おはようございます。
ナビゲーターの六代桂文枝です。
しかしあれですね…私もずっとまだまだ若いと思ってましたですけどもそれなりに齢を重ねるとちょっと最近感じるのは相手の言う事が少し聞き取りにくいというか耳が遠くなったっていいますかね。
しかし人間の体は自分でバランスをとるように出来てるんですね。
耳が遠くなった分ねトイレは近くなりました。
バランスがとれてるかどうかは分かりませんですけども皆さんも年を美しく重ねて頂きたいと思います。
さあ今日の出演者でございますけどもコントチャーリーカンパニーさん。
落語の方は鈴々舎馬桜さんで「子ほめ」でございます。
どうぞ。
もしもし?もしもし?何?どうした?何?お通夜にお客さん少ない?少ないって何人ぐらい来てくれてんの?3人?お前たった3人じゃただ身内だけで密葬みたいになっちゃうじゃないの。
それでお前香典は集まらないしお清めに用意した酒は余るし料理は残っちゃうし。
いや「そこら辺で誰か連れてきてくれ」って言ったって。
あ〜じゃあちょっと俺知り合いに電話してみるから。
うん…来てくれるかどうか分かんないよ。
電話してみる。
はいはいじゃあ一回切るよ。
何だよ何でお客さん少ないんだよ…。
はあ〜何にもねえなこの辺閑散としちゃってな。
飲み足んねえ〜!腹も減ったしな。
あの…何かお探しですか?何?いや何か探してらっしゃるのかなと思って。
どっか飲めるとこねえかなってな。
ありますよ。
ある?どこだよ?お客さんうちですうち。
あんたの所?お客さんよかったですね。
今日うちね食べ放題飲み放題なんですよ。
食べ放題に飲み放題?いいね。
…で帰りお土産つきですから。
ちょっとなにお土産までついちゃうの?はい。
のりとお茶と塩です。
のりとお茶と…塩?お塩。
はいはい…。
ちょうどよかった。
今ねうち塩切らして…エヘヘヘッ。
いやいやそんなにたくさんはないですよ。
ゆで卵1個か2個食べれば終わるぐらいの小さな袋が1袋入れてありますから。
あ〜そうなの?それでよ料理どうなんだ?大丈夫か?大丈夫です。
あの…煮物が中心ですけど。
何だおめえ煮物かよ!よかったら揚げ物もありますしね。
うわ〜もたれるよ。
おすしもありますしお漬物も…。
今おすしって言った?はい。
握りが。
あの円いお重で用意してありますから。
それを早く言って。
俺ねおすしがあるんだったらほかのもの要らねえんだから。
よかったですね。
しかもそれ食べ放題です。
はいはい。
そのほかに日本酒ビールジュースウーロン茶しょうゆ飲み放題です。
ちょっ…しょうゆなんか飲んだら熱出るわ!そうですよね。
まあまあいいや。
飲み放題食い放題。
そうなんです。
あとさカラオケも歌い放題?カラオケですか?そうだよ。
ごめんなさい。
カラオケはないんですけど棺おけならありますけど。
バカ。
棺おけじゃねえよ。
カラオケだよ。
ごめんなさい。
こっちの方は用意がないんですよ。
すいません。
じゃあ歌ねえのか?歌ない事はないですよ。
坊主頭の男の人が来て1曲生演奏で歌ってくれます。
そうなの?それさバンドか何か入ってんのか?いやバンドは入りませんけど…打楽器は入ります。
打楽器入ってんの?なにそいつはプロか?アマ
(尼)ではありません。
男ですね。
男のプロです。
はいはい…。
大したプロではないと思いますので。
何?…というのはねいまだに何か歌詞を覚えてないんですよ。
はあ?最初から最後まで歌詞カード見ないと歌えないんです。
何何何?何かね自分の家から持ってきたこのぐらいのつながった歌詞カードがあるじゃん。
ジャバジャバジャバッとなるのが。
あれ見ながら「ウ〜ジェケンウ〜ジャケ…ホウジャカヌワジャカナンナンジェ〜…」って。
最後に打楽器を「フワワワワ〜ン」と鳴らすの。
じゃあ何だそれ聴くだけか。
やっぱりみんなでさダ〜ッと大合唱とかしたいのにないのか?合唱はありますよ。
あ〜あんの?あの坊主頭の男の人が歌い終わりますと司会が「合掌」って言いますのでその時全員で合掌して頂きますから。
