土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ・残酷な視界」 2014.06.28

(大泉武男)はぁはぁはぁ…。
うぅ…!はぁはぁ…うぅ…!はぁはぁ…。
(岡崎由美)ねえ何やってんのよ?寒いじゃない!窓閉めてよ!
(志賀邦枝)いいじゃない少しぐらい。
ここに来るのは今日で最後なんだし。
あなたにももう会うつもりはないから。
まだ怒ってるんだあんな事。
あんな事?あんたって人はいつだってそう!私は意地悪な加害者であなたはかわいそうな被害者。
でも結局は何もかも全部あなたの行動力のなさのせいじゃないの?いつもどうしようどうしようばっかりで優柔不断でグズグズしててだからあんな事になったんじゃないの?違う?まあせいぜい三度目はないようにする事だわね。
四度目よ。
え?四度目だけは絶対にさせない。
絶対に。

(牛尾正直)
人は皆幸せになりたいと願っています
お金さえあれば幸せだと思う者
愛する人さえいてくれたら幸せだと思う者
仕事と住む家があれば幸せだと思う者
そしてその全てが揃わなければ幸せだとは思えない者
人様々です
犯罪はいつもその人々の心の隙間に忍び込みます
盗みも傷害もそして殺人も…

(パトカーのサイレン)
(大上刑事)岡崎由美37歳。
株式会社ロムス通信販売の会社だそうですがそこのコールセンター室長。
死因はご覧のとおりで恐らく絞殺。
凶器に使われたのはスカーフ状のやわらかい布だそうですがまだ見つかっていません。
死亡推定時刻は昨日5月10日の夜10時頃から12時頃までの間。
(カメラのシャッター音)
(海野)あった!すいませんちょっとよろしいですか?爪ですか?ええ。
どちらかの爪だと思うんですが…。
(海野)中指の爪ですね。
首に巻かれた凶器の布を必死の思いで取ろうとしてそれで自分の首を引っかいてしまったんです。
その際に折れてしまったと。
そんな感じですね。
薬指の爪のほうはまだ見つかりませんか?小さいものですからなかなかね…。
時計もネックレスもブレスレットもフランスのブランド品でかなり高額なものだそうです。
バッグ財布はイタリア製のブランド品で財布の中身の現金3万8000円それにカード類携帯もそのままですから物盗りの線はないですね。
(山路刑事)モーさん。
ガイシャは独身で杉並区内のマンションで一人暮らし。
実家は山梨県の塩山で兄さんと連絡がとれた。
すぐにこっちに来るそうだ。
(岡崎達雄)物事をはっきり言うといいますか…。
勝ち気で自己中心的なところもあったものですから。
人と衝突する事も多くて…。
職場も転々として5年前に今の会社に就職したんです。
今の会社に入ってからは周りの方たちのサポートもあったんだと思います。
去年の10月には室長になった。
50人も部下が出来たってそりゃあもう大喜びで。
12月にはマンションも買って…。
ついこの前帰ってきた時は今年中にはいよいよゴールインよって…。
結婚する予定だったんですか?妹さんは…。
(岡崎)そう言ってました。
相手の方のお名前教えて頂けますか?それがわからないんです。
わからない?はっきり決まったら連れてきて正式に紹介するからって。
名前は教えてくれなかったんです。
そうですか…。
あんなに嬉しそうだったのに…。
あんなに幸せそうだったのに…。
なのに…。
なんでこんな事に…。
2月に銀行を変えてますね。
富士見銀行から大日銀行に。
金には細かかったみたいですね。
大きな出費はマンションのローンだけで結構貯めてます貯金。
こっちにもないか…。
さっきから何探してるんですか?牛尾さん。
うん?婚約者との写真だ。
そういえばありませんねツーショットの写真。
結婚する予定だったら普通その相手との写真なんか飾ったりするもんじゃないのかな?なのにそういう写真は1枚もない。
さっき渡ってきた橋…あの橋水車橋って言ってたな。
(大上)そうですけど。
1月だか2月だかに転落死があった橋じゃなかったかな?杉並中央署が事故と事件の両面で捜査してるって聞いたけど。
さあよその事件は僕には全く…。
牛尾さん2月なんですがなんですかね?この数字。
他にはほとんど何も書かれてないんですこのカレンダー。
事件当日も何も。
なんだろう…。
(林浩子)すみません!刑事さんちょっと…。
何か?こちら303号室の浜田さんとおっしゃるんですが岡崎さんの事をお話ししたらちょっと気になる事をおっしゃったものですから。
どういう事でしょうか?
(浜田圭子)あの…木曜日でしたから3日前になるんですけど夜の9時ちょっと過ぎに…。
(ノック)
(女性)岡崎さん…岡崎さん!
(女性)お願いだから聞いて。
あの人にもう近づかないで!
(女性)あの人はあなたを愛してなんかない!
(ノック)
(女性)岡崎さん!
(女性)岡崎さん!
(由美)いい加減にしてよもう。
(由美)警察呼ぶわよ!いかにもって感じしませんか?その言葉。
不倫してたんじゃないですかね?ガイシャ。
だから結婚するつもりだとは言ってもはっきり名前を言えなかったしツーショットの写真もなかった。
で乗り込んで来たのが相手の奥さんで…。
「あの人にはもう近づかないで」。
「あの人はあなたを愛してなんかいない」か…。
それで決まりなんじゃないですか?三角関係のもつれ。
けど不倫でも写真の1枚ぐらいあってもいいんじゃないのか?
(海野)現場に残されていたガイシャの中指の爪には引っかいた際に落剥した本人の皮膚片それとガイシャ本人の血液が少量付着していただけで犯人と繋がるものは結局何も見つかりませんでした。
それともう1つのガイシャの薬指の爪のほうですけれども結局これもまだ見つかっておりません。
(坂本課長)まあいずれにしても遺体の状況等から見て犯人は顔見知り。
それもかなり親しい関係にあった人物の犯行とみて間違いない。
つまり犯人はガイシャの日常生活の中に潜んでいるという事だ。
現場付近の聞き込みと共に人間関係ガイシャの携帯電話に登録されていた128人の友人知人を徹底的に洗い絞り出してくれ。
三段跳び?
(笠井優子)去年の10月に前の室長が辞める事になって岡崎さんが新室長になったんですけどその人事がまるで三段跳びみたいだったんです。
どういう事ですか?うちは室長の下に初見さんと志賀さんという2人の副室長がいたんです。
(島本渚)私たちはもちろんなんですけど初見さんだって志賀さんだって当然どちらかが室長になるはずだと思ってたんですよね。
それが蓋を開けたら見事な三段跳び。
その人事を巡ってトラブルが起きた。
そういう事ですか?初見さんがすごく怒って岡崎さんの室長昇進は納得がいかないって本社の人事部に乗り込んでいったり。
(山口玲子)岡崎さんの自宅まで押しかけていって警察沙汰になったり。
でも結局10月いっぱいで辞めちゃいましたけどね初見さん。
もう1人の方志賀さんですか?その方は今…。
志賀さんも去年の12月いっぱいで結局…。
辞めたというよりいびり出されたって感じでした。
(大上)いびり出された?志賀さんは岡崎さんとは年が同じだったから岡崎さんとは割と仲良くしてたんです。
岡崎さんは入社当時からミスやトラブルが多かったんですけど志賀さんがいつもかばってあげてたんです。
なのに室長になった途端トラブルを何もかも全部志賀さんのせいにして人前でののしって侮辱して…。
目障りだったんだと思います志賀さんの存在が。
志賀さんがいる限り室長としての権威が守れないそう思ったんじゃないかと思います。
その2人…初見さんと志賀さんですか今どちらにいらっしゃるか教えて頂けませんか?初見芳子さんですね?
