ふるさと再生 日本の昔ばなし 2014.06.29

コケーッ!たら〜っと。
ふん!ガブ!ひえ〜っ!ケッコーコケッコー!昔むかしあるところに腹を空かせたイタチがいました。
危ないとこだったな。
誰じゃ?ヘヘヘ!お前…。
わぁ!ちょっと待った!おらなんか食ったって腹の足しにはなりゃしないよ!そりゃそうだ。
はぁ食っても食っても腹が減るのは困ったものじゃ。
食っても食ってもなくならない食いもんがあればいいと思わねえか?そんなものあるわけがない。
いんやおらはここでそれを作ろうとしてたんだ。
なんじゃと!?どうだい?ひとつ話にのるかい?
(お腹が鳴る音)のるということだな。
ネズミはこの原っぱを切り開いて粟の畑にしようと言いました。
粟の穂刈って粟もち作るんだ。
パラパラパラパラ。
ニョキ。
すくすく。
おお〜っ!粟もちにして蓄えておけば食いたいときに食える。
もうひもじい思いをしなくてもいいんだ!粟もち作るぞ!よいしょよいしょ!ほいほいほい!おらたちの畑できた!疲れた。
畑に種をまいてやがて芽が出た頃。
イタチがネズミの家を訪ねてきました。
(ノック)いつもうちの人がお世話になりましてオホホホ。
粟の芽が出てきた。
どうじゃ草とりに行かんか。
ああおら風邪をひいて寝てたところだ。
すまんが1人で行ってくれ。
わかった。
じきに穂が出る頃じゃ。
畑に畝を作ろうと思うんじゃが。
あいにくまだ調子が悪い。
すまんが1人で行ってくれ。
わかった。
ほう!せっせせっせ!ふぅ。
やがて粟が穂を出しました。
ある夜のことです。
チュウチュウチュウチュウ…。
ああ〜っ!ひどいことをするもんじゃ。
フクロウのじいさんつかぬことを聞くがゆうべ畑で怪しい者を見なかったじゃろうか。
ホホウゆうべは大きなミミズのようなものが動き回っておったのう。
ホウホウホウ。
う〜ん…。
お前に歯はないのう。
足跡…。
ピーヒョロロロピー。
おいトンビよ〜い!ゆうべ畑から粟を盗ってったヤツを見なかったかのう?なんだか灰色の毛玉が穂の間を行ったり来たりしていたよ。
ピーヒョロロロ。
スズメスズメ。
ゆうべこのあたりで粟盗っ人を見なかったかね?姿はよく見えなかったけどとても嬉しそうにチュウチュウ鳴いていたよ。
チュンチュン。
なに!?チュウチュウかチュンチュンかどっちなんじゃ?チュウチュウだチュン!大変だ!おらたちの粟の穂が全部盗まれた。
そりゃ困った。
いったいどこのどいつが…。
畑の鳥たちに聞いて盗っ人の目星はついとるんじゃ。
そそうか。
灰色の毛皮を着たミミズのようなヤツでチュウチュウチュンチュン鳴くらしい。
じゃがそんなヤツ見たことあるか?見たことも聞いたこともねえよ。
じゃあな。
はぁ〜せつない。
ねぇ粟もちもう1つおくれ。
おいしくてほっぺが落ちそうだよ。
シーッ黙ってろって!粟盗っ人はお前か。
堪忍ならねえ!こら待たんか!怒ったイタチは粟の穂をかじったネズミの歯を抜いてしまいました。
けれどもちょっとかわいそうになり2本だけ残してやりました。
父ちゃん!お弁当。
いつもうちの人がお世話になりまして。
オホホホッ!そのときからネズミの歯は2本になったそうな。
昔むかし新しい田畑を開拓しようと湖に臨んだ山すそに移り住んだ人たちがいました。
しかし山を切り開くのは大変で村人の暮らしは厳しいものでした。
若い村長はこの湖の水を流して田んぼを作るという夢を持っていました。
この岩を崩して下の谷へ水を流せたら村の暮らしもずっとよくなる。
村長の胸は高鳴りました。
若い村長にはちぎりを交わした美しい女がいました。
しかしある日岩山の一部が崩れ村長は岩に飲み込まれて死んでしまいました。
岩は村人たちの前に立ちふさがりました。
女は悲しみどこかへ姿を消しました。
その数か月後のある日鳥の巣にのせられた赤ん坊が運ばれてきました。
赤ん坊は運よく下の里のばあさまに拾い上げられたのです。
