私の家ではとにかく暑くて耐え難い日中以外は、専ら扇風機を使用している。
サーキュレーターや縦長のスリムな扇風機もあるのだが、どうにも数が足りない。
そこで私は、扇風機を求めて屋根裏部屋をゴソゴソと探してみることにした。
この家は元々、夫の実家なので、屋根裏部屋には私の知らないモノがまだまだたくさんあるのだ。
息子の部屋からつながっている屋根裏部屋は、天井が低く、窓がないもののかなり広い。これで天窓なんてあったら、私の部屋にするのになぁって思うくらいの広さだ。
屋根裏部屋の引き戸を開け、すぐ左側にある電気のスイッチに手を伸ばす。パチッと音がしてあかりが灯ると、何やら懐かしいような古いニオイとともに、色んなモノが視界に飛び込んでくる。地球儀、イス、ストーブ…。
そして扇風機。
私は2台置いてあったうちの1台を引っ張り出してきた。
ホコリをかぶっているので、網を外し、ゴシゴシと洗う。羽も台座も雑巾でギュッギュと拭いた。
「よし!準備オッケー!」
声に出し、プラグをコンセントに差し込んで、それから「微風」のスイッチをカチンと押してみた。
扇風機の羽はゆっくりと回転し始め、次第に同じ周期でグルグルと回り始めた。生ぬるい風が顔に当たった。
「おっ、とりあえず使えるじゃん!」
安心した私は、その扇風機を自分の寝室に運び、現在使用している。
お風呂から上がった直後だと、「微風」では弱すぎて汗がなかなか引かないため、「涼風」や「強風」のスイッチをカチンと押す。
適度な強さの風が顔に当たり、私の髪の毛をパタパタと静かな音を立てながら揺らしてくれるのだ。
この扇風機は風の強さを「微風」「涼風」「強風」と表しているのがとても気に入っている。それから、この「カチン」と押す、押し心地がとても好きだ。
最近、購入した扇風機はもっとソフトな押し心地の「ピッ」と鳴るようなものであったり、レバーを回転させるものだったので、この「カチン」の感触は味わえない。
「カチン」はあれと同じような感じ。そう、カセットテープを聞くやつ。何ていうの?カセットテープレコーダー?「再生」「停止」「巻き戻し」作業をするのに、カチンカチンカチンカチンってうるさい音を立てながら使用していたのを思い出す。
あの時は「もっとスムーズに出来たら良いのに」と思っていたけれど、なくなると恋しくなるんだなと思った。
サンヨーの「お座敷扇」と書かれているこの扇風機。
いつまで使えるかわからないけど、この夏は使いまくろうと思っている。