広島原爆:爆心500m圏、生存145人 本紙調査
毎日新聞 2014年08月01日 15時00分(最終更新 08月01日 18時06分)
広島原爆で大半が即死したとされる爆心地から500メートル圏内で被爆し、被爆者健康手帳を取得している生存者が、全国で少なくとも145人いることが毎日新聞の調べで分かった。手帳所持者で近距離被爆した生存者数が明らかになったのは初めて。被爆者の平均年齢が80歳に迫るなか、500メートル圏内の被爆者は壮絶な体験をした人が多く、証言の聞き取りなど体験の継承が急がれる。【高橋咲子】
◇平均年齢79歳、証言集め急務
毎日新聞が6〜7月、47都道府県と広島・長崎両市に調査し集計した。原爆投下時に広島にいて直接被爆した手帳所持者を対象に、手帳に記載されている被爆地点から、爆心地から500メートル内で被爆した人の数を調べた。
自治体別では、広島市47人▽広島県27人▽神奈川県14人▽島根県9人▽大阪府8人▽愛知県4人▽群馬県2人▽北海道、長野県、長崎市、長崎県各1人−−など。東京都のみ「公表に本人の同意が得られていない」として未回答だった。
広島市の調査では、原爆が投下された1945年8月6日は、爆心地から500メートル圏内に推計約2万1000人がおり、この年の年末までに9割が死亡したとされる。69年前の8月6日は月曜日で、爆心地周辺には銀行や企業が多く、出勤途中だった人も多かった。圏内にあった約5600棟のうち、1棟を除くすべてが全焼した。
厚生労働省の統計では、全国の被爆者健康手帳所持者は初めて20万人を切り、19万2719人(今年3月末時点)となった。平均年齢は79.44歳。
◇「戦争はいやだね。生きるのが嫌になる」高崎の82歳
「昔のことは、考えないようにして生きてきた」。爆心地から約500メートルの広島市大手町(当時)で被爆した、木戸照三(てるぞう)さん(82)=群馬県高崎市=は言う。今でも殺人事件のニュースを見聞きするたび、あの夏の日の光景が浮かぶ。頭がごっちゃになって苦しい、と。
神崎国民学校に通っていた13歳のとき。学徒動員先に行くため、近くの電停で同級生と電車を待っていた。「何か落ちたよ」。友だちが晴れた空を見上げた瞬間−−。目の前が真っ暗になって、地面にたたきつけられた。友人は地面に倒れ動かなくなっていた。