ららら♪クラシック「心変わりは突然に!モーツァルトの“夜の女王のアリア”」 2014.06.28

あのクラシックの名曲をあなたのものに。
人生を豊かにしてくれる一曲を一緒に見つけませんか?今回は…。

(「夜の女王のアリア」)一度聴いたら忘れられない女性の雄たけび!人気オペラ「魔笛」の一番の見せ場です。
ソプラノの歌手が華やかに軽やかに歌っているように見えますが実はとんでもないスゴ技!この超絶技巧曲でモーツァルトが表現したものとは?そしてこの曲に込めた彼のたくらみとは?モーツァルトの仕掛けにゲストの森口博子さんは…。
よく出来てるモーツァルト!ゾクゾクくる〜!こういう解説聞いて…。
高い声で歌っているのは喜び?悲しみ?なんでこんなに叫んでいるの?夜の女王の真実の姿を暴きます!「ららら♪クラシック」今日はモーツァルトの「夜の女王のアリア」です。
難曲中の難曲ですよね。
そうですね。
歌手の皆さんにとっては非常につらい曲ではないでしょうか。
本日のゲストはいかがでしょうか。
森口博子さんです。
(一同)よろしくお願いします。
いかがでしょうか?この曲もし歌って下さいと言われたら。
もう酸欠になりそうですよね。
しかも高いところがずっと続くので声帯の筋肉もうず〜っと腰もキープしなきゃいけないのは大変じゃないでしょうかね。
あんなに難しい曲で音を例えばちょっと外しちゃったりしたらどうするんですか?歌手の人って。
たとえピッチ…音程が取れなくて外れたとしても伝えたい事は何かっていうところに意識を持っていて歌の競技ではないっていうふうに思いながら一音入魂でお届けしたいですけどでも外れたら落ち込みますやっぱり。
これモーツァルトの「夜の女王のアリア」なんですけどこの超絶技巧でモーツァルトは何かを表現したかったんですよね。
その何かって森口さん何だと思われます?喜びか叫びか…。
なんか分からないですけどいとしい人例えば彼氏とかが「どこに行ったの?会いたい会いたい!」なのか…。
そっちいっちゃうのね。
割と自分の経験が歌に反映されるタイプ?違う?何ですって?私の私生活の何を知ってるというの?何となくそんな気がちらっと…。

(「夜の女王のアリア」)女性の高音ソプラノが歌う…数あるオペラの中でもとりわけ超絶技巧が要求される曲。
一体どこが難しいのでしょうか?ソプラノの音域はドから五線を越えたラまでと言われています。

(ピアノ)でもこの曲にはもっと高い音が出てくるんです。
最高音はこんなに高い音です!超絶技巧は音の動きにも!高いだけでも難しいのにこの高い部分で目まぐるしく動くんです。

(「夜の女王のアリア」)モーツァルトはこの超絶技巧を使って一体何を表現したかったのでしょうか?この曲はモーツァルトのオペラ「魔笛」の中の一曲です。
王子とお姫様が主役のおとぎ話で夜の女王はお姫様の母親。
そして宿敵ザラストロ。
娘を宿敵に奪われた夜の女王は登場と同時にその悲しみを訴えます。
この時の夜の女王はどこから見てもかわいそうな母親です。
ところが場面が変わると奪われた娘は宿敵ザラストロの味方になっていたのです。
するとかわいそうな母親はどこへやら。
なんと娘に殺人を命じるのです!この曲で夜の女王はひょう変!復しゅうに燃えるあまり人間を超えた怪物となってしまったのです。
人間離れした技でモーツァルトが表現したものそれは…いやぁ…意外ですね。
こうきましたか。
怪物…。
怪物。
なんか普通怒りとかおどろおどろしい表現になるところを超越しちゃって違う次元の表現になってましたよね。
あんな明るいハハハハ!って言われたらなんかもっと幸せな事があって「もう早く来てよ今夜!」みたいなそういう世界かなと思ったら…。
歌ってるやっぱり顔つきとかもなかなかにハードですよね。
阿修羅のような怖いというか何ていうんだろうでも乗り移った感じですよね何かが。
悪魔なのかもう一人の自分なのか分かんないですけど湧き出てる感情がそのまま顔に出てるっていう感じですよね。
怒りって強烈な感情ですから怒りに心を乗っ取られてしまうとなんかモンスターみたいになってしまいますよね。
さすがにモーツァルトですね。
それを持ってくるのが。
面白い。
ちょっと感心します。
この曲の正式なタイトルなんですけれども…うわぁ!復しゅうがもうメラメラメラメラ…。
燃えてますね〜。
このタイトルに込められてるんですね。
すごい怖い。
怖いです!タイトル聞いただけでも怖いですよね。
この夜の女王はオペラの中では雷鳴と共に登場して今見て頂いた2曲を歌うだけなんですね。
しかもその2曲ともがスゴ技の難曲でパッと出てきて歌い終わったらパッとステージ上からまたいなくなるという非常に潔い演出というか。
これは歌手としてはこういう役ってどうなんですか?勝負ですよね。
そこでどれだけ自分がその役と世界と楽曲を表現できるかっていう。
相当な力が必要とされるんじゃないですか?見ててもうしびれますね。
彼女は技巧的な歌が得意でした。
モーツァルトは夜の女王を演じる事になった彼女のためにこの曲を書いたのです。
だから超絶技巧の曲なんですね。

