話すればいいの?だから違うって…。
会社に電話して休んだら?それじゃ無理でしょう。
頼む…。
腰痛がひどくてですね…。
大丈夫ですか?ああ…はい…。
今日一日休ませてもらえないでしょうか?慌てる事はありませんよ。
ゆっくりと養生なさってしっかり治して下さい。
代わりはいますから。
いやあのね月曜日には…。
(不通音)
(ため息)あ〜イタタタタタ…。
はい因藤ですが。
(佐々木)因藤さん?福田という男性をご存じですよね?もしもし?因藤茂雄さんですよね?ええそうですが。
福田というのは?
(佐々木)福田貞夫っていうんですがご存じないですか?ああいえ知ってます。
こちらはですね台東区の白藤という旅館の者なんですけども福田さんは宿泊者なんですけど事情がありましてお部屋を出て頂く事になってるんですが…。
もしもし聞かれてます?ええ聞いてますけれども私に何の用ですか?福田さんご病気でですね動かせない状態なんです。
部屋代を2か月滞納されてまして通常ですと役所で生活保護の申請をしてもらって部屋代を頂いて病院に行ってもらう事になっています。
でも福田さん申請を嫌がるものでそれができないんですね。
もしもしちゃんと聞かれてますか?ずっと聞いてますよ。
私に何の関係があるんですか?福田さんがですねあなたの名前と電話番号を言って連絡してくれとおっしゃるものでこうやって電話をしている訳なんですけれども。
どうされますか?どうって…。
どうする事もできませんよ私には。
(佐々木)あなた来られないんですね?それではこちらで対応させて頂きますが本当にいいんですね?私もね動けるような状態じゃないんですよ。
腰を痛めましてねあの…仕事を失いかけてるような状態なんです。
どういう事情か知りませんけれどもあとで私どもに文句を言われたり恨まれたりはしないで下さいね。
では失礼致します。
いや私が言ってるのはそうい…。
(不通音)回想おい大丈夫かよ?
(せきこみ)大丈夫。
あ〜うめえ…。
あのころと同じだな。
どうしたの?病院?いや…東京のハローワークに行ってくる。
はあ?懇意にしてもらってる相談員から電話があったんだ。
いい仕事の口が見つかったって。
ちょっと話聞いてくる。
無理して動けなくなったらどうするの?いや早い方がいい。
今の派遣だって切られそうなんだから。
持ってって。
えっ?いいよこんなに。
もし歩けなくなったらタクシーで帰ってきて。
お前だって仕事がないんだ。
大変だろ?大変だよ!このお金が無くなったらうちはおしまいかもね。
だから持ってって。
これでもしあなたが逃げたら家族も終わりだからね。
逃げないよ。
雨降ってないよ。
杖代わり。
大げさな…。
要らないよ。
はい。
あ…。
ごめんください。
(チャイム)ごめんください。
(佐々木)「受け付けは4時からですので帰って下さい」。
あいや…先ほどお電話した因藤です。
(佐々木)「はあ?」。
(佐々木)こちらで〜す。
はい。
福田さん開けますよ。
じゃあよろしくお願いします。
役所か病院ですね。
表まではおつきあい致しますのでじゃあよろしくお願いしま〜す。
福田。
(せきこみ)大丈夫か?ちょっと待て。
飲むか?いいのか?
(せきこみ)因藤。
ん?お前に頼みたい事が2つある。
福田福田悪い。
金は無理なんだ。
これ届けてほしいんだ。
手紙?お前を案内した家とは違うがすぐ近くだ。
それ俺のおふくろだ。
離婚して旧姓になってる。
中に指輪が入ってる。
おふくろからもらったんだけど返したいんだ。
郵便で出せないのか?俺が死んだと伝えてほしいんだ。
生きてるじゃないか。
もうそう言っても同じだよ。
もう一つの頼みは俺をここから出してくれ。
どこへ行くんだ?もうすぐ近くだ。
すまない福田。
本当に頼む。
病院行くんでしょ?お世話になりました。
治ったらまたうち来てね。
すいません。
はいどうも〜。
あの人冷たい感じがしたけど本当は優しいんだな。
優しかねえ。
そんな事ねえよ。
優しい言葉かけるとなこの辺の連中弱いから取りっぱぐれてる宿泊代取り返すのに突き放したらみんな逃げちまうだろ。
そういうもんか。
・ふざけんじゃねえってんだよ!俺を誰だと思ってんだよ。
国会議員3期務めた男だよ。
下りるぞ。
・官房長官の次だって言われてたんだよ。
(瓶が割れる音)俺を誰だと思ってんだよ!大丈夫だ。
酔っ払ってるだけだ。
何かに反発する力もなくなっちまった人間ばっかりだ。
俺もそうだけどな。
ふざけんじゃねえぞこの野郎!俺を誰だと思ってんだよ!おっおお…。
よいしょ。
すまんすまん。
よいしょああ…。