(初見芳子)そうだけど…。
新宿西署の牛尾と申します。
大上です。
初見さんは岡崎由美さんを…。
(芳子)何人目?はい?警察は恨んでる人や憎んでる人のリスト作るんでしょ?犯人候補の。
何人目?私は。
(大上)恨んでらっしゃったんですか?岡崎さんを。
人を傷つける天才だったもんあの女は。
高飛車で偉そうで私が私がって人を押しのけてしゃしゃり出て自分だけが正しいと思ってて人をけなして見下して…。
ごまんといるんじゃない?犯人候補は。
でもこんな事になるんだったら我慢して会社辞めなけりゃよかった。
そうしてたら今頃は私か志賀さんが…。
次期室長は志賀さんだわね。
我慢してよかったわけだ志賀さん。
いや…。
実は志賀さんも去年の12月いっぱいでお辞めになったそうなんです。
えっ!?本当?嫌だ…なんで連絡くれなかったのかしら。
でもそりゃあそうよね。
二度もあんな目に遭わされちゃあ。
二度?え?ああ…。
仕事のミスよ。
あの女は自分のミスをしょっちゅう志賀さんのせいにしてたから。
(芳子)そっか…。
志賀さんも辞めたのか会社…。
(石川マキ)邦枝さん!はい。
お教室終わったらあとお願い。
私3時に歯医者なの。
わかりました。
失礼ですが…。
志賀邦枝さんですね?辞めようかどうしようか随分迷いました。
でもあれ以上会社にいてもつらいだけだと思い思い切って…。
今ここでフラワーデザインを教えてるんです。
会社にいた時にいつか役に立つかもしれないと思い資格を取ってたんです。
生徒さんはたったの5人でメーンの仕事は下のお店の店員なんですけど毎日が忙しくて楽しくて…。
会社を辞めた時は岡崎さんの事とても恨みました。
でも今は…。
ひどい扱いを受けて会社をいびり出されたけど今はむしろ岡崎さんに感謝してる。
そういう事ですか?はい。
志賀さんは岡崎さんとは割と仲良くされてたそうですね。
ええまあ…。
岡崎さんは身内の方に今年中には結婚する予定だと話されたそうなんですが志賀さんはお相手の方ご存じじゃありませんか?いえ私は…。
私たちはそういう話はほとんどしませんでしたから。
写真もない…。
名前もわからない…。
誰も知らない…。
不倫なのかな?やっぱり…。
(牛尾澄枝)はい。
ああ…。
ねえ今日は5月14日よね?ああ…。
だとすると明日は15日。
あさっては16日。
5月16日。
ああ…そうだな。
何してんだ?それ。
ん?あこれ?今ね爪にベースコート塗ったの。
ベースコート?うん。
爪を保護するマニキュア。
家事やってるとね爪が折れたり割れたりするのよ。
そうするとストッキングはく時に引っかかったり洋服とか髪に絡みついたりしてちょっとやっかいなの。
でもねこれ塗っとくとまあまあそういう事防げるから。
ふーん…。
そういえばあの爪どうなったんだろうな?うん?いやなんでもない。
澄枝今日14日か?うん。
そうだけど…。
忘れるとこだった…。
あさって16日の朝黒のネクタイ用意しといてくれ。
午後は葬儀だ。
うん…はい。
(読経)
(読経)あれ?あの人…。
(読経)根岸さん…根岸さんだったわよね?
(読経)すいません。
はい。
初見芳子さんの前に記帳された方今…初見さんと話してらっしゃるあの男性ですがお名前を教えて頂けませんか?初見さんの前?根岸さんとおっしゃる方ですね。
根岸正人さん。
(読経)
(読経)
(岡崎)通夜と葬儀に来てくださった方々の名簿です。
お忙しいのに申し訳ありません。
助かります。
結局来てはくれなかったみたいです。
妹の運命の人は…。
運命の人?結婚するつもりだった人の事を「運命の人」だってそう言ってたんです。
妹…。
(由美の声)会った瞬間にわかったの。
この人こそ私の運命の人なんだって。
結局姿現さずか婚約者は。
もしかしたらと期待はしてたんですが…。
やっぱり不倫だったんじゃないですかね?通夜にも葬儀にも姿を見せなかったのは死んでくれてこれで結婚を迫られずに済むと思ってホッと胸をなで下ろしているかあるいは…。
殺してしまったから…。
うん。
(西谷刑事)ガイシャの住所録に登録されていて葬儀に出席しなかった人物のリストです。
結構多いな…。
(大上)この中にいる可能性が高いですよね?不倫相手。
逆の人物いたか?住所録には登録されてないのに葬儀に出席した人物。
2人いました。
1人は初見芳子でもう1人は根岸正人という男です。
根岸正人?どういう男なんだ?その男。
いえ…わかりません。
ですが初見芳子と面識があるようでしたので恐らく会社関係の人物だと思います。
明日にでも素性を調べておきます。
今日16日ですか?
(澄枝の声)明日は15日であさっては16日。
5月16日。
5月10…。
(邦枝)お幸せですね奥様。
誕生日にご主人から花束のプレゼントだなんて。
毎年やってらっしゃるんですか?とんでもない。
去年も一昨年もその前の年も全く忘れてて。
そうなるとえらく機嫌の悪い日が1週間ほど続くんです。
それでようやくです。
あーっと思って…。
お喜びになると思いますよ。
お花をもらって嬉しくない女性はいないと思いますから。
奥様の好きな花がわかればよかったんですけど…。
はあ…。
そういえば岡崎さんはユリの花がお好きだったみたいですね。
今日岡崎さんの葬儀だったんです。
たくさんのユリの花に囲まれてましたから。
そうですか…。
志賀さんは根岸正人という人ご存じありませんか?いえ…。
初見さんと話してましたから会社関係の方かと思ってたんですが…。
あの…。
こんな感じでいかがですか?はい。
初めて…。
初めて!あなたにお花をもらうなんて。
そんな事はないだろう。
一度や二度は…。
ねえ昔まだ新婚だった頃私とあなたで公園散歩した時の事覚えてる?サクラやレンギョウモクレンとかタンポポヤマブキとかユキヤナギとかが一斉に咲いててそりゃあきれいだったのよ!あんまりきれいだったからさ私もついあなたに言っちゃったのあのユキヤナギちょっともらえないかしらって。
そしたらあなたそんな事したら器物破損!刑法なんとか条公園法なんとか条になるってものすごく怖い顔して。
そんな事あったかな?あったわよ。
でもこれ高かったんじゃないの?この白いアジサイハーモニーっていうんだけど1本1000円はするわね。
それにこのライラックこれも1000円はするんじゃないかな。
そんなにするのか?その花。
するわよ。
結構高いのよお花って。
じゃあ随分サービスしてくれたんだ彼女。
彼女?風呂入る。
彼女って…まあ許すか。
こんなきれいな花束作ってくれた人ですもんね。
(牛尾の声)志賀さんは根岸正人という人ご存じありませんか?
