NHK俳句 題「心太(ところてん)」 2014.07.13

「テレビ体操」はこの辺で。
どうぞ良い一日をお過ごし下さい。
「NHK俳句」第2週の選者は小澤實さんでいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日の兼題は「心太」ですけれども冒頭の句は小澤さんの?難しかったですね。
苦労してだいぶ作りました。
身近ですけどね心太。
身近なんですけどちょっと遠いところがあって。
この句は心太好きの女性が夢中になって召し上がってるところを詠んでみたんですけれども。
ちゅるちゅるちゅると口…。
そうですね。
今日もよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
さあゲストをご紹介致します。
今日は詩人の高橋睦郎さんにお越し頂きました。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
ご自身俳句も作られますが冒頭の小澤さんの句は?はい。
いかにも小澤さんらしいというか「すすりやめずよ」と言っておきながらそのあとでよく見てみたら口が小さかったという。
そういう感じでしょうかね。
小澤さんらしいと思います。
ただ僕はちょっと古風な人間ですから最後を「唇小さく」とするかなという。
「し」ではなく?はい。
それは僕の癖ですから。
ちょっと私がはしゃぎ過ぎてるかもしれませんね。
そんな事はありません。
「し」にするか「く」にするかみたいなところに俳句の楽しみはありますよね?ありますね。
今もお話ありましたけれども高橋さんは俳句もちろん短歌オペラ本当にさまざまな分野で活躍してらっしゃるんですが小澤さんとはもうご親交は深いんですよね?もう随分以前から親しくして頂いてます。
経堂のお宅に原稿を頂戴に伺って以来なんですけれども。
私の主宰している「澤」という雑誌に毎月原稿を頂戴して支えて頂いております。
もう創刊からずっと?そうです。
そうですね。
よくそうして下さってると思って僕は逆に感謝して大丈夫かなと思ってるんですが。
どういう事ですか?私のごとき者が。
とんでもございません。
今日はお二方の言葉のキャッチボールといいましょうかそれも非常に楽しみにしておりますのでよろしくお願い致します。
(2人)よろしくお願いします。
それでは小澤さんが選ばれました入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
不思議な句なんですが漢字の部首3つと「心太」を取り合わせてるんですよね。
「くさかんむり」「きへん」「さんずい」それぞれ自然を感じさせるものでそんな環境の中で召し上がってるという事ではないかと思うんですけども。
魅力があります。
いかがでしょう?口調がすごくよくて歌か何かみたいですね。
そしてこれ「かんむり」「へん」「ずい」というふうに全部違えてるのも面白いですね。
本当にやっぱり草が茂り木立があって水が流れてる所で食べてるのかなって感じがします。
平仮名で流れるようにこうね…。
はい。
では2番です。
おじいさんの手作りの道具を使って心太を作って召し上がってる訳ですね。
道具を「てん突き」というのもこの句で教えて頂いて。
てん突きという道具からしっかり見つめているところがすばらしいと思います。
でも自宅にあるって相当お好きなお宅って事ですよね?そうでしょうね。
おじいさんもお好きなんでしょうね。
今度は3番です。
取り合わせの鮮やかな句です。
心太を食べながらふと目を移すと新快速の電車が通っていったという訳ですね。
痛快な感じがしますね。
つるつると食べ電車もさっと走っていくという調子のいい句なんです。
風通しがいいですよね。
「新快速」というところがいいですね。
「快速」だけじゃなくて。
「新」というのが働いてるかもしれないですね。
そうですね。
ありがとうございました。
今度は4番です。
これは心太を高層ビルの上の方の食事処で召し上がってる訳でしょうね。
下を見ると雑踏が広がっていて人々がたくさんいてちょっと下りていきたくはないなと。
このまま涼しい所で心太を食べていたいなというそんな感じがします。
僕はこの句は非常に好きな句でした。
感じがよく出てると思いますね。
やっぱり涼やかな所にまだいたい。
そういう気分を?うん。
そうじゃないのかもしれないけれどもいずれにしてもその取り合わせが実にうまいな。
