まどかの章 24 ★☆☆ 奴隷市場(ホテル猫々亭)
ううっ…。まだお腹が痛いのじゃ…。ベッドにグッタリと横になって、お腹をスリスリ…。
悪かったよ…。でもご主人様も酷いんだからな。オレが…そのっ…サキエルさんと…エッチなこと…してたなんて…(////
余はそこまで言っておらぬ…。シャツの裾をチラリ。ううっ…腫れておるのじゃ…。お腹をスリスリ…。
うわっ、ホントだ。救急車呼ぶか? 内臓に何か異常があったり、内出血してたら怖いからな。昨日貰った携帯で…。ポケットごそごそ。
いや…待つのじゃ…。余は注射は嫌じゃ。少し寝ていれば…治るであろう…。
そういうの映画なんかでは必ず後で酷い容体になって…。
ううっ…杏子は意地悪なのじゃ…。からだをコロリンと90度転がして杏子と反対向き。
いや心配してんだって。今度は本当に渾身の力で斜め下45度の角度からえぐるように入れたコークスクリューパンチだったからさ…。シールド魔法を突き抜ける音がしたし。
……余の身に異変が起きれば蓮華が飛んで来るのだ。側におらずともあの者は余を完璧に守ってくれておる。来ないということは大した怪我ではないということ…。少し横になっておれば大丈夫な筈じゃ…。
ふーん…。でも昨夜その人を電話で怒らせてなかったか?
……そうだの。
ごめんな…ご主人様…。王子の横にピトっと寄り添って寝て、背中越しに手を廻してTシャツの上から王子のお腹をスリスリ…。
杏子に撫でられると、少し痛みが引くのじゃ…。からだをコロリンと180度転がして杏子と向かい合い。
そうかい…。じゃあ、もっと撫でてやるよ。王子のTシャツをペロンと半分捲って、右手でオヘソの辺りをスリスリ…。
ううっ…。気持ちいいのじゃ…。
肘をついてる左腕で王子の頬を撫で撫で…。気付いてる? ご主人様…今すごく悲しそうな顔してるんだぜ?
……そちの顔も、少し悲しそうなのだ…。
ご主人様が今にも泣き出しそうな顔をしてるから、こっちもそういう顔になるんだよ。痛むのか? ごめんな…。下腹の辺りをスリスリ…。
ん…。痛くはないのじゃ。そちが撫でてくれると寧ろ心地よい。余が悲しい…いや、寂しい気持ちになるのは、こうしておると昔を思い出すからなのだ…。お腹が痛くなるとな、よくお母様が撫でてくれたのだ。
ふーん…。昔って…今はしてくれないのか? みぞおちの辺りをスリスリ…。
……。
ご主人様のお母様って鳳凰宮の評議員だったんだよな。今はトラスの離宮に移られたとか。たまには会いに行って甘えたらどうさ。横腹の辺りをスリスリ…。
……もう会えぬ。
えっ?
トラスに移られたのは義理の母上様達なのじゃ。父上のハーレムに入っていた女性は全員が余の母上様である。実の…余のお母様は…もうおらん。亡くなられてしもうた…。肺炎でな。余が五歳の頃じゃ。
そっか…。下腹の辺りをスリスリ…。あのさぁ…。
んっ?
ごめん…。
…謝ることはない。お母様にはもう実際に会うことは出来ぬが、思い出すことは出来る。お母様との別れは耐えられぬ程につらく悲しいものであったが…お母様には楽しい思い出も沢山戴いた。だから悲しみの後で心が温かくなる…。杏子。
なに…? ご主人様。オヘソの辺りをスリスリ…。
会えるときに会っておかねば…。助けられるときに助けねば…。他の何をも優先して大切にすべきであったと後悔するのは、本当につらいものじゃ。そちは今ならまだ間に合うかも知れぬ。
マミ様のことか…。
居場所が分かっておるなら、真偽不明の拉致奴隷など後回しにして、余の奴隷であることも後回しにして、直ぐにでも助けに行くべきである。そちにとって大切な人なのであろう?