翌朝私たちは朝一番で根岸正人に会いに行きました
被害者との関係が気になっていました
(根岸正人)付き合ってたんです1年前から。
結婚するつもりだったんです。
でも…。
(根岸)見直したい?私今結婚って事考えたくないの。
室長にも抜擢されたし本格的に仕事に取り組みたいの。
でも結婚したって仕事は出来るだろう?みんなやってる事じゃないか。
無理よ!私には絶対無理。
何度話し合っても私たちの関係を見直したいの一点張りで。
岡崎さんとそういう話が出たのはいつだったんですか?根岸に別れを切り出したのが3月初め。
実家の兄さんたちに結婚宣言したのも同じ3月初め。
新しい男が現れたから根岸に別れを切り出した。
そういう事ですよね?だろうな。
だとすると根岸にも動機はありって事になりますよね?他の男に走った恨みつらみそれにガイシャに対する未練。
初見芳子志賀邦枝同様一人暮らしでアリバイはないっていうし。
またもや容疑者が1人増えたって事だ。
あっそうだ。
この前牛尾さんが言ってた水車橋から転落した男の事ですがあれ事故だったそうです。
事故で処理済みです。
(大上)亡くなったのは大日銀行本店勤務大泉武男という男で…。
大日銀行?ええ。
そうですけど…。
なんでこんなおかしな事したんだろう?えっ?前の銀行はすぐそこの駅前にあって通勤の際にも立ち寄れて便利だ。
でも今度の銀行の小金井支店はここからも遠いしコールセンターとも真逆の方向だ。
なんでこんな不便な事…。
転落死があったのは1月だったな?そうです。
1月17日です。
銀行を変えたのは2月14日。
通報者わかるか?その事故の…。
(田宮節子)あの日の夜は学生時代の友達と会うてて帰るのがかなり遅かったんです。
ここを通りかかったんはもう12時近かったと思います。
(大泉のうめき声)ちょっと…まあ…。
ちょっとそんなに身ぃ乗り出したら危ないわよ。
大丈夫?うるせえババア!バ…ババア?ババアはさっさと…。
ううっ…!これあなたの鞄でしょ?ここ置いとくわよ。
腹が立ってそのまま家の前まで帰ってきたんです。
けどなんか気になって…。
(節子の声)それで引き返したんです。
鞄もありませんでしたし無事に帰ったんや…。
そう思ってホッとしたんですけど何げなく川をのぞいたら…。
すみません。
大泉さんは鞄と一緒に転落してたんですか?
(節子の声)鞄は大泉さんの右腕の付け根辺りに乗るような感じで落ちてて…。
そうですか…。
私の中にかすかな疑惑が生まれていました
岩田さん?はい。
岡崎様が当行の岩田と知り合いで口座開設の手続きは岩田にしてほしいとおっしゃいましたので岩田が致しましたけど。
岩田さん今いらっしゃいますか?岩田は4月付で本店勤務となりましたので本店のほうにおります。
(岩田修作)岡崎様の口座開設の手続きでしたら確かにわたくしが致しました。
岡崎さんとはお知り合いだったそうですがどういったいきさつで知り合われたんですか?
(岩田)実はこの1月にわたくしの同僚が…。
大泉という男なんですが彼が岡崎さんが住んでらっしゃるマンション付近にある水車橋から酔っ払って転落死してしまうという事故があったんですがわたくしは橋の向こうにある社員寮に住んでますので…。
社員寮があるんですか?水車橋の近くに。
ええそうです。
独身寮ですが。
そうですか…。
はい。
どうぞお続けください。
その寮に住んでますから通勤時には必ずあの橋を通るわけなんです。
大泉が亡くなってから1週間ほど経ってましたか…。
(岩田の声)その花が次の日の朝になると…。
(岩田の声)それから毎日毎日朝になると花が変わってるんです。
それが1週間ほど続いたんです。
彼も独身でしたしもしかしたら恋人がいたんじゃないかってそう思ったんです。
もしもそういう女性がいたんならその人と会って大泉の思い出話でもしたい。
そう思って休みの日に朝早くあそこへ行ってみたんです。
(岩田の声)そうしたら…。
その女性が岡崎由美さんだった。
そういう事ですね?いえ違います。
岡崎さんではなく志賀さんという人でした。
志賀さん?岡崎さんの友人の志賀邦枝さんですか?そうです。
その志賀さんです。
志賀さんと亡くなった大泉さんは知り合いだったんですか?私も気になったんでその事を聞きました。
大泉さんという方は存じ上げないしお目にかかった事もないんです。
(岩田)あっ…。
でしたらどうして毎朝毎朝…?友人が近所に住んでまして時々そこに行っていますしそのたびにここを通りかかってなんだか気になって。
それに私花屋に勤めていまして余った花を…。
すみません余った花なんかで。
いやとんでもない。
大泉も喜んでますよきっと。
あっ…。
あら…。
(岩田)えっ?友人です。
(邦枝)あのマンションに住んでるんです。
(岩田の声)それが岡崎由美さんでした。
それからは岡崎さんとは通勤時や帰宅時なんかに偶然に会うような事が何回か重なって…。
それでお付き合いが始まった。
そういう事ですね?
(岩田)相談されたんです。
お金の運用の仕方なんかを教えてほしいって。
つまりお客さんの1人であって個人的なお付き合いはなかった。
そういう事ですか?ええそうです。
個人的なお付き合いはしておりません。
亡くなられた大泉さんも岩田さんと同じ寮に住んでらしたんですか?いえ。
あいつは3年ほど前にマンションを買いましたから。
でしたらなぜ…?岩田さんは通勤時には必ずあの橋を通られたわけですよね?
(岩田)ええそうですけど。
朝と夕方ですよね?出勤する時と帰ってきた…。
(岩田)あの…もうよろしいですか?会議があるんですが。
申し訳ありません。
これは皆さんにお伺いしているんですが5月10日の夜10時頃から12時頃までの間岩田さんどちらに?確か土曜日でしたよね?10日は。
(大上)ええそうです。
土曜日の夜です。
でしたら青梅の実家へ帰ってました。
その事を証明してくださる方はいらっしゃいますか?実家は今空き家になってるんです。
去年までは母が1人で住んでたのですが体を壊してしまって今は…。
あっ相川さんに聞いて頂ければわかると思います。
どういった方ですか?家の事でいつもお世話になっているご近所の方なんですがお礼に伺いましたから聞いて頂ければわかると思います。
もうよろしいですね?申し訳ありません。
もう1つだけ…。
なんでしょうか?岩田さんは1月17日の夜大泉さんが亡くなられた日の夜はどちらにいらっしゃいましたか?どういう事ですか?それは。
お聞かせ願えませんか?どちらにいらっしゃいましたか?杉並中央署へ行って聞いてください。
あの時の事は中央署の刑事さんに全てお話ししましたから。
もうよろしいですね?どういう事ですか?牛尾さん。
なんであんな事…。
706だ。
706?
(木久子)出勤時間?小金井支店の頃ですが岩田さんは朝何時頃にこちらを出られてましたか?