ありがとうございました。
今度は5番です。
「心太」の句で恋の句が出てくるというのが驚いたんですよね。
そのデートも江の島に初めてのというのが楽しいですよね。
いかにも「心太」というものが生きる場所を考えられたと思っています。
何かこの「心太」が出てくるところを見るとこの人たちは恋によってじゃなくてお見合いのあとだという感じがするんです。
江の島も。
初のデートで心太食ってるところもね。
そういう何か想像させると面白いですね。
お互いそんなに親しくなくてちょっと恥じらいもあるという。
初々しい訳ですよね。
そこに「心太」が合ってる。
「かき氷」よりいいと思うんです。
今度は6番です。
取り合わせの楽しい「心太」が出ています。
少女の会話以前ですよね。
だた笑ってるだけなんですが笑ってるだけでも会話は成り立っているという。
心太のちょっと酸っぱい感じもよく利いているんじゃないでしょうか。
これは男性ですね?作ってるのは。
何かその中に入れないようなところもありますね男性から見て。
そういう少女というものの何かその固さというか怖さみたいなものもちらっと。
拒まれてるような感じありますね。
そう言われますと。
私何か素朴な感じがと思ったんですけど。
怖さとか…。
いや〜僕も気が付かなかった。
男性から見るとね。
そうですか。
今度は7番です。
これいいシチュエーションの所で心太を召し上がってます。
周りが鉢棚があってそこに日照雨が来て更に涼気を感じますね。
涼しげな句です。
多分これは心太を食べさせるお店の風景だと思うんですが。
鉢棚に並んでいる植木鉢ですねそれに日照雨が降ってるのが細かく見えるんですね。
これは実にいい句だと思いますよ。
日照雨というのは天気雨の事ですね。
日が照ってるのに雨が降ると。
それが「心太」と絶妙ですよね。
何か下町の縁台に座って葦簾なんかあるとそんな感じですか?そうですね。
ただこれはお店ではないかと僕は思うんですけどね。
茶店かもしれないですね。
葦簀か何かあってね。
今度は8番です。
相当洗濯物がたまってましてそれを一気に三度してる訳ですね。
ですから久しぶりの晴れなんでしょう。
その洗濯疲れの身に心太がよくしみるような気が致します。
「三度する日」だからこれは二度ぐらいした三度目にする前にちょっと心太すすってるのかな?そうかもしれないですね。
何か暑くて…。
ちょっとくたびれてるんですよね。
まぶしくて。
心太ちょっとほっとという感じなんですかね。
さっきの二杯酢の感じが実に。
ちょっと酸味が…。
そうですね。
では今度は9番です。
心太を箸一本で食べる作法の地方があるようなんですよね。
それを守っている父なんでしょう。
そのちょっと一本気な父の風貌も見えてくるような気がします。
小澤さん長野ですけどあんまり?僕は箸一本というのは初めて。
ご投句で知ったみたいなところがありますが。
高橋さん九州の…?僕も初めてで。
この人軽業みたいだなと思ったけどそういう地方があるんですね。
よくお箸…そして甘酒なんかも一膳ではなく一本でこう…。
まあ甘酒は分かりますけどね。
そうですか。
以上が入選句でした。
特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
津田清子さんは師橋本多佳子の背中から俳句を学びました。
(津田)和具という所に多佳子先生と行ったのは昭和30年。
俳句始めて5〜6年という時に目の前で泳ぐ海女さんを見るというのは本当に初めてで何か驚きでした。
ある日「これから私の後ろについてきなさい」と言うてね先生が手帳を持って何か立ち止まってはかちゃかちゃと書いてまた歩いて。
俳句って何か見つけないと駄目なんだなと。
朝まで考えてるんじゃなくて。
先生の身をもって写生というものが大事だぞという事を教えて下さったんです。
名張の駅で降りて降りた途端に入れ違いに大きな猪を棒に刺して前足と前足後ろ足と後ろ足くくってぶら下げて猟師さんが電車乗ってきたんです。
私猪なんて近くで見るの初めてですからもうびっくりしてすごいなと思ってね。
結局その時に私は猟師になったつもりで猪を討ち取ったつもりで俳句作ったんです。
それでは特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?高原晴子さんの句です。
二席の句です。
鈴木ゆみさんの句です。
