全国の空き家は820万戸、住宅総数の13・5%を占める。5年前より63万戸増えて過去最多。こうした数字が国の統計で明らかになった。

 子どもの独立、高齢化や人口減と社会の大きな変化も反映した現象で、これからも空き家は増え続けると見込まれる。

 空き家が放置されれば、倒壊したり、放火などの犯罪を招いたりする恐れがある。放置を防ぎながら、新たな使い方に結びつける努力を重ねたい。

 個人の家は、個人の責任で管理するのが大前提だ。だが、周辺に危険が及ぶ事態が差し迫っている場合、たとえば、豪雪地帯での家屋倒壊の恐れがある時など、やむを得ず行政が解体するケースはあるだろう。

 空き家の適正管理に関わる条例を定めている自治体は、全国で350以上。秋田県大仙市や東京都大田区は、条例に基づいて、倒壊の危険がある空き家を所有者に代わって取り壊したこともある。

 国会議員による立法化も検討されている。市町村が空き家の持ち主を知るために固定資産税の情報を使えるようにすることや、持ち主に対して危険な空き家の撤去を命令できるようにすることが柱だ。

 住宅を解体して更地にすると固定資産税の軽減措置がなくなり、最大6倍の負担が生じてしまう。これが空き家が増える一因だと指摘する声も多い。空き家対策を総合的に考えるなら、税制面にも工夫する余地はありそうだ。

 困りものに映る空き家だが、一方で活用への動きもある。

 所得が低い人向けの公営住宅は、入居倍率が数十倍にもなる。家賃が安い住まいを求める人は多く、空き家はこうしたニーズにも応えられる。

 厚生労働省は、低所得高齢者の住まい確保のため、空き家を活用するモデル事業を今年度から始めた。日常生活をNPO法人などが支援することで、孤独死などを懸念する持ち主が「貸してもいい」と思える環境づくりを狙う。国土交通省も、一定の条件の下に建築基準法の政省令を緩和して、空き家をグループホームなどに転用しやすくする方針だ。

 京都市は、戸建てや長屋建ての空き家を留学生の住まいや地域の居場所に改修する場合などに、6月から補助金を出すことにした。すでに約100件の問い合わせがあったという。

 使える空き家は「資源」だ。「使いたいのに使えない」を乗り越える知恵は、いくらでも出し合いたい。