あんのか!ありました。
そんならいいのよ。
よかった。
にいさん今日さママはいんの?ママ。
ママって何ですか?ママはママだろうよ。
あ〜未亡人の事ですか?何?ママ未亡人なの?おりますなりたてピチピチが。
「なりたてピチピチ」?もう3日前になったばっかりなんですよ。
そうかまだママ慣れてねえんだな。
もう全然慣れておりません。
ちなみによ今日どんな格好してんだ?今日はね着物着ております。
着物か。
よしじゃあな俺その未亡人ドッカンドッカン笑かしてやるから行こう!ちょ…ちょっと待って下さい。
お客さん今日向こう行っても人を笑わしたりしないで下さいね。
はい?それで面白い話なんかする必要ありませんから。
そうなの?じゃあ俺何しゃべりゃいいんだよ?ですから今日は専ら故人の思い出話に花を咲かせて頂ければいい…。
俺個人の思い出話?ただお客さんこの言葉言えますかね?「いい人だったな」。
はあ?「世話になったんだよ」。
何何?ちょっと試しに言ってみて頂けません?いい人だったな。
世話になったんだよ。
お客さん上手ですね!そうかい?お客さんそれだけ上手でしたらねもうひと言つけて下さい。
まだあんのか。
「でもちょっと早すぎたな」と。
すいませんが3つ続けてお願いします。
分かりました。
いい人だったな。
世話になったんだよ。
でもちょっと早すぎたよな。
お客さん完璧!今日は向こうへ行ったら飲みながらその3つの言葉を時々思い出したようにつぶやいて下さい。
分かりました。
行きましょう。
ちょっと…にいさんごめん。
何ですか?一つ言っておくけどさ行ったはいいけど最低だったっていう事ねえだろうな?最低って事ありません。
斎場ですから。
最上なのか!よっしゃ分かった。
行こうあっ…。
まだあるんですか?あるのよ。
ちなみによそのにいさんの店名前何っつうんだよ?これから行って頂くのはこういう看板が出てますので。
「尾津家」。
いや尾津家じゃないですよこれ。
「尾津家」って読むんです。
尾津家です。
いい加減にしろ!
(2人)ありがとうございました。
(拍手)
(出囃子)
(出囃子)
(拍手)え〜手前の方とも一席おつきあいのほどを願っときますけども。
お客様にお土産を差し上げたいと思いますけども品物じゃございません。
小ばなしというやつでございましてね。
「粗忽の蛇」というタイトルが付いておりまして。
「なあ兄貴」。
「どうした?弟」。
「俺たちは毒蛇だよな?」。
「うん。
俺たちがかめば人間なんか30分でイチコロだ」。
「うん…」。
「どうした?浮かない顔して」。
「さっき舌かんじゃったんだよ」。
(笑い)まあ付焼刃ははげやすいなんて事を申しまして人間おなかの中にない事をやるというのはやり損なう事があるんだそうでございますけども。
「こんちは〜!隠居はんいますか?あっいたいたいた…。
今その角で熊公に会ったら隠居はんのとこ行くって言うとねただの酒があるって聞いたんですよ。
あっちゃもうね酒と聞くと目がありませんからただの酒一杯でいいですからおごって下さいな」。
「おいおいお待ちよ。
何かの聞き違い。
うちはな灘に親類があって時たまそっちから送ってもらってんだ。
『ただの酒』じゃない。
『灘の酒』だ」。
「ハハハッ『ただ』と『灘』僅かな違いだい。
ごちそうしろ」。
「なんて口の聞き方をするんだい。
こういううちへ来たら一とおりの挨拶をしてお世辞の一つも使ってごらんよ。
そうすりゃ『親類から酒が届いてる。
一杯飲まないか?』って事になるんだから」。
「へえ〜どんな事言やいいんですか?」。
「まあ…『こんちは。
結構なお天気でございます。
相変わらずこのうちはお掃除が行き届いて結構ですな。
また床の間の掛け軸結構なものが掛かってますな』これぐらいの事を言いなよ」。
「あ〜なるほどね。
じゃあ早え話フンッ…腹にねえ事言やいいんだ?」。
「嫌なやつだね。
仮に往来で知ってる人に会ったらどんな挨拶をしてるんだ?」。