その赤ん坊の胸には緑色の鱗がありました。
この鱗のしるしはきっと竜神様のお子に違いない。
ばあさまはその子を連れて帰り小太郎と名づけて自分の子として育てました。
この子の成長がばあさまには生きる張り合いになったのです。
そして何年か経ちました。
あの湖が田んぼであったならもう少し収穫が増えて村の衆も田んぼを上り下りせんでも済むのになぁ。
小太郎も思いは同じでした。
優しいばあさまを楽にさせたいとわずかな田んぼを毎日耕しました。
けれど年老いたばあさまは足腰が弱っていたのです。
転んで足をくじいてしまうとすっかり動けなくなりそのまま床についてしまいました。
小太郎わしはもう生きられん。
わしの話をよく聞くんじゃ。
ばあさまは上の湖に本当の母がいると言いました。
おらにはおっかあなんていねえ!ばあさまがおらのおっかあだ。
しかしばあさまはかすかに微笑むと息をひきとりました。
ばあさま〜!!小太郎は弔いを済ませると本当の母親に会ってみたいと思うようになりました。
そして住み慣れた家をあとにして上流に向かいました。
上流へ行くほどに水かさが少なくなり小太郎は岩の下を流れる水音だけを頼りに進みました。
いつしか小太郎は峠の頂にたどりつきました。
ところが峠のこちら側でも山の斜面にしがみつくように棚田や家が並んでいました。
そのわずかな田んぼを耕し男も女もすっかり疲れきっているのは下の里とまったく同じでした。
その様子を見ると小太郎はばあさまの言ったことを思い出しました。
この湖が田んぼであればのう。
そうだ!この大きな湖を田んぼにしよう!そうなればばあさまの願いどおりに下の里の人たちも移り住める!《でもどうやって…》そこに現れたのは小太郎が心に描いた母の姿でした。
おっかあ!小太郎が夢中になって母の幻を追いましたが湖の深みにはまってしまいました。
母親はこの湖の主だったのです。
小太郎は湖を田んぼにしたいと母に訴えました。
でもこの湖がなくなったらおっかあの住む場所がなくなってしまう。
他の湖を探すことにしましょう。
さあ私におぶさりなさい。
母親が小太郎を背負うとその姿はだんだん竜に変わっていきました。
母竜は小太郎を乗せて空へ飛び立ちました。
おっかあ!そして湖をせき止めている岩めがけて突き進みました。
それは昔村長を生き埋めにした岩だったのです。
母竜が岩を弾き飛ばすと山が裂け湖の水が下の谷に流れ出ました。
おっかあやったぞ!水の流れるのを見届けた2人はいずこともなく姿を消しました。
その昔村長が願ったとおり大きな湖は豊かな平野に変わったのです。
そして湖のまわりの村は暮らし向きがよくなりました。
小太郎と母竜はこの山村を開拓していった人々の守り神となり末永く祀られたということです。
昔ある山里のう〜んと空の上のほうにいちだんと賑やかな雷雲がひとつポツンと浮かんでおった。
雷様の世界は男ばかりじゃ。
あ〜なんかおもしろいことねえかの?何にもありゃせん。
むさ苦しい男ばっかりおるだけじゃ。
おめえに言われたくねえの。
やっぱりのおなごがおらんとどうも殺風景でいけねえ。
なんかこうウキウキするような…。
パッと華やかなお色気というか…。
嫁というものがおったらの。
どんなにか楽しいもんかの。
下界の男どもはええの。
嫁がおって幸せそうじゃ。
あ〜おらも嫁さんほしいな。
そんなある日のこと若い雷の雷太が村の上空へ下りていった。
さあて今日はどこに雷を落としてやろうかの。
ふと見下ろすとひとりの娘が井戸のそばで一心に洗濯をしておる。
よ〜しまずはあの井戸のそばにドカーンとやってあの娘をびっくりさせてやろうかい。
あらいやだ。
洗濯も終わらぬうちに夕立がきそうじゃ。
さっさと片づけてしまうか!むむっ!なんともどっしりした尻じゃ。
二の腕はまるで大福餅のようにうまそうじゃ!雷太はひと目惚れしてしまった。
よ〜しこの娘をおらの嫁さんにしよう。
