(テーマ音楽)日本有数の畑作地帯を流れる北海道十勝川。
川のそばまで農地が迫ります。
実はここに野鳥の楽園が生まれています。
初夏子育てのために集まってくる鳥たち。
水路や牧草地人工的な環境も巧みに利用してヒナを育て上げます。
人の営みの近くでたくましく暮らす生き物たちを見つめます。
北海道の南東部を流れやがて太平洋へと注ぐ大河十勝川。
広大な流域には日本有数の畑作地帯が広がります。
しかしかつてこの辺り一帯は湿原でした。
大きく蛇行していた川を直線化するなど水はけをよくした事で湿原は農地に変わっていったのです。
初夏を迎えた十勝川。
牧草地の緑も日一日と色濃くなっていきます。
牧草地の中にある水路。
湿原だった土地から水を排出するために造られたものです。
大きな鳥が現れました。
アオサギです。
何かを狙っているようです。
こうした浅い水路は流れが緩やかなため小魚などの揺りかごとなっています。
こちらの水路には白く大きな鳥がいました。
国の特別天然記念物タンチョウです。
タンチョウは多くの場合豊かな自然が残る湿原に暮らしています。
それがここではこんな人里近く。
しかもその足元にいるのはヒナです。
生後1か月ほどでしょうか。
タンチョウの生息数は釧路湿原などでの保護活動によって増え続けています。
手狭になった湿原から新たな子育ての場を求めてここにやって来たのです。
ヒナの旺盛な食欲に応えるため親鳥は熱心に獲物を探します。
ドジョウでしょうか。
ヒナに与えるのにちょうどよい大きさです。
でもヒナにはちょっと生きが良すぎたのか落としてしまいました。
親鳥が弱らせてからもう一度。
親子はあちこちへ移動しながら獲物を探します。
水深が浅い水路はヒナでも歩き回る事ができます。
今度は大きなザリガニです。
小さな水辺の豊かな恵みです。
(タンチョウの鳴き声)突然親鳥がけたたましく鳴き始めました。
上空を警戒しています。
(タンチョウの鳴き声)飛んでいたのは猛きん類のトビです。
(タンチョウの鳴き声)親鳥はヒナを守ろうと必死に鳴き続けます。
(タンチョウの鳴き声)アシなど身を隠せるものがある湿原と違いここは天敵から丸見え。
ヒナにとっては危険です。
しかし新しい住みかとしてこの場所を選んだ親鳥たち。
たくましくヒナを守り育てます。
十勝川沿いの農地には多くの沼が点在しています。
かつて湿原だった頃のまま残されたものです。
水深2mほどと深いため埋め立てられず農地にならなかったのです。
沼に鳥の姿を見つけました。
北海道の沼や湖で繁殖するアカエリカイツブリです。
水草をくわえました。
どうやら水草を集めて巣を作っているようです。
水に浮かぶちょっと変わった巣。
夫婦で協力して完成させていきます。
こちらは別の夫婦の巣です。
一足先に完成していました。
残された貴重な自然がアカエリカイツブリの巣作りを支えています。
この鳥たちも繁殖の時期を迎えています。
くちばしの先にある白いもの。
卵です。
ヒナが生まれるのはおよそ3週間後。
それまで夫婦は交代で卵を温め続けます。
十勝川がつくり出すさまざまな環境。
川沿いの牧草地を目当てにやって来る鳥たちもいます。
草むらの中にかわいらしい小鳥を見つけました。
ヒバリの幼鳥です。
数日前に牧草地の中の巣を巣立ったばかり。
まだ生まれてから2週間足らずです。
こちらは親鳥です。
ガを捕まえたあとすぐに草むらに入っていきます。
こうして親鳥は安全な牧草の陰に幼鳥を隠し獲物をせっせと運ぶのです。
こちらは長いくちばしが特徴のオオジシギ。
オーストラリアから来た渡り鳥です。
この時期オスは独特な音を辺りにとどろかせます。
鳴きながら飛び急降下する時に風のような音を出すのです。
(風を切る音)
(風を切る音)独特の音が聞こえたでしょうか?この音でオスは自分の縄張りを主張していると考えられています。
音が出る秘密は尾羽にあります。
(風を切る音)急降下する時に尾羽の間を風が通り独特な音が出るのです。
(風を切る音)オオジシギの音がとどろく十勝川の初夏。
ここは野鳥たちの楽園です。
この時期川面を南東の風が吹き渡ります。
その風に乗り下流からやって来るものがあります。
海霧です。
太平洋の十勝沖で暖かい大気と冷たい海水が出会う事で生まれました。
やがて一帯は霧に包み込まれます。
霧の中にタンチョウの親子がいました。
霧はヒナを天敵から見えづらくしてくれるすてきな贈り物です。
霧が晴れたあと今度は牧草地にタンチョウの親子を見つけました。
ヒナの行動範囲も広がってきたようです。
ヒナが下を向いて歩いています。
何かを探しているのでしょうか。
自分で食べ物を取ろうとしているようです。
でもヒナが独り立ちするのは冬。
夏の間は親鳥から生きるすべを学んでいきます。
人の手が加わる事で変わりゆく十勝川。
その中でたくましく生きる鳥たちの姿がありました。
2014/07/13(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「初夏 十勝川」[字]
広大な畑作地帯を流れる十勝川。農業用に作られた環境が、初夏、野鳥の楽園になる。タンチョウが水路で子育てするなど、人工環境も巧みに利用する鳥たちのたくましい姿。
詳細情報
番組内容
北海道の南東部、日本有数の畑作地帯を流れる十勝川。そこにあるのは牧草地や農業用の水路など、人が手を加えた多様な環境。かつてこの一帯に広がっていた湿原を人が農地に変えた場所だ。その十勝川周辺では、タンチョウが水路の中でヒナを育て、牧草地では可愛らしいヒバリの幼鳥が草陰で親鳥の帰りを待つ。上空ではオオジシギが風のような奇妙な音をとどろかせながら飛び回る。人工環境もたくましく利用する鳥たちの姿を描く。
出演者
【語り】村上陽子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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