(久子)岩田君は早かったわよ〜。
7時にはもう出てたわね。
毎朝ですか?そう。
毎朝必ず7時。
時間にも潔癖だったから岩田君は。
岩田君ね神経質っていうかものすごい潔癖症でね満員電車に乗れないって言うのよね。
他人のタバコのにおいとか化粧品のにおいなんかが自分の体や服に染み込んでしまいそうな気がして気持ちが悪いんですって。
帰ってきた時もよくやってたわよ。
玄関先で上着とかコートを脱いでこうやってパーンパーンっつって。
そうですか…。
お忙しいのにありがとうございました。
(久子)いえいえ…。
あーっ!ねえねえ!ちょっとちょっと。
私ね世界の貧しい地域へ送る古着プロジェクトのボランティアやってるんだけどあんたたちも古着があったら捨てないで。
協力してね。
寮からここまで歩いて約6分。
寮を毎朝7時に出たとして岩田がここに差しかかるのが7時6分か7時7分。
(大上)706707。
牛尾さんカレンダーのあの数字…。
問題は岡崎由美がなぜそんな事を調べてたかだ。
あの窓から見ていたんですかね?岩田がここを通りかかるのを。
牛尾さん?ちょっとそこ立ってろ。

1つの光景が浮かび上がっていました
1月17日の夜の光景が…
事故じゃなくて殺し?その可能性が考えられます。
根拠は?大泉さんは鞄と一緒に転落していたそうなんですが鞄は大泉さんの右肩と右腕の付け根辺りに乗るような形になって落ちていたそうなんです。
これは不自然です。
人は危険を察知すると本能的に身を守ろうとします。
その場合私たちが使うのはまず手です。
自分の両手を使ってなんとかして自分の身を守ろうとするもんじゃないでしょうか?いくら酔っていたとはいえ大泉さんも転落しそうになったとしたらとっさに持っていた鞄を離してなんとか我が身を守ろうとしたんじゃないでしょうか?だとすると鞄のほうが先に落下していき鞄の上に体が乗るような事があっても逆に鞄が体に乗るような事はまず考えられません。
つまり鞄は大泉が転落したあとに体の上に降ってきた。
従って事故ではなくて殺し。
そういう事か。
けどそれがもしも殺しだとしてもその案件とうちのヤマが一体どう繋がるっていうんですか?窓です。
窓?モーさん…もしかして岡崎由美がマンションのあの窓から1月17日の夜水車橋で起きた事を…。
岡崎由美は目撃した事件を欲望に変えた…。
そう考えられる節があります。
欲望に変えた?岡崎由美はこれらの品物を3月と4月に購入しています。
金額にすると合計で240万。
彼女はこれらの品物を1人で買いに行き全て現金で支払っています。
ですが3月4月はもちろんですが去年にさかのぼってみても彼女の通帳からそれほど高額な金は一度も引き出されてないんです。
橋の上の殺人犯を脅して買った。
そういう事か?
(大上)これらの品物を購入した時なんですが…。
欲しいって言えばなんでも買ってくれるの彼。
彼ね銀行員なんだけど今はまさに私だけの銀行…。
私だけの銀行…岩田修作じゃないでしょうか?
(大上)カレンダーに書き込まれた数字も岩田の出勤時間に一致します。
よし。
岩田修作で詰めてみてくれ。

(大上)牛尾さん!岩田が言ってた相川さんです。
どうも。
(相川一郎)5月10日でしたら確かに帰ってらっしゃってましたよ岩田さんの息子さん。
夜お会いになったんですか?いえ。
私がお目にかかったのは翌日の朝です。
夜はお出かけになってたみたいですから。
出かけてた?ええ。
(相川の声)8時半頃でしたか明かりはついておりましたが応答がなくガレージに車もありませんでした。
(大上)帰ってきた時間…車が戻って来た時間わかりませんか?
(相川)さあそこまでは…。
(岩田)その時間でしたら確かに出かけていました。
どちらへいらしたんですか?
(岩田)まあ気ままなドライブですね。
どこかお寄りになりましたか?
(岩田)いいえどこにも。
あちこち走り回るのが目的ですから。
(ため息)刑事さんお疑いになるのは結構です。
それがあなた方のお仕事なんですから。
ですが疑うなら疑うなりの根拠証拠を持ってきて頂けませんか?なんの根拠もないのにそんなくだらない事でいちいち呼び出されたりしたら迷惑です。
ハロー!ミスターロー!アイムエクスペクティング。
(英語)やってますねあの男。
100パーセント間違いない。
問題はこれからだ。
1月17日の夜岡崎由美が岩田を目撃した事をどう立証していくか…。
(浩子)1月17日?ええ。
あの橋から銀行員の男性が転落死した日の夜ですが…。
ああ…あの日の夜。
あの日の夜だったら岡崎さんお部屋にいらっしゃったと思いますよ。
皆さん来てらっしゃったみたいですから。
皆さん?はい。
新居のお披露目パーティーで呼ばれてたんです私たち。
そういえば大変だったのよねあの時。
(玲子)そろそろ帰ろうと思って食器やグラスを片付け出し始めたら救急車やパトカーのサイレンが聞こえ出し始めて。
酔っ払った人が川へ落ちたって。
その前救急車のサイレンが聞こえ出し始める10分か15分前ぐらいですが岡崎さん寝室へ入られませんでした?どうだったかしら?入ったわよ!ほらあの時よ!2人でケンカしてたじゃない。
2人?窓のところでケンカしてたんです。
岡崎さんと志賀さん。
志賀さんもいらしてたんですか?
(優子)志賀さんの送別会も兼ねてましたから。
何が原因でケンカになったんですか?志賀さんと岡崎さん。
(渚)わかりません。
でもなんだかおかしな事言ってました。
持っていっていい?ごめんね。
そろそろお開きにしませんかって聞いてきてよ新室長様に。
(渚)わかった聞いてくる。
あっごめんね。
(由美)まあせいぜい三度目はないようにする事だわね。
(邦枝)四度目よ。
(由美)え?
(邦枝)四度目だけは絶対にさせない。
絶対に。
(渚)それからちょっと経ってから…。
私もう帰る。
えっ?だって…。
(玲子)どうする?私たちももう…。
あんたたちももう帰ってよ!
