まどかの章 23 ★☆☆ インキュベータ社(特別来客室)
インキュベータ社を呼び水? 九兵衛は貴方に洗脳され操られてマギカと契約を結んだとでも? 九兵衛は抜け目のない狡猾な男だった。洗脳で操るなんてありえないわ。貴方のいうマギカに攻め込むα計画が失敗して今の状態となった流れを、なんとかβ計画と名付けて取り繕っているだけにしか思えない。デタラメな計画の失敗で情勢が悪化してエロスは国難の危機に陥ったことを先ず認めなさい。でないとこの国は滅ぶわ。
くくくっ。九兵衛を洗脳出来ればもっと楽にβ計画の遂行は可能だったでしょう。しかし狡猾とか抜け目ない以前に、彼にはそもそも魔法が効きませんのでね…。貴方は九兵衛のことをただの平民だと思っていたかも知れませんが、先程言いましたように奴はわたくしのライバルであり、特異な結界系魔法使いでございまして…。
結界?
いや、まぁ、それはまた後で追々説明しましょう。いま何が言いたいのかと言えば、洗脳など出来なくても人を動かすことは出来るということです。難民が大発生と先程、貴女は言われた。何人ですか?
今の時点で50万人はいるそうね。100万人を超えるとも予想されている。
くくくっ。貴女、実際に数えられたのですか?
貴方の家にテレビは無いのかしら。実際にニュースの映像として難民キャンプの映像が流れているわ。沢山の難民がね。
くくくっ。あれは嘘にございます。実際にはマギカの住民の大半はまだ国境を越えられずにいます。実際、エロス側に辿り付けたのは、そう…500人くらいでございましょうか。くくくっ。映像はデジタル加工されたものにございますよ。この国のメディアは公共放送のNHKと新聞を軸にした五つの民間放送からなりますが、どれも国の指示通りにしか報道致しません。痛烈な政府批判も時折やりますがアレもただのガス抜きにございます。基本的にこの国のシステムの内側にいる者達ですので。
……難民の大量流入で奴隷の価格が暴落すると九兵衛に思い込ませる為に嘘の情報を流した…とでも言いたいのかしら?
くくくっ。この嘘は都合が良いのです。九兵衛にマギカとの契約を結ばせることが出来ますし、実際に死んでいなくとも嘘の数だけマギカが大量虐殺したと主張できる…。くくくっ。わたくしにとっては、いま国境を警備している愚連隊の如き輩の評価を下げられるのが一番に都合がよろしい。いくら蓮華が頑張っても居もしない難民を救える訳がございませんからな。くくくっ。愉快、愉快にございます。くくくっ。くくくっ。
九兵衛は貴方にまんまと騙されたって訳…。人を騙したその報いかも知れない…。でもよかったわね。九兵衛は抜け目無い男だった。一時的に騙せても直ぐ嘘だと気付いた筈よ。もし生きてたらマギカとの契約を後で改定して貴方ご自慢のβ計画を頓挫させたことでしょう。私には無理でも奴なら出来た筈…。貴方の計画なんて所詮はその程度。たまたま九兵衛の死と重なったから上手く行っているだけ。どうせ直ぐにボロが出るわ。
くくくっ。そうでございますね。契約を結んだ直後に貴女が殺してくれて本当に助かりました。九兵衛は特異な結界系魔法使いだと先程申しましたが、どう特異かと言いますと、他人からの影響を一切受けないという奇天烈な能力の持ち主だったのでございます。何も通じない…。魔法も、痛みも、喜びも、悲しみも、死も…。そう九兵衛を殺すことは出来ません。くくくっ。貴女だから殺せたのですよ、貴女は九兵衛にとって他人ではなく愛しい家族。愛娘だったのですから…。くくくっ。まどかの件や九兵衛の能力についてマギカ側にリークしておいて本当に良かった。あらゆる布石は打っておくものですね。
何を馬鹿な…。あいつは私を人形としか…。
くくくっ。実に風変わりな男でした。貴女は九兵衛の発言や行動を好意的には受け取れなかったでしょう。いや寧ろ悪意として感じ取ったのでしょうが、九兵衛が貴女を愛していたのは事実です。例えば貴女に与えたミッションは数こそ多いですがどれも難度の低いものでした。父として娘を心配してのことでしょう。先程の役員会で貴女が社長になれたのも、自分の身に何かあったとき娘が滞りなく後を継げるよう、貴女を快く思わない者達を粛清し続けた結果にございます。決定的なこともございます。貴女が…。
もういい! 九兵衛は死んだ。私が殺した。今の話が仮に本当だとして今更そんなことを言ってどうだって言うの。揺さぶろうとしても無駄。貴方が洗脳系の魔法使いってことを忘れていたわ。このまま洗脳するつもりだった? お生憎さま。まどかの件がある限り私は決して九兵衛を許さない。というか貴方、喋り過ぎよ。ここまで事情を聞けば今からシャルロッテに連絡して襲撃を止められる。β計画もこれでお仕舞いだわ。
くくくっ。シャルロッテが九兵衛を切って貴女を選んだのは操り易いからにございますよ? 世間知らずな箱入り娘の戯言なぞに耳を傾けますかどうか…。とはいえ確かにお喋りが過ぎましたな。お気の毒ですが、貴女をこのままにして帰る訳にも行かなくなりました。くくくっ。まぁ、最初からそのつもりでしたが…。
私と戦うの?
