転生?まあ、適当に生きるよ。 (バカまる)
<< 前の話 次の話 >>

話が思い浮かばない……。
どうすれば良いんだ……?
今回はシリアスで甘い話。
ではでは、どうぞ。



俺は君で君は俺で、知ってた筈の自分の秘密。

……ふと、目が覚めた。

いや、目が覚めたって表現はおかしいかも知れない。

だって、ここは夢の中だから……。

気付いた時には分かっていた。

だけど、何でこれが夢だと分かったのかが分からない。

それに、この空間はどこまでも真っ暗で、俺は誰なのかも分からない。

分からない事だらけだけれど、それでも俺は前に進んだ。

ずっと、ずっと真っ直ぐに。

暫く進んでいると、自分が本当に真っ直ぐ進んでいるのか分からなくなる。

その内自分が歩いてるのかも分からなくなって、俺はこのまま起きるのかと思っていた。

しかし、真っ暗なこの空間で声が聞こえた。

『早く来なさい。 そろそろ退屈なのよ。』

その声はこの空間の全てに響き渡り、反響しながら消えていく。

普通ならどこから聞こえたなんて分からない。

だけれど、俺は確かに声の発生した場所が分かった。

その声が聞こえた場所に俺はただひたすらに走り続ける。

本当にこっちで良いのかと思い出した頃、遠くの方に小さな光が見えた。

俺にはそれが希望のように見えて、すがる様に手を伸ばして走る。

光に近づくと、椅子に座っている人影が見え始める。

俺がやっと光に辿り着くと、そのスポットライトの中には一人の女性が座っている事が分かった。

「いらっしゃい。 待ちくたびれたわ。」

女性は俺に顔を向けると、虚ろな瞳で俺を見詰める。

「……君は……、誰? 何で俺はここに?」

俺は女性の虚ろな瞳に吸い込まれそうになりながら自分の疑問をぶつける。

彼女の瞳はまるで全部諦めてるようでもあり、逆に希望をすがっている様に見えた。

「あぁ、貴方はここに来る度に忘れてるんだったわね。 私は燐夜、貴方は輪弥よ。 分かったかしら?」

「俺はりんやで、お前もりんや? 同じじゃないか……。」

訳が分からない。

俺も彼女もりんやで、この空間の事は答えられていない。

「フフ……、そう困惑しないで? 輪弥に燐夜よ? イントネーションの違いね。」

「なるほど、同姓同名って事か。 輪弥と燐夜ね……。」

「同姓同名って言うか、同じ人物なのだけれどね。 それじゃあ、次はここの事ね。 貴方が察してる様に、ここは夢の中だけれど、正確には貴方の心像世界よ? 何もない寂しい世界ね?」

……ここは、俺の世界?

この何もない空間が?

そんな筈……ない……。

だって、俺には……。

「ここは、確かに貴方の世界なのよ? 人形好きも、恋人を好きだと言う気持ちも、全部全部偽物で、貴方はただ他人を真似てるだけ。」

人形は好きだ。/本当は人形なんて好きじゃない。

恋人だって本当に好きなんだ/ただ流されただけだろう?

そんな筈ない!/その通りだよ!

「違う!」

「冗談よ。 でも、貴方の心には偽物ばかり。」

「人形好きも、恋人だって俺が望んで手にいれたんだ!」

俺はいきなり知らされた事に頭を振って否定する。

人形好きがなんなのか分からない。

恋人の事も俺には記憶がない。

それでも、それだけは否定しなければいけない気がした。

「そうね。 それは貴方が見つけた本物よ。 自分の在り方を否定して、貴方が望んで手にした事。 たまに居るみたいよ? 自分の本質を否定して逆の事を望む人は。 貴方の在り方は『偽装』だもの。 誰にでもなれる。」

その言葉で頭の中に記憶が戻って来る。

「あぁ、そうか……。 いい加減この問答にも飽きて来ないのか? 燐夜?」

「おはよう、って言うのはおかしいかしら?」

はぁ……、もう何回目だ?

