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人生をかけた仕事 ージブリ作品を支える西村義明氏が語る「プロデューサーの責任と生き様」

  • 2014/08/01
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「作品づくりにおけるプロデューサーの役割の重要度が高まってきている。それは、世の中の多くのビジネスシーンでも言えるのではないか?」よしもとクリエイティブ・エージェンシーでナインティナインやロンドンブーツ1号2号のマネージャーを担当し、現在は様々な起業家や職人、クリエイターといった「人」のプロデュースをする佐藤詳悟氏が、各界で活躍するプロデューサーにインタビューをする本企画。

それぞれの道のトップを走る人たちには、理屈では語れないこだわりや考え方、運や直感がある。そうした力を持つプロデューサーを“妖怪プロデューサー”と銘打ち、ビジネスの教科書には決して載らない側面から、その人となりを解剖していく。

第1回目のゲストは、スタジオジブリプロデューサー・西村義明氏。「竹取物語」を原作とした『かぐや姫の物語』や、先日公開されたスタジオジブリの最新作品『思い出のマーニー』のプロデュースを務めた人物だ。

作品が当たって喜ぶやつは、一生懸命やっていない人間


――「映画」は非常に長い時間をかけて作られるものだと思うのですが、それが完成した時、「儚さ」のようなものは感じるのでしょうか?「思い出のマーニー」が公開されている今の心境を教えてください。

西村 「僕らは、一体何を作ったんだろう」、そういう思いです。映画が公開される時というのは、自分でも気持ちの整理がつかなくなる瞬間です。映画制作において監督とプロデューサーの関係は母親と父親に例えられることがよくあるんです。映画はそのふたりの間に出来た子ども。その例えで言うのなら、僕の今の気分は、結婚式を迎えた新婦の父親みたいなものですね。いざ父親として結婚式を迎えると、たくさんの人が娘に対して色々なことを話してくれます。娘さんはこういうところが素敵だとか、こういう性格だとか。そこで初めて知ることも多くあって、自分だけの娘と思っていたものが、「ひとの手に渡ったんだなぁ」という感慨もある瞬間です。そこから先は、自分の手から離れた存在になっていく。なので、映画が完成して公開を迎える時というのは、新婦の父親のように一種の喪失感が訪れる瞬間でもあるんです。映画に限らず、ものづくりって喜びに溢れていると思っていたこともありますけど、真剣にやればやるほど、終わった後に虚しさが残る。そういうもんですよね。だから今、とても虚しいですよ(笑)


――「虚しい」というのは、どういう意味ですか?

西村 全てを出しきって、作品をつくるわけじゃないですか。お客さんに楽しんでもらうためにはどうすべきかと色々と考えて、ぐーっと詰め込んで、全てを出し切る。だから映画を作り終えたときは、空っぽなんです。


――わかります。僕は千原ジュニアのライブに5年間かけて、終わった後一週間ぐらい鬱になりました。

西村 以前、宣伝プロデューサーを務めた映画が公開された時に、お客さんがたくさん来てくれたんですよね。そのとき、鈴木敏夫さん(スタジオジブリ代表)から「西村、今の気持ちはどうだ?」と聞かれました。「ホッとしています」と答えたら、「正解だ。映画が当たって喜んでいる人間は、一生懸命やっていない人間だ」と言われたんです。一生懸命やった人間は、「お客さんが来てくれて、みんなに迷惑をかけなくてよかった」と、ホッとするだけ。自分がやってきたことが報われたことより、みんなが喜んでくれて良かったなという思いで、ホッとする。アニメーション映画の制作の面でいえば、職業人生が30年あったとしたら、ひとつの作品をつくるのに自分たちの時間を短くても2、3年費やすわけです。そうすると、それぞれの人生の10分の1に値するものが作れたかどうかが問われる。だから、スタッフの尽力に報いるという意味でも、いい映画になってよかったな、と思うだけです。

若いことは言い訳にはならない。考えて考え抜かないといけない。


――この作品をいいものにしたいという想いで、長い時間を費やすわけですが、モチベーションを保てるものですか?

西村 先ほど話したようにアニメーション制作は短くて2、3年を費やしますし、そのほとんどは面倒な仕事です。そこでモチベーションを保つなんて無理なことです。一種の使命感なり、必ず面白くなるはずだという初期衝動を覚えているかどうか。脚本や絵コンテを作っている時は、"これは面白い!"っていう興奮状態の中でやっていて、不安や喜び、期待が渦巻くんですけど、大変な仕事であればあるほどモチベーションはどうしたって減じていく。そのときに初心を思い出せるかどうかは大切だと思います。この映画は面白くなる、作る意義があるものだと思っていた当初の自分を信じ続けることができるかどうかだと思います。


――入り口にはモチベーションの高い自分がいて、スタートしたら流れていくのでしょうか?