くくくっ。貴女次第でございます。ラジコンのように操作される一生を送るのが嫌なら、戦って勝つ他ないですな。
自信満々って感じね…。でも洗脳系の魔法は時間と手間が掛かる。戦闘向きではないわ。一方、時空系の魔法は同じ時空系でしか回避不能。先手必勝、さよなら…。時空魔法発動、時の牢獄。 ……パチッ☆
くくくっ。対象者の時間を停止させるタイムループの魔法にございますかな?
魔法が効かない!? まさか…どうして!?
くくくっ。さて何故でしょうか。先程までのわたくしの話をちゃんと聞いていれば分かると思いますが…。くくくっ。ヒントを差し上げましょう。魔法が効かないのではなく、そもそも発動していないのですよ。貴女はわたくしに不利な魔法を一切発動出来ないのです。
洗脳プログラム…。貴方、私への洗脳を既に終えているとでも言うの? いつ…。隙なんて見せなかったのに。…貴方の洗脳魔法はまだ発動してない。こんなのあり得ない。 ……パチッ☆
くくくっ。無駄です。とっくに発動しております。始めに申しましたよ? 九兵衛とは旧知の間柄、過去に二度ばかりあの者から洗脳の依頼を引き受けたことがあると。くくくっ。九兵衛に依頼された洗脳はイミテーションのまどかにだけではございません。八歳の貴女様にも施しまして、その際に洗脳プログラムも少しばかり混ぜさせて貰ったのですよ。
……なぜ?
くくくっ。はい?
なぜ九兵衛は私の洗脳を頼んだの? 私にどんな洗脳をしたの? あいつは死んでも私の心を弄ぶの…。
くくくっ。いえいえ。誤解されてはいけません。先程、九兵衛が貴女を愛していたことを示す決定的な例だとして挙げたかったのは、まさにこのことで…。四年前、貴女がファームから引き離されたとき、まどかが九兵衛に抵抗して頭を打ったのだと貴女は思い込まれておられるのでしょうが、事実は異なります。貴女の魔力が突然変異の魔法因子によって覚醒したとき、まどかを吹き飛ばして頭に傷を負わせたのです。それで…。
違う! 私は九兵衛に突き飛ばされた血まみれのまどかを抱きかかえて…
くくくっ。ではあの時の記憶を戻しましょう。わたくしが頼まれた洗脳はですね、貴女が魔法でまどかを傷つけてしまった記憶を、九兵衛が突き飛ばした記憶にすり替えるというもので…。貴女には少々辛い記憶となるでしょうが、これが真相にございます。 ……パチッ☆
ううっ、あぁっ…。えっ…。えっ…!? い、いゃっ!! ち、ちがう……。こんなのちがう…。まどか…わたしがまどかを…? いやっあぁああっ…。
くくくっ。ちなみに貴女は時空系の魔法使いでございますが、これは過去に戻って事故を回避したいという思いから生まれたのです。とはいえ貴女の魔力では過去へのタイムリープは1分が限界。魔法が発現したときには既に数分経過しておりました。タイムリープを繰り返すごとに時間は戻るどころか先へ先へと流れるばかり…しかし貴女は何度も何度もタイムリープを繰り返した。このままでは心も体も壊れてしまう、そう九兵衛に泣き付かれましてな…。洗脳魔法も、イミテーションのまどかも、全ては貴女の精神を安定させる為の嘘だったのでございます。
ガタガタ…ブルブル…。ガタガタ…ブルブル…。ガタガタ…ブルブル…。
くくくっ。あと再処理センターの件も誤解されておられます。九兵衛はまどかの意識を回復させようとあちこちの病院に治療を依頼しましたが、何年経っても容態は改善されず、万策尽きて脳死判定を受け入れるに至ったのです。再処理センターなどという九兵衛のネーミングセンスの無さから酷い施設だと思い描かれたでしょうが、まどかの件に限らず、あそこで臓器移植の対象となるのは脳死判定を受けた奴隷のみでございますよ。
いやああっ……。いやぁ…もうやめて…。わたしは…。
くくくっ。愛する娘へ真相を告げられずにいた父をグロッグの17連射で穴だらけにして、どうでしたか? 気持ちよかったですかな? まどかを魔法で吹き飛ばしたときはどうです? 魔法が覚醒するのは爽快だったのではございませんか? でも今は後悔されておられる。くくくっ。残念ながら取り返しは付きませんよ。まどかも九兵衛も永遠に戻っては来ません。貴女が殺したのですから…。
ふふっ…ふふふっ…。そう…わたしがころしたの…。みんなころしちゃったの…。ふふっ…。涎を垂らし床にペタンと座り込み。ジョロジョロジョロ……ショロショロショロ……。
