猫のしっぽ カエルの手「夏を楽しむ」 2014.07.13

長く続いた雨がやんだ京都・大原に待ちわびた太陽の光が降り注ぐ。
山里の緑は日ごとに濃さを増し何もかもが変わり始める季節。
爽やかな梅雨晴れの日ざしに照らされた築100年の古民家。
ベニシアさん夏のガーデニングプランを確認中。
シェードガーデンの裏庭には早咲き品種のヒマワリを置いてアクセントにした。
(ベニシア)今年の庭は最初寒かったからどうかなと思ったけどいっぺんにいろんな花が咲いたからきれいっていう感じよね。
気温が低かった今年の春。
庭のハーブや花たちの成長を心配していた。
けれども今庭は元気いっぱい。
日々新しい花が咲きハーブが香る。
ベニシアさんこうしたガーデニングの様子を丹念に記録し続けている。
これはガーデニング日記。
イギリスではこういう出来合いのガーデニング・ノートブックがあるのね。
いろいろアドバイス…毎月何をしたらいいとか書いてあるのね。
あと自分で覚えたものも書ける。
やっぱりガーデニングはタイミングがすごく大事ですから季節を感じながらいろんな仕事があるのね。
でもこの日記はイギリスの天気ですから自分で日本の天気のために作ったんです。
今6月ですからそのページを見てコンパニオン・プランティング覚えたいと思ってるから。
例えばマリーゴールドとかミントとかナスタチウム。
そういうハーブがあればアブラムシが来ない。
今年野菜ガーデンを作ってるからとにかく野菜を守らないといけないからそれで近くにハーブ植えてますね。
ベニシアさん今年は畑作りに力を入れている。
昔ながらの野菜作りの知恵コンパニオン・プランティング。
相性のいい植物を隣同士に植えてお互いの成長を促すという。
やってみたらハーブや野菜がぐんぐん成長している。
これミントですけど花もあるのね。
気を付けないと花は残して。
ミントは大体1年で3回収穫できる。
ハーブ初めての人にアドバイスは一番最初はミント。
一番作りやすいし使いやすいし。
特にスペアミントは雨が降っても大丈夫。
平気です。
ハーブと野菜何か友達よね。
不思議よね。
昔からの知恵ですけど植物のいいコンビネーション考えたら虫が来ないっていう事ができるのね。
例えばトマトとバジル。
バジルはトマトにつく害虫を防ぎ甘みを増すという。
バジル自身も大きく育った。
ニンニクと一緒に植えるのはパセリとカモミール。
お互いに害虫や病原菌を防ぐ効果が期待できる。
今はここでニンニクとパセリを作ってるんだけどパセリは虫来ないふうになってます。
だからパセリは…ニンニクあまり見えないけど守ってくれてるのね。
パセリすごく大きくてカモミールも結構元気でカモミールとタマネギが仲がいい。
タマネギとニンニクも同じ家族ですからねだから助けてあげると思って植えたの。
結構元気よね。
ちょっと引っ張ってみます。
どうかな?大きいかどうか分からないよね。
わっちっちゃいかも。
ああでもこのぐらいで…。
初めてですから。
う〜んすごく匂いがいい。
満足ですよ。
パセリとカモミールのおかげでニンニクを初収穫。
取れたてのニンニクを使ってホタテのクリームスープを作る。
ホタテ貝の料理を作りたいと思ってます。
多分22歳か23歳の時私の義理のお母さんに会いに行ってその時教えてくれた料理で。
私が4歳の時お母さんとお父さん別れたのね。
それでお父さんは別のすごいきれいな人と結婚したの。
ロシアの人。
その人と結構いろんな料理食べましたね。
特に魚が多い。
これを作る時彼女を思い出します。
父の再婚相手とは料理を教えてもらう事で仲良くなった。
それ温めている間にホタテ貝を4つ切りに…。
これはスープというかソースとか。
だからそのまま食べてもいいしガーリックパンとか何かと食べていいしあと御飯でもおいしいんですよ。
御飯と一緒に。
ワインと水を沸騰させホタテを入れて弱火で煮込む。
火を入れ過ぎないのがポイント。
半生でちょっと出しますね。
いいダシが出来た。
小麦粉とバター生クリームでとろみをつける。
フレッシュなニンニクは香りも格別。
今年は初めてニンニク作ったからちょっと小さいけどでも自分が作ったから愛情があるね。
ファミリーみんなニンニクが好きですから。
ホタテ貝戻します。
ホタテを戻して仕上げに好みのハーブを加えたら完成。
うんバッチリ。
おいしい。
え〜これおいしい。
はい出来ました。
自家製ニンニクを使ったホタテのスープ。
食欲をそそる匂いが部屋中に広がる。
ベニシアさん今日はお楽しみの日。
今日は手づくり市。
15日ですから。
