既存アイドルの“二番煎じ”にはならない

8月19日、「SUMMER SONIC 2012」に出演したBABYMETAL。サマソニ史上最年少初出演を記録した
[画像のクリックで拡大表示]

――国内に話を戻すと、8月に最年少グループとして出演したサマーソニックでは、アイドルファン以外のリスナーがTwitterなどで大いに反応していた。突然の出演が決定した経緯は。

KOBAMETAL:主催者サイドはBABYMETALをとても画期的な存在だと評価してくれており、出演のお話は早い段階でいただいていた。

 日程がさくら学院のイベントと重なっていたため調整は難しかったのだが、7月21日の目黒鹿鳴館のライブを見に来た担当者から「どこかのタイミングで調整できないか」という話を再度いただき、「さくら学院のイベントが終わった後で、リハなしでもよければ」と、急遽出演するに至った。

 音楽業界にはBABYMETALに興味を持ってくださる方が多い。先日も、ヴィジュアル系バンドのメンバーの方々がTwitterで「ヘドバンギャー!!」とつぶやいていらしたのだが、それを見たファンの女性たちがネット検索をしてBABYMETALにたどり着くという認知のされ方もしているようだ。

――YouTube、Facebook、Twitterと、SNSを通じて伝播していくのは最近のアイドルシーンでよくある光景だが、アイドルファンとは違う層へ届くのは珍しい例だ。ほかに、リスナーを見ていて気づくことはあるか。

KOBAMETAL:今、アイドルファンと呼ばれる人たちのなかには、もともとバンドのライブに足を運んでいた人、バンドもアイドルも好きという人たちが増えているように感じる。メタリカやラスベガスのバンドTシャツを着て、BABYMETALのライブに来ているファンもいるほどだ。

 アイドル戦国時代と呼ばれる今、多くのアイドルがアイデアをひねりながらオリジナリティを追求している。昔バンドシーンでさまざまなバンドが競って出てきたときの、何かが起こりそうなワクワク感が、おそらく今のアイドルシーンにあるのではないだろうか。

 最近、バンドシーンは非常識を常識に変えてしまうような熱量に少し欠けていて、いろいろな意味での優等生が多くなってしまっている。音楽業界の方々ともよく話すが、80〜90年代にインディーズのバンドブームがじわじわ来ていた頃の「何かわからないけど、盛り上がっている」という熱量をアイドルシーンに感じている人が多いのも納得できる。BABYMETALのライブ会場でも実感しているし、自分も含めバンドブームのころにバンドにかかわっていた人が、今はアイドルにかかわっていることも増えてきた。

――ある意味、アイドルが音楽シーンに変革をもたらす存在であるのかもしれない。その中で、BABYMETALは今後、どういった展開をしようと考えているのか。

KOBAMETAL:軸がぶれないように、このまま突き進むしかない。最初は尖ったことをやっていても、注目が集まると大人の事情で丸くなってしまうことは往々にしてあるが、本格的なメタルサウンドに合わせて3人のメンバーが歌って踊るというBABYMETALの基本的な路線を崩さずに行くべきだと考えている。

 Perfumeは安室奈美恵やSPEEDなどのR&Bダンスミュージック全盛期に、シーンの片隅でテクノポップアイドルとして活動し続けていた印象がある。個人的な視点ではあるが、今の地位を獲得するまでには紆余曲折あったものの、時流に乗らなかったがゆえに、自分たちで次の時代を引っ張ってきたと感じている。

 BABYMETALがどこまで売れるかは正直なところ未知数だが、既存のアイドルをマーケティングした結果にのっとって展開したところで、二番煎じにしかならない。それならば、いちかばちかという方向性を突き進む方が面白い。メンバーが持っているアイドルとしてのポテンシャル、スタッフの持つメタルへの愛情、それに“ストレンジ感”をプラスしたアイデア……。こういったものから新しいスタイルが生まれ、他には作れない「オンリーワン」の存在になればいいと思っている。

KOBAMETAL氏へのインタビューは2時間に及んだ
[画像のクリックで拡大表示]

――SU-METALこと中元すず香は、2013年の3月でさくら学院を卒業することになるが、その後BABYMETALはどうなるのか。

KOBAMETAL:今は言えないが、BABYMETALがどうなって行くのかは10月に始まった『I、D、Z〜LEGEND』シリーズのライブで明かされていく予定だ。どちらにせよ、BABYMETALの活動がメンバーにとって、将来的に見て良い経験になればと願っている。

 BABYMETALでは一つひとつのライブに丁寧に向き合い、小さなムーブメントを大きなムーブメントに変えていければいいと考えている。そして音楽業界の刺激物となり、「昔のメタルTシャツを引っ張り出してきました」「BABYMETALをきっかけにメタルを聴くようになりました」という人が、少しでも増えればうれしい。


(文・構成/有馬ゆえ、写真/古立康三)