(拍手)実はこのヨゼファはモーツァルトの妻コンスタンツェのお姉さんだったのです。
この姉妹はみんな本格的な歌手。
モーツァルトは彼女たちに何曲も歌を書きました。
意外な事に特別だったのは妻ではなく次女のアロイジア。
最初は彼女に恋していたんです。
結果は失恋だったんですけどね。
美しい声は名曲を生む?という事でしょうか…。
う〜ん!でもちょっと考えてみると長女がこれほど歌えた人だったっていうのはね。
きょうだいがいろんな才能があったりするとモーツァルトも触発されるところはあったりしたんじゃないでしょうかね。
曲を書いたりする時にね。
でも美濃さんもどうですか?この人に歌ってもらおうっていうのがはっきりしていると曲を書く時断然違います?その方が断然書きやすいですね。
やっぱりその人の一番自分が魅力的と思う音域のここの深さを聴かせたいとか転がるところを聴かせたいとか。
例えば歌番組で歌った時にたまたま今度曲を書いて下さるアーティストの方が「あ!この響きがいいんだ。
このファルセット裏声をいきなりサビ頭に持ってこよう」って思って下さって次の曲は裏声のサビ頭っていうのが出来上がってきた時には愛を感じました。
自分へのね。
そうですよね。
いいねこういう音楽家との…。
音楽家同士ってなんでそんな楽しい事がいっぱいあるんですか?小説家は当て書きなんか全然ないですよ。
さあでもねこの「夜の女王のアリア」は妻のお姉さんのために書かれたというのは分かったんですがオペラの「魔笛」自体は一体どういう人たちに向けて書いたオペラなのか。
ヨーロッパでは実は子供に最初に見せるオペラといえば「魔笛」と言われているんです。
そうなんですか!お話の内容が非常にメルヘンというか空想の世界で簡単にいうと王子様とお姫様が試練を乗り越えて悪は滅びるという冒険ものっていうんでしょうかね。
そうですね。
でもこういうおとぎ話とかメルヘンって大人が見てもちゃんと深読みもできますし日本でも子供向けでいくつもオペラ公演はされてますね。
子供たちに見せるために。
「魔笛」を作曲する10年以上前モーツァルトは勤めていた宮廷で不満な日々を送っていました。
オペラを満足に書かせてもらえなかったのです。
もっとオペラを作曲したい。
その思いを胸にモーツァルトは多くの芸術家が集まる文化の中心ウィーンに移り住みます。
この町でモーツァルトは念願のオペラを作曲。
貴族の間で大ヒットします。
しかし時代は変わりつつありました。
貴族ではない新たな観客もオペラを楽しむようになっていたのです。
そのころウィーン郊外には劇場がいくつも建ち始めていました。
民衆のための劇場です。
そんな民衆劇場で才能を発揮していたのがこの人…俳優歌手座長興行師と何役もこなす異色の演劇人でした。
流行を捉え次々と新しい作品を生み出していた彼はモーツァルトにこれまでにないオペラの作曲を依頼します。
時代の流れを敏感に感じ取っていたモーツァルトも彼に共感。
作曲を引き受けます。
2人が目指したのは身分に関係なくどんな人も無条件で楽しめる…それが「魔笛」です!なんと大蛇が最初に登場。
奇想天外だけど楽しさいっぱいのオペラ「魔笛」。
モーツァルトの音楽も楽しい要素満載です。
例えば民謡風の親しみのあるメロディー。
まるで言葉遊びのような歌。
(パパゲーノ)・「PaPaPa」
(パパゲーナ)・「PaPaPa」
(パパゲーノ)・「PaPaPaPa」
(パパゲーナ)・「PaPaPaPa」
(パパゲーノ)・「PaPaPaPaPaPaPaPa」
(パパゲーナ)・「PaPaPaPaPaPaPaPa」
(パパゲーノ)・「PaPaPaPaPa」パパパ〜!思わず口ずさんじゃいますよね。
そして「夜の女王のアリア」。
初めてオペラを見た人でもすぐに分かるスゴ技です。