「知ってるやつに会ったら?『おう!どうした?まだ生きてたか!』って言ってますね」。
「『まだ生きてたか』?相手は怒るだろう?」。
「怒りませんよ。
私の友達ですからね。
『うん今日も丈夫で動いてる』って」。
「ゴキブリだよそれじゃ。
しょうがないな。
仮に往来で知ってる顔に会ったら『しばらくお会いしませんけどもどちらかへでもお出かけで?』先方もそうだな…『商用で南の方へでも行っていた』と言ったら『道理でお顔の色がお黒くなった』これぐらいの事を言っときな」。
「ちょいちょい…今何つう?『顔の色が黒くなった』?冗談言っちゃいけませんよ。
人間はね色の白い方がいいんですよ。
『色の白いは七難隠す』っていいますからね」。
「それがそうでない商用だ。
『さぞかしそれはおあし儲けでございましょう。
しかしあなた様なんざ元がお白いんですから故郷の水で洗えばまた元どおり白くなります』向こうだって悪い心持ちのもんじゃないよ。
どっかで軽くこんな事になるんだ」。
「ああ…なるほどね。
じゃあもし一杯飲ませなかったら隠居はん立て替えてくれる?」。
(笑い)「立て替えるってのはいかないな。
そういう時には奥の手を出すんだな」。
「知らなかったよ。
右手と左手ともう一本奥の手って出てくるんだ」。
「そうじゃないよ。
相手の年を聞くんだ」。
「年を?」。
「うん。
『失礼ではございますがあなた様のお年はおいくつで?』そうだな…仮に先方が45とでも言ったら『45とは大層お若い。
どう見ても厄そこそこでございます』これぐらいの事を言っときな」。
「はあ〜なるほどね。
相手が45って言うとよ『45とは大層お若い。
どう見ても百そこそこだ』」。
(笑い)「『百』じゃないよ。
『厄』だよ」。
「何?その『厄』ってのは」。
「男の大厄423つ若く言われたらいい心持ちのもんだろ?」。
「ああ…でも相手が45だったらいいけどさ50だったらどうするんですか?」。
「そこはそれ臨機応変だな」。
「あ〜なるほどね。
相手が50だって言うとよ『50とは大層お若い。
どう見ても臨機応変だ』」。
「分かんないやつだね。
下に言うんだ。
ものの順だよ」。
「じゃあ十ぐらいの子どもいて『あなたおいくつです?』『十』『まあお若い。
どう見ても5つ6つだ』」。
(笑い)「はり倒すよお前は。
第一当の子どもがいい心持ちになって『おじさん脇で一杯やりますか』って言うかよ」。
「言いません」。
「そういう時はそばについてる親御さんをいい心持ちにさせるんだな」。
「親を?」。
「うん。
『失礼ではございますがこの子はあなたのお子さんですか?あなたにこんな子があるとはちっとも存じませんでした。
総体を見回しますと先年亡くなりましたおじい様に似て長命の相がございます。
栴檀は双葉の頃より芳しい。
蛇は一寸にしてその気を顕す。
ああ…こういうお子さんにあやかりたいあやかりたい』向こうだって悪い心持ちのもんじゃない。
軽く一杯って事になるんだ」。
「知らなかったよそのお世辞ってやつ。
いつも手銭でやってたんですよ。
じゃあこれから町内ぐるっと回ってね下地作って改めて来ますからねどっちかって言うと私はね冷やより燗の方が好きなんですよ。
じゃあ燗つけて待って下さいな。
あっ向こうから伊勢屋の番頭さん来るよ。
あの人よく知ってんだ。
あの人やっちゃおう。
お〜うそこ行くの伊勢屋の番頭さんじゃありませんか!」。
「おやどうしました?町内の色男」。
「向こうの方がうめえなおい。
一杯ごちそうしなきゃいけねえかな…。
しばらくお会いしませんでした」。
「よせよ。
ゆうべお風呂屋さんで会ったじゃないか」。
「ああ会いましたね」。
「お前さんだろ?私のパンツはいてっちゃったの」。
(笑い)「いや私じゃないですよ」。
「みんな『お前だ』って言ってた」。
「じゃあそのお風呂屋さんで会う前はしばらく」。
「変なしばらくだね。
ちょいとね南の方へ行っていたんだ」。
「えっ?南の方へ?それはさぞかしおあし儲けでございましょう」。
