美の壺・選「緑茶」 2014.07.13

(テーマ音楽)うんやっぱりいいよねぇ新茶は。
はぁ…新茶か。
回想離さないでね。
ちょっとね淡い初恋を思い出しちゃった。
(ウグイスの鳴き声)初夏新茶の季節が訪れました。
日本で飲まれるお茶の多くは緑茶です。
摘み取った茶葉をすぐに蒸して発酵を止めるので美しい緑色が残ります。
お茶は奈良時代のころ中国から伝わったといいます。
江戸時代に現代のような緑茶が生まれ庶民にも広まりました。
美しいお茶を入れるにはコツがあります。
まず湯冷ましなどでお湯の温度を下げること。
そして茶葉を刺激しない。
急須は振ったりせず最小限の動きで湯のみまで運びます。
緑茶は日本茶とも呼ばれさまざまな種類があります。
新芽を摘んだ後の堅い葉などを使ったお茶。
湯冷ましせずにたっぷりと入れてガブガブ飲めます。
茶葉を火で煎り上げた香ばしいお茶。
さっぱりした味で食後などにぴったりです。
うまみと甘みが凝縮された緑茶の王様。
一滴一滴舌の上で転がすように楽しみます。
今日は緑茶の美を味わいます。
日本一のお茶どころ静岡。
全国の生産量のおよそ半分が静岡で作られています。
整えられたお茶の畝が連なっています。
随分長いですよね。
どれくらいあるのでしょうか。
畝は茶摘み機が通りやすいように寸分の狂いなく延びています。
平野部の茶畑には計算された機能美が備わっています。
例えば畝のかまぼこ型のカーブ。
日照時間が同じになるよう調整され新芽の長さがそろっています。
平野部の茶畑では長時間強い日がさし込み肉厚の葉が育ちます。
整然とした茶畑には健やかな新芽が輝いていました。
今日一つ目の壺は…一方こちらは静岡の山間部。
日照時間が短く寒暖の差が激しいため薄く繊細な茶葉が育ちます。
複雑な地形は独特の茶畑の風景をつくり出しています。
空中都市のような茶畑があると聞き案内してもらいました。
高さ70メートルの絶壁のような茶畑です。
上のほうはどうなっているのでしょうか。
通路はこの狭さ。
段と段の間を軽々と行き来します。
石垣の中に階段が組み込まれていました。
熱しやすく冷めやすい石垣によって寒暖の差が広がり新茶の味わいが増すといいます。
この茶畑には家族の歴史が詰まっています。
50年ほど前家族総出で全ての石を河原から運び上げました。
10年かけて完成させたのです。
天まで届くような茶畑。
天国の家族が今年も新茶の芽吹きを見守っています。
美しい茶畑を求めて更に山深い場所を訪ねました。
写真家の渡邊繁夫さん。
(シャッター音)20年間地元静岡で四季折々の茶畑の表情を撮り続けてきました。
ここには奇跡の風景があるといいます。
雨の翌朝日がさすと川沿いの山に深い朝もやがかかります。
(シャッター音)
(ウグイスの鳴き声)朝日朝もや新芽。
いくつもの偶然が重なった奇跡の風景です。
「朝もやの里の新茶は格別うまい」と昔から言われます。
程よい湿気が薄く繊細な茶葉を守るのです。
人の情熱に自然の奇跡が応え美しい茶が生まれます。
おいしいね正雄くん。
当たり前だろ。
新茶だからな。
ちょっとこれ持ってみて。
何だよもう。
離さないでね。
え…?お…おう。
うん?あっ!新茶を飲むとお茶の葉が未来を見せてくれるんだって。
ずるいや…。
ハハッ…ずるいや…ハハッ。
朝4時半。
静岡じゅうから集まってきた茶葉の取り引きが始まります。
目利きの茶問屋たちがよりよい茶葉を求めて交渉を重ねます。
一口に茶葉といっても千差万別です。
一体いい茶葉とは?ふだん何気なく見ている茶葉にはさまざまな美が詰まっています。
今日二つ目の壺は…緑茶の王様といわれる玉露。
茶葉の特徴は深い緑色の艶です。
その艶はどのようにして生まれるのでしょうか。
玉露作り60年の前島東平さん。
毎年ひと冬かけてわらでむしろを編みます。
摘み取りの半月前玉露の茶畑はむしろで覆われます。
さし込むのはわずかな光だけ。
茶葉は必死に光合成を行おうとするため葉緑素が増えます。
その結果深い緑色の茶葉が生まれるのです。
一枚一枚新芽に話しかけるように摘み取ります。
玉露にはお茶の達人だけが知っている楽しみ方があります。
お茶を飲んだ後急須の中の茶葉を…。
頂くのです。
飲んでも食べてもよし。
めでてもよし。
手塩にかけた玉露です。
美しい茶葉を作るにはもう一つ「手もみ」という伝統の技があります。