一席の句はどちらでしょう?熊谷謙一さんの句です。
スピード感がいいですねこの句は。
この「新快速」の…?ええ。
「新快速」。
痛快です。
すうっと句も通っちゃいますね。
そうですね。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらのNHKの俳句テキストに掲載されます。
俳句づくりのためになる情報も参考になさって下さい。
では続きまして「入選の秘訣」です。
ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
今日は一番言いたい本意は言わない抑えておくという事をお話ししたいと思います。
お願いします。
こちらの句でお願い致します。
「心太」の一番大事な事は食べて清涼感があるという事ですね。
ですからこの句に含まれている「涼し」というのがそれを言ってしまってるんですね。
「川風涼し」。
それがもったいないところがありました。
この「涼し」は抑えておきたい。
それから形としては「八百八橋」で切れて「川風涼し」で切れて三段切れになってますね。
これも解消したいです。
ですから「心太」を上五に持ってきましてそして「川風涼し」の「涼し」を取りまして「風の中」と致します。
そうしますと「涼し」と「心太」の季重なりも解消していろんな問題が解決しますね。
すっきりとしたいい句になりました。
一番言いたい事は逆に…。
抑えるという事ですね。
どうぞ参考になさって下さい。
それでは小澤さんへの投稿のご案内です。
この「秋の水」。
これも兼題なんですか?そうですね。
大事な題なんですけれども。
涼しくなってきまして水が澄んできます。
そこに注目した題であります。
いろんな水が詠まれますけれども。
川や池やそして身近にあるコップの中の水を詠んでもいいと思います。
どんな水であるかという事が分かるように詠んでみるというのも大事な切り口じゃないでしょうか。
どしどしご応募下さい。
では投稿のご案内です。
それでは小澤さんの年間のテーマ「季語について考えておきたいこと」。
今日は代表的な俳句の作り方一物仕立そして取り合わせその2つにおける季語の使い方の違いについてお話ししてみたいと思っております。
まず一物仕立の句です。
一句を通して一つの事を詠む。
季語の事を詠むという事になります。
この句は一句を通して心太の食べ方を詠んでいます。
「みじかき箸」というのがいかにも心太らしい。
うまいところを描いてますけれども。
一句全体において描写をしていってその描写で今まで作られている「心太」の句を乗り越えたいと思うんですよね。
何か新しい切り口で新しい発明で新しい句を作るというのが一物仕立の季語の使い方です。
新しい発見がなければ?新しい発見。
それを見つける事が大変です。
それから取り合わせの季語の場合この句をご紹介します。
この句は「心太」という季語と「シュルレアリスム宣言ぞろり」という季語以外のフレーズで出来上がっています。
心太を食べながらシュルレアリスム宣言アンドレ・ブルトンの詩の宣言を思い出してるのかもしれません。
不思議な通い合いがあると思うんですけれども。
取り合わせの季語においてはこの句のように「心太」については何の説明も解説も加えていません。
それが大事なところだと思うんですね。
取り合わせの季語に使う時には季語の説明解説は加えない。
季語だけで置くと。
それが大事な事だと思います。
取り合わせについてはまた次回詳しく?次回また詳しくお話しします。
よろしくお願い致します。
さあ今日は高橋睦郎さんをゲストにお招きしているんですが。
そして兼題は「心太」なんですが高橋さんが特にお好きな「心太」の句があるんだそうですね教えて下さい。
これは「心太」をさっきのてん突きで突いてそして器に落ちていくその様子を「銀河のようだ」というふうに言ってる訳ですね。
そしてそれを「白髪三千丈」とかそういう成語がありますが漢詩の中に。
それを使って「銀河三千尺」。
そんなにあるはずないんだけどそれに匹敵するぐらい何か涼しいというかそういう事を言ってる訳ですね。
だから心太という日常的なものを宇宙的なものにまで転換してるすごい句だと思いますね。
この蕪村という人は案外人に…僕らはみんな知ってますけど幕末まではほとんど誰も知らなかったんですね。
これを発見したのは正岡子規なんですけど。
この正岡子規という人が実はニックネームが心太だったんです。