くくくっ。失禁されましたか。廃人一歩手前…いやもう一人前の廃人ですかな。くくくっ。お辛いでございましょう。直ぐ楽にして差し上げます。これからはもう貴女は自分で何も考えなくてよいのです。本物の人形になるのでございますよ。それも九兵衛ではなくわたくしの人形に…。くくくっ。インキュベータ社はわたくしがβ計画遂行の為に有効活用させて貰います。貴女を操ることでね…。洗脳魔法発動、絶対令隷。 ……パチッ☆
ふふふっ…。目がトロ~ン…。サキエルさま…(////
くくくっ。口から垂れている涎をぬぐって立ち上がりなさい。あと、これは遊びではございません。気を引き締めて下さいな。
はいサキエルさま…。口元ゴシゴシ…。スクッ。なんなりとご命令を…。
くくくっ。ではまず貴女の尿にまみれたお足とお股を拭いてショーツを取り換えることに致しましょうか。臭くてかないませんからな。スカート、タイツ、ショーツ、脱いで下さい。
はい…。かしこまりました。学生服のようなスーツのスカート脱ぎ脱ぎ。黒のタイツを脱ぎ脱ぎ。薄紫のシルクの高級ショーツをスルスル。
くくくっ。わたくしに女性への興味があればこの様な状況も楽しむことが出来るのでしょうが…。胸のハンカチを取り、テーブルの水差しから水を垂らして含ませ、ほむらの太腿にあて、ふきふき…。
うぁ…あぁっ…ぁっ…ぁっ…(////
くくくっ。やれやれでございますね…。片手でハンカチをギュッ…っと絞って、水差しからまたハンカチに水を垂らし、ほむらのお股をふきふき…。
やぁっ…ぁぅ…んっ…やぁ…(//// 腰を引いて身体をくの字に曲げ、足を閉じ、サキエルの肩を掴んで離れるように押し返し。
んっ? 洗脳の効きが甘かったですかな。それともこの者が心底エッチ好きなのか。まぁ、後者でしょうな…。くくくっ。ほむら、上手く拭けませんので、じっとしてて下さいな。
はい…。サキエルさま…。すみません。
ほむらのお股を事務的に、ふきふき…。
うあぁ…やぁ…うぁ…ぁっ…ぁっ…(////
くくくっ。これくらいでよいでしょう。ハンカチをポイッ。換えのスカートと下着はどうしましょうかね。周りをキョロキョロ…。あぁ、そうそう先程の玩具、わたくしをこの部屋に案内した受付のお嬢様がこの椅子の陰に…。くくくっ。余程ショックだったのでしょうか、まだ気絶されておられます。この者の服を借りることにしましょう。ほむら、上着も全部脱いで裸になり、ここで寝ている女性の服に着替えなさい。下着も全てですよ。
はい…。かしこまりました。上着を脱ぎ脱ぎ…。受付嬢を仰向けにして上半身を起こし、上着を脱がせ脱がせ、ブラを外し外し…。
くくくっ。しかしこの受付嬢といい、ほむらといい、どうしてわたくしのような者の言葉を鵜呑みにするのでしょうか…。裏付ける確かな証拠を自分で調べもせずに、簡単に他人の話を信じてしまう貴女達はいったいどこまで愚かなのでございましょう。
少しサキエルの方を向いて、首をコクンを横に傾け。何言ってるのかなという顔をみせて、受付嬢へ向きなおし、着替えの続きをモソモソ。
くくくっ。この指輪…綺麗でございましょう? クロノスの指輪、時空系魔法を不発にする神具にございます。くくくっ。アベル王子は気紛れに人を殺すことがございますので、わたくし日頃から身に付けているのですよ。貴女の魔法が発動しなかったのは洗脳プログラムではなく、単にこれのお陰でございます。くくくっ。九兵衛からの依頼はまどかイミテーションの製作のみ。貴女はそもそも洗脳などされてはいなかった。まどかの頭の怪我も九兵衛が突き飛ばしたからにございます。くくくっ。少しばかり魔法で嘘のイメージを見せたらコロッと信じ込まれましたが、貴女は九兵衛のような悪党と何年も一緒にいて、実はあの者が善人かも知れないなどと本気で思ったのでございますか? 自分を娘として愛していたと? 自分を庇う為に裏で手を尽くしていたと? まどかの治療を試みたと? くくくっ。そんなことある筈がございますまい。あの者はわたくしのライバル。何の魔法も使えぬただの平民ではありますが、わたくしも一目置く程の外道にございますぞ。
サキエルさま…。ご命令が複雑過ぎて私には分かりません。実行できません。
くくくっ。今言ったことは唯の独り言にございます。早く着替えを済ませて下さいな。貴女の綺麗な制服姿をわたくしに見せて下さい。くくくっ。貴女は人形としての本分をまっとうしていればそれで十分なのでございますよ。
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