おいここで寝るのか?いやここは夜の8時半には出なきゃなんない。
そのあとどうするんだ?大丈夫だアーケードに行く。
あそこには夜になったら段ボールや毛布用意されてるんだ。
因藤。
え?本当にありがとうな。
どうって事ないさ。
(せきこみ)いいのか?お前あの…どうしておふくろさんに指輪返すんだ?40年近く前な父親に「自衛隊に入れ」って言われて大げんかになって20代で家出た。
不動産関係の会社入ってバブルの時は羽振りよかったんだけどちょっとヤバイ会社でな…。
そのうち億の借金作って身を隠した。
母親に連絡したら「生活の足しに」って宝石類くれたんだ。
一つ一つ売っ払ったんだけどおばあちゃんの形見だっていう指輪だけはどうしても売る事ができなかった。
だから因藤お前が返してくれ。
どうしてだよ?自分で返そうとしたろ?あの町にいたのはそういう事だろ?会う勇気が出なかった。
ホームレスの臭い消すために安物の香水振りかけた息子に誰が会いたいよ?母親に連絡がいくから生活保護も申請できない。
因藤この世で死ぬよりおっかないのは自分じゃなくなっちまうって事だ。
別人になっちまうって事だ。
(せきこみ)でも…でもそんな俺を俺として接してくれたのは因藤お前だけだ。
早く行ってくれ因藤。
ここはお前のいるとこじゃない。
早く行ってくれもう行ってくれ。
(せきこみ)飲め。
飲めほら。
(せきこみ)嫌だよ。
福田行こう。
え?ここを出るぞ。
ほら立て。
何だって?えい…よいしょ。
お母さんに会うんだよ。
俺が連れてってやるから自分で指輪返せ。
いや俺には無理だよ。
無理だって。
出る!行くぞ福田。
それ!それ上がれ。
すいませんどいて下さい!申し訳ありません!ご歓談中本当に申し訳ありません!あ瓶踏みましたすみません。
逃げるか…誰が逃げるもんか。
逃げてたまるか!タクシータクシータクシー!タクシータクシー!え?
(せきこみ)大丈夫か?水飲むか?いいのか?タクシー!ここですここ!ここです!チカチカしてるチカチカしてる止まる。
行こう行こう。
立って立って。
よし福田さあ乗っちゃえ乗っちゃえ。
ゴロンと。
よし行け行け。
(三好)大丈夫ですかね?大丈夫です。
香水ですこの異常な臭いは。
いやお体の方ですけども介護タクシーを呼ばれた方がいいかもしれません。
数が少ないので今残ってるかどうか分からないんですけど。
あのご迷惑でしょうけれどもこのまま池袋まで行っちゃって下さい。
お願いします。
分かりました。
ありがとうございます。
ドア閉めます。
はい。
池袋までまだ遠いんでしょうか?いえもう着きます。
はい。
福田。
お前よくその体で歩いてたなこの距離を。
(せきこみ)どうした?うっ…。
あ…。
やったな。
あっ大丈夫です。
座席は汚れてません。
どうぞ。
ありがとうございます。
もうここだけですから。
どこへ行かれるんですか?あの…バスだよな。
高速バスでいいんだよな?南口ですね。
はい。
本当にありがとうございました。
よし行くぞ福田。
お気を付けて。
ありがとうございました。
よし行こうか。
福田悪いけど上着捨てようか。
バスの中は暖かいと思うし臭いはな人に迷惑かけるかもしれんから。
いいか?よし。
捨てる。
悪いな。
乗ります。
あはい。
先にチケットよろしいですか?あはいはいどうぞ。
よし福田行くぞ。
せ〜のそらもういっちょ。
あ〜大丈夫ですか?あちょっとその間預けちゃいます。
大丈夫ですよ。
こちらですね。
よ〜し着いた着いた。
大丈夫ですか?大丈夫ですはい。
さあさあさあ…。
港北東だったら30分ほどですからね。
はい。
30分ほどです。
はい。
失礼します。
はい。
さあ座ってこう座ってこう。
(せきこみ)おい福田?福田!福田どうした?福田どうした?ん?何だ?大丈夫だ…。
くたばってたまるか…。
そうだよ。
当たり前だ。
福田覚えてるか?湧き水求めてさ2人でよく山の中旅したよな。
あんな事に喜んでつきあってくれたのはお前だけだよ。
因藤。
ん?楽しいな。
これが最後の旅だな。
何バカな事言ってんだよ!あごめんごめん。
俺さ出版社に勤めてたんだよ。
昔から物を書くのが好きでさ。
それは知らなかっただろ?福田が転校したあと作文で市長から表彰してもらったんだぞ。
それがお前がいなくなってからの支えだったな。
まあもっとも物書きにはなれなかったけどさ。
今は時々夢日記書いてんだ。
空飛ぶ夢か?え?いつもお前言ってた。
よく覚えてるなそういう事。
そんな夢はもう見ないよ。
あれは子どもの頃だけだろ。
(せきこみ)おい福田。
どうしたどうした?