(「夜の女王のアリア」)こんなふうにモーツァルトは新しい観客民衆の心をもつかむエンターテインメントをつくろうとしたのです。
これはシカネーダーの劇場には社会のあらゆる階層っていうものが…。
それ全部を相手に楽しませようという非常な野望を抱いたのではないかと思いますね。
ですから小さな子供でもプロでも…だからそれこそが魔法の笛ですよね。

(「夜の女王のアリア」)初演のあと「魔笛」の人気は日を追うごとに上がっていきました。
そしてこのオペラは200年以上たった今では世界中でみんなに愛される作品となったのです。

(拍手)う〜んなるほど!いかがですか?社会階層の上も下も全ての人を音楽で魅了しようっていうのはさすがにモーツァルト野望がでかいですね。
しかも自分から外に飛び出していって環境を変えてチャレンジするっていうのはさすがモーツァルトらしいですよね。
以前にもね森口さんに番組出て頂いた時モーツァルトの作品で一曲取り上げたのが「トルコ行進曲」。
覚えてます。
勇ましかったですね。
すごい野望があの楽曲に込められていてハングリー精神がすっごく若い頃からあった作家なんだなって。
そうですね。
トルコ風がその時の流行ですから「魔笛」にもその時代その時代の流行を入れていったんでしょうね。
それがないとやっぱり…。
この作品はでもほんとにまさに…だからほんとにもう最晩年の作品になるんです。
そうなんですか!残念ですね。
これからもっと聴きたいっていう時ですよねきっと。
こういうオペラがやっと書けてもういろんな人たちに楽しんでもらえる世界がやっと出来たのに。
あと3年でも5年でもいいからモーツァルトが生きていたら市民のための新しい時代の音楽それをバリバリ書いて「魔笛」みたいなドイツ語のオペラあと3曲とか5曲作ってくれていたらなとは思いますね。
聴きたかったですね。
どうなってたんだろう。
もっと何かを生み出してくれたでしょうね。
新しいものを。
クラシックにまつわる素朴な疑問にお答えしま〜す!答えて下さるのは一日の練習時間が8時間を超える事も!ピアノの弦が切れるまで鍵盤をたたく練習大好きピアニスト…その練習をするタイミング一日の中で自分が好きで…自分がすごく好きな曲に出会った時その作品の物語を想像して作るというのもひとつ面白いかなというふうに思います。
例えば…皆さんも身近な人を登場人物にして試してみて下さ〜い!番組ではクラシックにまつわるあなたの疑問・質問をお待ちしています!
(「夜の女王のアリア」)きらびやかな超絶技巧のこの曲。
でも歌っていたのは復しゅうに燃える母親の激しい怒りでした。
「魔笛」は民衆から貴族まで全ての人を楽しませるためモーツァルトが響かせた魔法のオペラ。
怒りに震える夜の女王にかけたモーツァルトの魔法を作曲家の美濃さんが解き明かします!まず最初のポイントは瞬間沸騰。
瞬間沸騰?いきなり怒りが沸くんです。
最初イントロなんですけれども1小節ちょっとしかないんですね。
これはどこまでがイントロかというと…。
タタタ…って歌はもうこの辺から出てきますので本当に1小節ちょっとしかないんです。
心の準備が出来づらいですね。
そうなんです。
ザワザワというトレモロから始まるんです。
そして一気に下降する分散和音。
この時代怒りを表現するという意味ではこの分散和音は非常によく使われていて特にこうやって…。
下がっていくというのは非常にネガティブなイメージが強いんです。
じゃあ当時のお客さんは今の和音を聴くと「あっ怒ってるぞ!来るぞ!」っていうのが分かるわけですね。
そうなんですよね。
つまりこの僅か2小節足らずでキレた。
もうキレちゃうんですか!?うわぁこれは手がつけられなくなりますね。
これがまさに瞬間沸騰。
キレてしまった夜の女王なんですけれども娘に人殺しを命じると更にこう怒りが加熱してくるんですよね。
一番多分有名な部分だと思いますけれどもこちらですね。
この部分は細かい8分音符と言われる音型が…。
8回連打していてそれによってキレてる怒ってるという感情がより入ってくると思うんです。
非常に疾走感も出てきますね。
短い音に怒りをパンパンパン…って込めるってもう相当なエネルギーですよね。
そうですよね。
そして連打の回数がだんだんと減ってきます。
このようにして連打の回数が減ってきます。
畳みかけるように上がってはいくんですけれども加速度的に勢いを増した怒りがもう止まらないですね。
ついに頂点最高音のファの音にたどりつきます。
うわ…。
どうですか?この音。
いやぁもう無理ですよね。
無理って要求されないですけど…。
ぐったりしちゃいますよね。
どれだけそこに怒りが込められてるかっていう。
マックスですよね。
そのファの音に。
ですからね「死の一撃を敵に!」って叫びながら怒りに震えてぶちぎれているという感じですかね。
怒りまくるだけではなくて少しトーンダウンをする部分があります。
それはなぜかというと怒りが頂点に達した夜の女王は娘に勘当を言い渡すんですね。
親子の絆も絶つと。
でもこの「絆」という母と子のつながりを示す言葉を口にした途端に女王も心が揺れてしまうんですね。
ドイツ語では「絆」を「Bande」と言うんですけれどもその「バンデ」のバァー…のアの音が伸びたような状態で歌うところがこちらです。
いやぁ…。
これは裏声のところと地声のところの切り替えがとても難しいところですよね。
そうなんです!さすがです。
さすがソプラノ。
(裏声で)「そんな事ないです〜!」。
やっぱりあるんですか?裏声と地声のポイントっていうのは。
ありますね。
例えばポップスでも短いフレーズの中で数回だったらできるんですけどこのオペラみたいに何回も来ちゃうと声帯が迷っちゃうんですよね。
今上がって裏声でファルセットだったのにまた地声になって「どこに行くの?」ってポジションが定まらなくて音が当てづらくなる。
だからきっとピッチ…音程が取りづらいところだと思います。
ここは本当に難しいです。
そうなんです!まさに地声と裏声の切り替わるポイントがある事によって歌手も嫌な部分ですし逆にその嫌な不安定さがこの曲のこの部分には非常にうまく当てはまるというかね。
よく出来てるモーツァルト!ゾクゾクくる〜!こういう解説聞いて音がこんなに揺れて難しいんだと思うと。
先ほどのような高い音は出てこないんですけれども派手さはないんですが地味なんだけれどもここが実は一番の難所であり聴きどころでもあるので是非注目して聴いて頂きたいなと思います。
いやぁモーツァルトさすがですね。
そうなんですよね。
それでは「夜の女王のアリア」。
怒りの七変化をお楽しみ下さい。