雷太はどうしても娘の顔を見たくなり全力で稲光を発して娘に浴びせかけた。
振り向いてくりょ〜娘!うるさ〜い!しつこいぞ雷!雨降らすならさっさと降らせ!おおおお〜!なんとめんこい娘じゃ。
雷太は足を踏み外して真っ逆さまに落っこった。
エヘヘヘヘ。
うわっお前は雷!そうじゃおら雷の雷太じゃ。
アンタ大福餅みてぇじゃからおらの嫁にならねえか?たらいの水をぶちまけられた雷太は深い井戸の底に真っ逆さま。
こら雷め。
いけしゃあしゃあと何をぬかすか。
お〜い何するんだ。
おらオメエを嫁にしてやるって言ってるんだ。
誰か雷の嫁になんかなるかい。
おへそ取られたらたまらんからな。
オメエのへそだけは取らねえ。
雲の上で暮らせば雨は降らんし…。
ああ〜なんだ!?うわぁ真っ暗闇だ!なんと娘はたらいでフタをしてその大きなお尻でドテッとのっかった。
頼むとにかくここから出しておらの話を聞いてくれ。
いつも人が洗濯してるときにゴロゴロドカドカやってきては雨は降らせるわ稲光を落とすわ。
こっちはいい加減腹が立っとるんじゃ!それがおらたちの仕事なんじゃしかたねえがや。
お〜い大変だ!雷太のヤツが下界に落っこちた。
えっ!?どえらい気の強い娘に嫁にならんかと言い寄ってな。
井戸の中に閉じ込められてしもうた。
なんてバカなことを。
井戸の中じゃ俺たちどうにもならん。
大嵐でも一発ぶちかましてやるか。
まあ待て。
とにかく様子を見に行こう。
あの井戸や!わかったよもう嫁のことは諦めた。
オメエのような鬼嫁なんかごめんじゃ。
だから早く出してけろ。
誰が鬼嫁じゃ許せん!え〜い!ああ〜!!お前は一生この井戸の中ださあどうする?娘さん堪忍や。
もう二度とここには雷は落とさん助けてくれや!二度と落とさんかへそも取るなよ。
よ〜し助けてあげようか。
うわぁ〜助かった!おらよっと!雷太大丈夫か?あらお仲間が心配して来てくれたのかい?アンタらもいいとこあるじゃないか。
でもここには二度と雷を落とすなよ。
ここは桑原というところだ。
アンタらも忘れるな。
ああわかった。
桑原には二度と落とさねえ。
ほれ心配しているお仲間のところへおかえり。
はいそれでは。
アンタにゃ面倒かけたの。
達者でな。
二度と来るなよ。
ああ金輪際近づかねえよ。
こうして雷たちは天に帰っていき二度と桑原には雷は来なくなったと。
そうして今でもどこかで雷が鳴り出すと人々はクワバラクワバラと唱えそうすると決して雷は落ちなかったそうな。
坊やおへそ隠して。
2014/06/29(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]

「いたちとねずみ」
「小太郎と竜」
「雷さんと娘」
の3本です。お楽しみに!!

詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
 柄本明
 松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
 作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
 編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
 歌:中川翔子
 コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】湯浅康生
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ

http://ani.tv/mukashibanashi

ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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