かつてこの地で作られた手もみ茶がお茶の歴史を伝える書物にこう記されています。
「形状針の如く」「蜘蛛の足に似て」「頗ぶる優美の観あり」。
平柳利博さん。
いったん途絶えたその手もみ茶の復活に取り組んでいます。
できるだけ長い茶葉を作るため茶葉は通常より長めに摘みます。
そして焙炉という手もみ用の乾燥台を用意。
さあここで名人たちの出番です。
茶葉を蒸した後ゆっくりと水分を飛ばします。
3時間後水けがなくなりました。
ここからが手もみの神髄「揉み切り」です。
揉み切りとは両手で茶葉をもんで細く丸めること。
一見単純な作業のようですが…。
人さし指と小指の巧みな動きで茶葉をはじき飛ばし団子状になるのを防ぎます。
針のように長く細く丸い茶葉。
長さは軒並み6センチを超えています。
先人たちはその茶葉を積み上げて自らの技を自慢し合ったそうです。
高さ20センチにもなる茶葉の山。
普通の茶葉ではこうはいきません。
日本一を目指す。
1本の茶葉には名人たちの心意気が詰まっています。
急に手紙なんてどうしたんだろうあいつ。
あれ?「正雄君。
私お嫁に行くことになりました」。
え…?「親が決めた相手です。
今まで言えなくてごめんなさい」。
ウソだろ…ウソだと言ってくれ。
ウソだろ!「さようなら」。
(すすり泣き)おととし不思議なティーバッグが発売されました。
あ茶柱!これが必ず立つのです。
昔から縁起がいいとされてきた茶柱。
でもめったに立ちませんよね。
このティーバッグを開発したのは静岡の茶問屋です。
ほうじ茶は茶葉を火で煎り上げたお茶です。
茎の部分がたくさん用いられています煎り上がった茎はポップコーンのように空気を含んで膨らみます。
実はこのティーバッグには特別な茎が貼り付けられています。
茎の一部が焙じられているため膨らみお湯の中に入れると浮きのように立つのです。
一杯のお茶には気持ちを沸き立たせる遊び心が込められています。
今日三つ目の壺は…
(ノック)・どうぞ。
あいらっしゃい。
どうもご苦労さんです。
こちらですよ。
どうですかこれ?村松正嗣さんは湯のみの収集家。
20年間で4,000個もの湯のみを集めました。
特にお茶がおいしく見える湯のみを選んでもらいました。
共通点お分かりですか?答えはここ。
やっぱりね。
湯のみは内側が大事なんです。
こんな楽しみ方も。
険しい岩山の絵に…お茶を入れると…湖が現れました。
山水画の風景をめでながら頂く一服です。
こちらは独特の肌合いが人気の萩焼。
表面には貫入という細かいヒビが入っています。
使い込むことでそこに茶渋が入り込みわびた風情が楽しめます。
お茶の中に咲く野の花もまた格別です。
(風鈴の音)最後に夏らしい緑茶の楽しみ方を一つ。
作り方はとても簡単。
玉露の上に氷を置くだけです。
氷から解け出た水がお茶になります。
お茶は低温で出すほどうまみが出ます。
氷茶はその究極の形なのです。
待つ間にも楽しみが。
氷越しにめでる茶葉です。
夏の日ざしを浴びる氷。
その中で茶葉は再び芽吹いているかのようです。
いや〜おいしいですね。
蒸し暑い日本の夏。
涼やかな一服はいかがですか?確かに失恋のショックでこの辺りに埋めたんだけどな。
あった〜!50年ぶりだ。
ああよかった。
廃炉作業が続く東京電力…2014/07/13(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「緑茶」[字]

身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「緑茶」。案内役:草刈正雄

詳細情報
番組内容
日本茶と呼ばれ日本人に身近な「緑茶」の美を堪能する。▽まずは茶畑。平野に幾何学的に拡がる茶畑も美しいが、深山幽谷には茶畑の秘境があるという。その絶景とは?▽次は茶葉。緑色の艶で魅了する玉露に加えて、明治期に作られた幻の手もみ茶葉がある。奇跡的な手もみ秘技とは?▽そして喫茶。暑い夏に緑茶をいただく、緑茶の通(つう)ならではの玉露の入れ方とは?▽たかが緑茶、されど緑茶。深い緑茶の世界を味わってください
出演者
【出演】草刈正雄,安藤未理,【語り】礒野佑子

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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