「それがそうでないんだよ。
親戚に婚礼があってさ祝儀届けて出銭で弱ってんだ」。
「あ〜これこっちも弱っちゃったな…。
じゃあそれちょっとこっちへ置いといて道理でお顔の色がお黒くなった」。
「よせよ。
そんな急に言うなよ。
黒い?」。
「黒いなんてもんじゃないよ。
真っ黒フフッ…。
裏表が分からねえ」。
「そんなに黒くない」。
「まあまあいい…。
あなたなんぜ元が黒いからね故郷の水で洗うとまた元どおり。
…あれ?黒くなるね。
どう?一杯飲ませる?」。
「誰が飲ませる!」。
「飲ませない?飲ませなきゃいいんだよ。
こっちには奥の手っていうのがあるんだから。
失礼ではございますが番頭さんあなたのお年はおいくつで?」。
「よせよ。
こんな往来の真ん中で人の年聞いちゃいけないよ。
私はもう駄目なんだから」。
「えっ?駄目?だいぶもちそうですよ」。
「そうじゃないよ。
いっぱいになっちゃったの」。
「バケツに?」。
「はり倒すよこの人は。
私はこんだけだよ」。
「えっ!そんなに大きくて…4つ?」。
「バカだねお前は。
4つな訳ないだろ。
上だよ」。
「わ〜400?」。
「はり倒すよこの人は。
間の40だよ」。
「40?よっ!40とは大層若い。
どう見てもや…ん!?あのすいませんけどね45になって頂けます?」。
「何だよ訳の分かんない事さっきから言ってて。
何かまじないに使うのかい?じゃあ分かった。
ええ?45だ」。
「よっ!45とは大層若い」。
「そりゃそうだ。
本当は40なんだから」。
「何か言わないでそのまま押し切って」。
「うるせえんだな。
じゃあ45だ」。
「45とは大層若い。
どう見ても厄そこそこだ」。
「2つ余計だよ」。
「あっ痛っ!痛え〜。
怒って行っちゃったよ。
しょうがねえな。
大人よそう。
暴力振られるから子どもにしよう子どもに。
あっそうだよ。
子どもっちゃ竹のうちで子どもが生まれたんだ。
仲間のつきあいで割り前取られてるんだからな。
あそこ行ってこうじゃないかな。
こんにちは〜?竹ちゃんいるかい?こんにちは〜!…あれ?誰もいねえのかな?おい。
おう!どうした?このうちは死に絶えたか?」。
「よせよ。
いるよ。
何だい?」。
「アハハハッ!今度はお前ん所子どもが生まれて弱ってんだってな?」。
「よせよ。
うちじゃ祝ってるんだよ」。
「ハハハッ!おら祝儀届けて弱ってる」。
「しょうがないね。
返そうか?」。
「返さなくたっていいんだよ」。
「何だい?」。
「何だいって今日はちょいとね子ども褒めてね一杯ごちになろうと…」。
「ああそうか。
飲ませる上がんな」。
「そうそう…そうはいかないの。
やっぱり子ども褒めねえと気持ち悪いからね。
どこ?」。
「奥の6畳に寝てるから」。
「そう。
上がらしてもらうよ。
どこ?」。
「そこに寝てるだろ?」。
「じいさんによく似てるな」。
「そうかい?みんなかかあ似だって言うけどね」。
「それがそうでないよ。
じいさん似だよ。
この頭のはげ上がっちゃった具合。
眼鏡のかけ方。
おまけにヒゲなんざ生やしてやんの」。
「それはじいさんが脇で添い寝してるんだよ」。
「ハハハッ。
そそっかしいじじいだ」。
「おめえがそそっかしいんだよ」。
「どこ?」。
「その足元にいるだろ」。
「あっ!これ?これまた小さいね。
育つかな?」。
「よせよ。
育つんだよ」。
「あら〜真っ赤だね。
これいっぺん茹でたの?」。
「タコじゃねえや。
赤いから赤ん坊っていうんだ」。
「ああ!赤いから赤ん坊か。
黄色いとさくらんぼ?」。
「古い事言ってやんのコンチクショー」。
「時に竹さん」。
「おっ口調が変わったね。
何だい?」。
「失礼ではございますがこの子はあなたのお子さんですか?」。
(笑い)「よせよ。
そうやって面と向かって改めて聞かれると自信がなくなってくるじゃない。
確かに俺の子だよ」。
「あなたにこんな子があるとはちっとも存じませんでした」。
「何を言ってやんだ。
