ツインテールを振り回す“カオス”

「LEGEND〜コルセット祭り〜」でのステージパフォーマンス
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――3人のメンバーには、楽曲の意図を細かく解説しているのか。

KOBAMETAL:本人たちのキャラクターを生かしたいと考えているので、制作サイドで考えたことを逐一、彼女たちに伝えることはあえてしていない。

 例えば、「ヘドバンギャー!!」では、SU-METALが今年15歳になることを強く意識して「バンギャ」をモチーフにしている。それを端的に示すのが「15(いちご)の夜」という歌詞だが、歌詞全体では、この世代特有の「後先をあまり考えずに突き進みたい」という感覚を、バンドに夢中になるバンギャの方々の姿に重ね合わせた。しかし、これらをすべてメンバーに説明しているわけではない。

 メンバーたちの個性や自由なアイデアを大切にしたいとは、振り付け担当のMIKIKO氏ともよく話している。振り付けにしても、曲を聴いてメンバーが体を動かしながら練習している際に、「その動きが面白い」と取り入れることがある。「ヘドバンギャー!!」のサビでYUIMETALとMOAMETALがツインテールを両手で持って振り回す動きがあるが、これも彼女たちが練習でやっていた動作だ。

――メンバーにメタルを聴かせたり、知識を教えたりということもないのか。

KOBAMETAL:基本的にはない。以前、取材で「好きなメタルバンドを挙げてください」という質問があったのでいくつかバンド名を教えたことはあるが、自分たちでも調べているようだ。

 よく話題になるキツネサインも、もともとは彼女たちにメロイックサインを教えていたところ、影絵でキツネを作るように遊び始めたのを面白いと思って取り入れた。なんにせよ、本人たちは与えられた楽曲に触れながら「メタルとは何か」を自分たちで考え、新しいものを作り出そうと楽しんで取り組んでくれているようだ。

――キツネサインのように、BABYMETALは「メタル好きにはわかるオマージュ」も人気だが、ほかにどんなものがあるのか。

KOBAMETAL:来年1月にリリースされる「イジメ、ダメ、ゼッタイ」では、腕をクロスしてジャンプする「ダメ! ジャンプ」、イントロでYUIMETALとMOAMETALの2人が左右から交互に走り出す「ウォール・オブ・デス」を模した演出などが挙げられる。

 「ヘドバンギャー!!」の初回限定盤にコルセットを付けたのも、リリースイベントをメタルの聖地と呼ばれる目黒鹿鳴館というライブハウスで行ったのも、日本のメタルシーンへのオマージュだ。

――小さな演出もさることながら、ライブでは世界観を演出することも重要視しているように感じられる。

KOBAMETAL:今の主流のアイドルが日常の延長線上にあるのに対し、BABYMETALは「非日常感」の提供をとても大切にしている。そのため、ライブでもいかに日常を離れた空間、時間を演出するかを考えている。一例を挙げるなら、オープニングからエンディングまでをひとつのストーリーとして見せられるよう、MCをしなかったり、ムービーと楽曲、舞台美術をうまく組み合わせたりなどの工夫がある。

 ただ、ライブでの非日常感を大きく支えているのは、メンバーたちの発するエネルギーではないかと思う。それが観客にも伝わり、バンドのライブのようなモッシュやコールアンドレスポンスが起きているのではないか。

 BABYMETALは「神が降臨してSU-METAL、YUIMETAL、MOAMETALに変身する」というコンセプトなのだが、実際は本人たちもライブ中の記憶があまりないと話している。激しいパフォーマンスをしているのもあって、ランナーズハイのようなトランス状態になっているようだ。その熱量を受けて、ある意味、観客側が取りつかれてしまうような一体感が生まれているのではないか。

「LEGEND〜コルセット祭り〜」で「ヘドバンギャー!!」を披露するBABYMETAL。曲中では、SU-METAL(中)がマイクスタンドで客席を指し、「消・え・ろ!」と歌うパフォーマンスも。YUIMETAL、MOAMETALが掲げたキツネサインにも注目
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メンバーに合わせて観客たちも両手でキツネサインを作り、腕を振り上げる
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