オレにはご主人様のことが一番なんだ。何度も言ってるだろ…ご主人様はアベル様だけだって…。ご主人様の奴隷として今こうしていることが…オレには…凄く嬉しくて大切なことなんだ…。それにオレやマミ様は戦争に負けて奴隷になった。そうなることも覚悟の上で、だから仕方のない話さ。でも理由もなく奴隷になっている人がいるならそれは絶対に許されないことだとオレは思う。マミ様には申し訳ないけど、オレはあの噂が事実かどうか直ぐにも確かめたかった。もし不当に虐げられてる奴隷がいるなら助けたかった。……結局、噂は本当じゃなかったけどね。でもマミ様の救出より優先したことが間違いだとオレは思わない。マミ様だってそう言って下さると思うんだ。あの人は困ってる人がいたら必ず助ける、本当にお優しい方だから…。
……そちがマミの話をするとき、とても誇らしい顔をするの。主とか奴隷とか、そのような身分など関係なく、マミをひとりの人間として心から尊敬しておるのであろうな…。そちは余の奴隷として余に身も心も捧げ、縛られてはおるが、縛れぬこともあると余は承知しておるつもりだ。
ご主人様…。
マミを余の性奴にするのは変わらん。絶対に余のものにする。だがそちの尊敬するマミの人格を貶めるようなことは決してしないと、今ここに誓おう。
いいのか?
うむっ。その代わり、そちがマミの分まで余のドロドロとした裏の欲望を受け止めることになろう。ひとりで大変かも知れぬが、それでよいか?
うん! オレご主人様がしてくれることなら、なんでも耐えられるっていうか、なんでも喜べると思うぜ…(////
そちは優しいのだ…(////
えへへへっ…。でもオレの優しさは相手によるよ? マミ様の優しさとは別物さ。
あの者、確かに慈愛に満ちた優しげな顔をしておったの…。特にあの愛嬌のあるタレ目がたまら…ゴホゴホ…。特にあの深く清んだ瞳が、マミの純真な心を映しこんでおるかのようであった。
そうだよ。スゲェいい人なんだ。困ってる人にはお優しく、悪い奴にはどんな強い相手にも屈さずに立ち向かうんだぜ? ほんと最高に素晴らしい人なのに…。スレーブドームであんな酷い目に…。
可哀想にドームの舞台で真っ裸にされておったな…。実にムチム…ゴホゴホ…。実にけしからんのじゃ!
うん、でも裸にされたことよりも、裸にされてからが大変だったんだよ…。
なんじゃと!? 余は途中で退席したが、あの後でマミの身に何かあったのか?
どこかの貴族のアホボンが、胸をみせろだの、尻を見せろだの、お股を見せろだの、からだがムチムチだの、余のチンチンと一緒にスタンドアップだの、聞くに堪えない暴言を大声で執拗に何度も何度も吐きまくってさ。マミ様、恥ずかしくてしゃがみ込んで泣き出しちゃったんだ。どんなに辛いことがあっても周りに気丈に振舞って、心配させまいと微笑んで、悲しんでるところなんて今まで一度も見せなかったあのマミ様が涙をポロポロと流してるんだぜ? オレもう辛くて見てられなかったよ。会場が暗くて誰が言ってるのかは見えなかったけどさ。あのアホボンを見つけたら懲らしめてやるんだ。
……あ、あぁ、い、いや、うん、気持ちは分かるが、相手も反省しておるやも知れぬぞ? 本当にマミが可愛過ぎて、抑えられなかったのであろう。
そうかなぁ…。
う、うむっ。少なくともそのアホボンにはマミを馬鹿にする気も心を傷つけるつもりもなかったと思うぞ。勿論、言い訳にはならんがな…。相手が傷ついている時点で弁解のしようがないのじゃ。……しかし…そうか…。そこまで深く傷ついておったのか…。本当に可哀想なことをしてしまったのじゃ。しょぼん…。
ジト目でご主人様を、ジー。
な、なんじゃ?
……あいつの声さ、ちょっとご主人様に似てたんだよな。反響してたからハッキリとはしないんだけど。
へ、へぇ…。
疑いたくはないけどよ…まさか、違うよな?
……。
違うよな?