知ってるから…」。
「続きがあるんだよ。
総体を見回しますと先年亡くなりましたおじい様に似て…」。
「バカバカバカバカ。
じいさん脇で昼寝してるよ」。
「アハハハッ悪かった。
じゃあばあさんに似て…」。
「ばあさん買い物行ってるよ」。
「あら〜お前んとこは両方とも丈夫だね。
どっちか絞め殺す?」。
「冗談言っちゃいけねえよ」。
「じゃあこれちょっとこっちへ置いといて。
洗濯は2晩で乾くかな?」。
「知らないよそんなもの」。
「ジャワスマトラは南方だってんで。
このお子さんはかやつるか首つるか。
どうだい?一杯飲ませるか?」。
「誰が飲ませる!縁起でもねえ」。
「飲ませない?飲ませなくたっていいんだよ。
こっちにはね奥の手というのがあるんだから」。
「何だい?」。
「失礼ではございますがこの子のお年はおいくつで?」。
「よ…よせよおめえ。
生まれたての赤ん坊の年聞いてどうしようっていうんだよ。
今日で生まれて7日目」。
「ああ初七日?」。
「はり倒すよ。
お七夜っていうんだよ」。
「ああお七夜っていうといくつ?」。
「決まってんじゃねえか。
数えの一つだよ」。
「一つ?」。
「うん」。
「一つとは若い」。
「バカヤロー。
『一つとは若い』一体いくつなんだ?」。
「どう見ても半分だな」。
「半分だ?ちっともお世辞になってねえや」。
「ああそう?…あら?この何?赤ん坊のとこに何か短冊があってこれは辞世の句か?」。
「よせよ。
辞世の句なんて縁起の悪い事言うなよ。
いや伯父さんが来てな親戚の伯父さんが歌やるんでさ上の句だけ作ってな下の句を誰かできる人にやってもらいたいんだ」。
「へえ〜何て書いてあんの?」。
「うん?俺の名前をとってな『竹の子は生まれながらに重ね着て』ってんだよ」。
「へえ〜じゃあ俺が下の句つけてやろうか?」。
「おい大丈夫か?」。
「大丈夫だよ。
『竹の子は生まれながらに重ね着て』だろ?」。
「うん」。
「『育つにつれて裸にぞなる』」。
(拍手)ちょっとね話は変わりますけど宝物を毎回ゲストの方にね持ってきてもらうんですよ。
どうでしょう…師匠にとってどうか分かりませんけど私にとって非常に思い出深い宝物があるんですけど今日はそれをうちの弟子の愛一郎に持ってきてもらってます。
愛一郎さん?愛一郎さんお願いします。
この人が愛一郎さんですか。
こちらで…。
ちょっと上がって下さい。
上がるんですか?上がって下さいせっかくですから。
お邪魔します。
すいません。
こちらでございます。
愛一郎さん何かこのごろえらい注目されてね。
注目されてますか?あんたちょっとだけ聞きますけど何でまた歌舞伎に入ろうと思ってそれで女形にやろう思ったんですか?ちょっと興味があって…。
入られて…楽しくなって?はいそうですね。
愛一郎というお名前をもらって。
はい。
この人は三階さんですか?今は。
そうですね。
頑張って下さい。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
こういうすばらしい三階さんから出世なさった方もいらっしゃる…。
ありがとうございました。
やっぱり手の着き方がいいですね。
そうですね女形ですから。
ありがとうございます。
これは何なんですか?これは手鏡なんですよ。
ええ…見たら分かります手鏡。
これ手鏡やろうなとは思いました。
えらい古い…。
そうなんです。
私が千代丸という…千代丸っていうお名前を頂いて僕十三世の部屋子という待遇で入れて頂いたんですけど部屋子っていうのは特別待遇で師匠ご存じでしょうけど普通のいわゆる今おっしゃいます三階さんと名題さんがありましてその名題試験に受かって披露すると名題になりましていわゆる7〜8人部屋に入れて頂いてそこで初めて名題になってセリフが頂ける訳なんですね。
部屋子として入りますとこの皆さんの大勢の部屋に入らなくていい訳なんですよ。