俺がコイツに会ってから。

「面倒だから数えてないわ。」

「人の思考を読むな……。」

「聞こえちゃうのよ。」

起きている時に聞こえる幻聴、それの正体は燐夜だ。

どこかの誰かみたいに、肉体に宿った人格ではなく、脳に存在している故に話せたらしい。

意識がなくなるのは、燐夜がわざわざ消してるみたいだ。

「それで? 今日は何の用だ?」

「何の用って、何もなくても呼んでるでしょ?」

「いい加減迷惑だ。」

燐夜と話していると、俺が本当は何を思って行動しているのかが分からなくなる。

『偽装』し続ける本質と、本物を望む願望。

何が本当で、何を真似ているのか分からなくなる。

だから、俺はコイツが余り好きじゃない。

「まあ、今回は目的があって呼んだのだけれど、貴方には想像がつくかしら?」

燐夜は虚ろな瞳を細めて笑う。

「さてな? 俺にはお前の考えは想像がつかん。 何でお前は俺の考えが分かるのに、俺は分からないんだ。」

「それは貴方が私を否定するからよ。 まあ、本題に入るわよ?」

「そうしてくれ。」

俺は片手をプラプラ降りながら先を促す。

「フフ……。 私もね、いい加減飽きちゃったのよ。」

「何に?」

「この暇潰しに。 それでね、貴方の記憶を消さないまま帰そうと思ってるのよ。」

その言葉に俺は目を見開く。

今まで俺の記憶を消していたのはコイツだ。

何でいきなりそんな事を言い出したのか。

「言ったでしょ? 暇潰しに飽きちゃったのよ。 だから新しい暇潰し。」

「……もう好きにしてくれ……。」

俺は燐夜の事が何一つ理解出来ない。

だったら、勝手にさせるしかない。

現実で被害は今の所ないのだ。

「そう。 それじゃあ、そろそろ起きてもらおうかしら?」

「あぁ……、帰らしてもらうよ……。」

俺は踵を返して歩き始める。

そこで、燐夜の声が俺を呼び止めた。

「輪弥。」

「なんだ?」

燐夜は一度瞳を閉じると一呼吸置いて言った。

「貴方が目覚めた時、何時もと違って何が変わってる様に思うかも知れないわ。 貴方がここで言った事、忘れちゃ駄目よ?」

少しだけ真剣な雰囲気が混じった燐夜の言葉。

俺は目覚めた時に何を感じるのだろうか。

まあ、そろそろ夢の終わりだ。

俺は瞳を閉じると意識を手放した。



















「……あぁ、そういう事か……。」

ベッドで目覚めた俺は、目を開いた瞬間に理解した。

分かるのだ、本物か偽物かが。

目に映る物だけじゃないく、音や匂いまでも。

「……本当に、最悪だ……。」

俺は立ち上がると自分の部屋から出て、無気力に事務所に向かう。

まだ外は暗く、辺りは静かな物だった。

俺は事務所の中に設置されているテーブルに腰かける。

何もする気が起きない。

そうやって何もせずに時間だけが過ぎていった。

気がつくと外には日の光が入り始め、やがて事務所に射し込んで来た。

俺がそのまま窓の外を見つめていると、後ろから声がかけられる。

「あれ? 輪弥さん凄く早起きだね?」

「ん? あぁ、なのはか……。」

「……どうしたの? 元気ないよ?」

「……そうだな、元気はない。」

なのははパジャマ姿で、髪を下ろしている姿は美人だと思った。

しかし、それを見ても気が紛れる訳でもない。

そんな俺を見て何か思ったのか、なのはが話出した。

「輪弥さんでも、悩み事があるんだね。」

「俺だって人間だ。 悩み事の一つや二つある。」

「ふふ、それもそっか。」

なのはは俺の隣に腰かけると俺の瞳は覗き込む。

「話して、くれないかな? 私もね、輪弥さんの役に立ちたい……。」

「……分かった。」

俺はそう言うと、ゆっくりと話を始めた。

「もし、さ。 自分が選んでいた道筋が、本当は他の誰かを真似ているだけだとしたら、どうする?」

「真似ている? う~ん……それってどういう事?」

「例えば、自分の気持ちさえも本当は誰かの真似事で、好きって気持ちも、楽しいって気持ちも全部偽物。 本当は『プログラム』されているだけの自動反応……。 俺は、ただの肉塊なのかもな。」

俺はここまで話終えると、なのはに目を向ける。

そこで、俺の顔面に握り拳が飛んできた。

「アグッ!?」

顔を押さえて恐らく俺を殴っただろう人物を睨み付ける。

「何すんだよっ……!」

「輪弥さん、目は覚めた?」

「ふざけんな! こっちは真剣にっ……!」

「そんな筈ないもん!」

俺の言葉はなのはの声で遮られる。

なのはは俺に近寄って来ると抱きついてくる。

「そんな筈……ないよ。 私覚えてるよ? 輪弥さんが私に好きだって言ってくれた時の事。 あの時の輪弥さんは偽物なんかじゃないもん!」

…………また、彼女を傷つけた……。

そうだよな、全部偽物だったら、俺の人生は全部なかった事になる。

喜び哀しみ、全部偽物って事になる。

なんだ、燐夜も言ってたじゃないか。

俺にだって本物があった。

俺はなのはを抱き締めると口を開く。

「ごめん……。 嘘なんかじゃ……ないよ……。 俺は、なのはが好きだ。 これだけは全部偽物でも、絶対に変わらない……。」

「……うん。 私もごめんね……いきなり殴っちゃって……。」

「はは、良いよ。 お陰で目が覚めた。」

俺達はしばらくそうして時を過ごす。





『なあ、『燐夜』。 俺は確かに偽物だらけだけど、これだけは本物だって自信を持って言ってやる。』

『そう。 それじゃあ、私は寝るわ。』

『あぁ、お休み。』

結局、俺の勝手な思い込みだった訳だ。

人間は親の背中を見て育つ。

俺の腕の中にいるコイツだけは、何があっても守ってやろう。

だから、まあ、適当に生きるよ。







はい、終わりました。
因みに、この小説の題名である適当とは、面倒臭がりという意味ではなく、その場その場で適切に生きていこうと言う意味から来ています。
まあ、面倒臭がりも入っていますが、人生何があるかわかりません。
突然起こる出来事には勿論対策なんてなかなか出来ない。
だったら、その場のアドリブが重要になるわけです。
輪弥君は冷静沈着ではありませんが、それでも適切な生き方をしてほしいですね。
ではでは、読んでくれた方
感謝の極み。


<< 前の話 次の話 >> 目次 ページの一番上に飛ぶ