アームカバー探しに行きます。
長いやつ。
だんだん何て言うかな畑仕事とか庭仕事するから結構大切と思う。
夏のガーデニングに欠かせないアームカバーを手づくり市で探す。
寺社仏閣の多い京都では数多くの門前市が開かれている。
中でもベニシアさんのお気に入りは月に一度開かれる知恩寺の手づくり市。
450もの出店があるこの市は26年続いている。
久しぶり。
この市の顔友人マルティナさんが作る手編みニットのお店。
(マルティナ)一生懸命作ってますよ。
彼女の鮮やかなニットを見るとつい新しいものが欲しくなってしまう。
(マルティナ)何か元気な色…黄色を選んで。
コットンもありますよ。
コットンもある?サラッと肌触りのよいコットンのニット。
はい。
はいありがとうございます。
こんな忙しくなって。
でも体壊さないで。
そうね。
ベニシアさん植物を売っている店があると必ずのぞいてしまう。
これ何ですか?それはカプトメデューサっていってエアープランツですね。
へえ〜。
土も鉢もなしで育っていく。
へえ〜。
それ自然の所につけるんですか?自然の所で1週間に1度ぐらいこういう霧吹きで水をやるとこういうふうに。
空気中の栄養分だとか水を吸って成長するんでエアープランツっていわれてるんですね。
どこで見つけるんですか?これはねコロンビアとか南米中南米メキシコとか。
こういうアレンジメントして頂くと面白いですよ。
それかわいいね。
じゃあこれ下さい。
ありがとうございます。
エアープランツ。
初めて見る南米の植物。
思わず衝動買い。
新しい発見。
なじみの顔。
何もかもが楽しい手づくり市。
おはようございます。
あっおはようございます。
ベニシアさんやっと目的の店にたどりついた。
ろうけつ染め作家野さんのお店。
(野)これねちょっと入れてみて下さい。
菜園しはる時に。
これだとここがちょっとつかんでも滑らないしケガを防げますのでね。
一遍試してみて下さい。
特に夏の間の草を取る時ほとんど毎日使ってるのね。
デザインがおしゃれっていうか花が多いのね。
(野)草花が私も同じで好きで。
ほとんど草花が多いんです。
夏になるとベニシアさんが必ずつけている手染めのアームカバー。
強い日ざしから肌を守るためのもの。
野さんが作るものがお気に入り。
一度行ってみたいね。
どこで作ってるんですか?天神さんの近くで。
あっホント。
見に行ってもいいですか?大丈夫です。
狭い所ですけどね。
どうやって作ってるか一度できたら見たいな。
「天神さん」の愛称で知られる北野天満宮の近くにある野さんの工房を訪ねた。
こんにちは。
お邪魔します。
ここ何かいろいろ作ってますね。
これは今まででなかなか上手に描けたボタンの…。
唐草にちょっとボタンでね。
これ昔から日本…。
昔からのろうけつ染め。
最初は西陣で働いてたんですか?そうです。
西陣の帯の柄を作る仕事をしてたんですけどね。
愛媛県の高校を卒業後長年西陣織の職人として働いてきた野さん。
これからは好きな事をやろうと15年前から始めたのがろうけつ染め。
自ら門前市に出店するようになり7年ほど前ベニシアさんとも出会った。
ほしたら紙を入れてねこっちに写らんようにろうが染みていくしね。
もうこれから暑くなるから。
そうです。
これがものすごく活躍するね。
普通のろうを使ってるんですか?これパラフィンいうてね染めろう専門の。
私専用の筆を作ったんです。
これ手作り?手作りでね。
ほとんどの人がろうけつは筆でやってるんです。
私はちょっと違う事をやりたいいうのでね。
でも自分の考えてるとおりにろうが落ちてくるまでにこの筆6本か7本ぐらい作ってこの2本だけがうまい事自分の思うとおり動くんです。
溶かしたろうで絵を描く。
染めると白く絵柄が浮き上がるろうけつ染め。
野さんは独学で身につけた。
使うのは筆の代わりに銅版を曲げて作った手製の道具。
ペン先に工夫を凝らしている。
こうくんでポトポト落ちる程度に。
ここでちょっと操作できるようにしたんです。
これ自分で考えたんですか?考えたんです。
これを下までしたらほとんど落ちないと思う。
ポチポチしか落ちないです。
上に上げると穴がちょっと…ここの下がポトポト落ちますやろ?この落ち具合で描くんです。
ちょうど落ちてるのを確認してからね。
ああ〜なるほど。
いろんな人の手作り見たら全然想像しなかった事…やっぱり実際見ないと分からないもんね。
ここ完全に裏まで防染してるさかいね。
印刷でしたら上だけですがろうけつは完全に裏まで行ってるから長い事たっても絶対にこの柄が崩れたりしないんです。