名題から…名題さんのお部屋からスタートさせて頂けるので非常に特別待遇でいわゆる十三世仁左衛門の部屋子という事で入れて頂いたので部屋の子どもの子と書きますので部屋の子なので一緒にお部屋入れて頂く事もしばしばあるんですけどものすごい緊張するじゃないですか。
いろんな偉い方がいらっしゃるので。
でも非常に勉強になりました。
そこで部屋子になりましてその時やはり兄弟子がたくさんいらっしゃいましていろんな事を教えてもらいましてそこで千代丸という名前を頂いたのが十三世の本名が片岡千代之助でしたのでこの「千代」というのを頂いて千代丸と。
それが9歳の時頂いたんですけどもそれから10年たってそろそろ名前を変えなくてはという時に十三世から「うちにはいい名前があるから愛之助という名前を継ぎなさい」と言って下さって僕はすごくうれしかったんですけどその時に「養子にならないか」って言って頂いて…。
それもう芸養子という?いや本当に戸籍上からの養子なんですよね。
そうでっか。
それをうちの今父の秀太郎に言われまして相談…もちろん「相談してきなさい」と。
スクリュー屋のお父さんがいるじゃないですか。
そうなんですよ。
ですから…。
そこから籍抜く訳でしょ?そういう事ですね。
いわゆる結婚みたいなもんです。
名字が変わっちゃうので。
その時に帰りまして実家の両親に相談しましたら「一生歌舞伎界で生きていくんなら行ってこい」と。
いとも簡単に…。
すごいですね。
いとも簡単に言われまして。
一人息子でしょう?でも…。
そうですそうです。
ほう〜…。
母親はもちろん同じくという感じでしたので嫌われてたのかなと思うぐらい…あっという間に出されてしまいまして。
あっ…何が言いたかったのかといいますと養子に入れて頂いた時に愛之助を披露するという事になりましていわゆる例えば仲居1とか2とかそういう数字だった訳ですよ千代丸時代は。
それで愛之助を継がせて頂いた時なにがしという役名を頂ける訳なんですよね。
そうすると今度はお客様へアピールしなくてはいけない。
今まででは千代丸時代は真の役者さん主役さんが前でお芝居をしてらっしゃって僕らは後ろで邪魔にならないようにでも死んではいけない。
そのお芝居の中に生きてなくてはいけないこのすごく難しい…。
あまり…そうなんですよ。
せやけどこんな…あんまりこうやってね目立ってはいけない。
みんなとそろってなくてはいけない。
そればっかりを学んできた訳ですからそこからガラッと変わって一人でお客様へ今度アピールってなかなかできないですね。
できなかったですね。
…でその時に愛之助を披露するとなった時に今までの片岡というかその身内の兄弟子たちがみんなでお金を出し合って下さって私にこれをプレゼントして下さったんです。
しかも松嶋屋の追いかけ五枚銀杏って紋入りの手鏡。
ですから今よりも20年以上前ですね。
20年ちょい前に頂いたこれは本当に思い出の品として。
いいですか?しかしこれみんなでお金出し合って…。
まあ兄弟子はちょっと…ある種嫉妬があっても不思議やないのに「頑張れよ」と?そうなんです。
そこなんですよ。
これがすごいじゃないですか。
本当に僕うれしかったですね。
普通はやっぱりそういう事ありますしこっちもすごくどう言えばいいんですか…やりにくいじゃないですか。
今まで「にいさんにいさん」って言ってはった人が急にいわゆるこの世界へ入る呼び方としては坊ちゃんになる訳ですから。
「坊ちゃん何何致しましょうか」って。
御曹子坊ちゃんとかね。
決まった明くる日からコロッと変わるんですか?そうですね。
でも本当に昔の方はそういう事に慣れてらっしゃるというかそれがこういう世界だって分かってらっしゃるからパッと切り替えられるんですけどこちらが慣れてないので本当にどう対応していいのか…。
向こうはできる訳ですよね。
すごく心の大きな先輩ばっかりで僕恵まれてて本当にいじめられた事もなかったですし環境に恵まれてましたね。
しかしその…この間僕浅草で「義賢最期」というのを見せて頂きまして…。
ありがとうございます。