どういう事ですか?彼の幼名というか本当の名前は正岡処之助なんですね。
「ところ」はどういう…場所の処ですか?処です。
処之助ですから心太ってあだ名付けられてからかわれたんでもう嫌になって升という名前に変えちゃった。
升はね…。
心太っていわれたんですか?知りませんでした。
心太と正岡子規は深い縁があるんです。
小澤さんもしかしてそれをご存じで兼題選んだんじゃないですか?いえいえ。
知りませんでした。
それにしても本当に蕪村はこういう宇宙にまでやっぱりこう…。
すごい想像力ですね。
大きいですね。
しかも美しいんですよ。
さあそういう句でしたけれども今度はご自身が高橋睦郎さんが詠まれた「心太」の句もここでご披露して頂けるんですね?はい。
お願いします。
心太…さっきのてん突きですけども。
これ実際に突いてみるととっても楽しくてうれしくなって幾突きもしたというまあ子どもみたいな気持ちなんですけど。
これがいいかどうか分かりませんけど。
僕はやっぱりある季語を使う時にその季語の本意というものを。
そうするとどうしてもそれは一物仕立になっちゃうんですが。
それをやはり作ってみたいなって気持ちがいつもあるんですね。
状況説明とかそれから風景描写とかそういう事だけじゃなくてやっぱりその本意に迫ってみたいなと思って。
これがそうなってるかどうか分かりませんけど僕の試みの一句です。
子どもらしい感じがしますね。
それから「心太」という季語の楽しさ…輝くばかりの楽しさというものがよく表現されていてすてきな句だと思いますね。
それだったらいいんですけどね。
「突く」というリフレインを「幾突き」という形に変えられて登場しているところに味わいがあって。
ありがとうございます。
いつまでも突いていたいというような気がしますね。
高橋さんのいつもおっしゃっている事なんですが個性という事に対してとても教えられてるんですが自分自身の個性を述べるよりも季語一つ一つの個性を考えるべきだというふうにおっしゃってるんですけれども。
何だって結局はそのテーマについての個性が大事なので。
自分の事を私はこんなに偉いんだぞとか私はこんなに変わった人間だぞって言ったってしょうがないと思うんですね。
「心太」なら「心太」というものの個性をなんとか表現してみようと一生懸命やる事によって自分が非常に自由に楽になるんじゃないかなって気がするんです。
それだけ一つの言葉というものが深いものを持っていて自分自身よりもその一つの言葉の方が大きい深さがあるんですよね?そうですね。
そのために俳句というのは僕はあるんだと思うんですよ。
何て言うか…自分はこんなに俳句がうまいぞって事じゃなしにそれを作るとか関わる事によって自分がうんと自由になってその俳句を通して自分が自由になるというか。
その事が大事じゃないでしょうかね。
表現というのはそういうものだと思うけれど。
今日は改めて季語の深さといいましょうか伺ったような気がしました。
また心太も少し心してつるつるっと。
そうですね。
味わいが深くなったんじゃないですかね。
ありがとうございました。
高橋睦郎さんに今日はお越し頂きました。
小澤さんまた次回もどうぞよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
それでは今日はこの辺で失礼致します。
ごめんください。
(きてきのおと)2014/07/13(日) 06:35〜07:00
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「心太(ところてん)」[字]

選者は小澤實さん。ゲストは詩人の高橋睦郎さん。詩、短歌、俳句と様々な分野で活躍中の高橋さん。俳句を詠む際は、季語の本質をつかむことが大切だという。題 ところてん

詳細情報
番組内容
選者は小澤實さん。ゲストは詩人の高橋睦郎さん。詩、短歌、俳句とさまざまな分野で活躍中の高橋さん。俳句を詠む際は 季語の本質をつかむことが大切だという。題「心太(ところてん)」【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】高橋睦郎,小澤實,【司会】桜井洋子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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