何か不思議な感じする。
初めて見てるから。
この葉っぱのこの辺の…。
葉っぱの先や花びらの重なりなど自在にろうを操って細かい部分まで表現する。
この外だけしっかりしといたらこの2回塗ったところはね真っ白に残るんです。
そこに地色が入れへんから。
どうしても真っ白にしたいなというところだけ2回塗っとくんです。
でも花描いたら気分いいよね。
そうです。
私もともと絵が好きやしね。
こうして長い事1日6時間か7時間ぐらい座って描いてるんですけどね何にもしんどうならへんのです。
好きな事してるさかいね。
野さんがろうで描く花。
染め上がると葉っぱの陰影や奥行き葉脈までもが浮き上がった。
今年70歳を迎えた野さん。
作品を出せる門前市を心待ちにしている。
面白い。
使ってますよ。
毎日使ってます。
洗って。
朝から夕方まで立ちっぱなし。
でもお客さんと直接触れ合える手づくり市が何よりも楽しいと言う。
面白い。
ついつい引かれる。
ありがとうございます。
また寄ってね。
ありがとう。
皆さんホンマにねみんな好き。
お客さん大好きです私。
お客さんもそうやし私の事好きや言うてくれはります。
大好きなろうけつ染めを日常の中で使ってもらえる喜び。
野さん今が一番ハッピーだ。
ベニシアさんもろうけつ染めを体験。
まずはドクダミをスケッチ。
ドクダミの花をベニシアさんにスケッチしてもらってそれに私がアレンジを入れてろうけつで描かせてもらいます。
感じが出てきました。
何か汗出てる。
なんとか描き上がったドクダミのデザイン。
いよいよろう描きに挑戦する。
しばらくこうしてグ〜ッとつけてねグジュグジュッとして。
ここは失敗できない緊張の瞬間。
そうですそうです。
色のせできてます。
この辺の節のとこまで行って。
そうそう。
もうちょっと軸大きくしてもいいですよ。
そうそう。
いいです。
絵を描くのが好きなベニシアさんもろうを使うのは初めて。
ついつい無口になってしまう。
はい出来ましたね。
大体軸がね。
大丈夫?よかった。
こういうふうに凸凹ってなってる方がホンマの木らしいもんね。
優しい野さんに仕上げはバトンタッチ。
手作りのものに引かれてしまう理由。
こうしてその工程を目にすると納得すると言うベニシアさん。
何かエレガントな感じよね。
ああ〜。
この間にちょっとずつまた入れていって葉脈の感じを…。
ベニシアさんのデザインに野さんのろう描き。
2人の力を合わせたアームカバー。
あとは好きな色に染める。
ちょっと混ぜまして…。
イエローグリーン。
イエローグリーン。
さっき描いたドクダミ。
はい。
こうして入れて…。
ふ〜ん不思議。
「これでイエローグリーンになるのかな?」とちょっと心配。
よ〜くゆすいで…でこの絞りに。
きれいな黄緑になった。
すごくグリーンになった。
これすごい。
いいグリーンになりましたね。
ピッタシ。
ちょうどいいよね。
私の想像した色。
そうでしたか。
よかった。
最後に洗剤を入れた熱湯でろうと余分な色を落とす。
これ入れたらろうが落ちてここが真っ白になります。
ウソ?見といて下さいね。
入れたらちょっとしばらく…。
ああいい。
面白いでしょ?何かマジックみたい。
なかなかうまい事いきました。
わあきれい!明るいグリーンやね。
これもうちょっと薄うなりますのでね。
ちょうどドクダミの葉っぱのところと似てる感じですね。
すごい。
手のこっち側ねそうそう。
これ山行く時でも使うからね。
そうですか。
紫外線がきついので。
ああ。
うれしい。
すごく。
染め上がった鮮やかなグリーンのアームカバー。
大切にしたいものが1つ増えた。
夏の間テラスに涼しい陰を作る緑のカーテン。
でもホップが伸び過ぎてほかの植物に絡まってしまった。
この辺ホップスが元気で。
ちょっと暗くなってる所切ろうと思っています。
昔ここのホップスが2階まで伸びたんだけど屋根を直してから何か知らんけど下の方が好きになったみたいね。
だから下の植物がちょっとケンカしてるのね。
あっ自由になりました。
小さい庭ですからいろんな植物が一緒に住んでるからみんなのスペースを作らないといけないから。
すごいね。
ホップスは元気。
今年の夏は暑くなりそう。
それもまた楽しみ。
2014/07/13(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「夏を楽しむ」[字]

待ちわびた陽(ひ)の光が降り注ぐ京都大原。かわいいニンニクを初収穫。ニンニクで手料理を作る。ろうけつ染め作家