(せきこみ)どうしたどうした?大丈夫か?どこが苦しい?
(せきこみ)胸か?背中か?福田!
(下総)おい毛布か何かないのか?
(運転手)積んでおりません。
(舌打ち)しょうがねえな。
苦しいのか?寒いんだよ。
へ?あんたの上着掛けてやりなよ。
はい。
彼心臓だな。
ポンプがいかれてるから体の水をうまく抜けなくて肺にたまるんだよ。
お医者さんですか?違うよ。
俺のオヤジもこんな感じだったからこの人のせきを聞いて思い出したんだよ。
(せきこみ)水飲むか?駄目だ!はい。
水飲ましたら駄目だよ。
とにかく早く病院に入れてここを切って管を通さないと。
あんた親類か?いやいや友人です。
そうか。
信頼されてんだな。
う〜うう…。
どうした?どうした?福田。
ん?
(下総)おい小便だよ。
あ…。
えっ漏らしたの!?ちょっと止めてこいつら降ろして下さい!
(下総)バカ野郎!病人なんだよ死にそうなんだよ!小便の臭いぐらい我慢しろ!小便の臭いでお前ら死ぬのか?ありがとうございます。
すいません。
福田…。
大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ。
ほらもう一つよし。
おお…。
よし捕まえた捕まえた。
お世話になりました。
福田福田!しっかりしろ!せ〜の!そら!それ!よいしょ。
よしよしその調子だ。
さあさあいいぞ。
おい頑張れ頑張れ。
よいしょ。
うん!あっ…。
ほれ!よいしょ。
行くぞ!福田。
福田福田!ほら…。
ほれよいしょ。
それ!ああすまん福田。
救急車をお願い致します。
(明子)お掛けになって。
はい。
貞夫君から預かっております。
「指輪を返します。
僕は病気で死ぬはずですがオヤジの墓には入れないでください」。
貞夫から聞いてました。
「いつも水筒を持っていておいしい水が好きだ」って。
因藤さんの話をする時あの子いつもうれしそうでした。
もっと早くうちに来てたらよかったのに…。
何度も行ったらしいですよ。
近くまで行ってお母さんに指輪を返そうと思ってたらしいんですがう〜ん…会えなかったって。
私にはその気持ちがよく分かります。
(泣き声)ソース。
あそうか。
いつも間違えるよな。
かけ過ぎでしょう。
え?あ〜。
ああそう。
はい。
行ってらっしゃい。
バイトか?孝志大学なんかやめていいぞ。
好きな事しろ。
やめるなんて誰が言ったよ?ここまで来て冗談じゃないよ。
絶対就職してやるからな。
そんな事言ってなかったか?変な事言わないでよ。
あの子頑張ってんだから。
すまん。
(ノック)ああ。
おしっこ出てる?いいね。
はい来たよ。
うんいいね。
元気そうじゃないか。
ん?これか?今日は…ここだな。
ん?「水くれ」。
ちょっと待ってろ。
よしよしよし…よし。
あ俺は自分でしゃべればいいのか。
相変わらずバカだね。
顔色いいぞ。
(せみの声)はい車通りま〜す!
(明子)「昨夜午前1時12分貞夫が息を引き取りました。
本人の希望で私どもだけで葬儀を済ますつもりでおります。
因藤様改めましてお礼を申し上げます。
中学時代転校して寂しかった時に友人になって頂いて同じように私のところまで連れてきて頂いた。
本当にうれしかったのだと思います。
貞夫は弱い人間でした。
『でも俺はすばらしい友人に恵まれた。
それだけで生きた甲斐があった』。
亡くなる前あなた様の事を筆談で私にそのように伝え喜んでおりました」。
福田。
あの旅はまるで夢のようだったな。
はあ…救われたのは俺の方だよ。
2014/07/14(月) 00:50〜01:50
NHK総合1・神戸
土曜ドラマ 55歳からのハローライフ(5)[終]「空を飛ぶ夢をもう一度」[解][字][再]
出版社をリストラされた因藤(イッセー尾形)は、自分がホームレスになるかもしれないという恐怖に囚われている。そこに中学時代の親友と名乗る男(火野正平)が現れる。
詳細情報
番組内容
出版社をリストラされた因藤茂雄(イッセー尾形)は、自分がホームレスになるかもしれないという恐怖と隣り合わせで生きている。工事現場の誘導員をしていたある日、中学時代の親友だった福田(火野正平)に声をかけられる。福田は現場近くの高級住宅街で暮らしているという。卒業以来忘れていた親友との記憶が少しずつよみがえる因藤。しかし、一か月後、虫の息の福田の関係者から山谷へ呼び出される。福田はホームレスだった。
出演者
【出演】イッセー尾形,梅沢昌代,美保純,ふせえり,松田悟志,山中崇,塙宣之,永嶋柊吾,小林薫,奈良岡朋子,火野正平
原作・脚本
【原作】村上龍,【脚本】大森寿美男
音楽
【音楽】清水靖晃
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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