(ドアの閉まる音)じゃあ岡崎さん1人が残ったわけですねあの部屋に。
(優子)ええそうですけど…。
三度目…。
その事ならこの前話したでしょ?仕事のミスを志賀さんのせいにしたって。
仕事のミスを志賀さんのせいにしたのは二度や三度の事じゃないと同僚の方たちもおっしゃってました。
初見さん正直におっしゃって頂けませんか?志賀さんと岡崎さんの間に二度も一体どんな事が…?恋人をあの女に取られちゃったのよ志賀さん。
それも二度も。
ええ?一度目はもうだいぶ前。
4〜5年前になるかしら。
二度目は去年。
去年?じゃあ相手は根岸さんなんですか?根岸さんは志賀さんの恋人だったんですか?去年の1月か2月だったと思うけど…。
(芳子の声)志賀さんと根岸さんのお熱いところを見ちゃったのよ。
どう?うん。
気に入った。
本当?じゃあ…。
すいません。
(芳子の声)それが10月になって岡崎由美が室長に抜擢されたのが頭にきて由美のアパートに怒鳴り込んだのよ。
あんた!一体どんな手を使って室長になったのよ!ねえ私…。
(芳子の声)そしたら根岸がいたのよ。
一体なんなんですか?あなた。
(芳子の声)また由美に取られちゃったんだ。
そう思ったあの時。
お付き合いしていらっしゃったんですか?根岸さんと。
刑事さんに根岸という人を知らないかと聞かれた時私どうしても答えられなくて…。
申し訳ありませんでした。
あの人にはもう近づかないで。
あの人はあなたを愛してなんかいない。
岡崎さんが殺害される2日前の夜岡崎さんを訪ねてそう言った女性がいるんです。
その女性もしかしたら…。
(ドアを叩く音)岡崎さん…岡崎さん!お願いだから聞いて。
あの人にもう近づかないで!あの人はあなたを愛してなんかない!岡崎さん!岡崎さん!根岸さんを取り戻したかった。
そういう事ですか?三度目があったんですよね?志賀さんは1月17日の夜四度目だけは同じ事は絶対させないそうおっしゃったそうですが同じ事がもう一度あったんですか?三度目は家です。
家?岡崎さんが12月に購入したあのマンションは私が買うつもりだったんです。
ローンの保証人になってもらうために契約前に高知のおじのところに行ってきたんです。
会社を2日間休んで。
帰ってきたら彼女が先に契約をしてしまっていて…。
だからあの時はものすごく腹が立ってケンカになってしまい…。
その時の事なんですが最初は志賀さんが先にあの部屋に入られたそうですね。
はい。
暖房で部屋が暑かったので窓を開けて外を見ていました。
外を?じゃあ志賀さんはもしかして大泉さんを…。
見ました。
(邦枝)ひどく酔った様子で吐いていました。
それから何かご覧になりませんでしたか?見たのはそれだけです。
すぐに岡崎さんが入ってきてケンカになってしまいましたから。
その時窓は開いていましたか?開いていました。
あなたがあの部屋を出た時岡崎さんどこにいましたか?まだ窓のところに立っていたと思います。
志賀邦枝の証言と同僚たちの証言は一致していますし岡崎由美は1人であの窓辺にいた事は間違いないと思います。
橋の上の殺しを目撃した可能性は大いにある。
そういう事だな。
岩田と大泉の事は何かわかったか?
(山路)はい。
まず2人の関係ですが同期の同僚で年齢も同じ41歳。
ですが性格は正反対だったようです。
(山路)岩田はこつこつと生真面目に積み上げていき石橋を叩いて渡る神経質なタイプ。
(山路)大泉のほうは大ざっぱで行動的猪突猛進型で強引に突っ走っていくタイプ。
2人とも国立大学出で優秀。
ともに出世レースのトップを走っていたそうなんですが2年前の9月にその出世レースから岩田が突然脱落したそうなんです。
原因は建設会社への不正融資。
岩田がやったんですか?不正融資。
岩田がそういう事をやってますと大泉が上層部にチクったらしいんです。
当時2人は同じ三軒茶屋支店にいてむしろ大泉のほうが不正融資を受けた建設会社の社長とは親しくしていたそうですから恐らく大泉が主導的な立場でやってたんだと思いますがバレそうになったので全て岩田1人のせいにし自分は安全な場所へ逃げた。
まあこれが本当のところだったんじゃないですかね?
(山路)で結局岩田のほうは小さな支店へ飛ばされ一方大泉のほうは勇気を持って不正を告発したっていうんで逆に本店の融資審査部に大抜擢。
おまけに次期頭取候補ナンバーワンの山下常務に気に入られ一人娘の婿候補にもなっていたそうなんです。
(西谷)大泉がああいう死に方をしたせいで2年前の事が見直されたんだと思います。
岩田は今大泉が座っていた本店融資審査部の主査という地位に就いています。
おまけに大泉がなるはずだった山下常務の娘婿候補ナンバーワンにもなっています。
岩田にとって今はまさに我が世の春。
(大上)その我が世の春に真っ黒な影が立ち塞がったってわけだ。
(大上)大泉殺しの目撃者岡崎由美の出現。
よし絞ろう。
岩田修作に。
(一同)はい!ただし問題は物的証拠だ。
1つだけでいい。
100パーセントの物的証拠だ。
いいな?
(一同)はい!
(エンジン音)
(大上)簡単に言ってくれますよね課長は。
100パーセントの物的証拠なんて。
それが見つからないからこっちは苦労してるっていうのに。
結局見つからなかったんだよなガイシャの薬指の爪。
爪も体の一部だからガイシャに返してあげたいって海野さん外の道まで調べてたみたいですけどね。
その爪岩田のところにあるとは考えられないだろうか?えっ?折れた爪というのは髪とか服とか絡みついたりする事がよくあるんだそうだ。
だとすると岩田の服とか車の中に爪が残ってる可能性も…。
あり得ませんねそれは。
え?だって管理人のおばちゃん言ってたじゃないですか。
岩田は神経質ですごい潔癖症だって。
そういう人間が人を殺した時に着ていた服をもう一度着るなんて事はまずあり得ませんよ。
服も靴も凶器に使ったスカーフももう処分してるはずだし車だって隅から隅まで掃除してしまってるはずです。
そうだよな。
人を殺しに行くのに新品の服を着ていたとは思えないよな。
当然処分するつもりで古い服を…。
古い服…。
私古着プロジェクトのボランティアやってるの。
岩田君ならよく協力してくれるわよ。
なんせ潔癖症だからちょっとでも汚れてると…。
岩田さんは5月10日以降に古着を出しませんでしたか?ええ。
提供してくれたわよ。
出した?はい。
その服…その服今どこにあるかわかりますか?ここに置いてあるけど。
申し訳ありません。
持ってきて頂けませんか?ちょっと待ってて。
牛尾さんやっぱり無理ですよ。
どう考えたって爪が残っているとは…。
爪は無理でもガイシャの皮膚の一片血液の一滴でも残っていたら突破口になる。
大きな突破口に…。
お集まり頂きありがとうございます。
それでは融資部定例会議を始めます。
本日の司会進行はわたくし融資審査部主査岩田が務めさせて頂きます。

(岩田)今期の融資審査基準は昨年同期と比べ大幅に基準値が下回っています。
これは我々審査部の審査業務がずさんに執行された証拠が反映されたものと思われます。
(久子)あった!これこれ!これですけど。
牛尾さん…!岩田さんは古着を提供する時いつもクリーニング出されてるんですか?
