【ブラジリア=永井央紀】安倍晋三首相は1日、ブラジルのルセフ大統領と会談し、中南米5カ国歴訪で予定した首脳会談を終えた。日本から大手企業首脳ら約70人が同行し、各国で日本の技術や投資のトップセールスを展開。域内に6億人を擁する中南米市場の開拓に力を入れた。各国と政府間協力を交わし、民間企業の受注も呼び込んだ。
「海洋油田開発で大きな投資機会があるブラジルを日本は熱い目で見ている」。首相は大統領との会談後の記者会見で、三菱重工業やIHIなどが提案する洋上基地の採用に強い期待を示した。ブラジルが大西洋で進める油田開発は総額20兆円をかける大型事業。採用されれば技術力を持つ日本企業が受注する公算が大きく、関連する船舶建造の受注も取りやすくなるとの狙いがある。
首相は各国で資源開発やインフラ整備への協力を表明。首脳会談が呼び水となって日本の政府機関や民間企業がかかわる案件も相次いだ。
メキシコでは石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や国際協力銀行(JBIC)がメキシコ国営石油会社と資源開発での協力について覚書を締結。ブラジルでは三菱重工などがサンパウロの地下鉄整備を請け負う。
資源開発への協力には日本向けの安定供給を確保したいとの思惑がある。現時点では資源ナショナリズムが強い中南米で日本が権益を確保するのは容易ではない。ただ、技術や資金面で協力していれば、中長期的には権益確保につながる可能性があると踏む。
メキシコは64年ぶりに外資や民間に資源開発への参入を認める手続きを進めており、首相はペニャニエト大統領との会談で「日本企業の石油開発への参画に協力していきたい」と呼びかけた。
首脳会談では同行する企業首脳を途中から同席させ、相手国の首脳に直接要望を伝える場も設けた。チリでは三菱商事の小島順彦会長らがバチェレ大統領との会談に加わり「日本企業にはインフラや電力の整備といったチリの課題を解決する技術がある」とアピール。大統領は「次回は私がチリの企業を連れていく」と応じた。
中南米は中間層が急増する世界の成長センターの一角。各国が資源開発やインフラ整備に力を入れ、メキシコでは5年間に60兆円超のインフラ投資をする計画がある。域内合計の国内総生産(GDP)6兆ドルという規模は東南アジア諸国連合(ASEAN)の2.5倍で、政府は成長戦略で重要な市場としている。
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