いや〜あれは感服…感激感動しましたけども若き日の仁左衛門さんがやっておられた…?そうですね当たり役として。
当たり役として。
ふすま倒しといいましていわゆるこの…。
ふすまを2枚立てた上に1枚載せて…。
こういう感じになりまして。
本物のふすまちゃいますから…。
乗れるように板でやってます。
高さはもっと高いですね。
もっと高いですから。
こういうふうにコの字型に組んだ上に自分が立つ訳で。
そして最後1人の人に支えてもらいその1人の人と僕との呼吸で「ウンッ」て言うとこの1人の人がチョンッと押して離れていく訳ですね。
そうするとこのコの字型に僕がこの上に立ってる訳ですがこれがこう…バタンって倒れちゃう訳ですね。
あれはすごいですね。
そうですね。
僕それを教えて頂いたのはやはり見得切るんですけどこう…バ〜ッて倒れたあと見得切るんですけどどこまでこの形で…いわゆるこの形できれいに落ちていけるかって事です。
やっぱり怖くなりますし着地する時本来はデンッとしてやっぱり浮くんですよね。
浮きますよねドンッとなったら。
着陸する前に跳ぶんですよ。
跳ぶと衝撃が弱まるんですけども。
せやけどその着陸がいつするかいうの…。
見えないですね。
こう見た…見得切ったままこのままずっと倒れて乗って…。
それは何か勘ですか?勘ですね。
実際やっぱりあんまり跳んじゃうと格好悪いのでいかにも跳ばなくバシッといってそのあとすぐバ〜ッタリと見得を切らなきゃいけないので。
それがどこまで耐えられるかって事ですね。
あれをおやりになってやっぱりすごいなと。
成長し続けていく役者だなと思いましたね。
恐れ入ります。
ありがとうございます今日は。
いつもゲストに私の言葉を書いて頂いてるんです。
何かラブりんの好きなお言葉を。
これはもう本当に宝物ですな。
そうなんです。
僕にとっては非常に宝物でして。
やっぱり役一筋にやっておられる…。
それでまたいろんな事にチャレンジしておられるじゃないですか。
そうですね。
それがまた歌舞伎へ返ってきて勉強になる訳ですよね。
なりますねやはり。
いわゆる映像歌舞伎以外の舞台に出させて頂いて非常に刺激もありますし役者として勉強になりますね。
その学んだ事を今度歌舞伎の新作で使わせて頂いたりとかあとは歌舞伎で学んだ事を逆にテレビや歌舞伎以外の舞台で使ったりとかっていうお互い行き来ができて非常に面白い…不思議ですね演技って。
これは…何について何を書けばいいんですか?何でもいいんですよ。
自分のお好きな言葉を。
それを僕はね部屋に飾ってるんですよ。
本当ですか?ゲストの方の。
今度おうち遊びに行ってよろしいですか?もちろん。
ほいでやっぱり日々勉強っていうかねいろんな事を書いて頂いてますので。
ではちょっと…。
失礼致します。
「愛」。
フフフッ…。
「愛」です。
「愛」。
愛が全てですね。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
すいませんいろいろと。
2014/07/13(日) 05:15〜05:45
NHK総合1・神戸
桂文枝の演芸図鑑「チャーリーカンパニー、鈴々舎馬桜、片岡愛之助」[字]
落語家・桂文枝のナビゲートで、とっておきの演芸と対談をお届けします。演芸は、チャーリーカンパニーのコント、鈴々舎馬桜の落語「子ほめ」。対談のゲストは片岡愛之助。
詳細情報
番組内容
落語家・桂文枝のナビゲートで、とっておきの演芸と対談をお届けします。演芸は、チャーリーカンパニーのコント、鈴々舎馬桜の落語「子ほめ」。対談のゲストは片岡愛之助。
出演者
【出演】チャーリーカンパニー,鈴々舎馬桜,片岡愛之助,【ナビゲーター】桂文枝
ジャンル :
バラエティ – お笑い・コメディ
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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