(久子)いやクリーニングに出してからなんて今回が初めて。
よっぽど汚れてたんじゃないかしら。
結局爪はもちろん一片の皮膚片一滴の血液も検出する事は出来ませんでした
犯行時に着用していた服だから念には念を入れた。
そういう事だな。
そう思います。
それにしても見事なほどの潔癖症ですよね。
そういうのは潔癖とは言わないんだよ。
悪知恵って言うんだ。
証拠隠滅を図るための悪知恵。
潔癖でも悪知恵でもいいですけどどうするんですか?これから。
別にどうもしない。
粛々と捜査を続けるだけだ。
もしかしたら…。
100万分の1…いえ1000万分の1。
いや…もっと低い確率かもしれません。
ですが証拠が残ってる可能性のある場所がもう1か所あります。
またですか…。
今日は一体なんですか?岡崎由美さん殺害の件でお聞きしたい事があります。
その事なら前も言ったはずですよ。
疑うなら疑うなりの根拠証拠を持ってきてくれって。
その証拠が出ました。
え?ご同行願えますね?これは岩田さんが5月17日にリサイクルに出されたジャケットです。
これに何か付いてたんですか?私が岡崎さんを殺したという証拠が。
これが見つかりました。
殺害された時に折れたと思われる岡崎さんの薬指の爪です。
この爪が私のジャケットに付いてたとでもおっしゃるんですか?いえこの爪は岩田さんの青梅のご実家の玄関先に落ちていました。
家宅捜索の許可は家の所有者であるお母様から頂きました。
何言ってんだ?あんたたちは…。
こんなものが実家に落ちてるはずなんか…!あなたは潔癖でした…。
潔癖すぎたんです。
え…?人を殺した時の服のままで自分の家へ入るのが嫌だったんでしょう。
だからいつものように…いえいつも以上に念入りにやったんです。
家へ入る前に玄関で。
話して頂けませんか?本当の事を。
全ては1月17日の夜あの橋の上から始まった…。
違いますか?何度も何度も思いました。
あの日残業さえなかったらって…。
うう〜っ!大泉…?大泉じゃないか。
おい何やってんだ?こんなところで。
危ないじゃないか。
お前こそ何やってんだよ?こんな時間まで。
へんぴな場所のちっぽけな支店じゃ働きがいもないだろうにご苦労なこった。
ハハハ…。
関係ないだろお前には。
岩田…岩田!俺な近々名字が変わる事になると思うんだよ。
山下って名字にな。
ハハハハ…。
山下?山下ってお前まさか…!ピンポーン!そのまさかだよ。
次期頭取の山下常務の娘婿。
その事をお前にはぜひとも報告したくってさ。
ちょっと待て!離せ!待てよ岩田!言えよ…「おめでとうございます」って。
「これからもよろしくお願いしますワン!」って。
ワン?俺の従順な犬になれって事だよ。
そしたらお前を地方に飛ばすような事はしないからさ。
ハハハハ…。
地方にってお前…!どっちがいいんだよ?岩田。
地方にぶっ飛ぶか俺の従順なワンワンになるか。
ハハハハハ!簡単じゃねえか。
従順な犬になって俺に頭なでてもらえば。
ハハハハ!
(大泉)うっ!うう〜っ!
(岩田の声)腹が立ちました。
本当に腹が立った。
この男がこの世に存在する限り私に未来はない…。
そう思った。
そう思ったら…。

(衝突音)
(岩田の声)見られた…そう思いました。
でも大泉の事は結局事故という事になって…。
少しホッとしてました。
見られたと思ったのは私の錯覚であの女は何も見てなくてただ窓を閉めただけだったのかもしれないって。
でもあの日の朝…。
友人です。
(邦枝)あのマンションに住んでるんです。
(岩田の声)ショックでしたあの時は。
昼と夜の違いはあったけど…まさにあの時と同じでしたから。
それから岡崎さんはあなたに急速に近づいてきた…。
そういう事ですね?
(岩田の声)動向を探っている…そう思いました。
そんな事が1週間ほど続いてから…。
おはようございます!
(岩田の声)朝はあの橋で…。
夜は駅で…。
(岩田の声)彼女はどんどん近づいてきた。

(岩田の声)銀行に現れお茶に誘われ食事に誘われて…。
でも…彼女はあの夜の事については一切何も言いませんでした。
それが逆に怖かった。
いつ言い出すのかいつ仮面を脱ぐのかと…。
そしてあの日あの女はとうとう…。
(岩田)お誕生日?
(由美)そうなの。
来週の金曜日3月の7日。
でね岩田さんにプレゼントもらえたら嬉しいな〜なんて…。
駄目?とんでもないです。
喜んでプレゼントします。
何か欲しいものありますか?岡崎さんが欲しいものをプレゼントしますから。
わ〜幸せ!毎日がお誕生日だったらいいのにな〜。
そしたら毎日何かねだれる。
毎日は無理ですよ。
せめて月1回にしてもらえませんか?誕生日は。
そんな事言って大丈夫?お金かかるわよ私って。
覚悟してます。
いい覚悟だ!褒めてあげる。
でもしょうがないわよね。
目と目が合っちゃったんだもんあの時。
ね?乾杯!はい。
乾杯!
(岩田の声)それからは…。
これ。
えっ…。
本当に約束守ってくれるんだ岩田さん。
嬉しい!岩田さんに出会えてよかった…。
(岩田の声)それだけだったら我慢出来た。
岡崎さんはあなたに別の要求を持ち出した。
そういう事ですね?結婚です。
結婚?そうです。
あの女は私に結婚を迫ってきたんです。
岡崎さんがあなたに結婚を迫った…?岡崎さんのほうがあなたに結婚してほしいと言ったんですか?そうです。
それが私たちの運命だからって…。
運命?
(由美)私ははっきりわかった…。
あなたは私の運命の人だって事。
ちょっと待ってください。
岡崎さんはあなたの事を運命の人だと言ったんですか?結婚すべき人だと。
ええそうですけど…。
(岩田)この女は大泉と同じだと思いました。
私を犬みたいにそばに置いて一生金づるにしていたぶるつもりなんだって。
この女が生きてる限り私は自由にも幸せにもなれない。
そう思ってあの日の夜…。
急で悪いんだけどおふくろが芝居を見に来てて今晩新宿のホテルに泊まるんだ。
遅い時間になるけどちょうどいい機会だしおふくろに会ってもらいたいと思って。
(岩田の声)それであそこで…。
うっ!
(岩田の声)ジャケットを脱いだのは彼女の執念が染みついてるみたいな気がして気持ちが悪かったからです。
(大上)牛尾さん?牛尾さん?おかしい?何かおかしいんです。
そんな事あるはずないんです。
どこか変なんです。
岩田はホンボシじゃないって事なのか?いえそれは。
ですが…。
モーさん…。
申し訳ありません。
取り調べは一時中断させてください。
もう一度最初から整理を…。
本当に申し訳ありません。
あの女は私に結婚を迫ってきたんです。
それが私たちの運命だからって…。
なぜだ?
なぜ岡崎由美は岩田に結婚を迫ったりしたんだ?
なぜ岡崎由美の運命の人が岩田なんだ?
岩田は殺人犯
岡崎由美はその殺人の目撃者で脅迫者なのだ
なのになぜ岡崎由美は岩田との結婚を望んだりしたんだ?
殺人犯を愛したというのか?
全ては1月17日の夜この窓辺から始まった
その夜岡崎由美はこの窓から岩田の殺人を目撃し岩田をゆすりその事が原因で結局…
1月17日の夜この窓辺には2人の女がいたはずだ
1人は岡崎由美
もう1人は…
まさか…。
ワイドショー?プロデューサーの方がねお店に飾ってあるあなたのアレンジメントを見て番組で飾る花をあなたにやってもらいたいってそうおっしゃってるの。
ぜひやらせてくださいって返事しちゃったけどいいでしょ?いや…私そんな自信…。
「でも」も「どうしよう」ももうやめるんじゃなかったの?チャンスは自分の手でつかまなきゃ。
やりなさい。
あなたにだったら出来る!自信を持って。
ね。
はい。
じゃあ決まり!あなた今にきっとすごいデザイナーになるわよ。
そんな…。
いらっしゃいませ。
いらっしゃ…。
花束を作ってもらいたいんだけど。
(マキ)ありがとうございます。
ご予算とどのようなお席に贈られるのかを…。
恋人が殺されたんです。
え…?彼女のために作ってもらいたいんだけど…。
作ってくれるよね?邦枝。
出かけた?それがなんだかおかしいんです。
恋人が殺されたっていう男の人が来て…。

(根岸)どこへ置けばいい?この花束。
彼女が殺されたってニュースを見た時最初は犯人は男だと思った。
新しい男。
でもあの時…。
(芳子)根岸さん。
根岸さんだったわよね?いつぞやはどうも。
ねえ戻ってあげたら?志賀さんのところへ。
(芳子)誰が殺してくれたのか知らないけどちょうどいいじゃない。
戻ってあげなさいよ。
(根岸の声)あの時に思った。
もしかしたらって…。
だから…君を試した。
殺されそうになっても君は警察へ届け出なかった。
あの時にはっきりわかったんだ!君が殺したんだって事。
確かに彼女は君にひどい事をした。
僕の事だってそうだしマンションの事だってそうだ。
だけど…だけど殺さなくたって!殺さなくたって…。
そんなに憎かったのかよ…。
ええ?そんなに恨んでたのかよ?返せよ…。
彼女を愛してたんだ…。
結婚するつもりだったんだ!彼女を返せよーっ!返せ!償わせてやる…。
返せよ…。
返せよ!返せよ…。
返せ!返せ!