西村 流れていくということはないですね。アニメーションの現場は、日々問題が起こります。人間がたくさん関わっていると、どうしても問題を持つ個人がでてきます。気が滅入ったり、いなくなってしまったり。そういう時、一人ひとりに目を配るのが僕の役割ですから。


――「思い出のマーニー」でいうと、400人ぐらいのスタッフを細かく見ているという
ことですか?

西村 理想はそうですね。パッと見た時に、誰が元気で誰が元気じゃないかを見分けることが必要です。現場に入った時、「何か空気が違うな」とかですね。宮崎駿さんが映画をつくる時は、そういった心配はほとんどいらないんです。監督として恐いので、現場が締まるのです。『思い出のマーニー』を作った米林宏昌監督は、人柄がよく人徳もある監督で、宮崎さんとはタイプが違います。そうすると、現場の重しがなくなります。だから、福岡伸一さんの言うところの動的平衡みたいに、僕が恐い人間にならざるを得ないんです。


――それは、どのように身につけたものなんでしょう?

西村 『かぐや姫の物語』で高畑さんと一緒に過ごした8年間が、僕を大きく変えたのかもしれません。高畑監督は、宮崎さんや鈴木さんでさえ緊張する人なんですよ。日本のアニメーションのあらゆることは、高畑さんが作り上げてきたと言っても過言ではない。恐ろしく博識で、そして甘えを許さない。その高畑さんと仕事をすると、地に足がついていない生意気な部分や底の浅さを攻められる。例えば映画の感想を聞かれた時に、ひと言「良かった」じゃ済ませられない。何が良かったのか、何が良くなかったのか、あのシーンにはどんな意味があったのかを絶えず問われます。経験が浅い中でも、自分なりに考えて答えを出さなければいけない。高畑さんは弁証法で考えを作っていくんです。人と話して、最初に自分が考えていたことを否定しながら真実の解にたどり着こうとする。その対話に付き合うことは、いわば訓練ですから、高畑さんとは常に訓練をしていたようなものです。映画制作の現場では、たった1カットについて2週間も話し合うこともあります。このアングルでいいのか、なぜこれはしっくりこないのか、何が正解なのかを延々と話し続けるわけです。そのときに若いことは言い訳にはならない。考えて考え抜かないといけないんです。自分より40歳も年上の「知の巨人」と8年間も過ごせば、必然的に肝っ玉が据わってくるんですよ(笑)。

プロデューサーは、無責任になれる責任者


――プロデューサーには、物事を多角的に捉え考え抜く能力が必要なのでしょうか?

西村 理屈ではなく、いいと思ったかどうかを大事にしたほうがいいですね。脚本や絵コンテを作っていると、いいと思っていたものが、1か月後にはあれ?と思うことがあります。パッとみて思った時の感覚を覚えていられるかは、映画制作にはこれがとても大事なんです。色々な問題があって、現場が潰れそうになることもあります。その時に、あの時の自分が、もしくはチームのみんなが「絶対にいい物ができるからこの映画をつくりたい」と思っていた感覚を思い出すことができるか。あとは、長丁場になるとスタッフだけではなく、自分も滅入りますよね。なぜ滅入るかといったら、自分の人生が大事だから滅入るんです。10年経ってもこの作品が完成しないかも、と思ったら滅入るのは当然です。そこで、自分の人生を自分のものだと思わなければいいんです。他人の人生だと思えば、無責任な意見を自分に対して言えるわけです。プロデューサーにはそういう主観的な情熱と客観的な冷静さが必要なんだと思います。プロデューサーは、映画の責任を一番担っている人間ですが、最も無責任な存在になれるかどうかも、プロデューサーの大事な要件なんだと思います。でも、これはすごく難しい。ぼくはそれを(ジブリ代表の)鈴木さんから学びました。


――ジブリにはたくさんのいいお手本があって、教育されるというよりは、自分から学ばないといけないのですね。

西村 教育はないですね。しごきはありますけど(笑)。教わらないとできない人は、教わってもできないんじゃないでしょうか。自分に好奇心がなければ、前には進めない。好奇心は、植えつけることができませんから。例えば、なぜ春と夏の緑は違うのか、北海道の緑はどのような色をしているのか。こういったものに反応できるかどうかというのは、自分の感度の問題ですよね。

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CDが売れなくなったらレコードが売れ始めた!きゃりーぱみゅぱみゅもレコード盤に着手!

  • 2014/07/30
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 中高年には懐かしいレコードの人気に復活の兆しがみえる。往年の名盤だけでなく、新譜をレコードで出す若いアーティストも出てきた。再燃する人気にあやかろうと、高級プレーヤーを発売したり、都心部へ専門店を出店したりする動きも活発になっている。

出典:再燃、レコード人気 生産が増加・Perfumeも新譜:朝日新聞デジタル
 今、レコードが熱いです。CD不況の中、レコードの売り上げは増加していて、日本レコード協会によると今年1~5月のレコード生産は11万枚で、前年同期より23%増えたそうです。

きゃりーぱみゅぱみゅのレコード盤が発売されいてる!?