ううっ…顔が近いのじゃ…。
……。
悪かったのだ…。興奮して抑えられなかったのじゃ…。マミに会ったら先ずその謝罪をするのだ…。マミは許してくれるであろうか。しょぼん…。
……今回は素直に認めたってことでオレは許してやるけど。でもマミ様はどうかな~。チラッ。
やはり駄目かのう…。しょぼん…。
さぁてね、でも他の奴の野次だったらあんなに気にしなかったと思うぜ? ご主人様の姿、舞台から見えてたのかもな。気になる奴に野次られたから泣いちゃったのかも…。ご主人様ってマミ様のタイプだったりして。
本当か~っ! 杏子の肩を掴んでガクガク…ガクガク…。
わわわわっ、知らねーよ。本気にすんなって。
い、いやその可能性は十分にあるではないか。何故気付かなかったのじゃ…。マミが余のことを好きでは性奴として不適格…。
ならどうしてそんなに嬉しそうな顔してるのさ…。マミ様を性奴にしたいんじゃなかったのかよ?
不思議なのだが、マミが余を好いてくれておると思っただけで、余も凄く嬉しい気持ちになるのだ…。おかしいのう…マミは可愛くてムチムチではあるが余の好みとは遠く掛け離れておった筈なのに…。これはつまり相手の気持ちがあって余の気持ちも決まるということなのであろう。だから…
だから…。ご主人様のこと…好きになっちゃ…駄目…なんだよな…。
そうじゃ。やはり余を好いておる者を性奴とするのは避けねばならん。
ご主人様…オレ…。しょぼん…。
ふはははっ。とはいえ、まだマミが駄目と決まった訳ではない。余をちょっと好みかな~くらいで見ておるだけであるなら、良好な奴隷関係は十分に結べる筈…。気持ちを確かめる他あるまい。杏子。そちは今直ぐマミの救出に向かうがよい。本来ならインキュベータ社へ乗り込むには綿密な下調べが必要であろうが、その首輪を付けておれば準備など不要じゃ。そちに敵う者などおらん。正面突破も出来るであろうが、しかし何が起こるか分からんのが実戦じゃからな。一人で行くのは避けて…そうじゃ、さやかを誘って行くがよい。青の首輪の魔力で恭介の怪我は既に完治しておる筈じゃ。うむっ。まずは上条家へ行くのだ。
う、うん…。
余も一緒に行きたいが、余は先程みたゴミの市の悲惨な状況を直ぐレポートとして纏めたいのだ。余の権限で改善措置令を緊急執行させれば何人かは病気や飢えから救える筈じゃ。そちが余をここに連れて来たこと、全く無駄ではなかったと証明しよう。余もマミのように、そちに主としてだけ見られるのではなく、胸を張って誇らしく語られる奴になりたいからな。
そうさ、あんた王子だもん。沢山の人を救えるんだ。うん。王子は王子の仕事を果たしてくれ。マミ様を救うのはオレの役目だ。
杏子。
うん?
そちに。ミ鍵
鍵、パシッ。これは?
今朝方、速達で届いての。鍵を渡さねば折角買った部屋に入れぬであろう。
マンションの合鍵か…。嬉しいよ…ありがと(////
合鍵ではない。オリジナルの鍵だ。そちの家なのじゃから、そちが持つのが当然であろう? 名義もそちの名前になっておる。暗証番号は余と初めてあった昨日の日付にしておいたのだ。0710なのじゃ。で、合鍵は余が持つのだ。 ……パチッ☆ ミ合鍵 パシッ。
うううっ…。ご主人様…(////
んっ?
抱きっ!(////
ふはははっ。マンションがそんなに嬉しかったか。うむっ。段々と余の性奴に相応しき反応をするようになって来たのだ。可愛いのじゃ(////
そうじゃなくて…オレには…ご主人様の気持ちが…。
余がどうしたのじゃ?
あぁ…いや…。うん…。マンションありがとな…。
……杏子。余はレポートを書き終えたら高島屋で家具やドレスを揃えよう。地下で食料品も買い込もう。大きなケーキも買っておこう。今夜は余とそちとマミと…後ついでにさやかも入れて四人でパーティーじゃ。超特急で任務を済ませて家に帰って来い。ご馳走だからの。寄り道して買い食いなどするでないぞ?
……わかった。じゃ、ご主人様、行って来るよ。
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