(根岸)返せよ…。
返せ…!
(足音)
(大上)やめろ!離せ!離せ!
(せき込み)大丈夫ですか?今救急車を。
あの女が殺したんだよ。
なのになぜ捕まえないんだよ?おい!捕まえろよ!
(山路)話は署で聞く!あの女が殺したんだ…。
捕まえろよ。
ちゃんと捕まえろ!今朝大泉さん及び岡崎さん殺害容疑で岩田修作を逮捕しました。
事件は終わった…そう思っていました。
でも違いました。
事件はまだ終わっていなかったんです。
私がとんでもない間違いをしたからです。
大泉さんが殺害された日の夜岡崎さんの部屋のあの窓辺には2人の女性がいました。
1人は岡崎さん。
もう1人は…あなたです。
私は殺人を目撃したのは岡崎さんだと思った。
でも違った。
橋の上の殺人を目撃したのはあなただったんじゃありませんか?刑事さん。
私前にも話した事がありましたよね。
彼女が住んでいたあのマンションは私が買う予定にしていた部屋だったって。
見に行ったけど最初は買うつもりなんて全くなかった。
(邦枝の声)でもあの時…。
(鳥のさえずり)決めた…ここにする。
ここは私の家。
私のために用意された家だってそう思った。
私は3歳の時に両親が離婚してそれからはあっちへやられこっちに預けられて私には自分の家はもちろん落ち着ける場所なんてどこにもなかった。
でも小学校2年生の時ほんの短い間だったけど母と2人で暮らした事があったんです。
ボロアパートの2階の6畳一間。
そのアパートの窓から見た風景ととても似ていたんです。
あのマンションの窓から見た風景が。
(邦枝の声)家の前には川が流れていて橋があって…。
朝私と母は毎日2人で手を繋いであの橋を渡った。
私は学校へ行くため。
母は働くため。
学校から帰ってくるといつも私はあの窓辺で母を待った。
お母さ〜ん!
(邦枝の声)母は毎日必ずあの橋の上で私を見て笑顔で手を振ってくれた。
お母さ〜ん!
(邦枝の声)でもあの日…。
夕方になっても夜になっても夜中になっても夜が明けても母は帰らなかった。
私はどうしていいかわからなかった。
でも待っていれば必ず母は帰ってくる。
そう思って待ってた。
ずっと…。
(物音)死んでたんです母。
お昼を食べにいった食堂で爆発事故に巻き込まれて…。
あのマンションから窓の外の風景を見た時に思ったんです。
あの橋を見て待っていたらいつかあの橋を渡ってお母さんが帰ってきてくれるかもしれないって。
だからどうしてもあそこに住みたかった。
その事を由美さんに話して譲ってくれないかって頼んだんです。
そしたらあの人…。
1億だったらゆずってあげてもいいわよ。
そんな…1億なんて!
(由美)1億じゃ安すぎるわね…。
2億にするわ。
それが理由ですか?あんな計画を立てた理由…。
志賀さん本当の事を話してください。
1月17日の夜水車橋で起きた殺人を目撃したのはあなただったんじゃ…。
私は何も見ていません。
志賀さん!もういいですか?志賀さん!志賀さん…あなたはまだ若い。
あなたの人生これからです。
その人生台無しにしてしまっていいんですか?罪を償わない人生はつらいはずです。
苦しいはずです。
決して幸せにはなれません!志賀さんそんな人生送っていいんですか?後悔しませんか?私はもう答えました。
私は何も見ていないし何も知りません。
志賀さん!岩田さん。
1月17日の夜の事ですがあなたは窓辺に立っていた女性の顔をはっきり見たんですか?いえ…逆光になってましたから顔は黒い影になっててはっきりとは…。
顔が見えなかった女性をあなたはなぜ岡崎由美さんだと断定したんですか?えっ?だって…あそこは彼女の家だし彼女が住んでるわけですから。
あの夜あの時間岡崎さんの部屋には岡崎さんを含めて5人の女性がいたんです。
え?じゃ…じゃ…。
違ったんですか?彼女じゃなかったんですか?岡崎さんではなかったと思います。
でも…でも彼女金を要求してきたんですよ。
誕生日が毎日あればいいのにって。
そうすればプレゼントを毎日…プ…プレゼント…?彼女プレゼントって…。
あなたをゆすってなんかいなかったんです岡崎さんは。
あなたを愛してただけなんです。
えっ…?あなたをいつか巡り合えるはずの運命の人そう思い込んでしまったんです。
目と目が合ったあの時に。
あの時?友人です。
(邦枝)あのマンションに住んでるんです。
岡崎さんがあなたを見たのは1月17日の夜ではなくその時が最初だったんです。
え?ついに巡り合った運命の人。
だからこそ岡崎さんはあなたとの結婚を望んだんです。
あなたのお母さんに気に入られたい一心で。
ねえこれで大丈夫よね?派手じゃないわよね?あ〜!気に入ってもらえるといいんだけどお母さんに。
あ…ああ…。
岡崎さんはあなたを脅してなんかいなかった。
1月17日の夜岡崎さんは何も見てなかったのですから。
う…う…。
うわーっ!だったら!だったら…!一体誰だったんですか?あの時窓辺にいたあの女は!わかりません。
4人とも何も見ていないと供述していますから。
だったら…。
だったら一体…。
幻だったんですか?私の見た女は!
(泣き声)
(鐘の音)
(鐘の音)申し訳ありません。
こんなとこまでお呼び立てして。
今岡崎さんに謝って参りました。
あんなとんでもない間違いをした事を。
私は今でも橋の上の殺人を目撃したのはあなただと思っています。
(由美)そうだあなたに返さなきゃいけない物があった。
(由美)どこだっけ?
(衝突音)
(衝突音)
(由美)あったあった!これこれ!
(邦枝)ねえ今…。
(由美)覚えてる?あなたが正人にプレゼントしたほらマフラー。
ねえ今…。
正人ねこれ全然趣味じゃないんだって。
だからほらまだ新品!三度目の…じゃなかった。
四度目だっけ?四度目の男が出来たらさこれプレゼントしたら?きっと喜ぶわよ。
はい。
でもあなたは目撃した殺人の事を誰にも話さなかった。
あなたの中に1つの計画が生まれたからです。
手を下さない殺人計画。
殺人犯にとって一番恐ろしいのは目撃者の存在です。
橋の上の殺人犯はもしかしたら自分に殺意を向けるかもしれない。
だとすればその殺意を自分にではなく岡崎さんに向ける事は出来ないか。
そう考えて仕組んだんです。
今回の事を。
そして計画の一歩を踏み出した。
あなたは岩田がどこの誰だか知らなかった。
でも岩田が付近に住んでいて通勤であの橋を使う人物だと見当をつけた。
あなたには1つだけ不安があった。
岩田のほうももしかしたら自分の顔をはっきり見たのではないかという不安。
でも賭けてみたんです。
そしてあの日…。
(岩田)あの…。
(足音)大泉のお知り合いの方ですか?いえそうじゃないんです。
その男は間違いなくあの夜橋で見た殺人者だった。
あなたの不安は消えたはずです。
岩田はあなたの顔を覚えていなかった。
あら?