(拍手)いやぁ…圧巻ですね。
すごいですね。
あの僅かな時間でこんなになんかこう魂抜かれるなんてすごいなモーツァルト。
散り際がよかったですね。
よかったですね〜!言葉が出ないです。
生で見てたらほんと魂抜かれちゃいますね。
でもね森口さんと一緒に見ると更にきますね。
僕たちやっぱりただ聴く側なので割とボーッとしちゃうんですけど怖さを知ってるでしょう?なので「緊張してる…あああそこで!」っていうのを見ているのでこっちまで緊張しちゃうんですね。
大丈夫なのかな歌えるのかなって。
すごい曲なんだっていうのがよく分かります。
でも森口さんみたいな優しい方に歌ってほしいですね是非。
怖い森口さんの一面というのが…。
そう。
ナイフを渡しながらね。
「これでやってこいよ」みたいな。
あの…裏森口があるんですよ。
う〜ん裏森口さんって見たいような見たくないような見なくてもいいような…。
人間も音楽もいろいろあるから楽しいんですよね。
(荒い息遣い)2014/06/28(土) 21:30〜22:00
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「心変わりは突然に!モーツァルトの“夜の女王のアリア”」[字]

今回の名曲は、モーツァルトの「夜の女王のアリア」。人気オペラ「魔笛」の一番の見せ場の曲です。スゴ技で表現されているのは一体何なのか?その内容に驚きの1曲です

詳細情報
番組内容
今回の名曲は「夜の女王のアリア」。モーツァルトの人気オペラ「魔笛」の中の曲です。ソプラノの歌手が軽やかに歌っているように見えますが、実はとんでもないスゴ技。スゴ技で歌っているのは喜び?悲しみ?想像を超える内容に驚きの1曲です。【ゲスト】森口博子【曲目】夜の女王のアリア【演奏】ザルツブルク音楽祭(1991年)ゲオルク・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ソプラノ)ルチアーノ・セーラ
出演者
【ゲスト】森口博子,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【語り】服部伴蔵門

ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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