レコードショップに行き、ビートルズやローリングストーンズ等の中古のレコードを求める人が急激に増加しています。名盤と言われているレコードが復刻盤という形でも販売しており、中年層を中心にレコードにハマっているのです。
 
さらには、なんと中年層だけでなく若者の中にもレコードにハマる人が増加中。現在、新譜としてのレコードも生産され、きゃりーぱみゅぱみゅ、木村カエラ、Perfume、などの人気アーティストも自身の曲をレコード盤として発売しています。これらのアーティストによって、レコード世代ではない若者もレコードと触れ合うきっかけになっているのです。

また、HMVは、CD不況により2010年に渋谷店を閉店しましたが、2014年8月、渋谷に今度はレコード専門店をオープンさせました。

1度衰退してしまったレコード業界が、再び輝きを放っているのです。

音楽に懐かしさや温かさを求め始めた

レコードブームが再来している主な理由として、デジタル化した音楽が溢れている中、レコードの懐かしさや味のある音、温かさを求める人が次々と増えたことがあります。中年層にとって、レコードとは音自体の魅力は勿論、レコードしかない音源が聴けたり、思い出に浸ったりなど、様々な楽しみが詰められているのです。

若者にとって、耳がデジタルの音楽に慣れているので、レコードの音というのは斬新。また、音だけでなく、レコードはジャケットが大きいので好きなアーティストのダイナミックなデザインを楽しむこともできます。


CDのせいでレコードは衰退したのに、今はCDが売れなくなってレコードの売り上げが増えている、というのはおかしな話のようにも思えるでしょう。当然、売り上げ枚数自体はレコードよりもCDの方が圧倒的に多いですが、これからの音楽業界で必ずしもデジタルばかりが重視されていくとは限らないようです。

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趣味は、ラップと少年漫画を読むこと。海外ドラマをいろいろと漁るのも好きです。

仕事に慣れてきたからこそ、緊張してみよう! 緊張を保つのに必要なこと

  • 2014/07/17
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by We Make Noise!
 新人の時は、誰でも毎日が緊張の連続です。どんな些細な仕事にも細心の注意を払って行い、仕事そのものよりも「気疲れ」でクタクタになってしまうものです。
 一方、仕事に慣れてくると、誰しも緊張感を失います。そんな時に、うっかりミスしてしまい、上司や同僚の信頼を失う事になったら・・・それまでの努力が水の泡になってしまうでしょう。
 そう考えると、仕事する上での「緊張感」は、必要不可欠と言えると思います。常に緊張感を持って仕事に望む為には、どういった事が必要なのでしょうか?

■緊張しない場合とは?

 まず最初に、どういう仕事で人は緊張感を覚え、どういう仕事で緊張感を失うか考えてみましょう。
 先にも述べましたが、自分自身が不慣れな上、「失敗できない」と思っている場合は誰しも緊張します。しかし何度もやって慣れてしまった場合、その仕事をしても「自分は失敗しない」と判っている場合は緊張しません。つまりは「油断」が生じる、という事です。
 例えば、ここで先輩から急に「そのやり方ではダメだ。重大な事故につながる」とダメ出しされた場合はどうなるでしょうか? この時点でまた緊張した状態で仕事をする様になると思います。つまり、作業の内容が同じであっても本人の気持ちによって緊張する/しないという違いが発生する、という事ですね。
 一般に、「結果が判っている」場合、人は緊張しないものなのです。コンクールやコンテストで、「入賞できるか判らない」状態であれば、誰だって緊張するはずです。しかし何らかの裏取引が済んでいて「1位入賞が決定済」なのであれば誰も緊張はしません。

■緊張感を維持するために

 あなたが新入社員で、仕事についてどう評価されるのが判らないならば、あなたの仕事は緊張した中で行われるはずです。これと同じ状態に自分を置けば、一定の緊張感を持って仕事に望めるはずです。例えば、仕事の結果について、「同僚に意見を求める」という事をしてみましょう。自分では問題無いと思っていても、思わぬ意見が飛び出す可能性があります。
 難しいのは、「上の立場」。例えばあなたが社長で、直接批判的な事をあなたに言う存在が居ないケースでしょう。こういった場合、漫然と仕事をするのではなく「自分との戦い」と位置づけた上で仕事に取り組むという手があります。つまりは、達成目標を設定したり仕事の過程にチェックポイントを設け、自己評価を行いつつ仕事するという方式です。作業の結果に対する評価が、自分でも「判らない」状態に自分を追い込めば、誰もが緊張感を持って仕事に臨めるというわけです。しかし、自己評価の結果に対して「まぁ、いいや」と思ってしまえる人では、この方法は効果がありません。厳しく自分を律する事ができる、克己心が強いタイプで無ければ、別途方法を考える必要があるでしょう。
 典型的なものとしては「自分で設定した目標を、社内に対して発表する」というものがあります。

 何にせよ、緊張感を持つ/持たない、という事には、本人の気持ちの持ちようが重要です。自分にあったタイプの方法を探す事が重要と思われます。

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