(岩田)え?友人です。
(邦枝)あのマンションに住んでるんです。
前もって岡崎さんにあそこに立つように言ったとは思えません。
恐らく偶然でしょう。
ですがその効果は絶大でした。
まさにあの夜の再現。
岩田は岡崎さんをあの時の女だと思い込んでしまったんです。
岡崎さんのほうはその視線を誤解し錯覚してしまったんです。
この人こそがいつか巡り合えると信じて待っていた運命の人なのだと。
あとはあなたはもう何もする必要はなかった。
ただ待っていればよかった。
あなたの狙いどおり岡崎さんは積極的に岩田へ近づいていった。
岩田の通勤時間を調べ偶然を装って出会いを重ねそして…。
お誕生日?そうなの来週の金曜日3月の7日。
岩田はそれを錯覚したんです。
いよいよ脅迫が始まったと。
岡崎さんのほうもまた錯覚したんです。
高価な物を次々とプレゼントしてくれるのは自分を愛してくれてる証拠なのだと。
でもあなたは後悔し始めたんです。
自分のやってる事が怖くなった。
あの人にはもう近づかないで。
あの人はあなたを愛してなんかいない。
あの人…私はあの人というのは根岸さんの事だと思い込んでしまったんです。
でも違った。
岩田の事だったんですよね。
これ以上岩田に近づいたら本当に殺されてしまうかもしれない。
そう思ってあなたは岡崎さんに会いに行ったんです。
(由美)あの人が人殺し?あなたも覚えてるでしょ?今年の1月!アハハハハ…!よりにもよって人殺しとはねぇ〜。
ねえちゃんと聞いて!冗談じゃないの!ウフフ…でも褒めてあげる。
え?欲しいものはどんな手段を使ってでも手に入れる。
あの頃の私と同じ。
正人を欲しかった時の私と。
違うのよ。
嘘じゃないの。
あの人は本当に人を…。
あの人は絶対に誰にも渡さない。
私の運命の人だから絶対。
ねえもう帰って。
はい帰って!帰ってよ。
そして2日後…。
あなたの中には2人の人間を死に追いやったという思いがあったんだと思います。
1人は岡崎さんもう1人は大泉さんです。
1月17日の夜あの時すぐに救急車を呼んでいたら大泉さんは助かったかもしれないという思い。
だからあの時あなたはなんの抵抗もしようとしなかった。
死ぬ事で自分の罪を償おうとした。
それが今回の事件の真実だと思っています。
でもこれで終わったわけではありません。
あなたが本当の事を話してくださった時こそが事件が終わる時。
そう思っています私は。
刑事さん。
人を殺した罪は償えるんですか?警察に行って「私がやりました。
申し訳ありませんでした」って言って裁判を受けて10年とか20年とか無期懲役とか言われて刑務所に入って…。
何も問題を起こさず態度がよかったら大幅にその期間が短くなって…。
ある日刑務所の門が開いて「今日からあなたは自由です」って言われて…。
それで人を殺した罪は消えるんですか?償えるんですか?私はそうは思いません。
人を殺した人の罪はたとえ死刑になったとしても絶対に償える事は出来ないんです。
人を殺した罪が償えるとしたらそれはたった1つ。
殺してしまった人を生き返らせてあげる事が出来た時だけ。
その人を元どおりに戻して家族や愛していた人たちの元へ返してあげる事が出来た時だけ。
私はそう思ってます。
刑事さん。
前におっしゃってましたよね?罪を償わない人の人生はつらくて苦しくて決して幸せなんかにはなれないって。
罪を償おうと償うまいと人を殺した罪はその人生はつらくて苦しくて決して幸せなんかにはなれないのは当たり前の事なんじゃないですか?幸せなんかになってはいけないんじゃないですか?それは違います。
罪を償いさえすれば幸せになっていいんです。
幸せになるべきなんです。
刑事さん。
私は何も見ていないし何も知りません。
それが私の答えです。
なんとかならないんですか?そこまでわかってるんだったらなんとか立証!検事にも相談してみたが無理だそうだ。
志賀邦枝がやった事は目撃した殺人を通報しなかった事だけだ。
ましてや本人は殺人など目撃していないと言っているんだからどうしようもない。
何もかも全部志賀邦枝が仕組んだ手を下さない殺人。
志賀邦枝は人形遣いで岡崎由美も岩田修作もその人形遣いに踊らされていた哀れな人形だったって事ですか?
志賀邦枝がマンションのあの部屋を買った事を聞いたのはそれから1か月後の事でした
何もかも計画どおりになったっていうわけですよね。
根岸正人は取り戻せなかったけど少なくともあの部屋は取り戻したわけですからね。
それにしてもしたたかっていうか怖いっていうかすごい女ですよね志賀邦枝って女は。
人を殺した罪は償えるのか
そう聞いた志賀邦枝の言葉を思い出していました
志賀邦枝は罪を償わなかったのではなく自分自身に厳罰を与えたのだ
そう思っていました
自分自身に与えた罰それはあの窓から見える光景です
あの窓は志賀邦枝に優しい光景は決して見せてはくれないはずです
あの窓が志賀邦枝に見せてくれるのは人間の黒く醜くおぞましい2つの悪の光景です
1人の男が1人の男を殺していく姿
そして…
殺意を持ってその窓を指さしている自分自身の姿
自分自身の犯した2つの罪と向き合うために志賀邦枝はあのマンションを買い残酷な視界の中で生きていく人生を選んだのです

志賀邦枝にとってあの部屋は夢の城などではなく牢獄なのです
恐らく一生出る事のない孤独な牢獄
志賀邦枝は今日もまたあの窓辺に立って自分の罪と向き合っているはずです
そして心の片隅で思っているのかもしれません
橋を渡って行ったまま帰ってこなかった母が死に追いやってしまった友人がいつかあの橋を渡って帰ってきてくれるかもしれないと…
2014/06/28(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「森村誠一の終着駅シリーズ・残酷な視界」[デ][字]

裏窓の女の完全犯罪!!エリート銀行員転落死の謎!?罠に落ちた脅迫者と割れた爪の行方

詳細情報
◇番組内容
大好評“終着駅シリーズ”第28弾!公園の絞殺死体と、橋からの謎の転落死事件!!2つの事件を繋ぐ影とは…!?2組の男女の愛憎が生んだ“殺人構図”の謎に、牛尾刑事が挑む!
◇出演者
片岡鶴太郎、岡江久美子、高岡早紀、岡田浩暉、田中美奈子、宮川一朗太、鈴木一真、東根作寿英、徳井優、秋野太作
◇スタッフ
【原作】森村誠一「残酷な視界」
【脚本】橋本綾
【音楽】大野克夫
【監督】池広一夫
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0×0818)
EventID:1462(0x05B6)